怖い話のまとめサイト

怖い話を集めてます。 独断と偏見でチョイスして紹介してます。

2015年06月

【洒落怖】【怖い話】寂れた旅館

親から聴いた話。親が新婚の頃だから30~40年前の事だと思います。 

東北のとある観光地に行った両親は、下に川が流れる景色の良い温泉宿に泊まったそうです。ただ、景色が良いと言っても宿に着いたのは夜7時過ぎ。
川側の部屋を予約していたので、翌日の景色をとても楽しみにしていました。 

しかし、チェックインを済ませようとフロントで手続きしていると、どうも係の人の態度がおかしい。顔は笑顔なのだけど、
どこか怯えているような様子で「昨日の雨で少し増水していて、夜はうるさいかもしれません」と部屋を替える提案をしてきました。 
歯切れ悪く伝える従業員の方に当時両親は「変だな」とは思いつつ、「気にしませんから」と部屋を替えずに案内してもらったそうです。 

何はともあれ、せっかくの旅行だからと深くは気にせず、母はお夕食の後、お風呂に向かったそうですが、しかし、やは何か変なのです。 
「(私たち以外に10台近く他県の車が停まっていたのに、誰1人として遭わない)」 
廊下でもお風呂でも。お客さんだけでなく、従業員すら館内ですれ違わなかったそうです。 
さすがに少し気味が悪いと思いつつも、湯船に浸かった時でした。 

キャハハ・・・ 

突然、女の子の笑い声のようなものが大浴場内に響いたのです。 
さっきまで人の気配すらなかったのに、他のお客さんかな?と思って振り返ってみますが誰もいません。 
母は気味が悪くなり、急いで上がり、部屋に帰ったそうです。 
父は「酔っているんじゃないか?」と笑い、その場は納まりましたが今思えばこれが全ての始まりでした。 

次に父がお風呂に向かいました。 
やはり人っ子一人遭わない。それどころか、お風呂ではいきなり積んであった桶が崩れたり、浴場のランプが切れたり。 
父は偶然と自分に言い聞かせたものの、母のこともあるので、急いで部屋に戻ったそうです。 

さすがに気味が悪すぎる。 
「明日、陽が昇ったらすぐにチェックアウトしよう」 
父と母はそう話合い、何かあったらと思い部屋の電気をつけたままで床につきました。 
ところがしばらくして急に電気が消え、パキッとかバンッとかキィキィとか色んな音が部屋中に響きました。 
その内、嘘のような話なのですが、まるで地震が起きているかの如く部屋の備品が揺れ始めたのです。 
地震か?とも思ったそうなのですが、自分たちには体感がなく、館内も慌てる様子もなく・・・。 
完全に恐れおののいてしまって呆然としたそうなのですが、逆にテンプレ通りとも言えるポルターガイスト現象にどこか可笑しくもなり、
急いで着替えて荷物を詰め込みフロントに駆け込んだそうです。 

【洒落怖】【怖い話】玉虫の呪い

幼い頃、父に玉虫の厨子の話を聞いて、友達と途中まで作ったことがあった。 
そしてそれを長い間さっぱり忘れていた。 

大人になって何年目かの夏に、嫌な夢を何度も見て思い出した。 
玉虫の羽が空からたくさん降ってきてキラキラしてた。 
それが綺麗でずっと見ているとだんだん量が増えてきて俺はその中に埋まっていく夢。 
息をすると口の中から玉虫の羽が出てきて、そこでいつも目が覚める。 

何度も見ているうちに、幼い頃を思い出した。 

子供とは恐ろしいもので、俺たちは数十匹もの玉虫を捕まえて、固いキラキラした羽をむしりとって集めていた。 
あと何匹で厨子が完成するとか嬉々として騒いだ。 
でも羽を張り付ける箱は、玉虫という小さな虫の羽の大きさに比べてあまりにも大きかった。 
だから完成する前に季節が過ぎて玉虫はいなくなってしまった。 

俺の記憶はそこまでだった。 

その友達に電話掛けてこのことを話した。 
玉虫の供養の話を持ちかけるために。 

でもそいつはゲラゲラ笑って、馬鹿なことを言うなと言っていた。 
その箱はそいつが持ってるらしい。 
そしてそれは完成していると。 

話を聞くと、俺がいきなり玉虫の呪いだとか、何だかんだと騒いだから一旦中断したんだとか。 

でもそいつは完成した箱がどうしても見たくて秘かに続行して何度かの夏を使って完成させたらしい。 

俺は玉虫の呪いだとか騒いだことは全く覚えていなくて、ただ季節が過ぎて玉虫がいなくなってしまったというように記憶していた。 

後日そいつと会う約束をした。 

その日の夜は、例の箱を開けようとする夢を見た。 
薄暗い押し入れの角に埃を被った段ボールの箱を見つけて開くと、半紙に包まれた小さな箱が出てきた。 
それには綺麗な玉虫の羽がびっしりくっ付けられていて、俺は思わず感動する。 
そして蓋を開けようとすると、ちゃぷんと水音がして、そのときに目が覚めた。 

友達と会う日、俺は少し嫌な予感というか、何か行きたくなかった。 
でも約束してたし行った。 
その途中の電話でまた夢を見た。 
玉虫の羽が剥げてボロボロになった箱がひとりでに開く夢だ。 
中身は思い出せない。 

友達の家について、入ると少し生臭い匂いがした。 
友達は普通だったから気のせいかもしれないけど。 

案の定、箱は押し入れにしまってあるとそいつは言うので、一緒に探した。 

俺は夢のこともあって、押し入れの角をすべて探したが、そこにはなく、かわりに天袋の角に、夢と同じ段ボールの箱があったので取り出してみた。 

友達は嬉々として戸惑いもなく中身を取り出した。 
俺は少しこいつが怖くなってきた。 

玉虫の羽がびっしりくっ付けられた箱は、夜に夢で見たものより劣化していたようだったが、電車の中で見た夢よりも綺麗だった。 

俺はつい感動してしまった。 


「中に何が入ってるんだ」と好奇心に駆られて聞くと、友達はキョトンとして言った。 

「これはお墓だよ」と。 

やっぱり不気味になって、開けたくないと俺が言うと、そいつはゲラゲラ笑って躊躇なく開けようとした。 
でも開かない。 
しっかりアロンアルファか何かで止められているようだ。 
そして不思議と箱を傾けたり何だりとしているのに、中から音はしなかった。 
いよいよ不気味になってきたので本気でやめさせようとした。 
しかしそいつは躍起になっているようで、聞いてくれない。 

だんだん玉虫の羽が削げ落ちていって、電車の中で見た箱とだんだん似てきて。 

俺は恐ろしくなって、そいつから箱を奪って逃げだした。 

どこをどう走ったのかわからないけれど、いつの間にか俺は病院のベットにいた。 
車に跳ねられたらしい。 
俺がいきなり車道に飛び出してきて牽いてしまったらしい。 
幸い軽い脳震盪で何ともなかった。 
そのときに箱の行方を聞いてみたが、知らないと言われた。 
病院を出て、事故現場に案内してもらって探したが、無かった。 

だが事故現場の真ん前は、森のようになっていて、昔玉虫を取りにいったところだった。 
夏だったせいもあって、蝉の声もして昔にタイムスリップしたような感覚だった。 
俺は玉虫たちは自分たちのもといた場所に戻ったのだと信じることにした。 
その日から玉虫の夢は見ていない。 

そして友達はその日からまた玉虫の厨子を作っているらしい。 
あの天袋にあった玉虫の厨子の美しさが忘れられないらしい。

【洒落怖】【怖い話】天袋

とそこで携帯がなった。でもって金縛りがとけたのよ。 
電話に出たら赴任先の部下からだった。 
もう怖くなっちゃって、部屋から飛び出して電話をくれた部下を呼ぶことにした。 

そいつすぐきてくれて、その天袋も調べてくれたの。 
そしたら、小さな桐の箱があり、箱の蓋部分にはお札みたいのが貼ってあり、紐が巻いてあったのね。 
蓋と箱の間からは髪の毛がはみだしていた。 
そんなもん見てしまったら尚更怖くなり、 
その晩は部下の家に泊めてもらった(ちょっと情けなかったw) 
次の日、管理会社と連絡をとりすぐに来させたのね。 
天袋の中の箱も管理会社のやつに見させたんだけど、昨晩は髪の毛みたいのが蓋からはみだしていたのに、今ははみだしていない。 
夜のうちに箱に戻ったってこと?目玉もこの箱からでてきたのか? 
そんな体験してしまってはその部屋に住めるわけないよね。ちろん解約することにした。 
0感だった俺が唯一体験した心霊体験でした。あの箱ってなんだったのか?ちなみに箱のあったマンションはF県K市K区にまだあります。箱がどうなったかはわかりません。 

【洒落怖】【怖い話】禁后「その②」

代々、母から娘へと三つの儀式が受け継がれていたある家系にまつわる話。 
まずはその家系について説明します。 

その家系では娘は母の『所有物』とされ、娘を『材料』として扱うある儀式が行われていました。 
母親は二人または三人の女子を産み、その内の一人を『材料』に選びます。
(男子が生まれる可能性もあるはずですが、その場合どうしていたのかはわかりません)
選んだ娘には二つの名前を付け、一方は母親だけが知る本当の名として生涯隠し通されます。 
万が一知られた時の事も考え、本来その字が持つものとは全く違う読み方が当てられるため、
字が分かったとしても、読み方は絶対に母親しか知り得ません。 
母親と娘の二人きりだったとしても、決して隠し名で呼ぶ事はありませんでした。 
忌み名に似たものかも知れませんが、『母の所有物』であることを強調・証明するためにしていたそうです。 
また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意し、娘の10,13,16歳の誕生日以外には絶対にその鏡台を娘に見せない、
という決まりもありました。 
これも、来たるべき日のための下準備でした。 

本当の名を誰にも呼ばれることのないまま、『材料』としての価値を上げるため、
幼少時から母親の『教育』が始まります。 (選ばれなかった方の娘は、ごく普通に育てられていきます)
例えば…
・猫、もしくは犬の顔をバラバラに切り分けさせる 
・しっぽだけ残した胴体を飼う 
(娘の周囲の者が全員、これを生きているものとして扱い、娘にそれが真実であると刷り込ませていったそうです)
・猫の耳と髭を使った呪術を教え、その呪術で鼠を殺す 
・蜘蛛を細かく解体させ、元の形に組み直させる 
・糞尿を食事に(自分や他人のもの)など。 

全容はとても書けないのでほんの一部ですが、
どれもこれも聞いただけで吐き気をもよおしてしまうようなものばかりでした。 
中でも動物や虫、特に猫に関するものが全体の3分の1ぐらいだったのですが、これは理由があります。 
この家系では男と関わりを持つのは子を産むためだけであり、目的数の女子を産んだ時点で関係が断たれるのですが、
条件として事前に提示したにも関わらず、家系や呪術の秘密を探ろうとする男も中にはいました。 
その対応として、ある代からは男と交わった際に、呪術を使って憑きものを移すようになったのです。 
それによって、自分達が殺した猫などの怨念は全て男の元へ行き、
関わった男達の家で、憑きもの筋のように災いが起こるようになっていたそうです。 
そうする事で、家系の内情には立ち入らないという条件を守らせていました。 
こうした事情もあって、猫などの動物を『教育』によく使用していたのです。 
『材料』として適した歪んだ常識、歪んだ価値観、歪んだ嗜好などを形成させるための異常な『教育』は、
代々の母娘間で13年間も続けられます。
その間で、三つの儀式の内の二つが行われます。 

一つは10歳の時、母親に鏡台の前に連れていかれ、爪を提供するように指示されます。 
ここで初めて娘は鏡台の存在を知ります。
両手両足からどの爪を何枚提供するかは、それぞれの代の母親によって違ったそうです。 
提供するとは、もちろん剥がすという意味です。 
自分で自分の爪を剥がし母親に渡すと、
鏡台の三つある引き出しの内、一番上の引き出しに爪と娘の隠し名を書いた紙を一緒に入れます。 
そしてその日は一日中、母親は鏡台の前に座って過ごすのです。
これが一つ目の儀式。

もう一つは13歳の時、同様に鏡台の前で歯を提供するように指示されます。 
これも代によって数が違います。 
自分で自分の歯を抜き、母親はそれを鏡台の二段目、やはり隠し名を書いた紙と一緒にしまいます。 
そしてまた一日中、母親は鏡台の前で座って過ごします。 
これが二つ目の儀式です。

この二つの儀式を終えると、その翌日~16歳までの三年間は『教育』が全く行われません。 
突然、何の説明もなく自由が与えられるのです。
これは、13歳までに全ての準備が整ったことを意味していました。 
この頃には、すでに母親が望んだ通りの生き人形のようになってしまっているのがほとんどですが、
わずかに残されていた自分本来の感情からか、ごく普通の女の子として過ごそうとする娘が多かったそうです。 

そして三年後、娘が16歳になる日に最後の儀式が行われます。 
最後の儀式、それは鏡台の前で母親が娘の髪を食べるというものでした。 
食べるというよりも、体内に取り込むという事が重要だったそうです。 
丸坊主になってしまうぐらいのほぼ全ての髪を切り、鏡台を見つめながら無我夢中で口に入れ飲み込んでいきます。
娘はただ茫然と眺めるだけ。 
やがて娘の髪を食べ終えると、母親は娘の本当の名を口にします。 
娘が自分の本当の名を耳にするのは、この時が最初で最後でした。 

これでこの儀式は完成され、目的が達成されます。 
この翌日から母親は四六時中自分の髪をしゃぶり続ける廃人のようになり、亡くなるまで隔離され続けるのです。
廃人となったのは文字通り母親の脱け殻で、母親とは全く別のものです。 
そこにいる母親はただの人型の風船のようなものであり、
母親の存在は誰も見たことも聞いたこともない、誰も知り得ない場所に到達していました。 
これまでの事は、全てその場所へ行く資格(神格?)を得るためのものであり、
最後の儀式によってそれが得られるというものでした。 
その未知なる場所では、それまで同様にして資格を得た母親たちが暮らしており、
決して汚れることのない楽園として存在しているそうです。 
最後の儀式で資格を得た母親はその楽園へ運ばれ、後には髪をしゃぶり続けるだけの脱け殻が残る…
そうして新たな命を手にするのが目的だったのです。 
残された娘は母親の姉妹によって育てられていきます。 
一人でなく二~三人産むのはこのためでした。 
母親がいなくなってしまった後、普通に育てられてきた母親の姉妹が娘の面倒を見るようにするためです。 
母親から解放された娘は、髪の長さが元に戻る頃に男と交わり、子を産みます。 
そして、今度は自分が母親として全く同じ事を繰り返し、母親が待つ場所へと向かうわけです。

ここまでがこの家系の説明です。 
もっと細かい内容もあったのですが、二度三度の投稿でも収まる量と内容じゃありませんでした。 
なるべく分かりやすいように書いたのですが、今回は本当に分かりづらい読みづらい文章だと思います。 
申し訳ありません。 
本題はここからですので、ひとまず先へ進みます。 

実は、この悪習はそれほど長く続きませんでした。 
徐々にこの悪習に疑問を抱くようになっていったのです。 
それがだんだんと大きくなり、次第に母娘として本来あるべき姿を模索するようになっていきます。 
家系としてその姿勢が定着していくに伴い、悪習はだんだん廃れていき、やがては禁じられるようになりました。
ただし、忘れてはならない事であるとして、隠し名と鏡台の習慣は残す事になりました。 
隠し名は母親の証として、鏡台は祝いの贈り物として受け継いでいくようにしたのです。 
少しずつ周囲の住民達とも触れ合うようになり、夫婦となって家庭を築く者も増えていきました。 

そうしてしばらく月日が経ったある年、一人の女性が結婚し妻となりました。八千代という女性です。 
悪習が廃れた後の生まれである母の元で、ごく普通に育ってきた女性でした。 
周囲の人達からも可愛がられ平凡な人生を歩んできていましたが、
良き相手を見つけ、長年の交際の末の結婚となったのです。 
彼女は自分の家系については、母から多少聞かされていたので知っていましたが、
特に関心を持った事はありませんでした。 
妻となって数年後には娘を出産、貴子と名付けます。 
母から教わった通り隠し名も付け、鏡台も自分と同じものを揃えました。 

そうして幸せな日々が続くと思われていましたが、娘の貴子が10歳を迎える日に異変が起こりました。 
その日、八千代は両親の元へ出かけており、家には貴子と夫だけでした。 
用事を済ませ、夜になる頃に八千代が家に戻ると、信じられない光景が広がっていました。 
何枚かの爪が剥がされ、歯も何本か抜かれた状態で貴子が死んでいたのです。 
家の中を見渡すと、しまっておいたはずの貴子の隠し名を書いた紙が床に落ちており、
剥がされた爪と抜かれた歯は貴子の鏡台に散らばっていました。 
夫の姿はありません。 
何が起こったのかまったく分からず、娘の体に泣き縋るしか出来ませんでした。 
異変に気付いた近所の人達がすぐに駆け付けるも、八千代はただずっと貴子に泣き縋っていたそうです。 
状況が飲み込めなかった住民達は、ひとまず八千代の両親に知らせる事にし、
何人かは八千代の夫を探しに出ていきました。 
この時、八千代を一人にしてしまったのです。 
その晩のうちに、八千代は貴子の傍で自害しました。 

住民達が八千代の両親に知らせたところ、現場の状況を聞いた両親は落ち着いた様子でした。
「想像はつく。八千代から聞いていた儀式を試そうとしたんだろ。
 八千代には詳しく話したことはないから、断片的な情報しか分からんかったはずだが、
 貴子が10歳になるまで待っていやがったな」
と言って、八千代の家へ向かいました。 
八千代の家に着くと、さっきまで泣き縋っていた八千代も死んでいる…
住民達はただ愕然とするしかありませんでした。 
八千代の両親は終始落ち着いたまま、
「わしらが出てくるまで誰も入ってくるな」と言い、しばらく出てこなかったそうです。 

数時間ほどして、やっと両親が出てくると、
「二人はわしらで供養する。夫は探さなくていい。理由は今に分かる」
と住民達に告げ、その日は強引に解散させました。 

それから数日間、夫の行方はつかめないままだったのですが、
程なくして、八千代の家の前で亡くなっているのが見つかりました。 
口に大量の長い髪の毛を含んで死んでいたそうです。 
どういう事かと住民達が八千代の両親に尋ねると、
「今後八千代の家に入ったものはああなる。そういう呪いをかけたからな。 
 あの子らは、悪習からやっと解き放たれた新しい時代の子達なんだ。
 こうなってしまったのは残念だが、せめて静かに眠らせてやってくれ」
と説明し、八千代の家をこのまま残していくように指示しました。 

これ以来、二人への供養も兼ねて、八千代の家はそのまま残される事となったそうです。
家のなかに何があるのかは誰も知りませんでしたが、八千代の両親の言葉を守り、誰も中を見ようとはしませんでした。
そうして、二人への供養の場所として長らく残されていたのです。 

その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊すことになった際、初めて中に何があるかを住民達は知りました。
そこにあったのは私達が見たもの、あの鏡台と髪でした。 
八千代の家は二階がなかったので、玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうです。 
八千代の両親がどうやったのかはわかりませんが、やはり形を成したままの髪でした。 
これが呪いであると悟った住民達は、出来るかぎり慎重に運び出し、新しく建てた空き家の中へと移しました。 
この時、誤って引き出しの中身を見てしまったそうですが、何も起こらなかったそうです。 
これに関しては、供養をしていた人達だったからでは?という事になっています。 
空き家は町から少し離れた場所に建てられ、
玄関がないのは出入りする家ではないから、窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだという事でした。
こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、大人達だけが知る秘密となったのです。 

ここまでが、あの鏡台と髪の話です。 
鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、言葉は隠し名として付けられた名前でした。 

ここから最後の話になります。 
空き家が建てられて以降、中に入ろうとする者は一人もいませんでした。 
前述の通り、空き家へ移る際に引き出しの中を見てしまったため、
中に何があるかが一部の人達に伝わっていたからです。 
私達の時と同様、事実を知らない者に対して過剰に厳しくする事で、何も起こらないようにしていました。 
ところが、私達の親の間で一度だけ事が起こってしまったそうです。 
前回の投稿で、私と一緒に空き家へ行ったAの家族について、少しふれたのを覚えていらっしゃるでしょうか。 
Aの祖母と母がもともと町の出身であり、結婚して他県に住んでいたという話です。 
これは事実ではありませんでした。

子供の頃に、Aの母とBの両親、そしてもう一人男の子(Eとします)を入れた四人であの空き家へ行ったのです。
私達とは違って夜中に家を抜け出し、わざわざハシゴを持参して二階の窓から入ったそうです。 
窓から入った部屋には何もなく、やはり期待を裏切られたような感じでガクッとし、隣にある部屋へ行きました。
そこであの鏡台と髪を見て、夜中という事もあり凄まじい恐怖を感じます。 
ところが、四人のうちA母はかなり肝が据わっていたようで、
怖がる三人を押し退けて近づいていき、引き出しを開けようとさえしたそうです。 
さすがに三人も必死で止め、その場は治まりますが、問題はその後に起こりました。 
その部屋を出て恐る恐る階段を降りると、またすぐに恐怖に包まれます。 
廊下の先にある鏡台と髪。
この時点で三人はもう帰ろうとしますが、A母が問題を引き起こしてしまいました。 
私達の時のD妹のように、引き出しを開け中のものを出したのです。 
A母が取り出したのは、一階の鏡台の一段目の引き出しの中の『紫逅』と書かれた紙で、
何枚かの爪も入っていたそうです。 
さすがにやばいものではと感じた三人は、A母を無理矢理引っ張り、紙を元に戻して帰ろうとしますが、
じたばたしてるうちに棒から髪が落ちてしまったそうです。 
空き家の中で最も異様な雰囲気であるその髪にA母も触れる勇気はなく、四人はそのままにして帰ってきてしまいました。

それから二,三日はそのまま放っておいたらしいですが、親にバレたら…という気持ちがあったので、
元に戻しに行く事になります。 
B両親はどうしても都合があわなかったため、A母とE君の二人で行く事になりました。

夜中に抜け出し、ハシゴを使って二階から入ります。 
階段を降り、家から持ってきた箸で髪を掴んで何とか棒に戻しました。 
「さぁ早く帰ろう」とE君は急かしましたが、
ホッとしたのかA母はE君を怖がらせようと思い、今度は二段目の引き出しを開けたのです。 
『紫逅』と書かれた紙と、何本かの歯が入っていました。 
あまりの恐怖にE君は取り乱し泣きそうになっていたのですが、
A母はこれを面白がってしまい、E君にだけ中が見えるような態勢で三段目の引き出しを開けたそうです。 
E君が引き出しの中を見たのはほんの数秒ほどでした。 
「何があった??」とA母が覗き込もうとした瞬間、ガンッ!!と引き出しを閉め、
ぼーっとしたまま動かなくなりました。 
A母はE君が仕返しにふざけてるんだと思ったのですが、
何か異常な空気を感じ、突然怖くなって一人で帰ってしまったのです。 

家に着いてすぐに母親に事情を話すと、母親の顔色が変わり異様な事態となりました。 
E君の両親などに連絡し、親達がすぐに空き家へ向かいます。 
数十分ぐらいして、家で待っていたA母は、親達に抱えられて帰ってきたE君を少しだけ見ました。 
何かを頬張っているようで、口元からは長い髪の毛が何本も見えていたそうです。 
この後B両親も呼び出され、親も交えて話したそうですが、E君の両親は三人に何も言いませんでした。 
ただ、言葉では表せないような表情でずっとA母を睨み付けていたそうです。 

この後、三人はあの空き家にまつわる話を聞かされました。 
E君の事に関しては、私達に言ったのと全く同じ事を言われたようでした。 
そして、E君の家族がどこかへ引っ越していくまでの一ヵ月間ぐらいの間、
毎日A母の家にE君の両親が訪ねてきていたそうです。 
この事でA母は精神的に苦しい状態になり、見かねた母親が他県の親戚のところへ預けたのでした。 
その後A母やE君がどうしていたのかはわかりませんが、A母が町に戻ってきたのはE君への償いからだそうです。

以上で話は終わりです。
最後に、鏡台の引き出しに入っているものについて。 

空き家には一階に八千代の鏡台、二階に貴子の鏡台があります。 
八千代の鏡台には、一段目は爪、二段目は歯が、隠し名を書いた紙と一緒に入っています。 
貴子の鏡台は、一,二段目とも隠し名を書いた紙だけです。 
八千代が『紫逅』、貴子が『禁后』です。 

そして問題の三段目の引き出しですが、中に入っているのは手首だそうです。 
八千代の鏡台には八千代の右手と貴子の左手、貴子の鏡台には貴子の右手と八千代の左手が、
指を絡めあった状態で入っているそうです。 
もちろん、今現在どんな状態になっているのかはわかりませんが。 
D子とE君はそれを見てしまい、異常をきたしてしまいました。 
厳密に言うと、隠し名と合わせて見てしまったのがいけなかったという事でした。 
『紫逅』は八千代の母が、『禁后』は八千代が実際に書いたものであり、
三段目の引き出しの内側には、それぞれの読み方がびっしりと書かれているそうです。 
空き家は今もありますが、今の子供達にはほとんど知られていないようです。 
娯楽や誘惑が多い今では、あまり目につく存在ではないのかも知れません。 
地域に関してはあまり明かせませんが、東日本ではないです。 

それから、D子のお母さんの手紙についてですが、これは控えさせていただきます。
D子とお母さんはもう亡くなられていると知らされましたので、私の口からは何もお話出来ません。

【洒落怖】【怖い話】禁后「その①」

私の故郷に伝わっていた『禁后』というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では『パンドラ』と呼ばれていました。

私が生まれ育った町は、静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などもない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、田んぼが延々と続く道にぽつんと建っている、一軒の空き家です。
長らく誰も住んでいなかったようでかなりボロく、古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのですが、目を引く理由がありました。

一つは、両親など町の大人達の過剰な反応。
その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
どの家の子供も同じで、私もそうでした。
もう一つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が無かったのです。
以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?
わざわざ窓やガラス戸から出入りしてたのか?
そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた『パンドラ』という呼び名も相まって、
当時の子供達の一番の話題になっていました。(この時点では、『禁后』というものについてまだ何も知りません)

私を含め大半の子は、何があるのか調べてやる!と探索を試みようとしていましたが、
普段その話をしただけでも親達があんなに怒るというのが身に染みていたため、なかなか実践できずにいました。
場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
たぶん、みんな一度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。
しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。

私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、
ある男子がパンドラの話に興味を持ち、「ぜひ見てみたい」と言いだしました。名前はAとします。
A君の家は、お母さんがもともとこの町の出身で、他県に嫁いでいったそうですが、
離婚を機に、実家であるお祖母ちゃんの家に戻ってきたとのこと。
A君自身はこの町は初めてなので、パンドラの話も全く知らなかったようです。
その当時私と仲の良かったB君・C君・D子の内、B君とC君が彼と親しかったので、
自然と私達の仲間内に加わっていました。
五人で集まってたわいのない会話をしている時、私達が当たり前のようにパンドラという言葉を口にするので、
気になったA君がそれに食い付いたのでした。
「うちの母ちゃんとばあちゃんもここの生まれだけど、その話聞いたらオレも怒られんのかな?」
「怒られるなんてもんじゃねえぜ?うちの父ちゃん母ちゃんなんか、本気で殴ってくるんだぞ!」
「うちも。意味わかんないよね」
A君にパンドラの説明をしながら、みんな親への文句を言い始めます。

ひととおり説明し終えると、一番の疑問である「空き家に何があるのか」という話題になりました。
「そこに何があるかってのは、誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし、聞いたら怒られるし。知ってんのは親達だけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠してるのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」
Aは意気揚揚と言いました。
親に怒られるのが嫌だった私と他の三人は、最初こそ渋っていましたが、
Aのノリにつられたのと、今までそうしたくともできなかったうっぷんを晴らせるということで、結局みんな同意します。
その後の話し合いで、いつも遊ぶ時によくついてくるDの妹も行きたいという事になり、
六人で日曜の昼間に作戦決行となりました。

当日、わくわくした面持ちで空き家の前に集合。
なぜか各自リュックサックを背負って、スナック菓子などを持ち寄り、みんな浮かれまくっていたのを覚えています。
前述のとおり、問題の空き家は田んぼに囲まれた場所にぽつんと建っていて、玄関がありません。
二階建の家ですが窓まで昇れそうになかったので、中に入るには一階のガラス戸を割って入るしかありませんでした。
「ガラスの弁償ぐらいなら大した事ないって」
そう言ってA君は思いっきりガラスを割ってしまい、中に入っていきました。
何もなかったとしてもこれで確実に怒られるな…と思いながら、みんなも後に続きます。

そこは居間でした。
左側に台所、正面の廊下に出て左には浴室と突き当たりにトイレ、右には二階への階段と本来玄関であろうスペース。
昼間ということもあり明るかったですが、玄関が無いせいか廊下のあたりは薄暗く見えました。
古ぼけた外観に反して中は予想より綺麗…というより何もありません。
家具など物は一切なく、人が住んでいたような跡は何もない。
居間も台所も、かなり広めではあったもののごく普通。
「何もないじゃん」
「普通だな?何かしら物が残ってるんだと思ってたのに」

何もない居間と台所をあれこれ見ながら、男三人はつまらなそうに持ってきたお菓子をボリボリ食べ始めました。
「てことは、秘密は二階かな」
私とD子は、D妹の手を取りながら二階に向かおうと廊下に出ます。
しかし、階段は…と廊下に出た瞬間、私とD子は心臓が止まりそうになりました。
左にのびた廊下には途中で浴室があり、突き当たりがトイレなのですが、
その間くらいの位置に鏡台が置かれ、真前につっぱり棒のようなものが立てられていました。
そして、その棒に髪がかけられていたのです。
どう表現していいかわからないのですが、カツラのように髪型として形を成したものというか、
ロングヘアの女性の後ろ髪が、そのままそこにあるという感じです。(伝わりにくかったらごめんなさい)
位置的にも、平均的な身長なら大体その辺に頭がくるだろうというような位置で棒の高さが調節してあり、
まるで『女が鏡台の前で座ってる』のを再現したみたいな光景。
一気に鳥肌が立ち、「何何!?何なのこれ!?」と軽くパニックの私とD子。
何だ何だ?と廊下に出てきた男三人も、意味不明な光景に唖然。
D妹だけが、「あれなぁに?」ときょとんとしていました。
「なんだよあれ?本物の髪の毛か?」
「わかんない。触ってみるか?」
A君とB君はそんな事を言いましたが、C君と私達は必死で止めました。
「やばいからやめろって!気持ち悪いし絶対何かあるだろ!」
「そうだよ、やめなよ!」
どう考えても異様としか思えないその光景に恐怖を感じ、ひとまずみんな居間に引っ込みます。
居間からは見えませんが、廊下の方に視線をやるだけでも嫌でした。
「どうする…?廊下通んないと二階行けないぞ」
「あたしやだ。あんなの気持ち悪い」
「オレもなんかやばい気がする」
C君と私とD子の三人は、あまりに予想外のものを見てしまい、完全に探索意欲を失っていました。
「あれ見ないように行けばだいじょぶだって。二階で何か出てきたって、階段降りてすぐそこが出口だぜ?
 しかもまだ昼間だぞ?」
AB両人はどうしても二階を見たいらしく、引け腰の私達三人を急かします。
「そんな事言ったって…」
私達が顔を見合わせどうしようかと思った時、はっと気付きました。
「あれ?D子、○○ちゃんは?」
「えっ?」
全員気が付きました。D妹がいないのです。
私達は唯一の出入口であるガラス戸の前にいたので、外に出たという事はありえません。
広めといえど居間と台所は一目で見渡せます。
その場にいるはずのD妹がいないのです。
「○○!?どこ!?返事しなさい!!」
D子が必死に声を出しますが、返事はありません。
「おい、もしかして上に行ったんじゃ…」
その一言に、全員が廊下を見据えました。
「やだ!なんで!?何やってんのあの子!?」
D子が涙目になりながら叫びます。
「落ち着けよ!とにかく二階に行くぞ!」
さすがに怖いなどと言ってる場合でもなく、すぐに廊下に出て階段を駆け上がっていきました。

「おーい、○○ちゃん?」
「○○!いい加減にしてよ!出てきなさい!」
みなD妹へ呼び掛けながら階段を進みますが、返事はありません。
階段を上り終えると、部屋が二つありました。どちらもドアは閉まっています。
まずすぐ正面のドアを開けました。その部屋は、外から見たときに窓があった部屋です。
中にはやはり何もなく、D妹の姿もありません。
「あっちだな」
私達はもう一方のドアに近付き、ゆっくりとドアを開けました。
D妹はいました。
ただ、私達は言葉も出せずその場で固まりました。
その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。
鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった長い後ろ髪。
異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。

「ねえちゃん、これなぁに?」
不意にD妹が言い、次の瞬間とんでもない行動をとりました。
D妹は鏡台に近付き、三つある引き出しの内、一番上の引き出しを開けたのです。
「これなぁに?」
D妹がその引き出しから取り出して、私達に見せたもの…
それは、筆のようなもので『禁后』と書かれた半紙でした。
意味がわからず、D妹を見つめるしかない私達。
この時、どうしてすぐに動けなかったのか、今でもわかりません。
D妹は構わずその半紙をしまって引き出しを閉め、今度は二段目の引き出しから中のものを取り出しました。
全く同じもの、『禁后』と書かれた半紙です。
もう何が何だかわからず、私はがたがたと震えるしか出来ませんでしたが、
D子が我に返り、すぐさま妹に駆け寄りました。
D子ももう半泣きになっています。
「何やってんのあんたは!」
妹を厳しく怒鳴りつけ、半紙を取り上げると、引き出しを開けしまおうとしました。
この時、D妹が半紙を出した後、すぐに二段目の引き出しを閉めてしまっていたのが問題でした。
慌てていたのか、D子は二段目ではなく三段目、一番下の引き出しを開けたのです。
ガラッと引き出しを開けたとたん、D子は中を見つめたまま動かなくなりました。
黙ってじっと中を見つめたまま微動だにしません。
「ど、どうした!?何だよ!?」
ここでようやく私達は動けるようになり、二人に駆け寄ろうとした瞬間、
ガンッ!!と大きな音をたて、D子が引き出しを閉めました。
そして肩より長いくらいの自分の髪を口元に運び、むしゃむしゃとしゃぶりだしたのです。
「お、おい?どうしたんだよ!?」
「D子?しっかりして!」
みんなが声をかけても反応が無い。
ただひたすら、自分の髪をしゃぶり続けている。
その行動に恐怖を感じたのかD妹も泣きだし、ほんとうに緊迫した状況でした。
「おい!どうなってんだよ!?」
「知らねえよ!何なんだよこれ!?」
「とにかく外に出てうちに帰るぞ!ここにいたくねえ!」

D子を三人が抱え、私はD妹の手を握り急いでその家から出ました。
その間もD子は、ずっと髪をびちゃびちゃとしゃぶっていましたが、
どうしていいかわからず、とにかく大人のところへ行かなきゃ!という気持ちでした。

その空き家から一番近かった私の家に駆け込み、大声で母を呼びました。
泣きじゃくる私とD妹、汗びっしょりで茫然とする男三人、そして奇行を続けるD子。
どう説明したらいいのかと頭がぐるぐるしていたところで、声を聞いた母が何事かと現われました。
「お母さぁん!」
泣きながらなんとか事情を説明しようとしたところで、母は私と男三人を突然ビンタで殴り怒鳴りつけました。
「あんた達、あそこへ行ったね!?あの空き家へ行ったんだね!?」
普段見たこともない形相に、私達は必死に首を縦に振るしかなく、うまく言葉を発せませんでした。
「あんた達は奥で待ってなさい。すぐみんなのご両親達に連絡するから」
そう言うと母はD子を抱き抱え、二階へ連れていきました。

私達は言われた通り、私の家の居間でただぼーっと座り込み、何も考えられませんでした。
それから一時間ほどはそのままだっと思います。

みんなの親たちが集まってくるまで、母もD子も二階から降りてきませんでした。
親達が集まった頃にようやく母だけが居間に来て、ただ一言、
「この子達があの家に行ってしまった」と言いました。
親達がざわざわとしだし、みんなが動揺したり取り乱したりしていました。
「お前ら!何を見た!?あそこで何を見たんだ!?」
それぞれの親達が一斉に我が子に向かって放つ言葉に、私達は頭が真っ白で応えられませんでしたが、
何とかA君とB君が懸命に事情を説明しました。
「見たのは鏡台と変な髪の毛みたいな…あと、ガラス割っちゃって…」
「他には!?見たのはそれだけか!?」
「あとは…何かよくわかんない言葉が書いてある紙…」
その一言で急に場が静まり返りました。と同時に、二階からものすごい悲鳴。
私の母が慌てて二階に上がり、数分後、母に抱えられて降りてきたのはD子のお母さんでした。
まともに見れなかったぐらい涙でくしゃくしゃでした。
「見たの…?D子は引き出しの中を見たの!?」
D子のお母さんが私達に詰め寄りそう問い掛けます。
「あんた達、鏡台の引き出しを開けて、中にあるものを見たか?」
「二階の鏡台の三段目の引き出しだ。どうなんだ?」
他の親達も問い詰めてきました。
「一段目と二段目は僕らも見ました…三段目は…D子だけです…」
言い終わった途端、D子のお母さんがものすごい力で私達の体を掴み、
「何で止めなかったの!?あんた達友達なんでしょう!?何で止めなかったのよ!?」と叫びだしたのです。
D子のお父さんや他の親達が必死で押さえ、「落ち着け!」「奥さんしっかりして!」となだめようとし、
しばらくしてやっと落ち着いたのか、D妹を連れてまた二階へ上がっていってしまいました。

そこでいったん場を引き上げ、私達四人はB君の家に移り、B君の両親から話を聞かされました。
「お前達が行った家な、最初から誰も住んじゃいない。
 あそこは、あの鏡台と髪の為だけに建てられた家なんだ。
 オレや他の親御さん達が子供の頃からあった。
 あの鏡台は実際に使われていたもの、髪の毛も本物だ。
 それから、お前達が見たっていう言葉。この言葉だな?」
そういってB君のお父さんは紙とペンを取り、『禁后』と書いて私達に見せました。
「うん…その言葉だよ」
私達が応えると、B君のお父さんはくしゃっと丸めたその紙をごみ箱に投げ捨て、そのまま話を続けました。
「これはな、あの髪の持ち主の名前だ。読み方は、知らないかぎりまず出てこないような読み方だ。
 お前達が知っていいのはこれだけだ。金輪際あの家の話はするな。近づくのもダメだ。わかったな?
 とりあえず今日は、みんなうちに泊まってゆっくり休め」
そう言って席を立とうとしたB君のお父さんに、B君は意を決したようにこう聞きました。
「D子はどうなったんだよ!?あいつは何であんな…」と言い終わらない内に、B君のお父さんが口を開きました。
「あの子の事は忘れろ。もう二度と元には戻れないし、お前達とも二度と会えない。それに…」
B君のお父さんは少し悲しげな表情で続けました。
「お前達はあの子のお母さんから、この先一生恨まれ続ける。
 今回の件で誰かの責任を問う気はない。
 だが、さっきのお母さんの様子でわかるだろ?お前達はもうあの子に関わっちゃいけないんだ」
そう言って、B君のお父さんは部屋を出ていってしまった。
私達は何も考えられなかった。
その後どうやって過ごしたかもよくわからない。
本当に長い1日でした。

それからしばらくは普通に生活していました。
翌日から私の親もA達の親も一切この件に関する話はせず、D子がどうなったかもわかりません。
学校には一身上の都合となっていたようですが、一ヵ月程してどこかへ引っ越してしまったそうです。
また、あの日、私達以外の家にも連絡が行ったらしく、あの空き家に関する話は自然と減っていきました。
ガラス戸などにも厳重な対策が施され、中に入れなくなったとも聞いています。
私やA達はあれ以来一度もあの空き家に近づいておらず、D子の事もあってか疎遠になっていきました。
高校も別々でしたし、私も三人も町を出ていき、それからもう十年以上になります。

ここまで下手な長文に付き合ってくださったのに申し訳ないのですが、結局何もわからずじまいです。
ただ、最後に…
私が大学を卒業した頃ですが、D子のお母さんから私の母宛てに手紙がありました。
内容はどうしても教えてもらえなかったのですが、
その時の母の言葉が意味深だったのが、今でも引っ掛かっています。

「母親ってのは、最後まで子供の為に隠し持ってる選択があるのよ。
 もし、ああなってしまったのがあんただったとしたら、私もそれを選んでたと思うわ。
 それが間違った答えだとしてもね」

【洒落怖】【怖い話】同級生

連休で実家の奈良に帰ったときの話なんだけど。 
元々すっげえ過疎がすごい村出身で中学のときとか 
クラスは1つで20人満たないというまあド田舎だった 
んだよ。でも町の人とかそれだとクラスみんな 
仲良しとか高校のときや大学のときも言われるんだけど 
全然そんなことなく高校でバラバラになって連絡なんか 
取らないというか取れないとかが現実なんだよね。だから 
と言ったら言い訳になるんだけどクラスメイトの顔なんて 
覚えてないのよ割と本気で。で、ここからが体験した話に 
なるんだけど 

実家に帰ると姉ちゃんも帰ってきてたのよ。まあそれで他愛のない世間話と 
上司の嫌味とか言い合って盛り上がったりしてた。で昼くらいにおかんが 
「買い物行ってくる」といい家で姉ちゃんと二人きりになったすぐに玄関の 
チャイムが鳴ったのよ。 

郵便かと思い玄関にでたら男の人が立っていて 
「ひさしぶり」と声をかけられたんだよ。 
俺もホントなさけないんだけど誰かわからず「えーとどちら様で?」 
と言うと相手は「中学の一緒だったAだ」といってきた。 


俺も薄情な人間でそれでも?状態だったんだけどだんだん思いだして 
きたのよ。中学のときAと担任に怒られまくった日々を。で俺もなんか 
変にテンションが上がってAに中に「久しぶりやなあ中入って話をしよう」と 
といいAを家にあげた 

で姉ちゃんもなんか笑えるくらいテンション上がって姉弟そろってAを 
おいて盛り上がってた。ただなんていうか俺も姉ちゃんも「なんかAが暗い」 
って感じたのよ。ただでさえクラスでぎゃーぎゃー騒いでた方だったのに。 

それと俺がいま書いてる文章なみにしゃべり方がおかしいのよ。なんか 
ロボットみたいに一言ずつわけて話しているみたいな感じで。まるで一回 
使った言葉?単語?を使うなみたいなルールがあるみたいにはっきり言えば 
気味悪いみたいな印象は受けた 

まあそれでも昔話で盛り上がってたんだけど近況を聞くと黙るんだよね 
ピタッと話が止まる。大学までの話は楽しそうに話すのに。まあ不景気だし 
あんま言わないほうがとみんな思うかもしれんが普通それだったら友人の実家 
に来たりはせんだろ嫌でもそういう話になるわけだし。それで段々話のネタが 
ねえ!と心で思い出してたときまたチャイムが鳴ったのよ。 

でまた俺が行ったらうちの法事とかに来てくれてる和尚さんが「やっほー、さしぶりやなあ」 
と立っていた。旅行で北海道行ってきたからお土産と言って蟹やらお菓子を持ってきたとのことだった 
持ってきたとのことだった。そしたら急に和尚さんが「臭い」と言い出したのよ。さすがに
失礼やでと俺も言ったんだけど和尚さんの顔がものすごい真面目な顔になってた。俺もびっくりした 
くらいに。すると和尚さんが「誰か来てるんか?」と聞いてきた。普通に中学の同級生が来てると 
伝えると何も言わずに家に上がりこんで来たのよ。 

俺も???となったんだけど数珠を取り出しててただ事じゃねえなと思いAがいる 
部屋まで案内してたら姉ちゃんが泣きながら俺らのところに走ってきた。 

「どうした!」と和尚さんと俺が言うと姉ちゃんは「Aの顔が回った」 
さすがに俺も「嘘でも面白くないで」と言ったんだけど姉ちゃんは「本当やって!」と泣きくずれてしまった 

そうこうとやってるうちに部屋について和尚さんがドアを開けた、、、 
今でもというか頭に焼き付いてしまったよ。 

首をひたすらゆらしてるAがいた。もうゆらすってレベルじゃないくらい。本当にありえない 
スピードで。 
俺も姉ちゃんも悲鳴をあげてしまった。だってある程度首を動かしたら 
今度は顔とか首を有り得ない方向に回すんだもんそれこそエクソシストみたいに。 

和尚さんを見ると普段法事とかで使う念仏?と違う何かをぶつぶつ言っていた。そのおかげか知らん 
がA?は俺らに襲い掛かってくることはなかった。 

すこし俺も落ち着いたんだけどそしたら今度は部屋から匂う異臭で気分 
が悪くなった。これもすごくて魚が腐ってもこんな匂いしねえぞと思って 
しまうくらいな匂いだった。 

俺はA?を凝視したたんだがなんか口元は動いているのは分かったんだけど 
何言ってるのかは残念だがわからなかった(というかそんな余裕がなかった) 
でもなんか苦しんでる様には見えた。

段々和尚さんの念仏?が効いたのかA?が半透明になった。もう驚きすぎて俺らも逆に 
冷静になってしまったんだがそしたらA?から今度は話してる言葉が分かった。 

女性に対する(名前はさすがに書けんがたぶん女の名前だと思う)これでもかというくらいの 
恨み節だった。そしてそれは効いたこともないような叫び声に変わった。 

和尚さんが「耳ふさげ!」と怒鳴ってきたのであわてて耳をふさいだがもう意味がないくらいの 
絶叫だった。 

絶叫で本当に耳が痛くて思わず伏せてしまったんだが和尚さんに「もう大丈夫や」と言われ
顔を上げるともうA?はそこにはいなかった。でも異臭はこれでもかというくらいに 
残っていたのであれが幻覚とかではないというのも嫌でも分かったけどね。 

姉ちゃんは和尚さん和尚さんにあれは何ですか?と尋ねると和尚さんは「A君やったなあれの名前。まあAにしとこか」 
といいゆっくり話し始めた。 


和尚さん曰く「Aは自殺したんだろう。それも首吊りで。それで死ぬ直前の形で俺くんらの前 
に出てきたんだろう」と。でもそうしたらさクラス全員に出るのかと俺も真顔で和尚さんにいったら 
「自殺するとき本当は自殺したくない、止めてほしいという気持ちがAにはあったんだろうな。その止めて 
ほしい人に俺君がいたんだろうな」と和尚さんは言った。 

そうこう話しているうちにおかんも帰ってきて結局和尚さんも話しをあっさりきりあげてそれで帰ってしまった。 
帰る間際に今日のことは気にするなとAのことはもう忘れろとのことだった。 

おかんは「え~何あったんよ~」と言ってきたが話す気にもなれんかった。 
おかんには止められたが結局その日だけ実家に泊まり次の日にはもう実家をでた。 
姉ちゃんにいたってはその日のうちにだった。 

これが俺がこの連休中に体験したことです。結局Aのことは調べるのはやめました。 
なんかまた来るんじゃないかと思って。でもあの首の振り方だけは少しではなく 
かなりトラウマになりました。こういう現象?詳しい人はなんでもいいから教えて 
ほしいです。

【洒落怖】【怖い話】婆さんと犬

去年の夏の話。 
友達とレンタカー借りて海行った帰り、まだ車を返すまでに時間があったから、適当な場所に車止めて喋ってようってなった。 
大きなメイン道路に歩道を挟んで住宅地があるような場所で、歩道脇に車を止めた。 
時間はたぶん夜の9時すぎくらいだったと思う。 
外はもちろん真っ暗だったけど、外灯の明かりはあったから、人が歩道をあるいてたら、わかるような状態。 
俺は友達の助手席に座ってちょっとぼーっとしてたんだけど、 
住宅地の方から、腰の曲がったお婆さんが出てくるのが見えた。 

結構な夜だし、こんな夜にお婆さん??と思って、俺はそのままなんとなーく、そのお婆さんを見てたんだけど、 
よく見ると、手に紐を持って、白い”何か”を引きずってるんだよ。 

ずるっずるっずるずるずるっ 

て感じ。 
え?何??何持ってるの? 
と思ってよーく目を凝らすと、お婆さんの持ってるのはリードで、白いのはシーズーっぽい犬だった。 
で、犬は犬でも、あきらかに、様子がおかしいんだよ。 
さっきも言ったように、引きずられてんの。ずるずるって。 

それで、もっとよーく見てみると、その犬、首がだらーんって垂れてて、足がいろんな方向に曲がってて、完全に死んでんだよ。 
もちろんピクリともしない。 

でも、お婆さんは犬が死んでるのに気づいてないみたいで、何でコイツ歩かないんだよ? 
って感じで、執拗に引きずってんの、ずるずるずるずる。 

そんでそのおばあさん、何すんのかなー?って見てたら、犬の死骸を引きずりながら大きな道路の端まで出て、手を上げ出したんだわ。 
ヒッチハイクかタクシーか、、、とにかく車に乗りたいらしい。 

犬の具合が悪いことだけは理解して、病院に連れて行くつもりなのか?? 
にしても、こんな夜にあいてる動物病院があるのか?だし、すでに死んでいるのは明らか。
真意は分からないが、何台かのタクシーに無視されながらも、 
ようやく一台のタクシーがお婆さんの前に止まった。 
ほんとに、こんな不気味なばあさんなのに、よく止まったなぁと思った。

そして、そのお婆さんは、ずるっずるずるって犬を引きずりながらタクシーに乗り込んで、
そのまま何処かに去って行った。 
だらんとした首が、タクシーに乗りこむ際に引っ張りあげられて、今にもちぎれそうな感じだったのがものすごく不気味だった。 
タクシーって犬乗せてよかったっけ??しかも、死んでるし。ほんとによく乗せたよ、あのタクシー。 

とにかくそのままそのタクシーは去って行って、結局そのばあさんがどうなったかわからない。 
落ちが微妙だが、本当に体験した話で、人生の中で一番不気味な体験だった。

【洒落怖】【怖い話】人のようなもの

今住んでるマンションが定期改修中で、壁を全部塗り替えるとかで足場が組まれたうえに窓を全部ビニールで養生され、全く外が見えない状態。 
半透明ビニールでの養生だからある程度の光は入ってくるけど、すぐそこの足場を工事の人がうろうろするからカーテンも閉めないと落ち着かないし、本当に暗いし鬱陶しい。 

せめて夜はカーテンだけでも開けてるんだ。 
もちろん真っ暗で何も見えないけど。 

そんな状態で、昨日の晩のこと。 
夜更かししてしまって朝の4時過ぎ位かな、そろそろ寝ようと思って部屋の灯りを消したんだ。 
そしたら、窓の方がぼんやり明るい。 
外は真っ暗だし、夜には工事の人も当然いないし、灯りなんてあるわけないんだけど。 

一度外した眼鏡をかけなおして、よく見ようと窓を振り向いたら、 


べったり人型の何かが貼りついてた。 

ぼんやり光ってるのはそいつの体。夜光塗料を塗ったみたいな、ちょっと緑がかった光。 
肌に半透明のビニールがくっついて、妙な皺感があった。 
長袖のTシャツの様なものを着て、下半身はよくわからなかった。 

ほっぺたも鼻も口もべったりくっつけてるんだけど、目の感じはよくわからなくて、でもまだ目は合ってないって感じた。 
こっちに気付かれたらまずい!と思って、ゆっくり視線をそいつの顔から外し、でもそいつの体の一部が見える状態にして(もしそいつがちょっとでも動いたらダッシュで逃げるつもりだった)、ワンルームの部屋から出て玄関の方に行き、そのまま様子を伺ってた。 

玄関からも、窓の光はぼんやり見えてたから、それが消えるまでそこに居ようと思ったんだ。何かあったら玄関から逃げられるように。 
音がするのが怖くてドアチェーンはかけたままだったけど、鍵はゆっくり外して、何かあればすぐ外して飛び出す気満々だった。 


暫く部屋の方を見てたら、ふっと光が消えた。 
ほっとしたけど、当然今度は真っ暗で、別の恐怖が襲ってきた。 
今電気点けたらやつに気付かれるかも。 
でもこの暗い状態で、やつがまだ待ち構えてるかも知れない部屋に戻るのも怖い。 
さっき冷静に逃げたつもりだったけどやっぱりちょっとパニクってて、携帯も部屋に置いてきてしまってた。 

怖さで暫く逡巡したけど、もう部屋中の電気点けてカーテン閉めて今日は寝よう!と決意し、まず玄関の電気を点けた。 

そしたら、 
ガラガラバシャーン!!みたいな音(廊下をすごい勢いで何かが走ってきて転んだみたいな音)が聞こえて、ついでドアをバンバンバン!!!って物凄い勢いで叩かれた。 
自分は玄関とすぐそこのユニットバスの電気つけたばっかりで、そのまま腰抜かしてしまった様になって動けなくなった。 

ドアを激しく叩かれた後、ドアノブが回って、ドアがさっきまでの激しさが嘘みたいにゆっくり開いた。
そう言えばさっき逃げたくて鍵を開けたんだった。。と何処か冷静に考えたけど、全く動けなくて、ただそれを見ていた。 

ドアはチェーンをしたままだったから、すぐ止まった。そしたら暫く音が止まって、隙間からあの光る手と顔が覗いた。 

さっき窓に貼りついてた時は気づかなかったけど、普通の人間よりかなり大きかった。 
ドアの隙間から鼻と口、そんで太い指をねじ込もうとしていた。大き過ぎて指も数本しか入らなくて、チェーンに引っ掛けて外そうとしてるけど、うまく触れないみたいだった。 
こっちを覗き込んでくるわけでもなく、ひたすら鼻と口、つまり顔の中心から押し入ろうとするみたいにぐりぐりねじ込んできて、でも当然入るわけない。 

これが、不思議な位無音の状態で続いた。ドアだけが押し付けられるたびにチェーンとこすれてガチャガチャいってたけど、それでもそんな激しい感じではなく、ゆっくり…。 
顔と指がゆっくり押し入ろうとする度に、ガチャ…ガチャ…みたいな感じでゆっくり鳴って、めっちゃ怖くて腰抜けてるんだけど、どこか現実感がなくて映画をみているような感じだった。 

どれ位の時間だったかわからない。 
鳥の声が聞こえた。 
それで、外が薄っすら明るくなってるのがわかった。 
そしたらその顔がふっとドアから離れて、指も抜けて、そのまま静かになった。 

腰が抜けたまま長時間同じ姿勢でいたから体が痛くて、上手く動けなかったけど、何とか立ち上がってドアを閉められるようになるまでもうそいつは現れなかった。 


何が何だかわからない。 
このマンションに住んで一年半、こんな経験どころか金縛りすらあったことはなかった。 
曰くなんて聞いたことないし、改修工事で薄暗い以外の不満を感じたこともない、気に入ってた部屋だった。 

今日明日は会社の友人の家に泊めてもらえることになり、土日のお昼にある程度荷物纏めて一旦実家に帰る。 
大家さんに話も聞きたいけど正直衝撃的過ぎてもうあの部屋に戻る気になれない。多分、引越すことになると思う。

【洒落怖】【怖い話】バスの乗客

少し前バスの運転で、大都市と地方都市を結ぶ高速バスを運転していました。 
いつも最終地1つ手前のバス停でよく話かけられるような気がして、 
気配はするんですが、はっきり聞こえないし、乗客の声が響いてそのように聞こえるのだと思って気にしていませんでした。 

それでその日もいつも通り運行していたんですが、最終のバス停の2名のお客様(女性2名)しか残らない時がありまして。 
1つ手前のバス停を通過する、「コツコツ」とハイヒールで歩くような足音が聞こえました。 
残っている2名のお客様はカジュアルな服装だった覚えがあって、あれ他に乗っていたかなと不思議に思ったんです。 
運転席の左後ろ(通路)で足音が止まったかと思うと「あの、次で降ろしてもらえませ・・・・」 
と小さく女性の声が聞こえました。 
降車場所を乗車中に変えてくださいというのは時々ありますが、 
ブザーを押せばいいことですし、車内での事故は基本的に運転士の責任です。 
「危ないので席に座って・・・」 と声がでかかったのと同時にミラーに目線を移すと、
後ろには誰もおらず、車内ずっと後ろで2名のお客様が談笑中なのが見えました。 

血の気が引くような思いでしたが、最終のバス停に無事到着させ2名のお客様を降ろしました。 
降りた後車内を全て見ましたが、他に誰もませんでした。 

その後、その路線を乗務するにつれてある1台のバスだけが、そこを通る時だけその足音が聞こえるとわかりました。 
私が入社する前に導入したバスなので、事故歴はわかりませんが、少なくとも会社では人が絡むような交通事故は起こしていないようです。 
ただ、そのバスが過去にレンタカーで使用していたそうでして、そのときに何かあったかはわかりません。 
それよりもわざわざ中古バスを導入した社長を恨みましたが・・・。 
(レンタカー車両は安くてもエンジンや変速機が故障しやすい) 

その車両も老朽化で予備車となり、今は駐車場の隅っこで廃車になるのを待つばかりですが、 
出勤時に近くを通るといつも視線がそのバスにいきます。気のせいだと思いますが・・・・。 

【洒落怖】【怖い話】注意

友達と遊んだ時の話なんだけど 
暫く会ってなかった友達と久しぶりに飯でも行こうとなって居酒屋で待ち合わせした。 
俺は仕事で少し遅れそうだとメールすると先に飲んでると返信が来た。 
約束の時間から30分くらい遅れて店に入り、店員に待ち合わせと伝えると仕切りのあるボックス席の方へ案内された。 
あいつはどこかなときょろきょろすると手前の席は頭が二つ見える。 
あ、違うなと思って奥へ行ったら後ろからここだよ!と声を掛けられた。 
振り返るとさっき頭が二つ見えた席で友達が俺を呼んでた。 
不思議に思いながら悪い悪いと席に入ると、やはり友達一人しか居ない。 
見間違えたかと気にせず飲みはじめた。 
暫く飲んでると友達がこないだナンパしてさーと話出した。 
ちょっと変わってる子なんだけど今度おまえも一緒に遊ぼうぜと誘って来た。 
俺は彼女居たし、うーんとか言ってお茶を濁してると友達がちょっと小便ってトイレに立った。 
一人でたまには遊ぼうかなとか折角誘ってくれてるから行こうかなとか考えてると 
「ダメだよ」 
後ろから急に聞こえた。 
えっ?っと思い振り向くと後ろの席で女の子三人組が楽しそうに話をしている。
なんだ…偶然聞こえただけかと思い、また遊び行こうかと思った瞬間 
「行くなよ」 
今度は横から聞こえた。横には若い男四人組がげらげらと大声で笑いながら騒いでいる。
タイミングが良すぎるなと一人で苦笑いしてしまった。 
そこで友達がトイレから戻って来て座ろうと屈んだ。その一瞬、友達の後ろに誰かが立っていた。 
茶髪のギャルっぽい女の子。普通なら可愛いのかも知れないが…目が白目だった。 
咄嗟に目を逸らし、もう一度見直したが女の子はもう居なかった。 
「さっき言ってた子からメールきてさ。」 
何も気づいてない友達がにこにこしながら言う。 
「この後、合流しないかって」 
呆然としていた俺がわかったと言おうと口を開きかけた時 
「絶対いくな!」 
何人かが同時に叫んだような声だった。はっとして周りを見回すと女の子三人組、男四人組の全員が無表情でこっちを見ていた。 
それはほんの一瞬だけですぐまたこっちを気にする風でもなく楽しそうに盛り上がりだした。 
「何きょろきょろしてんの?大丈夫か?」 
友達は怪訝そうな顔でこっちを見ている。 
あぁ大丈夫と言って平静を装ったが手の震えが止まらなかった。 
「で、行くだろ?この後。」 
友達が聞いてくる。俺が彼女から呼び出しが来たから帰ると言うとそうかーと残念そうだったがそれ以上は誘ってこなかった。 
酔いも醒めてしまったのでそろそろ帰ろうと言って席を立った。 
わーパチパチパチ 
と周りの席が何故か同時に拍手していた。 
もうそれも気味が悪くて足早に店を出た。 
すると友達の携帯が鳴った。 
あ、メールだ。と携帯を見た友達が変な顔をしている。 
どうした?と聞くと 
「ナンパした女からメールなんだけど意味わかんなくね?これ。」 
と俺に携帯を見せた。 
そこには"もうひけない"とだけ書いてあった。その後、その女とは連絡が取れなくなったそうだ。 

【洒落怖】【怖い話】鬼

俺が小学6年の頃、両親が離婚した。 
そこから高校生までは親父と祖父母、そして親父が再婚した義母と暮らしていて15歳下の異母兄妹が出来た。 
高2の時、大嫌いだった親父の元を離れて母親に引き取られた。 
親父が居ない時、たまに祖父母に顔見せに行っていて18歳下の異母兄弟が出来たのを知った。 
そのうち祖父が認知症になって亡くなり、間も無く祖母も認知症になってしまった。 
それから十年近く親父に会うこともなかった。 
そして数年前、俺が一人暮らしをしているアパートに突然義母が訪ねてきた。 
正直驚いた。 
同じ市内に住んでいるのだから居場所なんか調べればすぐわかると思うが、今更俺に何の用があるのか。
玄関先で何かと尋ねると義母は助けて欲しいと言う。 
金かと思ったが親父は会社の社長だ。 
俺なんかより金に困る事など無いはずだ。 
仕方ないと思いながら部屋にあげ話を聞くと俺に申し訳ないだの親父の代わりに謝りたいだの言い出した。 
両親の離婚の原因は親父の浮気で相手は再婚した義母だった。 
しかし俺は義母を恨んでも無いしどうでも良かった。 
むしろ古傷に触られる様でイライラした。 
「それだけなら帰ってもらえますか?」 
もう聞きたくなかった俺は義母にそう言った。 
すると義母は泣きそうな顔で妹と弟を助けて欲しいと言う。 
意味が分からない。 
臓器提供か何かかと聞いたが違った。 
義母から聞いた話を纏めると祖母が亡くなってから家に祖父母の霊が出るようになった。 
最初は月に一度あるか無いか程度で恐ろしかったが、何かしてくる訳でもなく放置していた。 
しかし、月日が経つごとに現れる頻度が多くなり祖父母の形相も変わって来た。 
無表情だった顔は般若の様に歪み、普通だった服もいつの間にか死装束になった。 
お寺に供養をお願いしたが全く効果が無かった。 
そして数ヶ月前、寝ている弟が泣き出したので様子を見に行くと、今度は妹の部屋から苦しそうに呻く声が聞こえた。 
慌てて部屋に入るともう人か獣か分からないまでに変貌したそれが妹の首を絞めていたそうだ。 
義母が必死に引き剥がそうとすると消えた。 
親父にも話したが視えない親父に馬鹿な事をと一蹴された。 
れ以降、霊は妹と弟が寝ている時に近くに出るようになってしまった。 
そしてもうひとつ、弟の落書き帳を何気無く見ていた義母はあるページに俺の名前が書いてあるのを見つけた。 
弟は俺のことを知らない。 
まあまあ珍しい名前なので偶然書いたとは考えにくいし、
弟が赤ん坊の時に新築の家を建て引っ越したので俺の名前が書いてある物も家に無い。 
弟に聞くと夜中に誰かがこの名前を呟くらしい。 
「おまえは◯◯(俺の名前)じゃない。◯◯はどこだ。」と。 
このままでは子供が殺されると思った義母は俺の住所を調べて来たのだった。 
一度、家に来てくれと泣きつく義母の頼みを俺はは断った。 
それは親父に会いたくないから。 
すぐ殴る傲慢で嫌味な、しかし外面だけは良い親父は成人するまでいつか殺してやろうと思う程嫌いだったからだ。 
しかし、妹や弟に罪はない。 
「墓参りには行きますよ。」 
そういってお墓の場所と連絡先を聞いて義母に帰って貰った。 

次の休みに祖父母の墓にお参りに行った。 
俺の母親とは折り合いが悪く、親父とも仲が悪かった祖父母だったが初孫の俺は可愛がってくれた優しいじいちゃんとばあちゃんだった。 
線香をあげ手を併せると涙が出た。 
帰ろうと水を汲んだ桶や柄杓を片付けていると、目の前で線香がボキッと折れた。 
風のせいと思ったが嫌な感じがして、俺の顔は青ざめていたのかも知れない。 
お寺に借りた桶を返しに行くとお寺のお坊さんがどこのお参りですか?と声を掛けてきた。 
◯◯の墓ですと言うとちょっと上がってお茶でも飲んで行きなさいと言われ、
さっきの線香の事もあったので素直に頂く事にした。 
お茶を飲みながら色々聞かれた。 
義母が何度か供養を頼んだので、お坊さんも気にかけていたらしい。 
俺は義母に聞いた事をそのまま話した。 
お坊さんは否定も肯定もせず、そうでしたかと言って帰りにお守りをひとつくれた。 
義母に電話して墓参りに行ったとだけ伝えた。 

その夜、夢に祖父母が出てきた。 
襤褸の白い着物を着て乱れた白髪、目は爛々とし口は大きく裂けるその姿はまるで鬼だった。 
俺は子供で何処かに隠れていて、祖父母は俺を探している様だった。 
そのうち、どこからか「見つけた…」 
「違う…」 
「死ね…死ね…」 
と言う低い声と子供の泣き声が聞こえて来て目が覚めた。 
汗で体が冷え震えが止まらなかった。 

翌日、仕事を休み坊さんになった同級生に連絡して会うと全部話した。 
そいつは霊感持ちで高野山からスカウトされて坊さんになったという奴だった。 
彼は黙って聞いて、話が終わるとぽつりぽつりと言った。 
祖父母は俺の事が可愛くて仕方が無く、もう会えないのが心残りのまま亡くなったんだろう。 
それは霊になった後も続いてだんだん心残りが怨みに変わり狂っていったのかも。 
異母姉弟が死ねば、跡取りの俺が帰ってくると思ってるのかも知れないが、
もうまともな理屈も思考も出来ないからただ祟るだけの鬼になったんだと思うと。 
俺はどうしたらいいんだ?と聞くと 
「おまえは大丈夫。血は繋がってるが母親の家系に入った時から母方の先祖に守られてるから。でも妹と弟は知らん。」 
それは…と言うと彼はちょっと黙ってこう言った。 
「なぁ…触らぬ神に祟りなしって言うだろ?」 
俺が黙ると彼は気休めかも知れないが経を上げておくと言ってくれた。 

その後、仕事の都合で引っ越した俺に変わった事は無く義母と連絡も取っていない。

【洒落怖】【怖い話】蠢くそれ”ら”

実家の近くに少し濁った川があるんだが、そこの生態系が色々とやばい。

何がやばいってフナやメダカといった普通の魚から、何処のどいつが放したのやら
でっかいコイだの金魚だの、グッピーやバスの仲間まで泳いでやがる。
魚だけじゃない。ヤマカガシやマムシは土手の草むらに住んでるし、生えてる植物も外来種がほとんど。
夏が近づけばセミやカエルの鳴き声がやむ事はなく、秋から冬にかけてはトンボの群れが道を飛び交う。
去年休暇を利用して帰って来た時は、ヌートリアと川鵜まで住み着いてやがった。

今じゃ珍しい自然の環境だ、何て両親は言ってるけど、はっきり言って魔境です。
業者の手が入らないのが不思議でならない。
俺も子供の頃は網を適当に振るだけでトンボを大量ゲットできる事に喜んでたりもしたが、
地元の大学を出て別の県に引っ越して、ようやく実家近くの異常さに気づいた。

で、数年前の事。夜中に自宅で寝ていたら突然金縛りにあった。
「やばい、目を閉じて何も見ないようにしないと」って反射的に思ったけど、
指一つ動かせないのに、瞼だけは無理矢理に開けられていく感覚があった。
そして開けられた目の先、天井付近で蠢いてるそれを見た瞬間、俺は金縛りで悲鳴が上げられない事に感謝すると同時に。
それでも無理矢理それを見せられたことを呪ったよ。
丑の刻参りってあるだろ、頭に蝋燭付けて左前の白装束着て。手に金鎚と杭を持った奴。
あの格好をした女が、天井付近で「あ゛ぁぁ」とか「う゛ぅぅ」って呻きながら空中でのたうち回ってたんだよ。
でも俺が怖かったのは凄い形相をしてる女じゃなくて、その女の全身に纏わりついてた奴らの方。
脳天から杭を突き出しながら、女の腕に斑模様の蛇が巻き付いていて。
明らかに入らないであろう片足を、黒い鯉みたいな魚が膝まで飲み込んでて。
他にもバッタだのセミだのカエルだのが、頭や身体にウジャウジャくっ付いていて。
もう何ていうか、怖い以前に気持ち悪かった。
女は暫く呻き声を上げながら天井でのたうっていたけど、突然ぱっと身体が動くようになったと同時、いつの間にか消えていた。纏わりついていた生物ごと。

……もしかしたら助けてくれたのかもしれないけど、薄暗い室内であの光景は、
相当心臓に悪い物だったという話。
でも、その一件以来1年に数回は実家に顔を見せてる。

【洒落怖】【怖い話】非常階段のおばさん

俺は現在小さいながら、安定した会社で働いてるんだけど 
前の会社が倒産した後、就職がなかなか決まらず、つなぎでバイトすることにしたんだ。 
ポスティングのバイトなんだけど、普通の家とかに配ったりするのではなく、 
雑居ビル(スナックとかキャバクラとかホストクラブが多い)を中心に出前のチラシを配るというものだった。 
雑居ビルってのは、大抵非常階段と中の階段の2個ついてるビルが多く、廊下が長いので、イメージで言うと学校の配置を 
考えてもらって、お店(教室)がずらーと並んでいて、階段が端と端にある感じを思い浮かべてくれるといいかと思う。 
配り方は、ビルに入ると最初はエレベーターで最上階まで上がって、各階のお店にビラを配って、非常階段か中の階段で 1階ずつ 
おりて1階まで降りていくのを延々と繰り返す。 
ポスティングするのは、お店が閉まってる朝9時ごろから、昼の4時ごろまでなんだけど、 
昼過ぎて、暑くなってきたので汗だらだらで配っていた。 
もちろん電気のついてるビルもあるんだが大概は薄暗いビルが多かった。 
そんな中、○六ビルってのに入って配ってたんだが、9階から8階へ非常階段で降りたんだけど8階のドアが開かなかった。 
こういうのはたまにあるから、戻って中の階段から降りようと思ったんだけど、下から 
「がさがさ」という音が聞こえた。 
階段って、真ん中の部分から下が見える形状の階段があるんだけど、そこから見ると、 
ソバージュというか、ごわごわした髪の毛のおばさんが何か下向いてがりがり音を立てながらなんかしてた。 
こういう時は、マニュアルで「こんにちわ」と挨拶することになっていたので、 
俺が「こんにちわ」と言ったんだ。 
すると、おばさんがすごい速さでこっちを振り向いた時に、 
俺の目に飛び込んだのは、子猫みたいな大きさの毛のついた塊にかぶりついてるおばさんだった。 
やばいと思って、逃げようとしたがその前におばさんが走って下に逃げた。 
おばさんが逃げると同時に、俺も上の階へ逃げた。 
エレベーターまでダッシュで行って飛び乗り、1階を連打した。 
すると4階で止まったから、おばさんがいたら殴ってでも逃げようと思ったが、 
普通の料理人みたいな人が乗ってきて助かった。 
その日でバイトは辞めた。 
俺の人生で怖い思いをしたのはこれだけなんだが、 
これからの人生で雑居ビルの非常階段を使うことは、2度とないと思う。 

【洒落怖】【怖い話】終電

三年前の話。当時21歳の俺は、高卒で就職して3年目に突入していた。 

その会社がいわゆるブラック企業で、技術系に配属された俺は 
月1~2休暇の毎日が8時出勤、殆ど毎日終電帰りという状態でかなり疲れていたので 
今思うと、幻覚、幻聴の類だったのかもしれないと思う。 

その日も、現場での仕事を終えて会社で資料を整理。 
結局資料はまとめきれず、しかし家には帰りたかったので終電で帰宅しようとした。 
するとその日は遅延が発生していたらしく終電ではなかった。 

人のまばらな電車で毎日同じ時間、同じ車両に乗り続けていると 
有る程度見知った顔ぶれというものができる。目が合っても会釈もしない関係だが 
「この人も毎日遅くまで大変だな」くらいにはお互い思っている事だろう。 

その日も座っている客が少なく、いつも座っている場所が空いていたので 
腰を下ろした。気付いたら眠っていたようだ。 

体が揺さぶられている気がして目を覚ました。 
まだそんなに時間が経っているとは思えなかったが 
いつも俺が降りる前の駅で降りている若いサラリーマンの男性が車両に乗っていなかった為 
やってしまった。と思った。他にも見知った顔はいなくなっていたので 
かなり遠くまで来てしまったかもしれない。 

すると、また作業着を引っ張られた。 
振り向くとそこには小学生くらいの女の子が座っていた。 
電車は走り続けていて相変わらず人のまばらな電車の車内ではポツリポツリと 
座って眠っている人がいた。 

「おじさん、どこの人?」 
女の子が話しかけてきた。 
こんな時間にこんな小さい子がいるなんて。と思いつつ 
「○○だよ。」過ぎたであろう駅名を言った。 

次は何駅なんだろう。 
電光掲示板は無いし、電車が止まりそうな気配も無い。 

とにかく次で降りよう。 

「ねぇ。おじさんは何でここにいるの?」 
続いて女の子はこう尋ねてきた。 
変な女の子だなぁと思いつつ 
「乗り過ごしちゃったみたいだね。」と言った 
「ふーん。」 
それきり女の子は黙った。 

それから10分くらい経過したが、一向に電車が止まる様子は無かった。 
イライラしながらも窓の外を眺めていると、段々と白い霧に覆われていった。 
俺は隣にいる小学生に聞いた。 
「ねぇ、この電車はいつ止まるの?」 
「わかんない」 

「君はどこで降りるの?」 
「わかんない」 

元々イライラしていたのが、この会話で恐怖に変わった。付いていない。声をあげても誰もこちらに興味を示さなかった。 

これ、ヤバイ。何か変なことに巻き込まれてる。と 

俺が席を立ち上がろうとすると女の子は俺を掴んできた。 
尋常じゃないほどの力で 
「どこに行くの?どこにも行けないよ?」と言ってきた 

俺は「ひっ」と情けない声を上げると 
ポツンと座っている大人に目線を送った。 
しかし誰もこちらに気付いていない。声をあげても誰もこちらに興味を示さなかった。 

「お兄さんは、ずっと私と一緒だよ」 
小学生は俺にそういうと、無理矢理俺を椅子に座らせようとした。 

が、そこで急に電車が止まった。 
停車駅のようだった。死に物狂いで外に出ようとするが、小学生は俺の体をガッチリガードしていた 

「俺を降ろしてくれ!!」と叫ぶが、女の子は「いいや、駄目だよ」 
と言って動かしてくれない。 

電車のドアが閉まる警笛音が鳴った時、俺はもう人生の終了だと感じた。 

しかしその瞬間に手を差し伸べてくれた人がいた。 
咄嗟のことで顔をしっかり見ることはできなかったが 
服装からいつも同じ電車に座っているOLさんだとわかった。。 

意表をつかれたのか俺の体はするりと小学生から抜け、OLさんと一緒に電車から降りた 

と、同時にドアが閉まる。恨めしそうな顔をして小学生がこちらを睨んでいた。 
そこで確信した。人の形相ではなかった。 

その後ろに、一緒に下りたはずのOLさんも乗っていた。 
相変わらず顔は見えなかったが、手を振ってくれていた。 

そこまでは覚えているが、そこで気を失ってしまったらしい。 

次に目を覚ましたのは病院のベッドだった。 
なんでも、俺がいつも降りる駅の二つ後の駅で倒れていたようだった。 
原因は過労。会社に連絡するとその日は休むようにと言われた。 

夢だったのか・・・?と思いつつ 

その次の日からは、会社の命令も有りもう仕事に復帰していた。 

その後、3日間終電でOLの姿を見かけなかった。 
どうしてもその人の事が気になったので 
俺はいつも同じ電車に乗っているサラリーマンに思い切って話しかけた 

「あの、すみません。」 
「え、ああ。お疲れ様です」 

お互い顔見知りではあったので、特に不振がられもしなかった。 
多少の雑談をして、OLさんの話題に触れた。 

すると、サラリーマンから思いがけない話を聞いた。 

サラリーマンはその日、仕事が少しだけ早く終わり 
数本前の電車に乗ろうとしたそうだ。 
その日はたまたまOLさんも電車待ちをしていたらしく 
こんな事もあるんだなぁと感じたそうです。 

その後は、来た電車にサラリーマンの目の前でOLさんが飛び込み自殺 
その為、結局いつもの終電に乗る事になったそうだ。 

幻覚、幻聴の類であったのかもしれないし 
非常に後味の悪い話ではありますが、俺からの話は以上です。 

【洒落怖】【怖い話】娘と狛犬

5歳になる娘と散歩で立ち寄った神社でおみくじを引き、3回連続で凶が出た 
こんな事もあるのかと驚きながら家に帰ると、嫁が訝しげな顔で言った 
「それ、どうしたの?」 
見ると、娘がいつも抱いていた犬のぬいぐるみが無くなっていて、代わりに神社にあった小さな置物の狛犬を抱いている 

娘に聞くと神社にいた時、宮司姿の男が現れていきなり娘の腕を掴み、何処かへ連れて行こうとしたらしい 
その時、抱いていたぬいぐるみが男に噛み付いて、そのまま男と一緒に消えてしまったと言う 
もちろん私はそんな男には出会ってないし、神社では娘とずっと一緒にいたはずだ 
すぐに神社に問い合わせたが娘が見たような宮司は存在しなかった 

翌日、犬の置物を神社に返しに行った際、待っていた神主が妙な事を言った 
「この狛犬は持っていて下さい。あと2回、必ず娘さんを守ります」 
私はあと2回とは何の事か、誰が娘を狙っているのか尋ねると 
「娘さんは神の供えとして選ばれました。あなたがくじを引いた数だけ災いが起こります」 
それだけ言うと神主は押し黙ってしまい、あとは何を聞いても答えなかった 

その日の夜に1回目の異変が起きた 

自宅の仏間で人の声が聞こえるので見に行くと、5年前に亡くなった母が鎮座してお経を唱えていた 
母は娘を連れに来たと言う 
私はそれだけは止めてくれと頼むと 
母は生前に見せた事もない狂ったような顔で「やかましい」と言って立ち上がり娘の所へ行こうとした 
その時、地響きのような呻り声が聞こえたかと思うと巨大な白い犬が現れ、母の体を咥えて仏壇の中に消えていった 
私が急いで娘の所に行くと、娘は眠っていたが枕元に置いていた狛犬は無くなっていた 

神主は狛犬が2回、娘を守ると言ったはずだが狛犬はもう無い 
私が翌朝、神社に行ってその事を話すと神主は 
「狛犬は二体一対です。もう一体、別の体を成して娘さんの傍に在ると思います」と言う 
私は娘の周辺にあるそれらしき物を捜してみたがなかなか見つからなかった 

2回目の異変は次の日の昼だった 

私が仕事で出かけてる間に、誰かが玄関のチャイムを鳴らした 
嫁が出ると、身長は2mを超えるかという大きな犬のぬいぐるみが玄関先に立っていた 
辺りには生臭い異臭がして、よく見るとそれは娘がいつも抱いていたぬいぐるみにそっくりだった 
嫁は驚いてドアを閉めようとしたが凄まじい力で跳ね返され、ぬいぐるみは家の中に上がりこみ 
台所にいた娘の手を引いて何処かへ連れ去ろうとした 

するとなぜか仕事に行ってたはずの私が四つん這いで走って来てぬいぐるみに突進し 
歯でぬいぐるみをバラバラに噛み千切ったという 
私はその時の記憶が全く無い 

異変はそれ以降起きないが 
私は神社に行ってもおみくじを引くのが怖くなった

【洒落怖】【怖い話】瑞牆山の怪奇

山梨の瑞牆山って山について誰か変な噂とか知らない? 
8/4に登ったんだよ。夕方から登り始めたんだけど、途中で凄い濃霧にあってそこで不思議な体験したんだよね。 
ちなみに登山歴は8年でこんな体験は初めて。携帯からだから書き込み時間かかるかも。 

登り始めたのがログデータで16:43。 
所謂、北面ルート(?)黒森上から登り始めたんです。 
で登り始めて1時間半くらいで滝まできたんですが、ここから先に霧が見えたんですよ。 
まぁ標識もあるし、装備は完璧。ちょっと天候ヤバくなったらビバークすりゃいいかなと思って進んだんだ。 

でもこの判断が間違いだった。 

滝をすぎてから40分くらい。時間で19:01だったのは記憶してる。 
あたりが暗くなってきたし、霧も濃くなってきたのでヘッドライト、携帯ランタンを装備。 
その時に気づいたんだけど前を誰か歩いてるんだよね。時たまライトの光が霧の中から見えるんだ。 
前の人に追いついちゃ悪いから少しゆっくり行こうと思ったわけ。 
その後どんどん霧が濃くなって先行してる人の明かりをたよりに登って行ったんだけど違和感を感じてたんだ。 

自分もペースをかなり遅くしたのにライトっぽいものとの距離がほとんど一定。 
しかも明かりの色が問題で、霧だったし、ボンヤリしてて気にしてなかったけど 
ライトの色が赤黄色っぽいんだよ。普通今時の登山者、特に夜間歩く人ならほとんどの人がLEDだし 
それにヘッドライトにしてはやけに後ろを振り返ってるんだよね。 
まぁ振り返ってくれるから自分から見えてる訳なんだけど。 

その後時計を確認したら21:00を過ぎてて一向に山頂に着く気配もなく、霧も濃いまま。 
さすがにヤバいな。と思い立ち止まって地図とコンパス、GPSで位置を確認したんだ。 

で位置情報。なぜか受信できない。まぁ濃霧で受信できないってことは確かにあるから気にせず、 
じゃあと、高度計使ってだいたいの高度ど山の斜面の方位からどの辺りにいるかを予測してみたんだ。 
そしたら高度1870m、斜面方位が真西。つまり山の真東側にいることになってたんだ。 
もちろん登山道から大きく外れてしまったようなんだ。 

こんな時は動かず朝になるか霧が晴れるのを待つべきだな。と思い野営準備をした。 
その時もその明かりはこっちをちらちら見ているような、そんな風に見えたんだ。霧で反射してるだけだとその時は思ってたけど。 

食事してツェルト張って、少し寝た頃かな?スゴい辺りが明るくなった気がして起きたんだ。 
でも辺りは暗闇。 その中で例のライトもといこの時点でライトじゃないとわかったんだけど、 
明かりがみえていたんだ。こちらが泊まってから向こうも動いていないようだった。 
さすがに怖いから少しだけ移動しよう。と思ってツェルトたたんで、南西の富士見平小屋方向に進んだんだ。 
もう道とか関係なく南西方向にとにかくまっすぐコンパスを使って歩いた。 

その時は体力には余裕があったけど心理的に余裕無かったし、正直山登りであってはならないことしてたんだなって思うよ。 

時計を見たのが1時過ぎてたと思う急にスゴい近くで女性の声が聞こえたんだ。はっきりと。 
「どこにいくの。そっちじゃないよ」 
って。焦って辺りを見回したけど当然誰もいない。さっきまで見えた明かりも見えなくなってたんだ。 

幻聴が聞こえるとかこりゃホントにヤバい事になってきたのと思って小走りになったんだ。さすがに息も上がってきた。 
そしたら見えるんだよ。木々の間からさっきの明かりが。見えている方向は南西方向。 
つまり自分の進行方向。 
でも、今まで道無き道を結構急いできたし、その明かりが突然自分の前に来れるはず無いんだ。 

怖かったけど、どうしようも無かったしとにかく山小屋方向へ急ぐしか無いと思って明かりのある南西の方に急いで進んだんだ。 
何かと遭遇したらヤバいという緊張感と、濃霧、闇という状況から冷静じゃなくなっていて、 
さっきの声が「そっちじゃない」「そっちは危ない」っていろんな方向から聞こえてくるんだ。 
まるで囲まれているかのような、頭の中で響くような。そんな状況が続いて4時前頃かな? 
フラフラになっていた時に足が何か踏んだんだよ。 
そしたら 

「おまえも同じめにあえば良いのに」 

って聞こえて明かりも声もなくなった。 
踏んだのは何かの花束みたいだった。 

そこから霧が少し晴れはじめて辺りも明るくなり、忘れてたGPSも使えたので富士見小屋に避難しました。 

小屋の親父にその話したら瑞牆の霧は異界に繋がっていて、過去に何人か行方不明になってるとか。あとは付近で女性が亡くなってるんだって? 
その人へ花束とか持ってくる人いるのか訪ねたけど相当前の事だから今は場所もわからないとの事。 
真偽はわからないけどね。 

この時点で気づいたのは声は1人じゃなかった事。全て女性の声だった事。 
最後の同じめに・・・の声だけ金切り声みたいな声だった事。 
そして自分が通ってきた斜面が50mで100m近く下るとんでもない勾配だった事。 

自分は何に誘導されてドコを通ってきたのか、そして最後に踏んだ花束みたいなものはまだ新しく、かすかに線香の臭いがした。 
狐にでもつままれたのか? 
とにかく無事に降りれてよかったです。 

ちなみに4日は瑞牆山は晴れ。霧はまったくなかったそうです。 

どなたか瑞牆山のあたりで何かあったとか、霧に関する情報ってお持ちじゃないですか?

【洒落怖】【怖い話】踏切の女の子

小学四年生の時、夜の7時から10時まで週に2回、隣町の学習塾に通っていた。 
隣町に行く間には貨物列車の線路があって踏み切りを渡る必要があったのだけど、 
貨物車は、めったに通ることがなかった。 
なので遮断機が下りることもなく、タイミングがいいのか、いつも踏み切りは素通りであった。 

ある日のこと、塾を終えていつものように自転車で家路を急ぎ、踏み切りの所まで差し掛かった。 
するとその時に限ってチンチンチンチンと鳴りだし自転車の前で遮断機が下りた。 
しょうがないので待っていたのだけど、いっこうに貨物車が通る様子がない。 
数分くらい経っただろうか。 
線路を挟んで反対側の遮断機の向こうに、いつの間にか小さな女の子がポツンと立っていた。 

街灯の明かりに浮かび上がる女の子は真っ赤なワンピースの肩からタスキ掛けに黄色いポシェットをしていて、幼稚園児くらいに見えた。 
俯いているようで、おかっぱ髪が顔にかかり表情まではわからなかった。 
こんな時間に幼稚園児の女の子が一人で?とは思ったがあまり気にも留めず、 
チンチンチンチンと鳴るばかりで、貨物車が通ることもない踏み切りの前で、 
ボーっと立ち往生したまま夜空を見上げて、さらに数分が過ぎた。 

チンチンチンチン、チンチンチンチン・・・空しく鳴り響くだけの音に、 
どうして貨物車が通らないんだろう?遮断機の故障じゃないのかな?と、苛立ち始めていた。 
さらに奇妙なのは、いつもは自動車や人が行き交うはずの場所なのに、辺りに人の気配すらなくなり、 
この何分かの間、女の子以外まったく誰一人も見かけないことに気づいた。 

妙な違和感がした。まわりがやけに暗い。 
夜空はどんよりと雲が拡がっていて月は出ていなかったが、夜だといっても住宅街である。 
各家々の窓明かりがあるのだけど、いつもに比べその明かりがとても薄暗くなってる気がしたのだ。 
それに対比するかのように、自分の真上と女の子の真上にある街灯だけが妙に明々と感じ、 
暗闇の中で、自分たちだけを照らし出すスポットライトのように感じた。 
まるで、その世界に自分と踏み切りの反対側の女の子だけしか居ないのではないかと思うほどだった。 

さすがに、なんか変だなと思い始め、辺りをキョロキョロ見回したあと、目線を踏み切りに戻すと、 
踏み切りの反対側のスポットライトの下からあの女の子まで消えていた。 
さては、あの子も待ちきれなくなって、どこか行ったのかなと、そのときは思った。 

チンチンチンチン!チンチンチンチン!・・・ 
と鳴り響き続ける中、なんだか一人で、この世界に取り残されたような気分になっていた。 
孤独感が襲ってきて背中がゾクゾクと寒気までしてきた。 
貨物車も通りそうもないし、まずいかもしれないけど遮断機を超えて通っちゃおうかなと思った矢先。 
自転車の横をふと見ると、あの女の子がそこに立っていて目が合った。 
その瞳には白目がなく瞳全体がまるで血のように真っ赤だった。 
そして女の子は 

「通っちゃいな」 

と言ってニターッと笑った。 

思わず、後ずさりして、ウワーッ!と声をあげて叫んでしまった。 
見てはいけないものを見てしまったような気がして、顔を横に反らして目を閉じた。 

ほんの数秒も経たないで、そっーと目を開くと、目の前の踏み切りには遮断機は降りていなかった。 
チンチンチンチンという音も消え、かわりに、いつもの住宅街の人の気配と車の騒音に戻っていた。 
どこから現れたのかスーツ姿のおじさんや、おばさんたち数人が踏み切りを渡っていて、 
後ろの道路には自動車が行き交っていた。 

あの女の子は? 
まわりを見回しても、あの女の子はどこにもいなかった。 
え?どうして?なんで? 
いろんな疑問が頭の中を駆け巡り混乱しつつも、その場から離れたくて自転車を押した。 
踏み切りを渡り自転車に飛び乗ると、逃げるようにして家路を急いだ。 

翌日。やはり気になって、学校の帰りに明るいうちにその踏み切りに寄ってみると、 
踏み切りの脇に、花や女の子向けの玩具が供えられていた。 
翌週からは塾の行き帰りには遠回りをして、違う踏み切りを渡ることにしたのだった。 

それからは踏み切りの遮断機が下りることに出くわすことも、あの女の子を見かけることも一度もなかった。

【洒落怖】【怖い話】おかしな風景

おかしな所にいったことならあるな。車でも体験あるし電車でも。 
体験する奴は結構するし、割といるんじゃなかろうか。 
前に電車で異変に気が付いた時が結構怖かった。 

うたた寝から覚めると何か違和感がある。景色は結構な田舎なんだ。レトロな気もする。 
電車は名古屋駅から米原へ向かう最中で、一瞬、関ヶ原辺りかと思う程の田舎な景色が広がる。 
が、こんな景色は見た事がない。どの辺りなのか見当も付かない。 
強い違和感に窓の外を見つめていているとやはり変だ。 

側道がさっぱり見当たら無い。普通線路の脇には公道があるような気がするが、そうとも限らんか・・。
それにしても線路のでき方が強引だ。子供の玩具を床に置いたみたいに。 
しかしそんな事をゆっくり考える余裕の無い異常を見つけてしまった。 
高架が無い、電線が無い。 
普通列車なのに、いったいどうやって疾走ってるんだこの電車は。 
状況を理解しようとしたが、まともな答えが見つからない。 

まるで土地の上に突然現れたレールの上を電車が無理やり走ってる、そんな感じ。 
電車から見える風景は例えば、田畑の中のあぜ道を散歩している時にぼんやり見る風景。 
窓からは見えない、見えてはいけない違和感だらけの風景。やはり視点が低すぎる。 
このまま乗っていて良い訳がない、それだけは直感でわかる。直感でなくても誰でも判るに違いない。 

皆揃いも揃って寝ている、気の抜けた顔だ。 
全く動きがない。何やら異形な物を見ているようで怖ろしい。 

いつのまにか電車は停止していた。駅らしいがドアが開かない、慌てて隣の車両へ移ってみた。 
ドアが開いてる・・・というより普通だ、日常の光景だ。元居た車両も普通になってる。 
元居た席に戻りたい衝動に駆られた。どう見ても普通だ。どうしよう。 
居眠りで追突事故起こしたばかりの俺はこのまま電車で目的地に向かいたかった。 

思考が混乱しているうちにドアが閉じてしまった。日常の光景も消えた。 
車内にまばらにいる乗客は皆死んでる様にしか見えない。だめだ失敗した。 
咄嗟に、まだ間に合う、何処か窓から飛び降り出来ないか走ろうと窓を見て固まった。 

既に物凄いスピードで逆走していて、今まで微動だにしなかった乗客が皆一点を見ている。 
服装が、格好が変わっている。皆薄汚れ、作業着のようなかっこうをしていて、 
今まで進行方向だった方角をじっと見ている。 

程なく視点の先が黒ずんで、真っ黒いモノに侵食されていく。逃げようと後部車両へ走るが 
襲う振動がすごく、足はぬかるんだように遅々として動かない。 
皆は写真のように表情も変えず口だけを動かしずっと何か言っている。 
無我夢中で吠えながら何とか最後尾までたどり着いたものの状況は全く変わらず 
迫る闇に吠え続けた。 
闇に飲まれる一瞬「くずれるくずれる」という声を聞いた気がした。 

目が覚めたらまた異様な空間を走る電車の中だった。ここを抜け出すのは本当苦労した。 

【洒落怖】【怖い話】違和感

おっさんです。体験したので記念に書き込みます。 
つい最近、ある僻地系観光地の駐車場で単身車中泊をした時の事です。 

駐車場は午後8時頃にはすっかり暗くなり、やることも無いので考え事をしながら眠りにおちました。 

やがて、私は閉じている車窓を叩く音で目が覚めました。 
助手席側の窓をギャルっぽい若い女が必死の形相で叩いています。男に追われている、助けて、ドアを開けて、と彼女は訴えています。 
私には彼女が幽霊に見えませんでしたし、ナンパか拉致のトラブルに遭ったのだなと思い、慌ててドアロックを外そうとしたのですが、違和感を覚えて躊躇いました。 

彼女の髪型、メイク、服装が整い過ぎているし、必死な表情の中にもどこか余裕が感じられる。訴えかける喋り口もちょっと演技くさい。 
周りを見渡しても駐車場内に人影も車の影も見えません。近くの駐車場とはそれなりに距離があるはず。ふと怖くなった。 

私はエンジンをかけ、比較的緩やかに移動しながらライトを点け、身をよじってバックミラーで後方を覗き込みました。 
突っ立っている彼女の他に、そのすぐそばには数名の男らしき人影がしゃがんでいました。私はそのままアクセルを踏んで逃げ出しました。 
寝るためにシート位置を変えていたので、とても運転し難かった。時刻を確かめたら午前2時前でした。 

思うに、男たちは私の車の死角に身を潜めていたのでしょう。 
ドアロックを解除したらおそらく強盗被害に遭っただろうし、殺されたかもしれない。用心して、駐車場のど真ん中に駐車しておいて良かった。 
それに、曲がりながら発進したら轢いていたかもしれない。ついてた。 

これからは道の駅で車中泊しよう。自販機もきれいなトイレもあるし。 
ともかく、拉致被害にあった女性がいなくて良かった。

【洒落怖】【怖い話】田舎の神社

小学生の頃、夏休みはよく母の実家に遊びに行っていた。祖父母は優しくて小遣いをしこたまくれたから毎年行くのが楽しみだった。 
あれは小五の夏だった。塾に通わせようとする親を振り切るようにして田舎へ来た。 
しかし親の方が一枚上手でそこから通える塾に入る手続きをされてしまい、お陰で毎日塾通いする羽目になってしまった。 
朝8時に祖父母の家を出て最寄りのバス停まで10分ほど歩き駅前の塾へという日々であまり遊んだり出来ず不満だったが、
祖父が交通費をたっぷりくるたので帰りに買い食いしたりゲーセン寄ったりする楽しみはあった。 

田舎へきて一週間ほど経った頃だった。夕方バスを降りて家へと歩いていた。ちなみに家とバス停の間は田んぼの中の畦道で夏でも風が吹いて心地よかった。 
途中に小さな神社がありその周りだけこんもりと木が繁っていた。
近所の子供も寄り付かず人気のない場所だったが俺は妙に気に入ってちょくちょく境内に入って置いてあったブランコを漕いだりしていた。 
その日は曇り空で夏にしては薄暗い日だった。てくてく歩いてちょうど神社の森に差し掛かったとき、前方にふと妙なものが見えた。
空間の一部がとろとろと歪んでいる。例えるなら陽炎のようなものだった。
しかしこんな日に出るはずがないし、しかもちょうど道幅と同じくらいの範囲で現れている。高さは大人の身長くらい。
まるで道を塞ぐ透明の壁のようだった。 
最初はそれほど気にならなかったが近付くにつれて次第に気味が悪くなってきた。どうしよう。そう思った瞬間だった。 
「××くーん」 
背筋を悪寒が駆け上がった。振り向くと畦道をこっちへやってくる黒いものが見えた。ボールのようにバウンドしながらゆっくりとこっちへ向かっている。 
「××くーん、××くーん」 
また聞こえた。 しわがれてエコーのかかったような女の声。妙に甘ったるい。
黒いものが発しているのか? それが跳ねるたび細長く黒いものがばらばらと広がった。 
何度目かのバウンドでそれの中身がちらりと覗いた。外側とは違う白い白い何か。
薄暗い中でも俺には見当がついてしまった。
それは顔だった。周りは髪の毛だったのだ。つまり、生首。 
女の生首が1メートル以上はありそうな長い髪を振り乱して俺の名前を連呼しながらこっちへ向かって飛び跳ねていた。 
恐怖のあまり叫んだ。カバンを放り出して走った。生首に比べたら透明のもやもやなんて何ともないと思った。
歯を食いしばって飛び込んだ。その瞬間、耳がキーンと鳴りどこか遠くで「ギリギリギリギリ」と歯車が軋むような音がした。 
気がつくともやもやの前に立っていた。横には放り出したカバンがある。とっさに振り返ると生首はいつの間にかすぐ後ろまで迫っていた。
俺を呼ぶ声は絶叫に近くなっていた。 
髪の間から白い顔が睨んでいた。睨みながら笑っていた。唇は無かった。 
俺は金縛りにあったように身がすくみ動けなかった。声も出なかった。口は半開きで涙と涎を垂れ流していた。
そのままどうしようもなく接近してくる生首を見ていた。 
ついに生首は神社まできた。そして鳥居とほぼ同じ高さまで飛び上がった。 
その時、鳥居から例のもやもやがぶわっと押し出されるように大量に溢れ出てきた。そして生首は飛び上がったままもやもやに包まれ空中で止まった。 
歪んだ幕を通して女の顔が引きつったかと思うと物凄い表情でこっちを凝視しており、口がぱくぱくと開閉していた。 
そのまま長い時間が過ぎたように感じた。実際は一瞬だったのかも知れない。次に覚えているのは家の布団の中。
心配して迎えにきた祖父におぶわれて帰宅したらしかった。 

二人から根掘り葉掘り聞かれて全て話したが夢でもみたのだと信じてもらえなかった。 
あの神社は戦後に出来た比較的新しいもので特に曰わくがあるわけでもないということだった。 
俺自身あんな目に遭った割には不思議とトラウマなどになることもなく、残りの期間も普通に塾に通った。前ほどではなくとも神社にも時々寄った。 
今では何となく見当がついたけど、生首の顔を思い出すとやはり怖くなる。 

【洒落怖】【怖い話】文字起こし

今四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど 
夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、 
祖父母、父母、姉夫婦、俺、そしてその赤ちゃんの8人で居間で夜更かししていた。 

田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて 
それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。 

皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて 
「面白いもの見せてあげるわ!」とボタンを押した。 
メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述筆記みたいに話した言葉を文字にしてくれる機能。 
姉はそれを赤ちゃんの口元に寄せて、「何か話してごらん~」とあやすと 
赤ちゃんは「あうあうあう~」と言葉にならない言葉を話す。 

すると画面に「合う会う、ううー良い愛ー」 みたいに、赤ちゃんの声を無理やり文字に起こしたものが表示され、 
姉は「赤ちゃんの言葉やで!」と笑う。祖父母も父母もうれしそうに「おおー!すごいなー!」と笑った

夜もふけていく中、皆でその遊びをしばらく続けていました 
「あいあい~たー、うう~」という、言葉にならない赤ちゃん語を 
「会い合い~他、右ー」みたいに表示していくIPad。 

祖父母は「最近の機械はえらいもんじゃのう!」とはしゃぎ、 
僕たちも笑う。 
赤ちゃんは皆がうれしそうに笑うのと、田舎の家の薄暗さの中で光るIPadの画面に大喜びし、 
「うあうあいい~!!わーわー!きゃあー!」と声を上げ続ける。 

姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、 
「はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」と赤ちゃんにIPadを向ける。 
赤ちゃんはその日一番長々と、 
「うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。 

すると画面に、 
「大宮さんがきよる」 
と表示された。 

姉が「えー、なんか文章になった!すごい~!大宮さんて誰かな~??」と笑う。 

すると祖父母が「えっ」と画面に顔を近づける。 

「大宮さんてこの機械に入れよるんかね?名前を入れよるんかね?」 
祖父が不思議そうに画面を眺める。 

姉は「えっ??」と祖父を見る。 

祖母が「大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。大宮さんが来よる、いいよるね・・・」と 
同じく不思議そうに画面を見る。 

すると母親が、「あの」と窓を指差す。 
「離れの方に_」 

全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が俯きがちに立っているように見えた。 
祖父はすぐに「・・・大宮さんじゃね」と呟く。 

祖母も「大宮さんじゃあ。 2月に亡くなりはったんじゃけどね、なして(どうして)じゃろうね・・」と 
窓の外を見つめる。 

俺たちは「え?え?」とよく分からずに窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が 
「いけんいけん。いけんよ」と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。 

【洒落怖】【怖い話】鏡の向こう

友人に起こった話。三連休中に久しぶりに会って思い出したので投下。 
去年の十月初めくらいに、友人(Hとする)から「鏡の向こうにいる奴とよく目が合う」って相談された。 
Hは成績優秀で親や教師から期待されてるような奴だったから、その分無意識の内にプレッシャーを感じて追い詰められてるんじゃないか?って言ってやったんだけど、
オカルト好きな俺は面白そうだったので勉強会がてらHの家に泊まりに行くことにした。 
で、詳しく話を聞いてみると 
・最初に見たのは夏休みの終わり頃、洗面台の鏡を通してHの2m(目測)ほど後ろに立っていた 
・それから鏡越しや窓に映る影越しに見えるようになった 
・9月半ばから徐々に近付いてきて、今では1mあるかないかの距離にいる 
・見えるのは黒っぽい焦げ茶のワックスで固めた短髪の男で、黒っぽいシャツを着ていて、白目を向いている 
とのこと。 

相談されたその日のうちに泊まる用意をしてHの家に行った。 
家中の鏡という鏡に布がかけられていて、使う食器が全部陶器製なのを除けば、Hの家の中は普通だった。 
特に何事もなく飯食って勉強してゲームしてHの部屋で寝てたら、夜中に急に目が覚めた。 
お、金縛りか?ってwktkしたけど別にそんなことはなく、普通に動けた。 
んでトイレでも行こうと思って保安球(ちょっと明るいアレ)をつけて、部屋の空気が妙に淀んでたからカーテンを開けたら、窓の向こうで妙な影が俺の後ろに映ってた。 
Hが言ってた例の奴だと直感した。そいつは俺の方を見てるんじゃなくて、俺の布団の上に立ってHを見下ろしていた。
影だと思ったのは奴が黒い服を着てるからで、髪の毛は確かに焦げ茶だった。 
恥ずかしながら俺は恐怖で動けなくなった。なんていうか、身体の芯が冷たくなる感じがした。 
窓から目を逸らしたかったけど、少しでも身動きした途端にそいつが俺の方を向きそうで動くに動けなかった。
まぁ、窓に映ってるということは俺の後ろにいるっていうことに気付いて振り返る勇気もなくなったけど。 
で、そのまま棒立ちでずっと立ち尽くしてたらだんだん空が白んできて、俺の姿が窓に映らなくなってきた辺りでやっと緊張が解けてそのまま布団に入って寝た。 
朝になってHに「夜中に起きたっぽいけど何か見たか」って聞かれたけど、俺はなにも見てないって答えておいた。 
Hの布団と俺の布団はすぐ隣だったから、奴とHはもう30cmくらいの距離にいるってことなんだけど、それを受験やらなんやらでナイーブになってるHに伝えるのは残酷な気がしたから。 

結局その後も奴に付きまとわれてたみたいだけど大きな事件もなく志望校に合格し、一人暮らしするようになってからは奴の姿を見てないらしい。俺も見てない。 

【洒落怖】【怖い話】 危険物件

関西の大学を出て東京に10年以上住み、その間に二回引っ越しました。
同じ学校から東京に来た面々も、
久しぶりに会って話すとたいてい一度は引っ越しをしていて、
物件選びの話になりました。
(一名、同じ建物にずっと住んでいる人が居ましたが)

話が盛り上がると、誰が始めたのか事故物件の話になりました。
私も東京へ来たばかりの時に池袋駅徒歩5万の事故物件を内見していて、
その物件は一月前に中国の人が無くなり血も綺麗に掃除されているとの事(次の入居者には説明責任があった?のかもしれません)でしたが、
唯一ある窓の外が壁で異様に雰囲気も悪く、やめた覚えがあります。
そんな経験もあるので、他の人の事故物件の話には興味津々でした。

一通り聞いた話や不動産の知り合いの話等が終わった後、ある者が「俺、最近引っ越しの時、それ系のもん見た」と言い出しました。
みな食いつきましたが、その彼が言うには、そこは広さの割りに異様に安かったので仲介業者に「ここを見たい」と言ったそうです。
すると「おすすめしません、実質使える部分が広くないので」という答えが帰ってきたそうです。
その時点でこれはやばいと思ったそうですが、とりあえず見てみたい、行けそうならそこにするかも、と言ったそうです。
すると不動産屋は、何度も聞いたセリフという顔をして渋々承諾したので、その時点で知人は大勢が見てからやめたという事がわかったそうで、
やめようかとも思ったそうですが、たいした事がない可能性もあるので結局行ったそうです。

物件回りは、まず最初にハズレからという仲介業者の提案で、いきなりそこへ行ったそうです。
入る前に間取り図を見せて貰い、23区内のそこは36平米くらいの広さの物件で、それでいて4万円弱だったそうです。
入り口からまっすぐ廊下で、右にまず水周り、次に右に引き戸、まっすぐ進むとキッチンで、L字に右に曲がると、最初の引き戸と同じ部屋に通じる引き戸、突き当たりに一部屋という構図だったそうですが、
その最初の廊下とリビングの引き戸にL字に囲まれている一番大きな部屋が問題で「開けるな」という事でした。
住んでいる間開けてはいけないという事は実質使える場所が半分という事で、知人は流石に脅かしすぎだろうと思ったそうです。

実際に物件に入ると、とにかく薄暗い。壁紙が白なのに空気にセピアの色がついた感じだそうです。
で、一通り部屋を案内された後、仲介業者が問題の部屋を見せると言ってきたそうです。
「開けるのは良く無いが、とにかく見ないとわからない、でも住むなら開けるのはこれで最後」
と言われた知人は、仲介業者が引き戸を開けるのを一歩引いて見守っていたそうです。

開けると、畳だったそうです。
一歩前に進むと、強めの口調で
「あ、入らないで下さい、眺めるだけ」
と言われたそうです。
「左の仏壇は見ないで下さい」
と続けてすぐ言われ、目の端に黒い仏壇が閉じて置かれてあるのがわかったそうです。
戸を開けた瞬間に物件内の空気が重くなって、すぐに出てもおかしいない空気になった。
一人であそこにおるんは想像もできん、という事でした。
その後に「今回開けるのはしょうがないけど入ったらアウト、仏壇は、見るのもアウトだけど開いたら完全にアウト」と言われたそうです。

やはりやめたそうですが、車に戻って安心した仲介業者の人が言うには、「死んでます」と言われたそうです。
入った人が短期間で死んでるそうです。
逃げたした人も何人かいるという事でしたが、色んな人の話を統合すると、
「廊下で頻繁に女に会う、玄関を開けたら角を曲がっていく後ろ姿が見える、追うと居ない」
「仏壇から老人が出てくる、出てくる時は動けない、出てきた瞬間にみんな飛び出して逃げている」
この二つは共通していると言われたようです。
話は以上ですが、多分自分もこの物件はやめるだろうと思います。
「霊感とかそういう話は無かった、みんな見る、と言ってた」
とは知人の段です。

【洒落怖】【怖い話】確認

今日の深夜2時半くらい(さっき)に、携帯が鳴って、 
「もう帰りましたか?」っていうメールが、知らないアドから来ました。 
相手のドメインはauです。 
確かに昼間は出かけていたんですけど、別に誰とも会ってません。 
もう寝ようと思っていたので、無視していたら、1分くらいして、 
同じ文面が届きました。 
なんなんだよ、と思ったときに、なんか寒気がして、よく見たら、 
送信(受信?)日時が「7月25日」なのです。 
しかも1通目が21時56分で、2通目が21時47分というものです。 

最近、調子に乗って『着信アリ』とか『呪怨1・2』とか観てたからちょっと怖かったです。 
そのあと、すぐ寝てさっき起きたんですが、他にこのメール来た人いませんかね? 
もしくは、メールでこういう時間的なバグを体験した方いませんか? 一人じゃ怖いよ……。 
ちなみに私もauの携帯(ガラケー)です。

auのお客様センターに、こういうトラブルありますかって聞いたら、 
なんと、「間違いメールでしょう。」とのこと。日付の問題なのに。 
で、さらに「予約メールの可能性があります。」と。 
それはなんですかって聞いても、auにはそういった機能はありませんが、 
他社の場合はあるかもしれない、と。「かも」って……。 
っていうか、7月25日の段階で、9月1日の夜中に私の携帯宛てに予約されてたら、もっと怖いよ。 
で、あと2・3回似たようなことがあればこちらも調査するって。 
あっても無くてもどっちにしろ怖い……。

【洒落怖】【怖い話】田植え

山陰地方だけど、米を作ると廃人が出る田がある。 
被害に遭うのは地区内にいる田の所有者の血縁者のみ。 
若い者ばかり皆精神を病む。 
稲は必ず植えなければならないが、稲刈りをしてはならない。 
春には枯れた稲を田にかき込む。 

俺が小学生のころ、所有者が田の一角で赤米を作って収穫した。 
その年の冬、高校生の兄妹が二人いっぺんにおかしくなった。 
所有者の本家筋の長男長女だった。 

山すそを開いて無理やり作ったいびつな田だから、毎年手間がかかって仕方がないようだ。 
理由を知ってただろう地区の長老は、田植えを忘れないことだけを言い残して鬼籍に入った。 

【洒落怖】【怖い話】突然死

子供たちを連れて実家に遊びに行った時のこと 
普段から穏やかな母と、明るい父と、同居の妹一家と、みんなで楽しく話していた 

途中で母が 
「そうだ、○○(長男)にいい本を見つけたのよ♪」 
と笑顔で押し入れを開けて、下の段を見るために座ったのだが、いつまでも動かない 
探している感じでもない 
長男が「どうしたの?」と軽く肩を叩いたら、母の身体は静かに床に倒れた 
会話していた時の笑顔のまま、すでに亡くなっていた 
手にはかつて私が母に貰って大切にしていた本がしっかり握られてた 

あまりに突然すぎて、よくわからないまま解剖にまわされ、葬儀を済ませた 
死因もよくわからないらしいが、とりあえず心不全ってことにされていた 
下の子にはかなりの恐怖体験になってしまったらしく、それ以来私から離れられなくなってしまった 
文字通り、お風呂もトイレも、寝るのも一緒 

実は私はかつてこれと同じ光景を見たことがある 
母のおばにあたる人(祖母の妹)が、私が小さい時に、外出しようと玄関の上がり框に座って靴を履いている途中で亡くなってる 
「カルピス、何味がいいの?」というのが最後の言葉だった 
妹はこの時まだ生まれていなかったから、知っているのは私だけ 

祖母は母が幼い時に亡くなったから、祖母の妹にあたる人に母は育てられたと言ってた 
でももしかして祖母も、この原因不明の突然死だったのではないかと、最近強く思うようになった 
だから我が子を慰めているふりしながら、私も恐怖に怯えてる 
次は自分なんじゃないかと…

【洒落怖】【怖い話】拾ったビデオ

20年以上前になるが小学校低学年の夏休みに遊びに来た年上の従兄弟と家まで歩いてたら途中の空き地にビデオテープが三本捨ててあった。 
従兄弟が面白半分に持ち帰ろうと言い出して俺は嫌だったけど逆らえず持ち帰ってしまった。 
帰宅して親が仕事に行ってる間にリビングのビデオデッキで適当に一本再生してみると、路地裏で女がカメラ目線で服を脱いでいくのが映った。 
標準録画だったが画質はかなり悪く、どうやらダビングしたAVのようだった。
従兄弟は観たそうだったが俺はモタモタしてると親が帰ってくるからと言って早送りで終わらた。 
それからもう一本再生したがそっちはアルプスみたいなとこで外人同士がアオカンしてて二人ともオエーとなってすぐ出した。 
で、最後の一本を入れた。最初満員電車の実録痴漢ものみたいなのが映ってて、他二本に輪をかけて画質が悪かった。 
つまんねーなと思いつつ早送りしてると不意に映像が途切れてノイズが入り竹林を行く子供が映った。あっと思って早送りを止めた。
まだ小学校前の少女のようだった。辺りは薄暗い。 
後ろから撮っているのだが、少女の足取りがふらふらしていておかしく時々転びかけたり立ち止まろうとしたりする。
その度に画面の端から大人の手が伸びてきて支えたり小突いたりしていた。 
声は一切しない。その映像が10分くらい続いて、従兄弟と何コレと言いながらも何故かそのまま見入っていた。
やがて竹林が途切れ広い場所にきた。陽が射し込んでいる。 
中心部近くに大きな穴が掘ってあった。少女がその縁までくると後ろから両手が背中を押して穴へ落とした。
ジーパンを穿いた足が現れ土を穴に落としていく。 
その間少女は身動きせず背中に土が被さるに任せていた。顔は横を向いていたが暗くてよく判らない。 
俺達は黙りこくって画面を見つめていた。後から思うと金縛りみたいなものだったかも知れない。 
ついに縁まで土で埋まった。足はその上を入念に踏み固めた。そこまで見て俺は急にやばいと感じた。このままだとまずいことになる。
手を伸ばし停止ボタンを押した。しかし映像は消えない。 
「ああヤバい」 
かすかに声が漏れた。すると隣に座っていた従兄弟が前に倒れ込むようにしてテレビに近づいた。次の瞬間映像が回転したようになり空が斜めに映って、消えた。 
「早く取り出して」 
俺が叫ぶと従兄弟はテープを出そうとしたが、中で絡まってて取り出せない。無理に引っ張り出すとぐじゃぐじゃになったテープがズルズルと伸びてきた。 
俺たちがパニックになっていると親父が帰ってきて何やってんだとテープをハサミでちょんぎった。その後テープは改めて元の空き地へ捨てた。

【洒落怖】【怖い話】裏S区

九州のある地域の話。 
仮だがS区という地域の山を越えた地域の裏S区って呼ばれてる地域の話。 
現在では裏とは言わずに「新S区」って呼ばれてるがじいちゃん、ばあちゃんは今でも裏S区と呼んでる。
まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでる。 
この場合の裏は部落の位置する場所を暗に表してる。 
高校時代は部落差別の講義も頻繁にあるような地域。そこでの話。 
(あくまで体験談&自分の主観の為部落差別、同和への差別の話ではありません) 


今から何年か前に男の子(仮にA)が一人行方不明になった。(結局自殺してたのが見つかったけど) 
俺はS区出身者。彼は裏S区出身者だけどS区の地域にある高校に通ってた。 
まぁ、彼は友人だった。あくまで「だった」だ。 
1年の頃は仲良かった。彼が一人の生徒をいじめるまでは。 
いじめられたのは俺。周りはだれも止めない。止めてくれないし、見てもない。傍観者ですらなかった。 
必死にやめてと懇願しても殴る、蹴る。俺は急に始まったから最初はただの 
喧嘩と思い殴りあったが、彼の体格と俺のでは全く強さが違う。 
でも、次の日も急に殴ってきた。意味も無く。理由を聞くも答えない。 
薄っすらと笑ってたからもう兎に角怖かった。 

ある日いきなりAが学校に来なくなった。俺はかなりうれしかった。 
でも、もうその状況では誰も俺に話かける奴はいなかった。初めての孤独を味わった。 
多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。それからAが3週間学校を休んだある日、先生が俺を呼び出した。 
ここからは会話 

先生「お前Aと仲良かっただろ?」 
俺 「いえ・・。」 
先生「う~ん・・・。お前Aをいじめてないか?」 
俺 「はい??え?俺が??それともAが俺を???」 
先生「いや、お前が。大丈夫誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」 
俺 「いや、俺がですか???」 

このときは本当に意味が分からなかった。先生の中では俺がいじめてることになってるし。 
で、俺は本当のことを言うことにした。 

俺 「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられてました・・。皆の前で殴る蹴るの暴力を受けてましたし・・・。」 
先生「本当か??お前が??他の生徒も見てたか??」 
俺 「見てましたよ。っていうか何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか?誰かが言ったんですか?」 
先生「いや・・・。いや、何でも無い。」 


先生の態度がこの時点で明らかにおかしい。何故か動揺してる感じ。それから数分二人とも無言。 
その数分後にいきなり先生が言い出した。 

先生「Aがな、休んどるやろが?なしてか分からんけど、登校拒否みたいな感じでな家に電話しても 
   親がでておらんって言うてきるんよ。」 
俺 「・・・。」 
先生「そんでな、昨日やっとAと連絡とれて、色々聞いたんよ。そしたらAが言ったのがお前が怖いって言うんよ。」 
俺 「はい??俺が???」 
先生「う~ん・・・。そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ。」 
俺 「いやいや、俺が?逆ですけどね。俺はAが怖いし」 
先生「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけどお前はいじめてないな?」 
俺 「はい。」 

って言うやりとりの後解放されて、自宅に帰った。 

実際のイジメって多人数を1人でイジメルものだと思ってた。中学生の時にイジメを 
見たことあったからそのときのイメージをイジメだと思ったし、よく聞くイジメも 
大体が多人数が1人にお金をたかる、トイレで裸にする。こういうことをすることだと 
思ってた。まさか、たった一人の人間がたった1人の人間をイジメルのに先生まで巻き込み 
俺一人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。 
生まれて初めて人に殺意を抱いた。ぶん殴るとかじゃなく、ぶっ殺したい。って本気で思った。 

その次の日から俺は学校を休んだ。行く気にはなれんし、行っても一人だし。と思って。 
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。 
起こったのは、「飛び降り自殺」 
俺の住んでたマンションから人が飛び降りた。たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった 
俺の耳に「ギぃーーーーー」って言う奇怪な声と、その数秒後に「どーーーーん!」っていう 
音。 
そのどーんっと言う音は自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、それを覗き見たときは本当に吐き気と涙がボロボロ出た。
これはただの恐怖心からなんだが、でもイジメにあっていた俺にはとてつもなく多きな傷だった。
これは本当にトラウマになっていて今でもエレベーターに乗れなくなった。
会社とかにある建物の中にある奴はまだ何とか乗れるが、 
マンションにあるような外の風景が見えるものには全く乗れなくなった。 
なぜならこのときに絶対ありえないものを見たから 

自転車置き場を見下ろしてた俺が前を向きなおした瞬間に螺旋階段が見えた。 
そこに下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型(これは微妙で下にあるモノとは異なってたようにも見える) 
のニンゲンが立ってた。これは多分見てはダメだったんだと思う。
螺旋階段を下に向かってゆっくり 
降りていってたんだ。すごくゆっくり下を向いたまま歩いてた。下にあるものと瓜二つのニンゲンが。 
ここでエレベーターが来たときの合図の「ピン」って音が鳴ったんでビク!ってなり後ろを振り向いた。 
そこにも居た。と思う。多分いたんだろう。でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか?と思うけどそのときは居たって思ってた。
「ピン」の音に振り返った瞬間にどーんって再度聞こえたんだ。 
でも、今度の音はエレベーターの中から。どーん、どーーん。どーーーん。どーーーーん。って 
俺はもう、発狂状態になってそれから倒れたみたい。 

直ぐに病院に連れて行かれた。見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて薬も 
処方されてそれから1週間は「うぅぅ」ってうめき声を上げてるしかなかった。 
1週間過ぎぐらいにはだいぶ良くなっていたのだけど、本当は親や医者をだましてた。 
よくなってなんか無かった。寧ろそのときからその「どーん」って音はずっと着いて廻ってた。 

その後、学校に行こうと思いだしたころにAの存在を思い出した。俺がそもそもこんな事になったのもAのせいだ。
あいつがあんなイジメをしなければこんな目にもあわなかった。
アイツは俺をこんな目にあわせる様な奴だから居なくなればいい。そうだ、この「どーん」って言う音に頼もう。 
って本気で思ってた。俺は本当におかしくなってたんだと思う。本気でこの「音」の主に 
お願いしてた。 

次の日に学校に行った俺は昼休みの時に早退したいと先生に言った。先生も俺がどういう状況かを 
知っていたからすぐにOKを出してくれた。Aはその日も休みだった。 
その帰りがけに先日部落差別を無くそうという話を学校でしていた(講義で)、おじさんに出会った。 
そのおじさんはAのおじさんに当たり何度か会って話したこともあった。
だけどそのおじさんが俺を見た後からの様子や態度が 
明らかにおかしい。最初見かけた時は普通に挨拶をしたのにその後俺を二度見のような感じで見て 
いきなり、「あ~・・・。」とかいいだした。
俺は「こいつもAに何か言われてんのか?」って感じで 
被害妄想を爆発させて怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切っろうとしてた。 
そのときに急にそのおじさんがブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。 
俺はぎょっ?!っとして、そのおじさんを見返した。いきなり、あって「あ~」などと 
わけのわからない態度を取り出し、それだけならまだしも俺にお経を唱えたのだ。 

生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど精神的におかしかったから殴る事の善悪は全くなかった。ただ、苛々だけに身を任した感じ。
いきなりでびっくりしたのかそのおじさんもうずくまって 
「うぅ。。」って言ってたが無視して蹴りを入れてた。Aの親戚ってだけでも苛々してたのもあり、 
「こら、お前らの家族は異常者のあつまりか?人を貶めるように生きてるのか??お前差別をどうの 
こうの言ってたが自分がする分にはかまわんのか?あ~??何とか言えや。こら!お前らは差別される 
べき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」って感じでずっと蹴り続けてた。でも、ここで再度予想外のことが起きた。 
以下会話。 

おじさん「ははははははははは」 
俺 「!?なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」 
おじさん「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」 
俺 「??まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」(未だ蹴り続けてたけどこの時は大分蹴りは弱くなってる。) 
おじさん「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」(何を言ってるのか意味不明。) 
俺 「は???お前ら家族で俺をイジメようてしよったんか?」(この辺りで怖くなって蹴らなくなってた) 
おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、○○←俺の名前 が痛がるぞ。アニキは許しても俺は見逃さんぞ」 
俺 「は???マジでお前んとこはキチ○イの集団なんか?おい?」 
おじさん「○○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」 
俺 「いや、意味わから・」「どーーーーーん」 

いきなり耳元で音が鳴った。俺はビクってして振り返ったら目の前にのっぺりとした 
細面の顔が血だらけのままピクピクしながら笑ってた。俺はまた、発狂した。 
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に半分だけ見えるって言うのはありえない。
でもこの目の前の顔は、例えていうとテレビ画面の中にある顔がカメラのせいで半分だけ途切れてて半分は見えてる状態。 
その瞬間にAのおじさんに力いっぱい殴られて、意識を失った。 

起きた時に、俺は家の自分の部屋ではなくてリビングの隣の両親の寝室で寝かされてた。 
時間を見たら20時。リビングからの明かりが漏れてて両親が誰かと話しをしてた。 
俺が起き上がり、寝室のドアを開けてその人物を見たときにすぐに飛び掛った。 
AのおじさんとAの叔母に当たる人がそこに座って両親と話てたから、それを見た瞬間にもう、飛び掛ってた。
直ぐに親父に抑えられてたけど俺は吼えてたと思う。 
Aのおじさんは「ごめん、本当に悪かったね」を繰り返してたけど、どうしても許せなくて 
親父の腕の中でもがいてた。母親がイキナリ俺の頬をひっぱたいて、「あんたも話しを聞きなさい!」 
とか言い出してたけど、俺はもう、親にまで裏切られた感じがして家を飛び出そうとして 
親父の手から抜け出し、自分の部屋に向かい上着とサイフをとった。
が、上着を羽織ろうとした瞬間に上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして再度叫んだ。 
両親とAのおじ、叔母が直ぐに来て、Aの叔母がブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めだして 
おじが俺の服を掴んで踏み始めた。親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
この時は、マジで自分が狂人になったのかと思った。 

数分後俺も落ち着いてきて、両親とAのおじ、おばと共にリビングへ向かった。 
それまでの短い時間、Aのおじさんはずっと俺に謝ってた。 
それからのリビングでの話しは今でも忘れられないしそこで再度起こったことも 
忘れられない。以下会話(Aのおじさん=Bさん、Aのおばさん=Cさん とする) 
Bさん「本当に、殴ってしまってごめんな。」 
俺 「いや、いいです。こちらも苛々してましたのですみません。」 
親父「ん?お前なんかしたんか?」 
俺 「いや、俺がBさんを殴ってしまった。」 
Bさん「あ、いや、それは俺が○君を見ていきなりお経とか唱えたから嫌な気がしたんやろ? 
    ○君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」 
親父「申し訳ございません、それは聞いてなかったので」 
俺 「え?なんの話をしよん?俺がBさんを殴ってBさんがいきなり」 
  ここまで言って気絶前の事を思い出した。 
俺 「あれ??俺気絶する前にナニカ見たわ・・・」 
Bさん「うん、そやろな・。俺は○君みて直ぐに気づいてなぁ。何かおるって、それでお経を唱えたんよ」 
母 「大丈夫なんですか?何かって何ですか?」 
Cさん「えっとね、私らが住んどる地域がなんで裏S区って言われるか知っとる?」 
親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」 
Bさん「それはそっちだけの認識やな、じいさん、ばあさんによう言われたやろ?裏Sには近寄るなて」 
親父「言われましたね。でもそれは部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」 
Bさん「いや、そうや。そうなんやけど、差別があるけ言うても今も言い続けよるんは裏Sの歴史が 
    ちと異常なんや。」 
親父「いや、私も妻も生まれはS区やからその辺は分かってますけど、部落とか集落系での差別って 
   どっこも同じようなものでしょ?だから、異常っていうのはわかります。」 
Bさん「はは。そうやろ?そういう風にとらわれてしまってるんやな。裏S区は部落やからって事でも 
    他国のモンの集まりでもなく昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや。」 
親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと・・。」 
母 「あれですか?あの鬼門がどうのとかって言う話ですか?」 

Bさん「ん?鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」 
母「はい。多いですね、A君とことBさんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね、 
  S区には全然いないのに裏S出身者では結構みかけますしね」 
Bさん「あの辺は昔から霊の通り道って言われとんな。ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とかそんなの聞いたことないですか?」 
親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」 
Bさん「まぁ、その地域はそういう地域でして、うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。 
    それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じでいつの間にかそういう集落、 
    部落になっていき差別されるようになったんですわ。 
母 「でもそれやと裏S区はかなり広いからおかしくないですか?Bさんとこの家系だけで裏S区自体が 
   そういう風にわかれるますかね?」 
Bさん「うん、わかれるんやろうな。最初は3,4の家のもんが発狂し始めてて、でも、それが村中で始まって 
    ってなってって最終的に4,50件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし 
    昭和の時代にそんなアホみたいな話を信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」 
親父「それでも、それで部落になるんかなぁ。」 
Cさん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。だから生まれてきた子らには霊が見えるってことを 
    前提に接しとる。見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」 
俺 「いや、それと俺が体験しとるのとBさんの話と何が関係するんですか?」 

Bさん「○君。最近Aの様子がおかしくなかった?いきなり学校休んでるのは置いといてそれ以外に 
   なんかおかしいことなかった?」 
俺 「最近っていうか、わからん。急に殴りかかってきたりしてたけど。」 
Bさん「急にか、なんも言わんかったか?」 
俺 「いや、急に。意味わからんし。あ!そういうことか。Aが急に異常になったってこと? 
   霊が見え初めて発狂し始めたんっすか?」 
Bさん「いや、Aはまともや。でも何をすればいいかわからんかったよ」 
俺 「は?まともじゃないっすよ。あいついきなり殴り始めたし、しかも笑いながら。皆怖がって 
   俺を助けようともせんかったし」 
Bさん「○君、殴られたときに怪我するようなこと受けてないやろ?いや、殴る事自体は悪いことやから 
   庇ってるんじゃなくてな。うちの家系での霊を見つけたときの対応は笑う事なんよ。やけん、異常者 
   に見られることもあるけど、普通は無視してるんやけどな。」 
母 「ってことは、○に霊がついてたって事ですか??」 
Cさん「うん、今も憑いてる。それと○君ベランダに誰か見える?」 
俺「はい??なんですか?ベランダですか?」 

ここで俺は気絶するまえに見たモノとは別のものを見て発狂しそうになった。 
Cさん「大丈夫。絶対にココには入れんから。」 
親父「え?なにがですか?」 
親父には見えてないし、もちろん母にも見えてない。 
Bさん「あ、いえ。それでね○君にはちょっと憑いてるんや。」 
俺 「あ、あれか。。。飛び降りの奴みてしまったからか。。」 
Bさん「いや、ちがうよ。あれは多分たまたま。本当に偶然。でもその偶然がベランダの奴で 
  それ以外についちゃだめな奴が憑いとる。」 
俺「 え?」 
Bさん「うん、それがついちゃだめなんよ。厳密に言うと霊とかじゃなく、うちの家系では×××× 
   って言うんよ。それを言葉には出しちゃだめですよ。すぐ移るから」(両親を見て) 
母「××××」(なんて言ったか忘れた・・・、バラ??なんとかだったけど不明。) 
俺「!?」母「これで私についたけん○は大丈夫でしょうか?」 
Bさん「いや、そういうもんでもないけど、本当にそれは言わないでください」 
母「息子が困るのは一番いやですから」 
Bさん「多分、それをするともっと困ります」 
俺「もう、やめていいよ。っていうかなんなん?俺が霊に呪われててAはそれみて俺をなぐってたん? 
  でも、それはおかしいやろ。そんなんします?普通。っていうか、笑いながら殴ったらいいん?霊が 
  追い払えるん?」(ちょっと困惑しててまくしたてた) 
Cさん「ごめんね、そういう風にしか教えてなかったからやったんやろうね」 
Bさん「お払いするときにはな、絶対に笑いながら相手を追い出すんよ。こっちは余裕だ、お前ごとき 
  って感じで。んで憑かれてる者を叩くと憑いてるものが逃げ出すって感じなんよ。もちろんお経やったり 
  お呪いやったりが必要なんやけど、あいつは見様見真似でやってしまったんやろうな」 
俺「でも、あいつ蹴ったりもしたし」 
Bさん「うん、それは行き過ぎやな。でも、Aが学校休んでる理由は○君が怖いって。まぁ、○君に憑いてる者が 
   怖いってことなんやけどな。」 


それから数分そういう話をした後にCさんが御祓いすつための道具を駐車場に取りにいって、Bさんが 
俺を守る形で周りを見張ってた。その後準備が整い、御祓いが始まったけど、今まで見たどの御祓い方法 
よりも異常だった。神社のような御祓いでもなくお寺のようにお経を唱えながら木魚を叩いてるわけでも 
無い。ただただ笑いながらお経を読んでる感じ。
そのお経もお経という感じではなくブツブツブツブツを繰り返してて小声でただ話してるような感じだった。
それから何度か手を叩かれたり、頭を払われたりした。 
それが終了してBさんが、「もう大丈夫」と俺に言いCさんが「もう見えないでしょ?」っていうのでベランダを恐る恐るみてみたが何も無かった。 

次の日から俺は普通通りに学校に行くようになった。(ただし、エレベーターは一人で乗ることが出来ない 
ためいつも親と一緒に乗ってた・・・。) 
ただし、この日Aに異常が起きたらしく、その日の夜に「Aが居ないんだけど○君の家に行ってないか」という連絡 
がAの父親からあり、次の日からBさんやAの両親が捜索願いを出して探してたらしいが、家に家出をするといった感じの 
手紙が置いてあり家出人の捜索のため警察が捜索をするということは無かったらしい。 
Aの親が電話をしてきた理由は、その手紙に俺の名前が何個も書かれていたこと。が起因らしい。 
俺は霊がのりうつってたからと言う理由があったからと言ってAを許してはなかったから 
どうでもいいって思ってた。 
Aが行方不明になって3日目の朝にどーーーん!っていう音が聞こえて起きた。 
俺はもう、そんなことがないと思ってたから本当に汗がびしょびしょになり直ぐに親の部屋に逃げこんで 
少したって夢での出来事だったことに気付いた(というかそういう風にした) 
ただ、その日にAが飛び降り自殺をしており時間帯も朝方であったと聞いてその夜から怖くなってきて一人で寝ることが出来なくなった。
遺書が見つかって居る事から自殺で間違いないようで、遺書の中に俺宛の部分があり 
「ごめん、本当にわるかったね。多分俺らの家系は部落でちょっと頭がおかしい家系が多いんやと思う。 
自分の家系のせいにしたくないけどお前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん。」って書かれてた。 

それからその次の夜にお通夜があり俺も両親とともに行ったのだが、俺はすごく嫌がってた。
ただ親が「一応供養だけはしとかな変なことあったら嫌やろ?」って言うので仕方なく行くことになった。 
お通夜もかなり変わっており、通常のお通夜とちがい遺影など無くその代わりに紙にAの名前が書いており 
それを御棺の側面にびっしり貼り付けていて、近づくのも嫌になるような不気味さを漂わせてた。 
Bさん曰く「写真を置くと写真の顔が変形するんだよ、それを見るのが耐えれないほどの奇怪なモノだから 
この地域ではこういうやり方でやるんだ。名前の書いた紙をびっしり貼ってるのはコイツはAだ。××××では 
ないんだ、っていう証なんだ」との事。(本当に意味不明、奇怪すぎる内容にひいた。) 
その時Aの父親が俺に話かけて来て「迷惑かけてごめんね。」とAが家出したときに書いた手紙と遺書を見せてきた。 
遺書の部分は上記の通りだが、この時は本当は見たくなかった。 
家出をした際に書かれた手紙には「○←俺の名前 にあいつが憑いてたんだけど、ずっと俺を殺そうと見張ってる。 
おじさん(Bさんのこと)が○のあいつを御祓いしたからもう大丈夫って言ってたけど、あいつは俺に来たみたい。
でも、おとうさんはあいつを御祓いできないだろうし、おかあさんの家に行ってきます 
行く道であいつがついてきたら、他に行ってみるね。」とあった。 
Aの両親は別居中だったためAは母親方の実家に向かったらしかったがそのまま行方不明になったらしい。 
ただ、何故か警察は家出だと言って行方不明というよりは家出人としてしか扱わなかったそうだ。 

それは本当に見なかったほうが良かったって思った。あいつとか書かれてるし、意味も不明なので 
その日までの現実離れした出来事をかなり思いだされて怖さで震えてきた。Aの自殺した時間が 
朝方だったことも怖さをましてココには居たくないって本気で思った。 
俺がおかしかったんじゃなく、こいつらが異常だって思った。
お経も無く変な平屋のような場所に棺桶が置かれておりびっしりとAの名前が書かれた札を貼っていて、
その挙句親戚の何人かは笑っているのである。
韓国だかどこかで泣き子といって泣くだけの為に葬式に参加してるってやつがいるって 
気味の悪い話も聞いたことがあるけど、この集落に伝わる葬式も気味が悪いを通り越して異常でしかなかった。 
うちの両親もさすがにこの状況は怖かったらしく、「もう、かえるか」と挨拶も早々に切り上げた。 


それから数日後にBさんが両親に言ったのが俺に憑いてたのはAのおばあさん(つまりBさんの母親)が 
××××になって(霊だろうけど、そうは言わなかったので)憑いてたとのこと。
もう、そんな話はどうでも良いから聞きたくも無かったけど、聞いといてとの事なので聞かされた。 
飛び降り自殺をしたニンゲンも裏S区出身者で××××に追いかけられてた事。俺に取り憑いた理由は 
わからないが、以前Aの家に行った時についたのかもとの事。等を聞かされた。 
そこで俺も怖いと思ってたことを2つ聞いた。 
1つ目はBさんに殴られる前に見た 顔 
2つ目は飛び降りしたはずの人間が階段に居て下の遺体のもとに駆け寄ろうとしてたがアレは何なのか 

そうするとBさんは 
2つ目については「死んだ人間は死んだことを分からない事が多い。 
だから下に自分が居たので取りに行こうとしたんじゃないかな」との事。 
ただ、そこで邪魔をされると呪いをかけようとするとの事。 
ここで俺は邪魔をしてないと口を挟んだところ、 
「お前、エレベーターを呼んだだろ? 
「ピン」って音が邪魔なんだよ。」ってBさんの口調がかなり強い言い方に変わった。 
本当に飛び跳ねそうになった。俺の両親もかなりびびってきてた。 
Bさんはその口調のままいった。 
「お前なぁ、見ちゃだめだろ?俺はいいがお前はだめだろ?見んなよ。俺をみんなよ。 
なぁ?おい。聞いてるか?おい?」って感じで。さすがに親父が怒って 
「何言ってんだ?怖がらせてどうする!」というとBさんがビクンってなって、 
「あ、ごめんなさい。もうしわけない、ちょっと来てたので聞いてみようと思ったんです、もうしわけない」 
って言い出して口調を戻した。 
「見てはダメだったと言っても見たくて見たんじゃないから、もういいだろ?な。」と自問自答を繰り返し 
その後俺に向かって「もう、絶対に大丈夫、本当に申し訳なかった。この亡くなった奴も××××に 
追いかけられてて、○君にのりうつってたあいつに怒ってしまって、○君のとこに着たみたい」 
との事 

1つ目の質問については 
「それが××××」との事(この名前はもしかしたら日本語とかでは無いか、もしくは方言なのかなぁ 
とこのときに思った。) 
そしてAのおばあさんが××××になってしまった。でもAの父親が自分の母を消すのは心許ないとの 
事で御祓いを避けてたとの事。ただしAが亡くなってしまったため流石にもう腹を決めたらしく 
御祓いを昨日済ませたとの事。等を聞いた。 
そしてBさんが帰るとの事だったので玄関で見送りした 


Bさんが玄関を出た直後に、いきなりBさんの笑い声が聞こえた。 
「あはははははは。ははははは」 
って。 
俺はびくっ!ってなり膝から崩れた。親父は「やっぱりあそこの連中はおかしいわ」と怖さからか 
それとも本当に怒ってるのか怒鳴る感じでそういってた。 
母は「もう、あの人らに関わるのはやめようね」と言い出して涙目になってた。 
あんな話をしてて、笑いながら御祓いすると聞いてても流石に家を出た瞬間に 
あんな笑い声を張り上げている奴を同じ人種とは思えない。 
「あはははははははは」と笑っててその声が聞こえなくなって初めて三人とも動けるようになり、リビング 
に戻った。俺が「あいつらはおかしいよ、絶対異常やって。っていうかあいつエレベーターで帰ったんやろうか?」 
と言ったら、親父が「あいつとか言うな、一応年上やろうが。はぁ。。。もう、関わらんようにしとけ」と 
言って鍵を閉めに行った。 
その直後に「はやくかえれ!!」っていう怒鳴り声が聞こえて 
心臓が止まりかけた。母親も「ひぃ」ってなってた。 
親父が鍵を閉める前に夕刊が郵便受けに入っており、それを中から取ろうとしたら 
上の部分に引っ掛ってしまっており外から取ろうとしたらしい。
しかし、Bさんがまだエレベーターホールでニヤニヤしてたらしい。親父はぶち切れてて「警察よぶぞ!」 
とか言い出しており(怖かったんだと思う)横の家の人とかも出てきて、Bさんは 
「え、い、いや、今帰ろうとしてたとこです。え?なんですか?」とか言ってたらしい。 
言った瞬間に又ケタケタと笑い始めてエレベーターに乗って帰ったらしい。 
(親父が「塩まけ。塩!」と言い出し狂ったように塩をまいていたので隣人からしたら親父も異常にみえたかも。) 

その後両親と一緒に有名な神社に行って御祓いを受けて、家を引っ越した。 
S区からは移動してないため同じ学校の地域だったが俺は他の地区の学校に転入をしてもらい
それ以降は一切裏S区には近づいていない。 
今は新S区と名前を変えてるが地域性自体は変わってないようであり、 
従兄弟の通うS区の学校では、未だに同和教育があり地域は言わないものの差別的な事が現実にあると教えてるとの事。
しかしアクマで部落、集落への差別としか言わず、裏S区の事情、情報は皆無で裏S区と呼ぶと教師が過敏に反応し新S区だ。
と言い直したりとかも 
するそうである。(これは九州特有の人権主義、日教組等によるものだと思うけど。) 
Bさんに関しては一切関わりを絶っているため今はどうなってるかは不明。 

うちの両親はこの事件までは裏S区に関しての差別意識は皆無だったが、これ以降は 
かなり毛嫌いしており、その地域の人達との関係をかなり制限してる。 
俺はそれ以降霊的な出来事は皆無だけど、エレベーターだけは一人で乗れず 
はずかしながら一人で寝ることも出来ないので妻にすごく馬鹿にされている状態。 
終った直後の頃はトイレに行くときも親を起こして(高校生なのに。。。)一々行ってた位に 
心身が恐怖で埋まってた。俺に関しては裏S区の出身と聞くと差別というよりも恐怖だけが全身を駆け巡り話も出来なくなる。 

【洒落怖】【怖い話】八尺様

親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。 
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗る 
ようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。 
じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。 
でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。 
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこんなことだ。 

春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。そうしたら、 

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」 

と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。
それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。 
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。
帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで 
来ると、一人女性が見えた。まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。 
女性は白っぽいワンピースを着ていた。 

でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い女なんだ… 
驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。 
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。 


そのときは、もともと背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。 

その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。 
「さっき、大きな女を見たよ。男が女装してたのかなあ」 
と言っても「へぇ~」くらいしか言わなかったけど、 
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」 
と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。 

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」 
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。 
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。 
ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。 

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、 
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。 
――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。 
と必死に考えたが、何も思い当たらない。あの女だって、自分から見に行った 
わけじゃなく、あちらから現れたわけだし。 

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」 
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。 

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、 
「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」 
と震えた声で言った。 
それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。 

この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。 
八尺様は大きな女の姿をしている。名前の通り八尺ほどの背丈があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。 
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。 
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。 
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区分)に地蔵によって封印されていて、よそへは行くことが無い。 
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。 
最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前。 

これは後から聞いたことではあるが、地蔵によって封印されているというのは、八尺様がよそへ移動できる道というのは理由は分からないが限られていて、その道の村境に地蔵を祀ったそうだ。
八尺様の移動を防ぐためだが、それは東西 
南北の境界に全部で四ヶ所あるらしい。 
もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、周辺の村と何らかの協定があったらしい。例えば水利権を優先するとか。 
八尺様の被害は数年から十数年に一度くらいなので、昔の人はそこそこ有利な協定を結べれば良しと思ったのだろうか。 


そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。 
そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。 

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」 
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。 
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。 
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。 
ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。 

しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。 
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。 
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。 
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことか・・・ 

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」 

と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。 
「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」 
とKさんにも言われた。 

テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。 
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。 

そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。 
(この頃は携帯を持ってなかった) 

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。 
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。 
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。 

そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。 
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」 
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。 
また声がする。 
「どうした、こっちに来てもええぞ」 

じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。 
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。 
ふと、隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。 

一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください」と必死にお祈 
りをはじめた。 

そのとき、 

「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」 

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。 
そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。 

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、つけっぱなしの 
テレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。画面隅に表示される時間は確か七時十三分となっていた。 
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。 
どうやら眠ってしまったか気を失ってしまったかしたらしい。 
盛り塩はさらに黒く変色していた。 

念のため、自分の時計を見たところはぼ同じ時刻だったので、恐る恐るドアを 
開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。 
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。 

下に降りると、親父も来ていた。 
じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。そして、庭に何人かの男たちがいた。 

ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、 
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。 

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」 
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。 

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。
車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。 

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。 

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」 

またあの声が聞こえてきた。 
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いていたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。 

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。 
あの大股で付いてきているのか。 
頭はウインドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。 

無意識に「ヒッ」と声を出す。 
「見るな」と隣が声を荒げる。 

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。 

コツ、コツ、コツ 
ガラスを叩く音が始まる。 

周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。 
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。 
Kさんの念仏に力が入る。 

やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。 
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。 

やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。 
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。 
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。 
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。 

その後は親父と二人で自宅へ戻った。 
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。 
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。 
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。 

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。 
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。 
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったようだ。 

それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。 
道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。 

そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと念を押された。 

家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞 
いたが、そんなことはしていないと断言された。 
――やっぱりあれは… 
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。 

八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということ 
だ。まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのよ 
うなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。 

それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。 

「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通じる道のものがな」 

と、ばあちゃんから電話があった。 
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという) 

今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。 
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…

【洒落怖】【怖い話】みっつの選択

今日はエイプリルフールだ。特にすることもなかった僕らは、 
いつものように僕の部屋に集まると適当にビールを飲み始めた。 

今日はエイプリルフールだったので、退屈な僕らはひとつのゲームを思い付いた。嘘をつきながら喋る。 
そしてそれを皆で聞いて酒の肴にする。 
くだらないゲームだ。 
だけど、そのくだらなさが良かった。 

トップバッターは僕で、この夏ナンパした女が妊娠して実は今、一児の父なんだ、という話をした。 
初めて知ったのだが、嘘をついてみろ、と言われた場合、人は100%の嘘をつくことはできない。 
僕の場合、夏にナンパはしてないけど当時の彼女は妊娠したし、一児の父ではないけれど、 
背中に水子は背負っている。 
どいつがどんな嘘をついているかは、なかなか見抜けない。見抜けないからこそ、楽しい。 
そうやって順繰りに嘘は進み、最後の奴にバトンが回った。 
そいつは、ちびり、とビールを舐めると申し訳なさそうにこう言った。 

「俺はみんなみたいに器用に嘘はつけないから、ひとつ、作り話をするよ」 

「なんだよそれ。趣旨と違うじゃねえか」 
「まあいいから聞けよ。退屈はさせないからさ」 

そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。 
僕は朝起きて気付くと、何もない白い部屋にいた。 
どうしてそこにいるのか、どうやってそこまで来たのかは全く覚えていない。 
ただ、目を覚ましてみたら僕はそこにいた。 
しばらく呆然としながら状況を把握できないままでいたんだけど、急に天井のあたりから声が響いた。 

古いスピーカーだったんだろうね、ノイズがかった変な声だった。 
声はこう言った。 


『これから進む道は人生の道であり人間の業を歩む道。選択と苦悶と決断のみを与える。 
歩く道は多くしてひとつ、決して矛盾を歩むことなく』 

って。で、そこで初めて気付いたんだけど僕の背中の側にはドアがあったんだ。横に赤いべったりした文字で 

『進め』 
って書いてあった。 

『3つ与えます。 
ひとつ。右手のテレビを壊すこと。 
ふたつ。左手の人を殺すこと。 
みっつ。あなたが死ぬこと。 

ひとつめを選べば、出口に近付きます。 
あなたと左手の人は開放され、その代わり彼らは死にます。 
ふたつめを選べば、出口に近付きます。 
その代わり左手の人の道は終わりです。 
みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、 
あなたの道は終わりです』 

めちゃくちゃだよ。どれを選んでもあまりに救いがないじゃないか。 
馬鹿らしい話だよ。でもその状況を馬鹿らしいなんて思うことはできなかった。 
それどころか僕は恐怖でガタガタと震えた。 
それくらいあそこの雰囲気は異様で、有無を言わせないものがあった。 
そして僕は考えた。 
どこかの見知らぬ多数の命か、すぐそばの見知らぬ一つの命か、一番近くのよく知る命か。 
進まなければ確実に死ぬ。 
それは『みっつめ』の選択になるんだろうか。嫌だ。 
何も分からないまま死にたくはない。 
一つの命か多くの命か?そんなものは、比べるまでもない。 
寝袋の脇には、大振りの鉈があった。 
僕は静かに鉈を手に取ると、ゆっくり振り上げ 
動かない芋虫のような寝袋に向かって鉈を振り下ろした。 
ぐちゃ。鈍い音が、感覚が、伝わる。 
次のドアが開いた気配はない。もう一度鉈を振るう。 
ぐちゃ。顔の見えない匿名性が罪悪感を麻痺させる。 
もう一度鉈を振り上げたところで、かちゃり、と音がしてドアが開いた。 
右手のテレビの画面からは、色のない瞳をした餓鬼がぎょろりとした眼でこちらを覗き返していた。 
次の部屋に入ると、右手には客船の模型、左手には同じように寝袋があった。床にはやはり紙がおちてて、 
そこにはこうあった。 

『3つ与えます。 

ひとつ。右手の客船を壊すこと。 

ふたつ。左手の寝袋を燃やすこと。 

みっつ。あなたが死ぬこと。 

ひとつめを選べば、出口に近付きます。 
あなたと左手の人は開放され、その代わり客船の乗客は死にます。 

ふたつめを選べば、出口に近付きます。 
その代わり左手の人の道は終わりです。 

みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、 
あなたの道は終わりです』 


客船はただの模型だった。 
普通に考えれば、これを壊したら人が死ぬなんてあり得ない。 
けどその時、その紙に書いてあることは絶対に本当なんだと思った。 
理由なんてないよ。ただそう思ったんだ。 
僕は、寝袋の脇にあった灯油を空になるまでふりかけて、用意されてあったマッチを擦って灯油へ放った。 
ぼっ、という音がして寝袋はたちまち炎に包まれたよ。 
僕は客船の前に立ち、模型をぼうっと眺めながら、鍵が開くのをまった。 

2分くらい経った時かな、もう時間感覚なんかはなかったけど、人の死ぬ時間だからね 。たぶん2分くらいだろう。 

かちゃ、という音がして次のドアが開いた。 

左手の方がどうなっているのか、確認はしなかったし、したくなかった。 

次の部屋に入ると、今度は右手に地球儀があり、左手にはまた寝袋があった。 
僕は足早に紙切れを拾うと、そこにはこうあった。 
『3つ与えます。 

ひとつ。右手の地球儀を壊すこと。 

ふたつ。左手の寝袋を撃ち抜くこと。 

みっつ。あなたが死ぬこと。 


ひとつめを選べば、出口に近付きます。 
あなたと左手の人は開放され、その代わり世界のどこかに核が落ちます。 

ふたつめを選べば、出口に近付きます。 
その代わり左手の人の道は終わりです。 

みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、 
あなたの道は終わりです』 


思考や感情は、もはや完全に麻痺していた。 
僕は半ば機械的に寝袋脇の拳銃を拾い撃鉄を起こすと、すぐさま人差し指に力を込めた。 
ぱん、と乾いた音がした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。 
リボルバー式の拳銃は6発で空になった。初めて扱った拳銃は、コンビニで買い物をするよりも手軽だったよ。 


ドアに向かうと、鍵は既に開いていた。何発目で寝袋が死んだのかは知りたくもなかった。 

最後の部屋は何もない部屋だった。 
思わず僕はえっ、と声を洩らしたけど、ここは出口なのかもしれないと思うと少し安堵した。やっと出られる。そう思ってね。 

すると再び頭の上から声が聞こえた『最後の問い。 

3人の人間とそれを除いた全世界の人間。そして、君。 
殺すとしたら、何を選ぶ』 

僕は何も考えることなく、黙って今来た道を指差した。 

するとまた、頭の上から声がした。 

『おめでとう。 
君は矛盾なく道を選ぶことができた。 
人生とは選択の連続であり、匿名の幸福の裏には匿名の不幸があり、匿名の生のために匿名の死がある。 
ひとつの命は地球よりも重くない。 

君はそれを証明した。 
しかしそれは決して命の重さを否定することではない。 
最後に、ひとつひとつの命がどれだけ重いのかを感じてもらう。 
出口は開いた。 
おめでとう。 

おめでとう。』 


僕はぼうっとその声を聞いて、安心したような、虚脱したような感じを受けた。とにかく全身から一気に力が抜けて、フラフラになりながら最後のドアを開けた。 

光の降り注ぐ眩しい部屋、目がくらみながら進むと、足にコツンと何かが当たった。 

三つの遺影があった。 

父と、母と、弟の遺影が。 



これで、おしまい。 

彼の話が終わった時、僕らは唾も飲み込めないくらい緊張していた。 
こいつのこの話は何なんだろう。 
得も言われぬ迫力は何なんだろう。 
そこにいる誰もが、ぬらりとした気味の悪い感覚に囚われた。 
僕は、ビールをグっと飲み干すと、勢いをつけてこう言った。 
「……んな気味の悪い話はやめろよ!楽しく嘘の話をしよーぜ!ほら、お前もやっぱり何か嘘ついてみろよ!」 
そういうと彼は、口角を釣り上げただけの不気味な笑みを見せた。 
その表情に、体の底から身震いするような恐怖を覚えた。 
そして、口を開いた 
「もう、ついたよ」 
「え?」 












「『ひとつ、作り話をするよ』」 


をわり 

【洒落怖】【怖い話】リゾートバイト 3

おんどうの隙間から光が差し込んできて、夜が明けたと分かっても、俺達は顔を上げられずそこに座っていた。
雀の鳴き声も、遠くから聞こえる民家の生活音も、すべてが俺の心臓に突き刺さる。
ここから出て生きていけるのか、本気でそう思ったくらいだ。
本格的に太陽の光が中に入りこんできた頃、遠くからこっちに近づいてくる足音が聞こえた。
俺達は完全に身構え体制に入った。
足音はすぐ近くまで来ると、おんどうの裏へ回り入り口の前で止まった。
息を呑んでいると、ガタガタっと音がし、「キィーッ」と音を立てて扉が開いた。
そこに立っていたのは、坊さんだった。
坊さんは俺達の姿を見つけると、一瞬泣きそうな顔をして、「よく、頑張ってくれました」と言った。
あの時の坊さんの目は、俺一生忘れないと思う。
本当に本当に優しい目だった。
俺は不覚にも腰を抜かしていた。
そして、いい年こいてわんわん泣いた。
坊さんは、俺達の汗と尿まみれのおんどうの中に迷わず入って来て、そして俺達の肩を一人一人抱いた。
その時坊さんの僧衣?から、なんか懐かしい線香の香りがして、ああ、俺達、生きてるって心の底から思った。
そこでまた俺子供のように泣いた。

しばらくしても立ち上がれない俺を見て、坊さんはおっさんを呼んできてくれた。
そして2人に肩を抱えられながら、前日に居た一軒家に向かった。
途中、行く時に見た大きな寺の横を通ったんだが、その時俺達3人は叫び声を聞いた。
低く、そして急に高くなって叫ぶ人の声だった。
家の玄関に着くと耳元でAが囁いた。
A「さっきのあれ、女将さんの声じゃね?」
まさかと思ったが、確かに女将さんの声に聞こえなくもなかった。
だが俺はそれどころじゃないほど疲れていたわけで。
早く家に上げて欲しかったんだが、玄関に出てきた女の人がすげー不快そうに俺達を見下しながら、
「すぐお風呂入って」って言うんだわ。
まーしょうがない。だって俺達有り得んくらい臭かったしね。
そして俺達は3人仲良く風呂に入った。
まあ怖かった。いきなり一人になる勇気はさすがになかった。

風呂を上がると見覚えのある座敷に通され、そこに3枚の布団が敷いてあった。『まず寝ろ』ということらしかった。
ここは安全だという気持ちが自分の中にあったし、極限に疲れていたせいもあった。
というか、理屈よりまず先に体が動いて、俺達は布団に顔を埋めてそのまま泥のように眠った。
俺は眠りに入る中で、まったくもってどうでもいいことを思った。
起きたらあいつらに、俺達が帰るって電話しなきゃな。
旅行の準備満タンでスタンバイする友達2人は、俺達が今こうして死にそうな思いをしていたことを知らない。
もちろん、旅行計画がオジャンになることも。
そういえば、おんどうから出る時俺はBに聞いたんだ。
俺「B、もう、見えないよな?」
するとBは確かな口調で答えた。
B「ああ、見えない。助かったんだ。ありがとう」
おれはその最後の一言を聞いて、Bが小便を垂らしたことは内緒にしておいてやろうと思った。
俺達は助かったんだ。その事実だけで十分だった。

あの後、俺達は死んだように眠り、坊さんの声で目を覚ました。
坊「皆さん、起きれますか?」
特別寝起きが悪いAをいつものように叩き起こし、俺達は坊さんの前に3人正座した。
坊「皆さん、昨日は本当によく頑張ってくれました。無事、憑き祓いを終えることができました」
そう言って坊さんは優しく笑った。
俺達はその言葉に何と言っていいか分からず、曖昧な笑顔を坊さんに向けた。
聞きたいことは山ほどあったのに、何も言い出せなかった。
すると坊さんは俺達の心中を察したのか、
坊「あなたたちには、全てお話しなくてはなりませんね。お見せしたい物があります」と言って立ち上がった。
坊さんは家を出ると、俺達を連れて寺の方に向かった。

石段を上る途中、Bはキョロキョロと辺りを警戒する仕草を見せた。
それにつられて俺も、昨日見たアイツの姿を思い出して同じ行動を取った。
それに気づいた坊さんは俺達に聞いた。
坊「もう大丈夫のはずです。どうですか?」
B「大丈夫・・何も見えません」
俺「俺も平気です」
その返事を聞くと、坊さんはにっこりと笑った。

大きな寺に着くと、ここが本堂だと言われた。
坊さんの後ろに続いて寺の横にある勝手口から中に入り、さっきまで居た座敷とさほど変わらない部屋に通された。
坊さんは俺達にここで少し待つように言うと、部屋を出て行った。
Bは落ち着かないのか貧乏揺すりを始めた。
暫くすると、坊さんは小さな木箱を手に戻って来た。
そして俺達の対面に腰を下ろすと、「今回の事の発端をお見せしますね」と言って箱を開けた。
3人で首を伸ばして箱の中を覗き込んだ。
そこには、キクラゲがカサカサに乾燥したような、黒く小さい物体が綿にくるまれていた。
AB俺「何だこれ?」
よく見てみるが分からない。
だがなんとなく、どっかで見たことのある物だと思った。
俺は暫く考え、咄嗟に思い出した。
昔、俺がまだ小さい頃、母親がタンスの引き出しから、大事そうに木の箱を持ってきたことがあった。
そして箱の中身を俺に見せるんだ。すげー嬉しそうに。
箱の中には綿にくるまれた黒くて小さな物体があって、俺はそれが何か分からないから母親に尋ねたんだ。
そしたら母親は言ったんだ。
「これはねぇ、臍(へそ)の緒って言うんだよ。お母さんと、○○が繋がってた証」
俺は子供心に、なんでこんなの大事そうにしてるんだろ?って思った。
目の前にあるその物体は、あの時に見た臍の緒に似ているんだと思った。
A「これ何ですか?」
坊「これは、臍の緒ですよ」
というか、似てるもなにも臍の緒だった。
A「俺初めて見たかも」
B「おれ見たことある」
俺「俺も」
坊「みなさん親御さんに見せてもらったのでしょう。こういうものは、大切に取っておく方が多いですから」
 この臍の緒も、それはそれは大切に保管されていたものなのです」
俺たちは黙って坊さんの話を聞いていた。
坊「母親の胎内では、親と子は臍の緒で繋がっております。
 今ではその絆や出産の記念にと、それを大切にする方が多いですが、
 臍の緒には色々な言い伝えがあり、昔はそれを信じる者も多かったのです」
B「言い伝え?」
坊「そうです。昔の人はそういう言い伝えを非常に大切にしておりました。今となっては迷信として語られるだけですが」
そう前置きをして、坊さんは臍の緒に関する言い伝えを教えてくれた。

主に『子を守る』という意味を持っているが、解釈は様々。
『子が九死に一生の大病を患った際に煎じて飲ませると命が助かる』とか、
『子に持たせるとその子を命の危険から守る』というのがあって、
親が子供を想う気持ちが込められているところでは共通しているらしい。
俺たちはその話を聞いて、「へぇ~」なんて間抜けな返事をしていた。
坊さんは一息入れると、微かに口元を上げて言った。
坊「ひとつ、この土地の昔話をしてもよろしいですか?今回の事に関わるお話として聞いいただきたいのです」
俺達は坊さんに頷いた。
ここから坊さんの話が始まる。
結構長くて、正確には覚えてない。所々抜け落ち部分があるかも。

坊「この土地に住む者も、臍の緒に纏わる言い伝えを深く信じておりました。
 土地柄、ここでは昔から、漁を生業として生活する者が多くおりました。
 漁師の家に子が生まれると、その子は物心がつく頃から、親と共に海に出るようになります。
 ここでは、それがごく普通のしきたりだったようです。
 漁は危険との隣り合わせであり、我が子の帰りを待つ母親の気持ちは、私には察するに余りありますが、
 それは深く辛いものだったのでしょう。
 母親達はいつしか、我が子に御守りとして、臍の緒を持たせるようになります。
 海での危険から命を守ってくれるように、
 そして行方のわからなくなったわが子が、自分の元へと帰ってこれるようにと」
俺「帰ってくる?」
俺は思わず口を挟んだ。
坊「そうです。まだ体の小さな子は、波にさらわれることも多かったと聞きます。
 行方の分からなくなった子は、何日もすると死亡したことと見なされます。
 しかし、突然我が子を失った母親は、その現実を受け入れることができず、
 何日も何日もその帰りを待ち続けるのだそうです。
 そうしていつからか、子に持たせる臍の緒には、
 『生前に自分と子が繋がっていたように、子がどこにいようとも自分の元へ帰ってこれるように』と、
 命綱の役割としての意味を孕むようになったのだと言います」
皮肉な話だと思った。
本来海の危険から身を守る御守りとしての役割を成すものが、いざ危険が起きたときの命綱としての意味も持ってる。
母親はどんな気持ちで子どもを送り出してたんだろうな。
坊「実際、臍の緒を持たせていた子が行方不明になり、無事に帰ってくることはなかったそうです。
 しかしある日、『子供が帰ってきた』と涙を流して喜ぶ、1人の母親が現れます。
 これを聞いた周囲の者はその話を信用せず、とうとう気が狂ってしまったかと哀れみさえ抱いたそうです。
 何故なら、その母親が海で子を失ったのは、3年も前のことだったからです」
B「どこかに流れついて、今まで生きてたとかじゃないんですか?」
坊「そうですね。始めはそう思った者もいたようです。
 そして母親に、子供の姿を見せてほしいと言い出した者もいたそうなのです」
B「それで?」
坊「母親はその者に言ったそうです。『もう少ししたら見せられるから待っていてくれ』と」
どういう意味だ?
帰って来たら見せられるはずじゃないのか?
俺はこの時、理由もなく鳥肌が立った。
坊「もちろん、その話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、
 子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができず、
 そのまま引き下がるしかできなかったそうです。
 しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。
 そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
 村の者達は困惑し始めます。
 前日の母親は既に夫が他界し、本当のところを確かめる術が無かったのですが、この別の母親には夫がおりました。
 そこで村の者達は、この夫に真相を確かめるべく、話を聞くことになったそうです。
 するとその夫は言ったそうです。『そんな話は知らない』と。
 母親の喜びとは反対に、父親はその事実を全く知らなかったのです。
 村人達が更に追求しようとすると、『人の家のことに首を突っ込むな』と、ついには怒りだしてしまったそうです」
まあ、そうだよな。
何にせよ周りの人に家の中のことをごちゃごちゃ聞かれたら、いい気はしないだろうななんて思ったりもした。
坊「その後何日かすると、ある村の者が、
 最初に子が戻ってきたと言い出した母親が、昨晩子共を連れて海辺を歩く姿を見たと言い出します。
 暗くてあまり良く見えなかったが、手を繋ぎ隣にいる子供に話しかけるその姿は、本当に幸せそうだったと。
 この話を聞いた村の者達は皆、これまでの非を詫びようと、そして子が戻ってきたことを心から祝福しようと、
 母親の家に訪ねに行くことにしたそうです。
 家に着くと、中から満面の笑顔で母親が顔を出したそうです。
 村の者達はその日来た理由を告げ、何人かは頭を下げたそうです。
 すると母親は、『何も気にしていません。この子が戻って来た、それだけで幸せです』と言いながら、
 扉に隠れてしまっていた我が子の手を引き寄せ、皆の前に見せたそうです。
 その瞬間、村の者達はその場で凍りついたそうです」
AB俺「・・・」
坊「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。
 そして体はあり得ない程に膨らみ、腫れ上がった瞼の隙間から白目が覗き、
 辛うじて見える黒目は、左右別々の方向を向いていたそうです。
 そして口から何か泡のようなものを吹きながら、母親の話しかける声に寄生を発していたそうです。
 それはまるで、カラスの鳴き声のようだったと聞きます。
 村の者達は、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、
 恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです。
 散り散りに逃げた村の者達はその晩、村の長の家に集まり出します。
 何か得体の知れないものを見た恐怖は誰一人収まらず、それを聞いた村の長は自分の手には負えないと判断し、
 皆を連れてある住職の元へ行くことにします。
 その住職というのが、私のご先祖に当たる人物らしいのですが・・・
 相談を受けた住職は事の重大さを悟り、すぐさま母親の元に向かいます。
 そして母親の横に連れられた子を見るや、母親を家から引きずり出し、寺へと連れて帰ったそうです。
 その間も、その子は住職と母親の後をずっと付いてきて、奇声を発していたのだとか。
 寺に着くと、まず結界を強く張った一室に母親を入れ、話を聞こうとします。
 しかし、一瞬でも子と離れた母親は、その不安からかまともに話をできる状態ではなかったと聞きます。
 ついには子供を返せと、住職に向かってものすごい剣幕で怒鳴り散らしたのだそうです」
A「それでどうなったんですか?」
坊「子を想う母は強い。
 住職が本気で押さえ込もうとしたその力を跳ね飛ばし、そのまま寺を飛び出してしまったのだそうです」
坊さんは少し情けなそうな顔をしてそう言った。
坊「その後、村の者と従者を何人か連れて、母親の家に行きましたが、そこに母と子の姿はなかったそうです。
 そして家の中には、どこのものかわからない札が至る所に貼り付けられ、
 部屋の片隅には、腐った残飯が盛られ異臭が立ち込めていのだとか」
この時俺は思った。あの旅館の2階で見たものと同じだと。
坊「そこに居た皆は同じことを思いました。母親は子を失った悲しみから、ここで何かしらの儀を行っていたのだと。
 そして信じ難いことだが、その産物としてあのようなモノが生まれたのだと。
 その想いを悟った村の者達は、母親の行方を村一丸になって捜索します。
 住職はすぐさま従者を連れ、もう一人の母親の家に向かいますが、こちらも時既に遅しの状態だったそうです。
 得体の知れないモノに語りかけ、子の名前を呼ぶ母親に恐怖する父親。
 その光景を見た住職は、経を唱えながらそのモノに近づこうとしますが、
 子を守る母親は住職に白目を向き、奇声を発しながら威嚇してきたのだそうです」
現実味のない話だったのに、なぜかすごく汗ばんだ。
坊「村の者は恐れ、一歩も近寄れなかったと言います。
 しかし住職とその従者は、臆することなくその母親とそのモノに近づき、興奮する母親を取り押さえ寺へ連れ帰ります。
 暴れる母親を抱えながら、背後から付いて来るモノに経を唱え、道に塩を盛りながら少しずつ進んだのだそうです。
 寺に着くと、住職は母親をおんどうへ連れて行き、体を縛りその中に閉じ込めたのだそうです」
A「そんなことを・・・」
Aが哀れみの声を出した。
坊「仕方がなかったのです。親と子を離すのが先決だった、そうしなければ何もできなかったのでしょう」
坊さんがしたことではないが、Aは坊さんから顔を背けた。
少しの沈黙の後、坊さんは続けた。
坊「母親の体には自害を防ぐための処置が施されたようですが、その詳細は分かりません。
 その後、おんどうの周りに注連縄を巻きつけ、住職達はその周りを取り囲むようにして座り、経を唱え始めたそうです。
 中から母親の呻き声が聞こえましたが、その声が子に気づかれぬよう、全員で大声を張り上げながら経を唱えたそうです」
 住職達が必死に経を唱える中、いよいよ子の姿が現れます。
 子は親を探し、おんどうの周りをぐるぐると回り始めます。
 何を以って親の場所を捜すのか、果たして経が役目を成すのかもわからない状態で、
 とにかく住職達は必死に経を唱えたのです」
そこで坊さんは一息ついた。
B「それで、どうなったんですか?」
Bの声は恐る恐るといった感じだった。
坊「おんどうの周りを回っていたそのモノは、次第に歩くことを困難とし、四足歩行を始めたそうです。
 その後、四肢の関節を大きく曲げ、蜘蛛のように地を這い回ったそうです。
 それはまるで、人間の退化を見ているようだったと。
 その後、なにやら呻き声を上げたかと思うと、
 そのモノの四肢は失われ、芋虫のような形態でそこに転がっていたのだとか。
 そしてそのモノは、夜が明けるにつれて小さくすぼみ、最終的に残ったのが、臍の緒だったのです」

俺は坊さんの話に聞き入っていた。
まるで自分達の話に毛が生えて、昔話として語られているような感覚だった。
するとAが聞いたんだ。
A「え、もしかしてその臍の緒って・・・」
すると坊さんは静かに答えた。
坊「今朝、おんどう奥の岩の上に転がっていたものです」
B「マジかよ・・」
Bは呆然として呟いた。
俺「なんで?なんで俺達なんですか?」
坊「詳しくはわかりません。
 この寺には、代々の住職達の手記が残されていますが、
 母親でない者にこのような現象が起きた事例は、見当たりませんでした。
 何より、肝心の母親の行った儀式について、これがまだ謎に包まれたままなのです」
B「母親に聞かなかったんですか?」
坊「聞かなかったのではなく、聞けなかったのです」
ポカンとしていると坊さんはまた話し始めた。
坊「住職達がおんどうを開け中を確認すると、疲れ果ててぐったりした母親がいたそうです。
 子を求めて一晩中叫んでいたのでしょう。
 すぐさま母親を外に運びだし手当てをしましたが、目を覚ました時には、母親は完全に正気を失っておりました。
 二度も子を失った悲しみからなのか、はたまた何か禍々しいモノの所為なのか、それも分かりかねますが。
 そして村の者が捜索していたもう一人の母親ですが、
 一晩経を読み上げ疲れ果てた住職達の元に、発見の知らせが届いたそうです。
 近海の岸辺に、遺体となって打ち上げられていたと。
 母親は体中を何かに食い破られており、それでいて顔はとても幸せそうだったとあります。
 何が起きたのかはわかりませんが、住職の手記にはこうありました。
 『子に食われる母親の最後は、完全な笑顔だった』と」
信じられないような話なんだが、俺達は坊さんの話す言葉一つ一つをそのまま飲み込んだ。
坊「遺体となって見つかった母親の家は、村の者達による話し合いで取り壊されることとなり、
 その際に家の中から、母親の書いたものらしいメモが見つかったそうです」
そう言って坊さんは、そのメモの内容を俺達に説明してくれた。
簡単に言うと、儀式を始めてからの我が子を記録した、成長記録のようなものだったそうだ。
どんな風に書かれていたのかは憶測でしかないんだが、内容は覚えているので以下に書く。わかりづらいかも。

○月?日 堂の作成を開始する
×月?日 変化なし

・・・

△月?日 △△(子の名前)が帰ってくる
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ

この成長記録に、母親の心情がビッシリと書き連ねてあったらしい。
ちなみに、もう一人の母親は、屋根裏に堂を作っていたらしく、父親はその存在に全く気づいていなかったのだそうだ。

坊「私もすべてを理解しているとは言えませんが、この母親の成長記録と住職の手記を見比べると、
 そのモノは、自分の成長した過程を遡るようにして、退化していったと考えられませんか?」
確かにその通りだと思った。
そして坊さんは、それ以上の言及を避けるように話を続けた。
坊「これ以降手記には非常に稀ですが、同じような事象の記述が見られます。
 だがその全てに、母親達がいつどのようにしてこの儀を知るのかが、明記されていないのです。
 それは全ての母親が、命を落とす、若しくは、話すこともままならない状態になってしまったことを、意味しているのです」
坊さんは、早期に発見できないことを悔やんでいると言った。
坊「今回の現象は初めてのことで、私自身もとても戸惑っているのです。
 何故母親ではないあなたが、そのモノを見つけてしまったのか。
 子の成長は母親にしか分からず、共に生活する者にも、それを確認することはできないはずなのです」
そんなデタラメな話有りなのか?と思った。
そしてBが、話の核心を知ろうと恐る恐る質問した。
B「あの、母親って、・・・もしかして女将さんなんですか?」
坊さんは少し黙り、答えた。
坊「その通りです。
 真樹子さんは、この村出身の者ではありません。○○さん(旦那さんの名前)に嫁ぎこの村にやってきました。
 息子を一人儲け、非常に仲の良い家族でした」
そう言って話してくれた坊さんの話の内容は、大方予想が付いていたものだった。
女将さんの一人息子は、数年前のある日海で行方不明になったそうだ。
大規模な捜索もされたが、結局行方は分からなかったらしい。
悲しみに暮れた女将さんは、周囲から慰めを受け、少しずつだが元気を取り戻していったそうだ。
旅館もそれなりに繁盛し、周囲も事件のことを忘れかけた頃、急に旅館が2階部分を閉鎖することになったんだって。
周りは不振に思ったが、そこまで首を突っ込むことでもないと、別段気にすることはなかったそうだ。
そしてこの結果だ。
女将さんはどこから情報を得たのか不明だが、あの2階へ続く階段に堂を作り上げ、そこで儀式を行っていた。
そしてその産物が俺達に憑いてきたという訳だが、ここがこれまでの事例と違うのだと坊さんは言った。
本来儀式を行った女将さんに憑くはずの子が、第3者の俺達に憑いたんだ。
考えられる違いは、女将さんは息子に臍の緒を持たせていなかったということ。
そこの村の人達は、昔からの風習で未だに続けている人もいるらしいが、女将さんはその風習すら知らなかった。
これは旦那さんが証言していたらしい。
そして妙な話だが、旅館の2階を閉鎖したというのに、バイトを3人も雇った。
旦那さんも初めは反対したそうだが、
女将さんに「息子が恋しい。同年代くらいの子達がいれば、息子が帰ってきたように思える」と泣きつかれ、
渋々承知したそうなんだ。
これは坊さんの憶測なんだが、
女将さんは初めから、帰ってきた息子が俺達を親として憑いていくことを知っていたんではないか、ということだった。
結局これらのことを俺達に話した後、坊さんはこう言った。
坊「あなた達をあのおんどうに残したこと、本当に申し訳なく思います。
 しかし私は、真樹子さんとあなた達の両方を救わなければならなかった。
 あなた達がここにいる間、私達は真樹子さんを本堂で縛り、先代が行ったように経を読み上げました。
 あのモノがおんどうへ行くのか、本堂へ来るのか分からなかったのです」
つまり、俺達に憑いてきてはいるが、これまでの事例からいくと母親の女将さんにも危険が及ぶと、
坊さんはそう読んでいたってことだ。
俺は別に坊さんが謝ることじゃないと思った。
それにこの人は命の恩人だろ?と思ってBを見ると、肩を震わせながら坊さんを睨み付けて言ったんだ。
B「納得いかない。自分の息子が帰ってくりゃ人の命なんてどーでもいいのか?」
坊「・・・」
B「全部吐かせろよ!なんでこんな目に遭わせたのか、それができないなら俺が直接会って聞いてやる」
 旦那さんだって知ってたんだろ?それなのに何で言わなかったんだ?」
坊「○○さんは知らなかったのです」
B「嘘つくな。知ってるようなこと言ってたんだ」
坊「この話は、この土地には深く根付いています。○○さんが知っていたのは伝承としてでしょう」
坊さんが嘘を吐いているようには見えなかった。
だがBの興奮は収まりきらなかったんだ。
B「ふざけんじゃねーぞ。早く会わせろ。あいつらに会わせろよ!」
俺達はBを取り押さえるのに必死だった。
坊さんは微動だにせず、Bの怒鳴り声を静かに聞いていた。
そして、
坊「この話をすると決めた時点で、あなた達には全てをお見せしようと思っておりました。
 真樹子さんのいる場所へ案内します」
と言って立ち上がったんだ。

坊さんの後を付いてしばらく歩いた。
本堂の中にいるかと思っていたんだが、渡り廊下みたいなのを渡って離れのような場所に通された。
近づくにつれて、なにやら呻き声と何人かの経を唱える声が聞こえてきた。
そしてその声と一緒に、バタンッバタンという音が聞こえた。かなりでかかった。
離れの扉の前に立つと、その音はもうすぐそこで鳴っていて、中で何が起きているのかと俺は内心びくびくしていた。
そして坊さんが離れの扉を開けると、そこには女将さん一人と、それを取り囲む坊さん達が居た。
俺達は全員、言葉を発することができなかった。
女将さんはそこに居たというか・・・なんか跳ねてた。エビみたいに。うまく説明できないんだが。
寝た状態で、畳の上で、はんぺんみたいに体をしならせて、ビタンビタンと跳ねていたんだ。
人間のあんな動きを俺は初めてみた。
そして時折、苦しそうにうめき声を上げるんだ。
俺は怖くて女将さんの顔が見れなかった。
正直、前の晩とは違う、でもそれと同等の恐怖を感じた。
呆然とする俺達に坊さんは言った。
坊「この状態が、今朝から収まらないのです」
するとAが耐え切れなくなり、「俺、ここにいるのキツイです」と言ったので、一旦外に出ることになった。
音を聞くことさえ辛かった。
つい昨日の朝に見た女将さんの姿とは、まるで別人の様になっていた。

そこから少し離れたところで、俺達は坊さんに尋ねた。憑き物の祓いは成功したのではないかと。
坊「確かに、あなた達を親と思い憑いてきたものは、祓うことができたのだと思います。
 現にあなた達がいて、ここに臍の緒がある。しかし・・・」
すると急にBが言ったんだ。
B「そうか・・・俺が見たのは、1つじゃなかったんだ」
初めは何のことを言ってるのかわからなかったんだが、そのうちに俺もピンときた。
Bはあの時、2階の階段で複数の影を見たと言っていなかったか?
坊「1つではないのですか?」
坊さんは驚いたように聞き返し、Bがそうだと答えるのを見ると、また少し黙った。
そして暫く考え込んでいたかと思うと、急に何かを思い出したような顔をして、俺達に言ったんだ。
坊「あなた達は鳥居の家に行ってください。そしてあの部屋を一歩も出ないでください。後で人を行かせます」
ポカンとする俺達を置いて、坊さんはそのまま女将さんのいる離れの方に走って行った。
俺達は急に置いてけぼりを食らい、暫く無言で突っ立っていた。
すると離れの方から、複数の坊さんが大きな布に包まった物体を運び出しているのが見えた。
その布の中身がうねうねと動いて、時折痙攣しているように見えた。
あの中にいるのは女将さんだと全員が思った。
そのままおんどうの方に運ばれていく様を、俺達は呆然と見ていたんだ。
ふとお互い顔を見合わせると、途端に怖くなり、俺たちは早足で家に向かった。
そこからは、説明することが何も無いほど普通だった。
家に行って暫くすると、別の坊さんがやって来て「ここで一晩過ごすように」と言われた。
そしてその坊さんは俺たちの部屋に残り、微妙な雰囲気の中4人で朝を迎えたというわけ。

次の朝、早めに目が覚めた俺達がのん気にめざにゅ~を見ていると、坊さんがやって来た。
俺達は坊さんの前に並んで話を聞いた。
坊さんは俺達の憑き祓いは完全に終わったと言った。
昨日言っていた通り、俺達に憑いてきたモノは一匹で、それは退化を遂げて消滅したのを確認したんだと。
俺達はそれを聞いて安堵した。
しかし坊さんはこう続けた。
女将さんを救うことができなかったと。
泣きそうなのか怒っているのか、なんとも言えない表情を浮かべてそう言った。
死んだのかと聞くと、そうではないと言うんだ。
俺はその言葉から、女将さんが跳ね回っている姿を思い出した。
ずっとあの状態なのか・・?
恐る恐るそれを聞くと、坊さんは苦い顔をしただけで、肯定も否定もしなかった。
女将さんの今の状態は、憑きものを祓うとかそういう次元の話ではなく、何かもっと別のものに起因してるんだって。
詳しくは話してくれなかったんだが、女将さんが行った儀式は、この地に伝わる『子を呼び戻す儀』と似て非なるものらしい。
どこかでこの儀の存在と方法を知った女将さんは、息子を失った悲しみからこれを実行しようと試みる。
だが肝心の臍の緒は自分の手元にあったわけだ。
こっからは坊さんの憶測なんだが、女将さんはこれを試行錯誤しながら、完成系に繋げたんじゃないかということだった。
自分の信念の元に。
そしてそこから得た結果は、本来のものとは別のものだった。
堂には複数のモノがおり、そこに息子さんがいたかは分からないと。
坊さんが言ってた。
この儀の結末は、非常に残酷なものでしかないんだと。
それを重々承知の上で、母親達は時にその禁断の領域に足を踏み入れてしまう。
子を失う悲しみがどれ程のものなのか、我々には推し量ることしかできないが、
心に穴の開いた母親がそこを拠り所としてしまうのは、いつの時代にもあり得ることなのではないかと。
Bは女将さんのこれからを執拗に聞いていたが、坊さんは何も分からないの一点張りで、
俺たちは完全に煙に巻かれた状態だった。

俺達が坊さんと話終えると、部屋に旦那さんが入ってきた。
俺は正直ぎょっとした。
顔が土色になって、明らかにやつれ切った顔をしてたんだ。
そして、俺達の前に来ると泣きながら謝って来た。
泣きすぎて何を言ってるのかは全部聞き取れなかったんだけど、俺達は旦那さんのその姿を見て誰も何も言えなかった。
俺達に申し訳ないことをしたと泣いているのか、それとも女将さんの招いた結果を思って泣いているのか、
どっちだったんだろうな。今となってはわかんねーな。
その後、俺達は何度も坊さんに確認した。
これ以降俺達の身には何も起きないのか?と。
すると坊さんは、困ったような顔をしながら「大丈夫」だと言った。

その後、坊さんの所にタクシーを呼んでもらって俺達は帰ることになった。
一応、昨日の朝俺を家まで運んでくれたおっさんが、駅まで同乗してくれることになったんだが。
このおっさんがやたら喋る人で、それまでの出来事で気が沈んでる俺達の空気を一切読まずに、一人で喋くりまくるんだ。
そんでこのおっさんは、「それにしても、子が親を食うなんて、蜘蛛みたいな話だよなぁ」と言ったんだ。
俺達は胸糞悪くなって黙ってたんだけど、おっさんは一人で続けた。
「お前達、ここで聞いた儀法は試すんじゃねーぞ。自己責任だぞ」
そう言って笑うんだ。
俺達の気持ちを和らげようとして言ってるのか、本気でアホなのかわかんなかったけど、一つ確かなことがあった。
俺達は、坊さんに真実を隠されて教えられたんだ。
儀の方法は、その結果と一緒にこの地に伝わってるんだ。
このおっさんが知ってて坊さんが知らないはずないだろ?
そう思うと、これだけの体験をさせといて、結局は大事なところを隠して話されたことにすげーショックを受けた。
坊さんを信用していた分、なんか怒りにも似たものが湧き上がってきたんだ。
タクシーが駅に着くと、おっさんが金を払うと言ったが俺達は断った。
早くこの場所から逃げ出したい、その一心だった。
坊さんが「大丈夫」と言った一言も、全部嘘に思えてきた。
それでも俺達には、あの寺に戻る勇気はなくて、帰りの電車をただただ無言で待つことしかできなかったんだ。

その後、帰って来てからはなんともない。
まあ、なんともないからここに書き込めてるわけだけど。
「もう2度とあの場所へは行かない」
3人で話してると必ず1回はその言葉が出てくるくらい、俺達にとってトラウマになった出来事だったんだ。
あと、Bはあれから蜘蛛を見るのがどうもダメらしい。成長過程のアイツの姿を見てるからね。
俺はと言うと、今は普通に社会人やってます。若干暗闇が苦手になったくらい。
人間のど元過ぎれば熱さ忘れるって、あながち間違いじゃないかもしれないな。

本当の本当に後日談なんだが、その話を残りの友達2人に話したんだ。
2人とも俺達3人の様子を見て、一応信じてはくれたんだけど。
でもそいつらその後に、興味半分で旅館に電話を掛けてみたんだって。(最低だろ)
そしたら、電話に出たのは普通のおばさんだったらしい。
そいつら俺達に言うんだよ。女将さんか確認しろって。そんで、後ろでカラスが異様に鳴いてるって言うんだ。
絶対無理だと思った。女将さんが無事でも無事じゃなくても、俺にはその後を知る勇気なんか出なかった。

リゾートバイト 1
リゾートバイト 2

【洒落怖】【怖い話】リゾートバイト 2

話が決まったからには俺達は即行動した。
荷物は前の晩のうちにまとめてある。あとは部屋の掃除をするだけで良かった。
バイトを始めてから、仕事が終われば近くの海で遊んだり、疲れてる日には戻ってすぐに爆睡だったんで、
部屋にいる時間はあまりなかったように思う。
だから男3人の部屋といえど、元からそんなに汚れているわけでもなかった。
そんなこんなで、一時間ほどの掃除をすれば部屋も大分綺麗になった。

準備ができたということで、俺達は広間に戻り女将さんたちに挨拶をすることにした。

広間に着くと女将さんと旦那さん、そして悲しそうな顔をした美咲ちゃんが座っていた。
俺達は3人並んで正座し、
俺「短い間ですが、お世話になりました。勝手言ってすみません」
俺AB「ありがとうございました」と言って頭を下げた。
すると女将さんが腰を上げて、俺達に近寄りこう言った。
「こっちこそ、短い間だったけどありがとうね。これ、少ないけど・・・」
そう言って茶封筒を3つ、そして小さな巾着袋を3つ手渡してきた。
茶封筒は思ったよりズッシリしてて、巾着袋はすごく軽かった。
そして後ろから美咲ちゃんが「元気でね」と、ちょっと泣きそうな顔しながら言うんだ。
そして、「みんなの分も作ったから」って、3人分のおにぎりを渡してくれた。
おいおい止めてくれ。泣いちゃうよ俺!
そう思ってあんまり美咲ちゃんの顔を見れなかった。
前日で死にそうな思いしたのにまさかのセンチって思うだろ?
だけど、実際すげー世話になった人との別れって、その時はそういうの無しになるものなんだわ。

挨拶も済んで、俺達は帰ることになった。
行きは近くのバス停までバスを使って来たんだが、帰りはタクシーにした。
旦那さんが車で駅まで送ってくれるって話も出たんだが、Bが断った。
そして美咲ちゃんに頼んでタクシーを呼んでもらった。

タクシーが到着すると、女将さんたちは車まで見送りに来てくれた。
周りから見ればなんとなく感動的な別れに見えただろうが、実際俺達は逃げ出す真っ最中だったんだよな。
タクシーに乗り込む前に、俺は振り返った。
かろうじて見えた2階への階段のドア。目を凝らすと、ほんの少し開いてるような気がして思わず顔を背けた。
そして3人とも乗り込み、行き先を告げた後すぐ車が動き出した。

旅館から少し離れると、急にBが運転手に行き先を変更するよう言ったんだ。
運転手になにかメモみたいなものを渡して、「ここに行ってくれ」と。
運転手はメモを見て怪訝な顔をして聞いてきた。
「大丈夫?結構かかるよ?」
B「大丈夫です」
Bはそう答えると、後部座席でキョトンとしているAと俺に向かって、
B「行かなきゃいけないとこがある。お前らも一緒に」と言った。
俺とAは顔を見合わせた。考えてることは一緒だったと思う。
どこへ行くんだ・・?
だが、朝のBの様子を見た後だったんで、正直気が引けて何も聞けなかった。
またキレ出すんじゃないかとびびってたんだ。

しばらく走っていると、運転手さんが聞いてきた。
「後ろ走ってる車、お客さんたちの知り合いじゃない?」
え?と思って振り返ると、軽トラックが一台後ろにぴったりくっついて走っていた。
そして中から手を振っていたのは旦那さんだった。
俺達は何か忘れ物でもしたのかと思い、車を止めてもらえるよう頼んだ。
道の端に車が止まると、旦那さんもそのまますぐ後ろに軽トラを止めた。
そして出てくると俺達のところに来て、「そのまま帰ったら駄目だ」と言った。
B「帰りませんよ。こんな状態で帰れるはずないですから」
Bと旦那さんはやけに話が通じあっていて、Aと俺は完全に置いてけぼりを食らった。
俺「え、どういうこと?」
なにがなにやらわからんかったので、素直に質問した。
すると旦那さんは俺のほうを向き、まっすぐ目を見つめて言った。
旦「おめぇ、あそこ行ったな?」
心臓がドクンって鳴った。
なんで知ってんの?
この時は本気で怖かった。
霊的なものじゃなくて、なんていうか、大変なことをしてしまったっていう思いがすごくて。
俺は「はい」と答えるだけで精一杯だった。
すると旦那さんは、ため息をひとつ吐くと言った。
旦「このまま帰ったら完全に持ってかれちまう。なぁんであんなとこ行ったんだかな。
 まあ、元はと言えば、俺がちゃんと言わんかったのが悪いんだけどよ」
おい、『持ってかれる』ってなんだ。勘弁してくれよ。
ここから帰ったら楽しい夏休みが待ってるはずだろ?
不安になってAを見た。Aは驚くような目で俺を見ていた。
さらに不安になってBを見た。
するとBは言うんだ。
B「大丈夫。これから御祓いに行こう。そのためにもう向こうに話してあるから」
信じられなかった。
憑かれていたってことか?
何だよ俺死ぬのか?この流れは死ぬんだよな?
なんであんなとこ行ったんだって?行くなと思うなら始めから言ってくれ。
あまりの恐怖で、自分の責任を誰か他の人に転嫁しようとしていた。
呆然としている俺を横目に、旦那さんは話を進めた。
旦「御祓いだって?」
B「はい」
旦「おめぇ、見えてんのか」
B「・・・」
A「おい、見えてるって・・・」
B「ごめん。今はまだ聞かないでくれ」
俺は思わずBに掴みかかった。
俺「いい加減にしろよ。さっきから何なんだよ!」
旦那さんが割って入る。
旦「おいおい止めとけ。おめぇら、逆にBに感謝しなきゃならねぇぞ」
A「でも、言えないってことないんじゃないすか?」
旦「おめぇらはまだ見えてないんだ。一番危ないのはBなんだよ」
俺とAは揃ってBを見た。
Bは困ったような顔をしてそこにいた。
俺「どうしてBなんですか?実際にあそこに行ったのは俺です」
旦「わかってるさ。でもおめぇは見えてないんだろ?」
俺「さっきから見えてるとか見えてないとか、なんなんですか?」
旦「知らん」
俺「はぁ!?」
トンチンカンなことを言う旦那さんに対して俺はイラっとした。
旦「真っ黒だってことだけだな、俺の知ってる情報は。だがなぁ・・」
そう言って旦那さんはBを見る。
旦「御祓いに行ったところで、なんもなりゃせんと思うぞ」
Bは疑いの目を旦那さんに向けて聞いた。
B「どうしてですか?」
旦「前にもそういうことがあったからだな。でも、詳しくは言えん」
B「行ってみなくちゃわからないですよね?」
旦「それは、そうだな」
B「だったら」
旦「それで駄目だったら、どうするつもりなんだ?」
B「・・・」
旦「見えてからは、とんでもなく早いぞ」
『早い』という言葉が何のことを言っているのか、俺にはさっぱりわからなかった。
だが、旦那さんがそういった後、Bは崩れ落ちるようにして泣き出したんだ。
声にならない泣き声だった。
俺とAは傍で立ち尽くすだけで何もできなかった。
俺達の異様な雰囲気を感じ取ったのか、タクシーの窓を開けて中から運転手が話しかけてきた。
「お客さんたち大丈夫ですか?」
俺達3人は何も答えられない。Bに限っては道路に伏せて泣いてる始末だ。
すると旦那さんが、運転手に向かってこう言った。
旦「あぁ、すまんね。呼び出しておいて申し訳ないんだが、こいつらはここで降ろしてもらえるか?」
運転手は「え?でも・・」と言って、俺達を交互に見た。
その場を無視して旦那さんはBに話しかける。
旦「俺がなんでおめぇらを追いかけてきたかわかるか?
 事の発端を知る人がいる。その人のとこに連れてってやる。
 もう話はしてある。すぐ来いとのことだ」
 時間がねぇ。俺を信じろ」
肩を震わせ泣いていたBは精一杯だったんだろうな、顔をしわくちゃにして声を詰まらせながら言った。
B「おねが・・っ・・します・・・」
呼吸ができていなかった。
男泣きでもなんでもない、泣きじゃくる赤ん坊を見ているようだった。
昨日の今日だが、Bは一人で何かものすごい大きなものを抱え込んでいたんだと思った。
あんなに泣いたBを見たのは、後にも先にもこの時だけだ。
Bのその声を聞いた俺は、運転手に言った。
俺「すいません。ここで降ります。いくらですか?」

その後、俺達は旦那さんの軽トラに乗り込んだ。
といっても、俺とAは後の荷台なわけで。乗り心地は史上最悪だった。
旦那さんは俺達が荷台に乗っているにも関わらず、有り得んほどにスピードを出した。
Aから軽く女々しい悲鳴を聞いたがスルーした。

どれくらい走ったのか分からない。あんまり長くなかったんじゃないかな。
まあ正直、それどころじゃないほど尾てい骨が痛くて覚えていないだけなんだが。
着いた場所は普通の一軒家だった。
横に小さな鳥居が立っていて、石段が奥の方に続いていた。
俺達の通されたのはその家の方で、
旦那さんは呼び鈴を鳴らして待っている間、俺達に「聞かれたことにだけ答えろ」と言った。
旦「おめぇら、口が悪いからな。変なこと言うんじゃねぇぞ」
俺は思った。この人にだけは言われる筋合いがないと。
少し待つと、家から一人の女の人が出てきた。
年は20代くらいの普通の人なんだけど、額の真ん中にでっかいホクロがあったのがすごく印象的だった。

その女の人に案内されて通されたのは、家の一角にある座敷だった。
そこには一人の坊さん(僧って言うのか?)と、一人のおっさん、一人のじいさんが座っていた。
俺達が部屋に入るなり、おっさんが「禍々しい」と呟いたのが聞こえた。
旦「座れ」
旦那さんの掛け声で俺達は、坊さんたちが並んで座っている丁度向かい側に3人並んで座った。
そして旦那さんがその隣に座った。
するとじいさんは口を開いた。
「○○(旅館の名前)の旦那、この子ら全部で3人かね?」
旦「えぇ、そうなんですわ。このBって奴は、もう見えてしまってるんですわ」
旦那さんがそう言った瞬間、おっさんとじいさんは顔を見合わせた。
すると坊さんが口を開いた。
坊「旦那さん、堂に行ったというのは彼ですか?」
旦「いえ。実際行ったのはこの○○(俺の名前)って奴で」
坊「ふむ」
旦「Bは下から覗いていただけらしいんです」
坊「そうですか」
そして少し黙ったあと、坊さんはBに聞いたんだ。
坊「あなたは、この様な経験は初めてですか?」
Bが聞き返す。
B「この様な経験?」
坊「そうです。この様に、霊を見たりする体験です」
B「え・・ないです」
坊「そうですか。不思議なこともあるものです」
B「・・俺」
Bが何か喋ろうとしていた。
そこにいた全員がBを見た。
坊「はい」
B「俺・・・死ぬんでしょうか?」
そう言ったBの腕は、正座した膝の上で突っ張っているのにガクガクと震えていた。
すると坊さんは静かに答えた。
坊「そうですね。このままいけば、確実に」
Bは言葉を失った様子だった。震えが急に止まって、畳を一点食い入るように見つめだした。
それを見たAが口を挟んだ。
A「死ぬって」
坊「持って行かれるという意味です」
意味を説明されたところで俺達はわからない。何に何を持って行かれるのか。
更に坊さんは続けた。
坊「話がわからないのは当然です。○○くんは、堂へ行った時に何か違和感を感じませんでしたか?」
坊さんが堂といっているのは、どうやらあの旅館の2階の場所らしかった。
それで俺は答えた。
俺「音が聞こえました。あと、変な呼吸音が。2階のドアには、お札の様なものが沢山貼ってありました」
坊「そうですか。気づいているかも知れませんが、あそこには人ではないものがおります」
あまり驚かなかった。事実、俺もそう思っていたからだ。
坊「恐らくあなたは、その人ではないものの存在を耳で感じた。
 本来ならば、人には感じられないものなのです。誰にも気づかれず、ひっそりとそこにいるものなのです」
そう言うと、坊さんはゆっくりと立ち上がった。
坊「Bくん、今は見えていますか?」
B「いえ。ただ音が、さっきから壁を引っかく音がすごくて」
坊「ここには入れないということです。幾重にも結界を張っておきました。その結界を必死に破ろうとしているのですね」
 しかし、皆がいつまでもここに留まることは出来ないのです。
 今からここを出て、おんどう(ごめん音でしかわからない)へ行きます。
 Bくん、ここから出れば、またあのものたちが現れます」
 また苦しい思いをすると思います。
 でも必ず助けますから、気をしっかり持って付いて来てくださいね」
Bはカクカクと首を縦に振っていた。

そうして坊さんに連れられて俺達は、その家を出てすぐ隣の鳥居をくぐり、石段を登った。
旦那さんは家を出るまで一緒だったが、おっさんたちと何やら話をした後、坊さんに頭を下げて行ってしまった。
知ってる人がいなくなって一気に心細くなった俺達は、3人で寄り添うように歩いた。
特にBは目を左右に動かしながら背中を丸めて歩いていて、明らかに憔悴しきっていた。
だから俺達は、できる限りBを真ん中にして二人で守るように歩いた。

石段を上り終わる頃、大きな寺が見えてきた。
だが坊さんはそこには向かわず、俺達を連れて寺を右に回り奥へと進んだ。
そこにはもう一つ鳥居があり、更に石段が続いていた。
鳥居をくぐる前に坊さんがBに聞いた。
坊「Bくん、今はどんな感じですか?」
B「二本足で立っています。ずっとこっちを見ながら、付いてきてます」
坊「そうか、もう立ちましたか。よっぽどBくんに見つけてもらえたのが嬉しかったんですね。
 ではもう時間がない。急がなくてはなりませんね」

そして石段を上り終えると、さっきの寺とは比べ物にならない位小さな小屋がそこにあり、
坊さんはその小屋の裏へ回ると、俺達を呼んだ。
俺達も裏へ回ると坊さんは、ここに一晩入り憑きモノを祓うのだと言った。
そして、中には明りが一切ないこと、夜が明けるまでは言葉を発っしてはならないことを伝えてきた。
坊「もちろん、携帯電話も駄目です。明りを発するものは全て。食ったり寝たりすることもなりません」
どうしても用を足したくなった場合はこの袋を使用するようにと、変な布の袋を渡された。
俺は目を疑った。布って・・・
だが坊さん曰く、中から液体が漏れないようになっているらしい。
信じ難かったが、そこに食いついてもしょうがないので大人しくしといた。

その後、俺達に竹の筒みたいなものに入った水を一口ずつ飲ませ、自分も口に含むと俺達に吹きかけてきた。
そして、小さな小屋の中に入るように言った。
俺達は順番に入ろうとしたんだが、Bが入る瞬間、口元を押さえて外に飛び出して吐いたんだ。
突然のことで驚いた俺達だったが、坊さんが慌てた様子で聞いてきた。
坊「あなたたち、堂に行ったのは今日ではないですよね?」
俺「え?昨日ですけど」
坊「おかしい、一時的ではあるが身を清めたはずなのに、おんどうに入れないとは」
言ってる意味がよく分からなかった。
すると坊さんはBのヒップバッグに目をつけ、
坊「こちらに滞在する間、誰かから何かを受け取りましたか?」と聞いてきた。
俺は特に思い浮かばず、だがAが言ったんだ。
A「今日給料もらいましたけど」
当たり前すぎて忘れてた。
そういえば給料も貰いものだなって妙に感心したりして。
俺「あ、あと巾着袋も」
A「おにぎりも。もらい物に入るなら」
給料を貰った時に、女将さんにもらった小さな袋を思い出した。
そして美咲ちゃんには、朝おにぎりを作って貰ったんだった。
坊さんはそれを聞くと、Bに話しかけた。
坊「Bくん、それのどれか一つを今、持っていますか?」
B「おにぎりはデカイ鞄の方に入れてありますけど、給料と袋は今持ってます」
Bはそう言って、バッグからその二つを取り出した。
坊さんはまず巾着袋を開けた。
すると「これは・・」と言って、俺達に見えるように袋の口を広げた。
中を覗き込んで俺達は息を呑んだ。
そこには、大量の爪の欠片が詰まっていたんだ。
俺の足に張り付いていたものと一緒だった。見覚えのある、赤と黒ずんだものだった。
Bはその場ですぐまた吐いた。俺もそれに釣られて吐いた。
周辺が汚物の匂いでいっぱいになり、坊さんも顔を歪めていた。
坊さんはBの持ち物を全て預かると言い、俺達2人も持ち物を全て出すように言った。
俺は携帯と財布を坊さんに手渡し、旅行鞄の方に入っている巾着袋を処分してもらえるよう頼んだ。
坊さんは頷き、再度Bに竹筒の水を飲ませ、吹きかけた。

そして俺達3人がおんどうの中に入ると、
坊「この扉を開けてはなりません。皆、本堂のほうにおります。明日の朝まで、誰もここに来ることはありません。
 そして、壁の向こうのものと会話をしてはなりません。このおんどうの中でも言葉を発してはなりません。
 居場所を教えてはなりません。
 これらをくれぐれもお守りいただけますよう、お願いします」
そう言って俺達の顔を見渡した。
俺達は頷くしかなかった。
この時既に言葉を発してはならない気がして、怖くて何も言えなかったんだ。
坊さんは俺達の様子を確認すると、扉を閉め、そのまま何も言わず行ってしまった。

おんどうの中はひんやりしていた。
実際ここで飲まず食わずでやっていけるのかと不安だったが、これなら一晩くらいは持ちそうだと思った。
建物自体はかなり古く、壁には所々に隙間があった。といっても結構小さいものだけど。
まだ昼時ということもあり、外の光がその隙間から入り、AとBの顔もしっかり確認できた。
顔を見合わせても何も喋ることができないという状況は、生まれて初めてだった。
『大丈夫だ』という意味を込めて俺が頷くと、AもBも頷き返してくれた。

しばらくすると顔を見合わせる回数も少なくなり、終いにはお互い別々の方向を向いていた。
喋りたくても喋れないもどかしさの中、後どれくらいの時間が残っているのか見当も付かない俺達は、
ただただ呆然とその場にいることしかできなかったんだ。
途方もない時間が過ぎていると感じているのに、まだ外は明るかった。
するとAがゴソゴソと音を立て出した。
何をしているのかと思い、あまり大きな音を出す前に止めさせようと思ってAの方に向き直ると、
Aは手に持った紙とペンを俺達に見せた。
こいつは坊さんの言うことを聞かずに、密かにペンを隠し持っていたのだ。
そして紙は、板ガムの包み紙だった。
まあメモ用紙なんて持っているはずない俺達なので、きっとそれしか思い浮かばなかったんだろう。
こいつ何やってんだよ・・・
一瞬そう思った俺だが、意思の疎通ができないこの状況で極限に心細くなっていた所為もあり、
Aの取った行動に何も言う事が出来なかった。
むしろ、ひとつの光というか、上手く説明できないんだが、とにかくすごく安心したのを覚えてる。
Aはまず自分で紙に文字を書き、俺に渡してきた。
『みんな大丈夫か?』
俺はAからペンを受け取り、なるべく小さく、スペースを空けるようにして書き込んだ。
『俺は今のところ大丈夫、Bは?』
そしてBに紙とペンを一緒に手渡した。
『俺も今は平気。何も見えないし聞こえない。』
そしてAに紙とペンが戻った。
こんな感じで、俺達の筆談が始まったんだ。
A『ガム残り4枚。外紙と銀紙で8枚。小さく文字書こう』
俺『OK。夜になったらできなくなるから今のうちに喋る』
B『わかった』
A『今何時くらい?』
俺『わからん』
B『5時くらい?』
A『ここ来たの1時くらいだった』
俺『なら4時くらいか』
B『まだ3時間か』
A『長いな』
こんな感じで他愛もない話をして、1枚目が終わった。
するとAが書いてきた。
A『○○文字でかい』
俺は謝る仕草を見せた。
するとAは俺にペンを渡してきたので、『腹減った』と書き込みBに渡した。
そしてBが何も書かずにAに紙を渡した。
するとAは『俺も』と書いて俺に渡してきた。
あれだけ心細かったのに、いざ話すとなるとみんな何も出てこなかった。
俺は日が沈む前に言っておかなければならないことを書いた。
俺『何があっても、最後までがんばろうな』
B『うん』
A『俺、叫んだらどうしよう』
俺『なにか口に突っ込んどけ』
B『突っ込むものなんてないよ』
A『服脱いでおくか』
俺『てか、何も起きない、そう信じよう』
Bは俺の書いた言葉にはノーコメントだった。
俺も書いたあと、自分で何を言ってるんだろうと思った。
坊さんは、何も起きないとは一言も言っていなかった。
むしろ、これから何が起こるのかを予想しているような口ぶりで、俺達にいくつも忠告をしたんだ。
そう考えると俺達は、一刻も早く時間が過ぎてくれることを願っている一方で、
本当の本当は、夜を迎えるのがすごく怖かったんだ。
夜だけじゃない、あの時ああしてる時間も、本当は怖くてしょうがなかった。
唯一の救いが、互いの存在を目視できるということだっただけで。
俺の一言で空気が一気に重くなった。
俺はこの空気をどうにかしようと、Bの持っていた紙とペンをもらい、
俺『何か喋れ時間もったいない』と書いてAに渡した。他人任せもいいとこ。
Aは一瞬困惑したが、少し考えて書き出し、俺に渡してきた。
A『じゃあ、帰ったら何するか』
俺『いいね。俺はまずツタヤだな』
B『なんでツタヤ?』
俺『DVD返すの忘れてた』
A『どんだけ延泊!?』
まあ嘘だった。どうにかして気を紛らわせたかったから、なんでもいいやって適当に書いた。
結果、雰囲気はほんの少しだが和み、AもBもそれぞれ帰ったら何をするかを書いた。

少しずつだが、ゆっくりと俺達は静かな時間を過ごした。
そして残りの紙も少なくなった頃、Bはある言葉を紙に書いた。
B『俺は坊さんに言われたことを必ず守る。死にたくない』
俺もAも、最後の言葉を見つめてた。
俺は『死にたくない』なんて言葉、生まれてこの方本気で言ったことなんかない。きっとAもそうだろう。
死ぬなんて考えていなかったからだ。
死を間近に感じたことがないからだ。
それを今目の前で心の底から言うヤツがいる。その事実がすごく衝撃的だった。
俺はBの目をしっかりと見つめ、頷いた。
その後は特に何も話さなかったが、不思議と孤独感はなかった。
お互いの存在を感じながら、俺達は日が暮れるのを感じていた。

何もせずにいると蝉の鳴き声がうるさくて、でも徐々に耳が慣れて気にならなくなった。
でも、なんか違和感なんだ。よく耳を凝らすと、なにか他の音が聞こえるんだ。
さらに耳を凝らすと、段々その音がクリアに聞こえるようになった。
俺は考えるより先に確信した。あの呼吸音だって。
Bを見た。薄暗くて分かりづらかったが、Bに気づいている気配はなかった。
Bには聞こえないのか?
そういえばBって呼吸音について言ってたっけ?
もしかしてあれは聞いたことがないのか?
それとも単に気づいていないだけか?
頭の中で色々な考えが浮かんだ。
すると硬直する俺の様子に気づいたBが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
この状況の中で、神経が過敏にならないはずがなかった。俺の異変にすぐ気づいたんだ。
するとBの視線が一点に止まった。俺の肩越しをまっすぐ見つめていた。
白目が一気にデカくなり、大きく見開いているのがわかった。
AもBの様子に気が付き、Bの見ている方を見ていたが、何も見つけられないようだった。
俺は怖くて振り返れなかった。
それでも、あの呼吸音だけは耳に入ってくる。
ソレがすぐそこにいることがわかった。動かず、ただそこで「ひゅーっひゅーっ」といっていた。
しばらく硬直状態が続くと、今度は俺達のいるおんどうの周りを、ズリズリとなにか引きずるような音が聞こえ始めたんだ。
Aはこの音が聞こえたらしく、急に俺の腕を掴んできた。
その音はおんどうの周りをぐるぐると回り、
次第に呼吸音が「きゅっ・・・・きゅえっ・・」っていう、何か得体の知れない音を挟むようになった。
俺には音だけしか聞こえないが、ソレがゆっくりとおんどうの周りを徘徊していることは分かった。
Aの腕から心臓の音が伝わってくるのを感じた。
Bを確認する余裕がなかったが、固まってたんだと思う。
全員微動だにしなかった。
俺は恐怖から逃れるために、耳を塞いで目を瞑っていた。
頼むから消えてくれと、心の中でずっと願っていた。

どれくらい時間が経ったかわからない。ほんの数分だったかも知れないし、そうでないかも知れない。
目を開けて周りを見回すと、おんどうの中は真っ暗で、ほぼ何も見えない状態だった。
そしてさっきまでのあの音は消えていた。
恐怖の波が去ったのか、それともまだ周りにいるのか、判断がつかず動けなかった。
そして目の前に広がる深い闇が、また別の恐怖を連れて来たんだ。
目を凝らすが何も見えない。
『いるか?』『大丈夫か?』の掛け声さえ出せない。
ただAはずっと俺の腕を握ってたので、そこにいるのが分かった。
俺はこの時猛烈にBが心配になった。Bは明らかに何かを見ていた。
暗がりの中でBを必死に探すが見えない。
俺はAに掴まれた腕を自分の左手に持ち直し、Aを連れてBのいた方へソロソロと歩き出した。
なるべく音を立てないように、そしてAを驚かせないように。
暗すぎて意思の疎通ができないんだ。
誰かがパニックになったら終わりだと思った。
どこにいるか全くわからないので、左手にAの腕を持ったまま、右手を手前に伸ばして左右にゆっくり振りながら進んだ。
すると指先が急に固いものに当たり、心臓がボンっと音を立てた。
手に触れたそれは、手触りから壁だということがわかった。
おかしい、Bのいた方角に歩いてきたのにBがいない。
俺は焦った。さらに壁を折り返してゆっくりと進んだ。だがまた壁に行き着いた。
途方に暮れて泣きそうになった。
『Bどこだ』の一言を何度も飲み込んだ。
どうしていいかわからなくなり、その場に立ち尽くしたままAの腕を強く握った。
すると、今度はAが俺の腕を掴み、ソロソロと歩き出したんだ。
まず、Aは壁際まで行くと、掴んだ俺の腕を壁に触らせた。
そしてそのままゆっくりと壁沿いを移動し、角に着いたら進路を変えてまた壁沿いに歩く。
そうやっていくうちに、前を歩くAがぱたりと止まった。そして俺の腕をぐいっと引っ張ると、何か暖かいものに触れさせた。
それは小刻みに震える人の感触だった。
Bを見つけたと思った。
でもすぐ後に、これは本当にBなのか?という疑問が芽生えた。
よく考えたらAもそうだ。ずっと近くにいたが、実際俺の腕を掴んでいるのはAなのか?
俺は暗闇のせいで、完全に疑心暗鬼に陥っていた。
俺が無言でいると、Aはまた俺の腕を掴み、ソロソロと歩き出した。
俺はゆっくりとついていった。
すると、ほんの僅かだが、視界に光が見えるようになった。
不思議に思っていると、部屋にある隙間から少しだけ月の明かりが入ってきているのが目に入った。
Aはそこへ俺達を連れて行こうとしているのだと思った。
何故気づかなかったのか、今思っても不思議なんだ。
暗闇に目が慣れるというのを聞いたことがあったけど、恐怖に呑まれてそれどころじゃなかった。
ほんとに真っ暗だったんだ。
とにかく、その時俺はその光を見て心の底から救われた気持ちになった。
そしてAに感謝した。
後から聞いたんだが、
A「俺は見えもしなかったし、聞こえもしなかった。なんか引きずってる音は聞こえたんだけどな。
 でもそのおかげで、お前達よりは余裕があったのかも」
と言っていた。
大した奴だって思った。
光の下に来ると、Aの反対側の手にBの腕が握られているのが見えた。
月明かりで見えたBの顔は、汗と涙でぐっしょり濡れていた。
何があったのか、何を見たのか、聞くまでもなかった。
夜は昼と違ってすごく静かで、遠くで鈴虫が鳴いていた。
俺達はしばらくそこでじっとしていた。
恥ずかしながら、3人で互いに手を取り合う格好で座った。ちょうど円陣を組む感じで。
あの状態が一番安心できる形だったんだと思う。
そして何より、例え僅かな光でも、相手の姿がそこに確認できるだけで別次元のように感じられたんだ。

しばらくそうしていると、とうとう予想していたことが起きた。Aが催したのだ。
生理現象だから絶対に避けられないと思っていた。
Aは自分のズボンのポケットから坊さんに貰った布の袋をゴソゴソと取り出すと、立ち上がって俺達から少し離れた。
静寂の中、Aの出す音が響き渡る。
なんか、まぬけな音に若干気が抜けて、俺もBも顔を見合わせてニヤっとした。
その瞬間だった。
「Bくん」
AB俺『・・・』
一瞬にして体に緊張が走る。
するとまた聞こえた。
俺達がおんどうに入った扉のすぐ外側からだった。
「Bくん」
俺達は声の主が誰か一瞬で分かった。
今朝も聞いた美咲ちゃんの声だった。
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
こちらの様子を伺うように、少し間を空けながら喋りかけてくる。
抑揚が全くなく、機械のようなトーンだった。
Bの手にぐっと力が入るのが分かった。
「Bくん」
「・・・」
しばらくの沈黙の後、突然関を切ったように、
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
「Bくん」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
と、同じ言葉を何度も何度も繰り返すようになった。
尋常じゃないと思った。
恐かった。美咲ちゃんの声なのに、すげー恐かった。
坊さんは、おんどうには誰も来ないと俺達に言っていた。
そしてこの無機質な喋り方だ。
扉の外にいるのは、絶対に美咲ちゃんじゃないと思った。
気づくとAが俺達の側に戻り、俺とBの腕を掴んだ。
力が入ってたから、こいつにも聞こえてるんだと思った。
俺達は3人で、おんどうの扉の方を見つめたまま動けなかった。
その間もその声は繰り返し続く。
「いらっしゃいませ~」
「Bくん」
「おにぎり作ってきたよ」
そしてとうとう、扉がガタガタと音を出して揺れ始めた。
おい、ちょ、待て。
扉の向こうのヤツは、扉をこじ開けて入ってくるつもりなんだと思った。
俺は扉が開いたらどうするかを咄嗟に考えた。
全速力で逃げる、坊さんたちは本堂にいるって言ってたからそこまで逃げて・・・おい本堂ってどこだ、とか。
もうここからどうやって逃げるかしか考えてなかった。
やがてそいつは、ガンガンと扉に体当たりするような音を立てだした。無機質な声で喋りながら。
そしてそのまま少しずつ、おんどうの壁に沿って左に移動し始めたんだ。
一定時間そうした後にまた左に移動する。その繰り返しだった。
何してるんだ・・?
不思議に思っていると、俺はあることに気づいた。
俺達のいる壁際には隙間が開いている。
そしてそいつは今そこにゆっくりと向かっている。
もし隙間から中が見えたら?
もし中からアイツの姿が見えたら?
そう考えると居ても立ってもいられなくなり、俺は2人を連れて急いで部屋の中央に移動した。
移動している。ゆっくりと、でも確実に。
心臓の音さえ止まれと思った。
ヤツに気づかれたくない。
いや、ここにいることはもう気づかれているのかもしれないけど。
恐怖で歯がガチガチといい始めた俺は、自分の指を思いっきり噛んだ。
そして俺は、隙間のある場所に差し掛かったそいつを見た。
見えたんだ。月の光に照らされたそいつの顔を、今まで音でしか感じられなかったそいつの姿を。
真っ黒い顔に、細長い白目だけが妙に浮き上がっていた。
そして体当たりだと思っていたあの音は、そいつが頭を壁に打ち付けている音だと知った。
そいつの顔が一瞬壁の隙間から消える。外でのけぞっているんだろう。
そしてその後すぐ、ものすごい勢いで壁にぶち当たるんだ。
壁にぶち当たる瞬間も白目をむき出しにしてるそいつから、俺は目が離せなくなった。
金縛りとは違うんだ、体ブルブル動いてたし。
ただ見たことのない光景に、目を奪われていただけなのかも知れないな。
あの勢いで頭を壁にぶつけながら、それでも淡々と喋り続けるそいつは、完全に生きた人間とはかけ離れていた。
結局、そいつは俺達が見えていなかったのか、
隙間の場所でしばらく頭を打ち付けた後、さらにまた左へ左へと移動していった。
俺の頭の中で残像が音とシンクロし、そいつが外で頭を打ち付けている姿が鮮明に想像できた。
正直なところ、そいつがどれくらいそこに居たのかを俺は全く覚えていない。
残像と現実の区別がつけられない状態だったんだ。
後から聞いた話だと、そいつがいなくなって静まりかえった後、3人ともずっと黙っていたらしい。
Aは警戒したから。
Bは恐怖のため動けなかったから。
そして俺は、残像の中で延長戦が繰り広げられていたから。
そんでAが俺を光の場所へ連れていこうと腕を掴んだ時、体の硬直が半端なくて一瞬死んだと思ったらしい。
本気で死後硬直だと思ったんだって。
BはBで、恐怖で歯を食いしばりすぎて歯茎から血を流してた。
Aだけはやっぱり姿を見ていなかった。
あと、そいつはそこから遠ざかって行く時、カラスのように「ア゛ーっア゛ー」と奇声を発していたらしい。
その声はAだけが聞いていたんだけど。
そいつの2度の襲来によって、その後の俺達の緊張の糸が緩むことはなかった。
ただ、神経を張り巡らせている分、体がついていかなかった。
みんな首を項垂れて、目を合わすことは一切無かった。
Bは催したものをそのまま垂れ流していたが、Aと俺はそれを何とも思わなかった。
あんなに夜が長いと思ったのは生まれて初めてだ。
憔悴しきった顔を見たのも、見せたのも、もちろん人でないものの姿を見たのも。
何もかも鮮明に覚えていて、今も忘れられない。

リゾートバイト 1
リゾートバイト 3

【洒落怖】【怖い話】リゾートバイト 1

これは俺が大学3年の時の話。

夏休みも間近にせまり、大学の仲間5人で海に旅行に行こうって計画を立てたんだ。
計画段階で、仲間の一人がどうせなら海でバイトしないかって言い出して、
俺も夏休みの予定なんて特になかったから、二つ返事でOKを出した。
そのうち2人は、なにやらゼミの合宿があるらしいとかで、バイトはNGってことに。
結局、5人のうち3人が海でバイトすることにして、
残り2人は旅行として俺達の働く旅館に泊まりに来ればいいべって話になった。

それで、まずは肝心の働き場所を見つけるべく、3人で手分けして色々探してまわることにした。
ネットで探してたんだが、結構募集してるもんで、友達同士歓迎っていう文字も多かった。
俺達はそこから、ひとつの旅館を選択した。
もちろんナンパの名所といわれる海の近く。そこはぬかりない。
電話でバイトの申し込みをした訳だが、それはもうトントン拍子に話は進み、
途中で友達と2日間くらい合流したいという申し出も、
『その分いっぱい働いてもらうわよ』という女将さんの一言で難なく決まった
計画も大筋決まり、テンションの上がった俺達は、そのまま何故か健康ランドへ直行し、
その後友達の住むアパートに集まって、風呂上りのツルピカンの顔で、ナンパ成功時の行動などを綿密に打ち合わせた。

そして仲間うち3人(俺含む)が旅館へと旅立つ日がやってきた。
初めてのリゾートバイトな訳で、緊張と期待で結構わくわくしてる僕的な俺がいた。

旅館に到着すると、2階建ての結構広めの民宿だった。
一言で言うなら、田舎のばーちゃんち。
『○○旅館』とは書いてあるけど、まあ民宿だった。○○荘のほうがしっくりくるかんじ。
入り口から声をかけると、中から若い女の子が笑顔で出迎えてくれた。
ここでグッとテンションが上がる俺。
旅館の中は、客室が4部屋、みんなで食事する広間が1つ、
従業員住み込み用の部屋が2つで計7つの部屋があると説明され、俺達ははじめ広間に通された。
しばらく待っていると、若い女の子が麦茶を持ってきてくれた。
名前は「美咲ちゃん」といって、この近くで育った女の子だった。
それと一緒に入ってきたのが、女将さんの「真樹子さん」。
恰幅が良くて笑い声の大きな、すげーいい人。もう少し若かったら俺惚れてた。
あと旦那さんもいて、計6人でこの民宿を切り盛りしていくことになった。

ある程度自己紹介とかが済んで、女将さんが言った。
「客室は、そこの右の廊下を突き当たって左右にあるからね。
 そんであんたたちの寝泊りする部屋は、左の廊下の突き当たり。
 あとは荷物置いてから説明するから、ひとまずゆっくりしてきな」
ふと友達が疑問に思ったことを聞いた。(友達をA・Bってことにしとく)
A「2階じゃないんですか?客室って」
すると女将さんは、笑顔で答えた。
「違うよ。2階は今使ってないんだよ」
俺達は、今はまだシーズンじゃないからかな?って思って、特に気に留めてなかった。
そのうち開放するんだろ、くらいに思って。

部屋について荷物を下ろして、部屋から見える景色とか見てると、本当に気が安らいだ。
これからバイトで大変かもしれないけど、こんないい場所でひと夏過ごせるのなら全然いいと思った。
ひと夏のあばんちゅーるも期待してたしね。
そうして俺達のバイト生活が始まった。

大変なことも大量にあったが、みんな良い人だから全然苦にならなかった。
やっぱ職場は人間関係ですな。

1週間が過ぎたころ、友達の一人がこう言った。
A「なあ、俺達良いバイト先見つけたよな」
B「ああ、しかもたんまり金はいるしな」
友達二人が話す中俺も、
俺「そーだな。でももーすぐシーズンだろ?忙しくなるな」
A「そういえば、シーズンになったら2階は開放すんのか?」
B「しねーだろ。2階って女将さんたち住んでるんじゃないのか?」
俺とAは「え、そうなの?」と声を揃える。
B「いやわかんねーけど。でも最近女将さん、よく2階に飯持ってってないか?」
A「知らん」
俺「知らん」
Bは夕時、玄関前の掃き掃除を担当しているため、2階に上がる女将さんの姿をよく見かけるのだという。
女将さんはお盆に飯を乗っけて、そそくさと2階へ続く階段に消えていくらしい。
その話を聞いた俺達は「へ~」「ふ~ん」みたいな感じで、別になんの違和感も抱いていなかった。

それから何日かしたある日、いつもどおり廊下の掃除をしていた俺なんだが、
見ちゃったんだ。客室からこっそり出てくる女将さんを。
女将さんは基本、部屋の掃除とかしないんだ。そうゆうのするのは全部美咲ちゃん。
だから余計に怪しかったのかもしれないけど。
はじめは目を疑ったんだが、やっぱり女将さんで、
その日一日もんもんしたものを抱えていた俺は、結局黙っていられなくて友達に話したんだ。
すると、Aが言ったんだよ、
A「それ、俺も見たことあるわ」
俺「おい、マジか。なんで言わなかったんだよ」
B「それ、俺ないわ」
俺「じゃー黙れ」
A「だってなんか用あるんだと思ってたし、それに、疑ってギクシャクすんの嫌じゃん」
俺「確かに」
俺達はそのとき、残り1ヶ月近くバイト期間があった訳で。
3人で見てみぬふりをするか否かで話し合ったんだ。
そしたらBが「じゃあ、女将さんの後ろつけりゃいいじゃん」ていう提案をした。
A「つけるってなんだよ。この狭い旅館でつけるって、現実的に考えてバレるだろ」
B「まーね」
俺「なんで言ったんだよ」
AB俺「・・・」
3人で考えても埒があかなかった。
来週には残りの2人がここに来ることになってるし、何事もなく過ごせば楽しく過ごせるんじゃないかって思った。
だけど俺ら男だし。3人組みだし?
ちょっと冒険心が働いて、「なにか不審なものを見たら報告する」ってことで、その晩は大人しく寝たわけ。

そしたら次の日の晩、Bがひとつ同じ部屋の中にいる俺達をわざとらしく招集。
お前が来いや!!と思ったが、渋々Bのもとに集まる。
B「おれさ、女将さんがよく2階に上がるっていったじゃん?あれ、最後まで見届けたんだよ。
 いつも女将さんが、階段に入っていくところまでしか見てなかったんだけど、
 昨日はそのあと出てくるまで待ってたんだよ。
 そしたらさ、5分くらいで降りてきたんだ」
A「そんで?」
B「女将さんていつも俺らと飯くってるよな?
 それなのに盆に飯のっけて2階に上がるってことは、誰かが上に住んでるってことだろ?」
俺「まあ、そうなるよな・・・」
B「でも俺らは、そんな人見たこともないし、話すら聞いてない」
A「確かに怪しいけど、病人かなんかっていう線もあるよな」
B「そそ。俺もそれは思った。でも5分で飯完食するって、結構元気だよな?」
A「そこで決めるのはどうかと思うけどな」
B「でも怪しくないか?お前ら怪しいことは報告しろっていったじゃん?だから報告した」
語尾がちょっと得意げになっていたので俺とAはイラっとしたが、そこは置いておいて、
確かに少し不気味だなって思った。
2階にはなにがあるんだろう?
みんなそんな思いでいっぱいだったんだ。
次の日、いつもの仕事を早めに済ませ、俺とAはBのいる玄関先へ集合した。
そして女将さんが出てくるのを待った。
しばらくすると女将さんは盆に飯を載せて出てきて、2階に上がる階段のドアを開くと、奥のほうに消えていった。
ここで説明しておくと、2階へ続く階段は玄関を出て外にある。
1階の室内から2階へ行く階段は、俺達の見たところでは確認できなかった。
玄関を出て壁伝いに進み角を曲がると、そこの壁にドアがある。
そこを開けると階段がある。わかりずらかったらごめん。

とりあえずそこに消えてった女将さんは、Bの言ったとおり5分ほど経つと戻ってきて、お盆の上の飯は空だった。
そして俺達に気づかないまま1階に入っていった。
B「な?早いだろ?」
俺「ああ、確かに早いな」
A「なにがあるんだ?上」
B「知らない。見に行く?」
A「ぶっちゃけ俺、今ちょーびびってるけど?」
B「俺もですけど?」
俺「とりあえず行ってみるべ」
そう言って、3人で2階に続く階段のドアの前に行ったんだ。
A「鍵とか閉まってないの?」
というAの心配をよそに、俺がドアノブを回すとすんなり開いた。
「カチャ」
ドアが数センチ開き、左端にいたBの位置からならかろうじて中が見えるようになったとき、
B「うっ」
Bが顔を歪めて手で鼻をつまんだ。
A「どした?」
B「なんか臭くない?」
俺とAにはなにもわからなかったんだが、Bは激しく匂いに反応していた。
A「おまえ、ふざけてるのか?」
Aはびびってるから、Bのその動作に腹が立ったらしく、
でもBはすごい真剣で「いやマジで。匂わないの?ドアもっと開ければわかるよ」と言った。
俺は意を決してドアを一気に開けた。
モアっと暖かい空気が中から溢れ、それと同時に埃が舞った。
俺「この埃の匂い?」
B「あれ?匂わなくなった」
A「こんな時にふざけんなよ。俺、なにかあったら絶対お前置いてくからな。今心に決めたわ」
と、びびるAは悪態をつく。
B「いやごめんって。でも本当に匂ったんだよ。なんていうか・・生ゴミの匂いっぽくてさ」
A「もういいって。気のせいだろ」
そんな二人を横目に、俺はあることに気づいた。
廊下がすごい狭い。人が一人通れるくらいだった。
そして電気らしきものが見当たらない。外の光でかろうじて階段の突き当たりが見える。
突き当たりにはもうひとつドアがあった。
俺「これ、上るとなるとひとりだな」
A「いやいやいや、上らないでしょ」
B「上らないの?」
A「上りたいならお前行けよ。俺は行かない」
B「おれも、むりだな」
AがBをどつく。
俺「結局行かねーのかよ。んじゃー、俺行ってみる」
AB「本気?」
俺「俺こういうの、気になったら寝れないタイプ。寝れなくて真夜中一人で来ちゃうタイプ。
 それ完全に死亡フラグだろ?だから、今行っとく。」
訳のわからない理由だったが、
俺の好奇心を考慮すれば、今AとBがいるこのタイミングで確認するほうがいいと思ったんだ。
でも、その好奇心に引けを取らずして恐怖心はあったわけで。
とりあえず俺一人行くことになったが、なにか非常事態が起きた場合は、
絶対に(俺を置いて)逃げたりせず、真っ先に教えてくれっていう話になったんだ。
ただし、何事もないときは、急に大声を出したりするなと。
もしそうしてしまったときは、命の保障はできないとも伝えた。俺のね。

そんでソロソロと階段を上りだす俺。
階段の中は外からの光が差し込み、薄暗い感じだった。
慎重に一段ずつ階段を上り始めたが、途中から「パキっ・・・パキっ」と音がするようになった。
何事かと思い、怖くなって後ろを振り返り、二人を確認する。
二人は音に気づいていないのか、じっとこちらを見て親指を立てる。『異常なし』の意味を込めて。
俺は微かに頷き、再度2階に向き直る。
古い家によくある、床の鳴る現象だと思い込んだ。
下の入り口からの光があまり届かないところまで上ると、好奇心と恐怖心の均衡が怪しくなってきて、
今にも逃げ帰りたい気分になった。
暗闇で目を凝らすと、突き当たりのドアの前に何かが立っている・・・かもしれないとか、
そういう『かもしれない思考』が本領を発揮しだした。
「パキパキパキっ・・」
この音も段々激しくなり、どうも自分が何かを踏んでいる感触があった。
虫か?と思った。背筋がゾクゾクした。
でも何かが動いている様子はなく、暗くて確認もできなかった。
何度振り返ったかわからないが、途中から下の二人の姿が逆光のせいか、薄暗い影に見えるようになった。
ただ親指はしっかり立てていてくれた。

そしてとうとう突き当たりに差し掛かったとき、強烈な異臭が俺の鼻を突いた。
俺はBとまったく同じ反応をした。
俺「うっ」
異様に臭い。生ゴミと下水の匂いが入り混じったような感じだった。
なんだ?なんだなんだなんだ?そう思って当たりを見回す。
その時、俺の目に飛び込んできたのは、突き当たり踊り場の角に大量に積み重ねられた飯だった。
まさにそれが異臭の元となっていて、何故気づかなかったのかってくらいに蝿が飛びかっていた。
そして俺は半狂乱の中、もうひとつあることを発見してしまう。
2階の突き当たりのドアの淵には、ベニヤ板みたいなのが無数の釘で打ち付けられていて、
その上から大量のお札が貼られていたんだ。
さらに、打ち付けた釘になんか細長いロープが巻きつけられてて、くもの巣みたいになってた。
俺、正直お札を見たのは初めてだった。
だからあれがお札だったと言い切れる自信もないんだが、大量のステッカーでもないだろうと思うんだ。
明らかに、なにか閉じ込めてますっていう雰囲気全開だった。
俺はそこで初めて、自分のしたことは間違いだったんだと思った。
帰ろう。そう思って踵を返して行こうとしたとき、
突然背後から「ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ」という音がしたんだ。
ドアの向こう側でなにか引っかいているような音だった。
そしてその後に、「ひゅー・・ひゅっひゅー」と不規則な呼吸音が聞こえてきた。
このときは本当に心臓が止まるかと思った。
そこに誰かいるの?誰?誰なの?
あの時の俺は、ホラー映画の脇役の演技を遥かに逸脱していたんじゃないかと思う。
そのまま後ろを見ずに行けばいいんだけど、あれって実際できないぞ。
そのまま行く勇気もなければ、振り返る勇気もないんだ。
そこに立ちすくむしかできなかった。
眼球だけがキョロキョロ動いて、冷や汗で背中はビッショリだった。
その間も「ガリガリガリガリガリガリ」「ひゅー・・ひゅっひゅー」って音は続き、
緊張で硬くなった俺の脚をどうにか動かそうと必死になった。
すると背後から聞こえていた音が一瞬やんで、シンっとなったんだ。
ほんとに一瞬だった。瞬きする間もなかったくらい。
すぐに「バンっ!」って聞こえて、「ガリガリガリガリガリガリ」って始まった。
信じられなかったんだけど、それはおれの頭の真上、天井裏聞こえてきたんだ。
さっきまでドアの向こう側で鳴っていたはずなのに、ソレが一瞬で頭上に移動したんだ。
足がブルブル震えだして、もうどうにもできないと思った。
心の中で、助けてって何度も叫んだ。
そんな中、本当にこれも一瞬なんだけど、視界の片隅に動くものが見えた。
あのときの俺は動くものすべてが恐怖で、見ようか見まいかかなり躊躇したんだが、
意を決して目をやると、それはAとBだった。
下から何か叫びながら手招きしている。
そこでやっとAとBの声が聞こえてきた。
A「おい!早く降りてこい!!」
B「大丈夫か?」
この瞬間一気に体が自由になり、我に返った俺は一目散に階段を駆け下りた。
あとで二人に聞いたんだが、俺はこの時目を瞑ったまま、一段抜かししながらものすごい勢いで降りてきたらしい。
駆け下りた俺は、とにかく安全な場所に行きたくて、そのままAとBの横を通りすぎ部屋に走っていったらしい。
この辺はあまり記憶がない。恐怖の記憶で埋め尽くされてるからかな。

部屋に戻ってしばらくすると、AとBが戻ってきた。
A「おい、大丈夫か?」
B「なにがあったんだ?あそこになにかあったのか?」
答えられなかった。というか、耳にあの音たちが残っていて、思い出すのが怖かった。
するとAが慎重な面持ちで、こう聞いてきた。
A「お前、上で何食ってたんだ?」
質問の意味がわからず聞き返した。
するとAはとんでもないことを言い出した。
A「お前さ、上についてすぐしゃがみこんだろ?
 俺とBで何してんだろって目を凝らしてたんだけど、なにかを必死に食ってたぞ。というか、口に詰め込んでた」
B「うん・・。しかもさ、それ・・」
AとBは揃って俺の胸元を見つめる。
なにかと思って自分の胸元を見ると、大量の汚物がくっついていた。
そこから、食物の腐ったような匂いがぷんぷんして、俺は一目散にトイレに駆け込み、胃袋の中身を全部吐き出した。
なにが起きているのかわからなかった。
俺は上に行ってからの記憶はあるし、あの恐怖の体験も鮮明に覚えている。
ただの一度もしゃがみこんでいないし、ましてやあの腐った残飯を口に入れるはずがない。
それなのに、確かに俺の服には腐った残飯がこびりついていて、よく見れば手にもソレを掴んだ形跡があった。
気が狂いそうになった。

俺を心配して見に来たAとB。
A「何があったのか話してくれないか?ちょっとお前尋常じゃない」
俺は恐怖に負けそうになりながらも、一人で抱え込むよりはいくらかましだと思い、
さっき自分が階段の突き当たりで体験したことをひとつひとつ話した。
AとBは、何度も頷きながら真剣に話を聞いていた。
二人が見た俺の姿と、俺自身が体験した話が完全に食い違っていても、最後までちゃんと聞いてくれたんだ。
それだけで安心感に包まれて泣きそうになった。
少しホッとしていると、足がヒリヒリすることに気づいた。
なんだ?と思って見てみると、細かい切り傷が足の裏や膝に大量にあった。
不思議に思って目を凝らすと、なにやら細かいプラスチックの破片ようなものが所々に付着していることに気づいた。
赤いものと、ちょっと黒みのかかった白いものがあった。
俺がマジマジと見ていると、
Bは「何それ?」と言ってその破片を手にとって眺めた。
途端、「ひっ」と言ってそれを床に投げ出した。
その動作につられてAと俺も体がビクってなる。
A「なんなんだよ?」
B「それ、よく見てみろよ」
A「なんだよ?言えよ恐いから!」
B「つ、爪じゃないか?」
瞬間、三人共完全に固まった。
AB俺「・・・」
俺はそのとき、ものすごい恐怖のそばで、何故か冷静にさっきまでの音を思い返していた。
ああ、あれ爪で引っかいてた音なんだ・・・
どうしてそう思ったかわからない。
だけど、思い返してみれば繋がらないこともないんだ。
階段を上るときに鳴っていた「パキパキ」っていう音も、何かを踏みつけていた感触も、
床に大量に散らばった爪のせいだったんじゃないか?って。
そしてその爪は、壁の向こうから必死に引っかいている何かのものなんじゃないか?って。
きっと、膝をついて残飯を食ったとき、恐怖のせいで階段を無茶に駆け下りたとき、
床に散らばる爪の破片のせいでケガをしたんだろう。
でも、そんなことはもうどうでもいい。
確かなことは、ここにはもういられないってことだった。
俺はAとBに言った。
俺「このまま働けるはずがない」
A「わかってる」
B「俺もそう思ってた」
俺「明日、女将さんに言おう」
A「言っていくのか?」
俺「仕方ないよ。世話になったのは事実だし、謝らなきゃいけないことだ」
B「でも、今回のことで女将さん怪しさナンバーワンだよ?
 もしあそこに行ったって言ったら、どんな顔するのか俺見たくない」
俺「バカ。言うはずないだろ。普通にやめるんだよ」
A「うん、そっちのほうがいいな」

そんなこんなで、俺たちはその晩のうちに荷物をまとめ、
男なのにむさくるしくて申し訳ないが、あまりの恐怖のため、布団を2枚くっつけてそこに3人で無理やり寝た。
めざしのように寄り添って寝た。
誰一人、寝息を立てるやつはいなかったけど。
そうして明日を迎えることになるんだ。

次の日、誰もほとんど口をきかないまま朝を迎えた。
沈黙の中、急に携帯のアラームが鳴った。いつも俺達が起きる時間だった。
Bの体がビクンってなって、相当怯えているのが伺えた。
Bは根がすごく優しいヤツだから、前の晩俺に言ったんだ。
B「ごめんな。俺なんかより、お前のほうが全然怖い思いしたよな。
 それなのに俺がこんなんでごめん。助けに行かなくて本当ごめん」
俺はそれだけで本当に嬉しくて目頭が熱くなった。
でもよくよく考えてみると、『俺なんかより怖い思い』ってなんだ?
実際に恐怖の体験をしたのは俺だし、AもBも下から眺めていただけだ。
もしかしてあれか?俺の階段を駆け下りる姿がマズかったか?
普通に考えて、俺の体験談が恐ろしかったってことか?
少し考えて、俺も大概、恐怖に呑まれて相手の言葉に過敏になりすぎてると思った。
こんな時だからこそ、早く帰ってみんなで残りの夏休みを楽しくゆっくり過ごそうと、そればかりを考えるようにした。

だが、その後のBの怯えようは半端なかった。
俺達がたてる音一つ一つに反応したり、俺の足の傷を食い入るようにじっと見つめたり、明らかに様子がおかしかった。
Aも普段と違うBを見て、多少びびりながらも心配したんだろう、
A「おい、大丈夫か?寝てないから頭おかしくなってんのか?」と問いかけながらBの肩を掴んだ。
するとBは急に「うるさいっ!!」と叫び、Aの腕をすごい勢いで振り払ったんだ。
Aと俺は一瞬沈黙した。
俺「おい、どうしたんだよ?」
Aは急のできごとに驚いて声を出せずにいた。
B「大丈夫かだって?大丈夫なわけねーだろ?俺も○○(俺の名前)も死ぬような思いしてんだよ。
 何にもわかってねーくせに心配したふりすんな!!」
Aを睨み付けながらそう叫んだ。
何を言ってるんだろうと思った。
Bの死ぬ思いってなんだ?俺の話を聞いて恐怖してたわけじゃないのか?
AとBは仲間内でも特に仲が良かったんだが、
その関係もAがBをいじる感じで、どんな悪ふざけにもBは怒らず調子を合わせていた。
だからBがAに声を荒げる場面なんか見たことなかったし、もちろん当の本人Aもそんな経験なかったんだと思う。
Aはこれも見たことないくらいにオロオロしていた。
俺は疑問に思ったことをBに問いかけた。
俺「死ぬ思いってなんだ?お前ずっと下にいたろ?」
B「いたよ。ずっと下から見てた」
そして少し黙ってから下を向いて言った。
B「今も見てる」
俺「・・・」
今も?え、何を?俺は訳がわからない。
全然わからないんだが、よくある話で、Bの気が狂ったんだと思った。何かに取り憑かれたんだと。
そんな思いをよそに、Bは震える口調で、でもしっかりと喋りだした。
B「あの時、俺は下にいたけど、でもずっと見てたんだ」
俺「上っていく俺だよな?」
B「違うんだ・・・いや、始めはそうだったんだけど。お前が階段を上りきったくらいから、見え出したんだ」
俺「・・・うん」
本当はこのとき俺の心の中は、聞きたくないという気持ちが大半を占めていた。
でもBは、もうこれ以上一人で抱えきれないという表情で、まるで前の日の自分を見ているようだったんだ。
あのとき、俺の話を最後までちゃんと聞いてくれたAとB、
あれで自分がどれだけ救われたかを考えると、俺には聞かなくちゃならない義務があるように思えた。
俺「何が、見えたんだ?」
B「・・・」
Bはまた少し黙りこみ、覚悟したように言った。
B「影・・・だと思う」
俺「影?」
B「うん。初めはお前の影だと思ってたんだ。
 けど、お前がしゃがみこんで残飯を食っている間にも、ずっと影は動いてたんだ。
 お前の影が小さくなるのはちゃんと見えたし、自分らの影も足元にあった。
 それで、それ以外に動き回る影が・・・3つ・・・いや、4つくらいあった」
俺は全身にぶわっと鳥肌が立つのを感じた。
どうかこれがBの冗談であってくれと思った。
しかし、今目の前にいるBは、とてもじゃないが冗談を言っているように見えなかった。
むしろ、冗談という言葉を口に出したとたんに殴りかかってくるんじゃないかってくらいに真剣だった。
俺「あそこには、俺しかいなかった」
B「わかってる」
俺「そもそも、あのスペースに人が4,5人も入って動き回れるはずない」
あの階段は人が一人通れる位のスペースだったんだ。
B「あれは人じゃない。それ位わかるだろ」
俺「・・・」
B「それに、どう考えても人じゃ無理だ」
Bはポツリと言った。
俺「どういうことだ?」
B「全部、壁に張り付いてた」
俺「え?」
B「蜘蛛みたいに、全部壁の横とか上に張り付いてたんだ。
 それで、もぞもぞ動いてて、それで、それで・・・」
自分の見た光景を思い出したのか、Bの呼吸が荒くなる。
俺「落ち着け!深呼吸しろ。な?大丈夫だみんないる」
Bはしばらく興奮状態だったが、落ち着きを取り戻してまた話しだした。
B「あれは人じゃない。いや、元から人じゃないんだけど、形も人じゃない。
 いや、人の形はしてるんだけど、違うんだ」
Bが何を言いたいのかなんとなくわかった俺は、
俺「人間の形をしたなにかが、壁に張り付いてたってことか?」と聞いた。
Bは黙って頷いた。
口から飛び出そうなくらいに心臓の鼓動が激しくなった。
とっさに、Bが見たのは影じゃないと思った。
影が横や上の天井を動き回るのは不自然だ。
仮にそれが影だったとしても、確実にそこに何かがいたから影ができたんだ。
それくらいバカの俺でもわかる。
ということは、俺は自分の周りで這い回る何かに気づかず、しかも腐った残飯をモリモリと食べていたってことなのか?
あの音は・・?
あのガリガリと壁を引っかく音は、壁やドアの向こう側からじゃなくて、俺のいる側のすぐそばで鳴っていたということか?
あの呼吸音も?
恐怖のあまり頭がクラクラした。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、Bは傍に立っていたAに向き直り、
B「ごめん、さっきは取り乱して。悪かった」と謝った。
A「いや、大丈夫・・こっちこそごめんな」
Aもすかさず謝った。

その後なんとなく気まずい雰囲気だったが、俺は平静を保つのに必死だった。無意味に深呼吸を繰り返した。
そんな中Aが口を開いた。
A「お前さ、さっき今も見てるっていったけど」
BはAが言い終わらないうちに答えた。
B「ああ、ごめん。あれはちょっと、錯乱してたんだわ。ははっごめん、今は大丈夫」
そういったBの笑顔は、完全に作り笑いだった。
明らかに無理した笑顔で、目はどこか違うところを見ているようだった。

関係ないんだが、このとき何故かものすごい印象的だったのは、Bの目の下がピクピクいってたことだ。
こんなん何人かに一人はよくあることだよな?
だけど無理して笑う人の目の下ピクピクは、結構くるものがあるぞ。

話を戻すと、Aと俺はそれ以上聞かなかった。
臆病者だと思われても仕方ない。だけど怖くて聞けなかったんだ。
ちょっと考えてみろ、ここまで話したBが敢えて何かを隠すんだぞ。
絶対無理だろ。聞いたら、俺の心臓砕け散るだろ。それこそ俺が発狂するわ。

少しの沈黙のあと、広間のほうから美咲ちゃんが朝飯の時間だと俺達を呼んだ。
3人で話している間に結構な時間が過ぎていたらしい。
正直、食欲などあるはずもなく。だが不審に思われるのは嫌だったし、行くしかないと思った。
俺はのっそりと立ち上がり、二人に言った。
俺「なるべく早いほうがいいよな。朝飯食い終わったら言おう」
A「そうだな」
B「俺、飯いいや。Aさ、ノートPCもってきてたよな?ちょっと貸してくれないか?」
A「いいけど、朝飯食えよ」
B「ちょっと調べたいことがあるんだ。あんまり時間もないし、悪いけど二人でいってきて」
俺「了解。美咲ちゃんに頼んで、おにぎり作ってもらってきてやるよ」
B「うん、ありがと」
A「パソコンは俺のカバンの中に入ってる。勝手に使っていいよ。ネットも繋がるから」
そう言って俺達はそのまま広間に行った。
後から考えると、辞めるその日の朝飯食うってどうなの?
他人がやってたら絶対突っ込むくせして、俺らふっつーに食べたんだが。

広間に着くと、女将さんが俺らを見て、更には俺の足元をみて、満面の笑顔で聞いてきたんだ。
「おはよう、よく眠れた?」って。
そんな言葉、初日以来だったし、昨日のこともあったからすごい不気味だった。
びびった俺は直立不動になってしまったわけだが、
Aが「はい。すみません遅れて」と返事をしながら、俺のケツをパンと叩いた。
体がスっと動いた。
いつも人一倍びびってたAに、助け舟を出してもらうとは思わなかったから、正直驚いた。
そしてBが体調不良のためまだ部屋で寝ていることを伝え、美咲ちゃんにおにぎりを作ってもらえるよう頼んだ。
「あ、いいですよ。それよりBくん、今日は寝てたほうがいいんじゃ」
美咲ちゃんは心配そうにそう言った。
Aと俺は特に何も言わず席についた。
『もう辞めるから大丈夫』とは言えないからな。

朝飯を食っている間、女将さんはずっとニコニコしながら俺を見てた。
箸が完全に止まってるんだ。俺ときどき飯、みたいな。
美咲ちゃんも旦那さんもその異様な光景に気づいたのか、チラチラ俺と女将さんを見てた。
Aは言うまでもなく凝固。
凄まじく気分の悪くなった俺達は朝飯を早々に切り上げて、女将さん達に話をするため部屋にBを呼びに行った。

部屋に戻る途中、Bの話し声が聞こえてきた。
どうやらどこかに電話をしているようだった。
俺達は電話中に声をかけるわけにもいかなかったので、部屋に入り座って電話が終わるのを待った。
B「はい、どうしても今日がいいんです。・・・・はい、ありがとうございます!
 はい、はい、必ず伺いますのでよろしくお願いします」
そう言って電話を切った。
どうやらBは、ここから帰ってすぐどこかへ行く予定を立てたらしい。
俺もAも別に詮索するつもりはなかったんで何も聞かず、すぐにBを連れて広間に向かった。

広間に戻ると、美咲ちゃんが朝飯の片付けをしていた。女将さんはいなかった。
俺はふと思った。
あそこに行ってるんじゃないか?って。
盆に飯のっけて、2階への階段に消えていったあの女将さんの後姿がフラッシュバックした。
きっとあの時持って行った飯は、あの残飯の上に積み重ねてあったんだろう。
そうして何日も何日も繰り返して、あの山ができたんだろうな。
一体あれは何のためなんだ?
俺の頭に疑問がよぎった。
けど、そんなこと考えるまでもないとすぐに思い直した。
俺は今日で辞めるんだ。ここともおさらばするんだ。すぐに忘れられる。忘れなきゃいけない。
心の中で自分に言い聞かせた。
Aが女将さんの居場所を美咲ちゃんに尋ねた。
「女将さんならきっと、お花に水やりですね。すぐ戻ってきますよ」
そう言って美咲ちゃんはBの方を見て、「Bくん、すぐおにぎり作るからまっててね」と笑顔で台所に引っ込んだ。
ああ、美咲ちゃん・・・何もなければきっと俺は美咲ちゃんとひと夏のあばん(ry
俺達は女将さんが戻ってくるのを待った。

しばらくすると女将さんは戻ってきて、仕事もせずに広間に座り込む俺達を見て、
「どうしたのあんたたち?」とキョトンとした顔をしながら言った。
俺は覚悟を決めて切り出した。
俺「女将さん、お話があるんですけど、ちょっといいですか?」
女将さんは「なんだい?深刻な顔して」と俺達の前に座った。
俺「勝手を承知で言います。俺達、今日でここを辞めさせてもらいたいんです」
AとBもすぐ後に「お願いします」と言って頭を下げた。
女将さんは表情ひとつ変えずにしばらく黙っていた。
俺はそれがすごく不気味だった。
眉ひとつ動かさないんだ。まるで予想していたかのような表情で。
そして沈黙の後、「そうかい。わかった、ほんとにもうしょうがない子たちだよ~」と言って笑った。

そして給料の話、引き上げる際の部屋の掃除などの話を一方的に喋り、
用意ができたら声をかけるようにと俺達に言ったんだ。
拍子抜けするくらいにすんなり話が通ったことに、三人とも安堵していた。
だけど、心のどこかでなんかおかしいと思う気持ちもあったはずだ。

リゾートバイト 2
リゾートバイト 3

【洒落怖】【怖い話】賽銭泥棒

十年以上前の3月、俺は高校を卒業したばかりだった。 
取ったばかりの免許に浮かれて、兄貴の車であちこちを走り回っていた。 

ある時、俺は2人の後輩を連れて深夜にドライブしていた。 
グンマーに住んでたから峠道には事欠かない。 
長野との境を走る峠を、当時はまっていた頭文字Dの真似をして攻めていた。 

県境をまたいで長野に入ってしばらく行くと、道端に地蔵がたくさん並んでいた。 
真っ暗な中に立ち並ぶ地蔵の群れは不気味な眺めだったけど、目につくものがあった。 
脇道に見える鳥居と賽銭箱。 
お供え物のまんじゅうや花があったから賽銭も入ってるんじゃないか? 
そんなことを話しながら俺たちは路肩に車をとめた。 

3人で連れ立って車を降りた。賽銭箱には錠前がかかっていたけど 
賽銭箱自体は古びていたから壊せそうだった。 
近くに落ちていた石を何度か叩きつけると賽銭箱は壊れた。 
中身は全部かき集めると5000円近くになったと思う。 
俺たちは上機嫌でその場を去った。 
バカだったから、バチが当たるとかそういうことは考えもしなかった。 

日が昇ってきたからドライブは終わりにして、金を3等分して持ち帰った。 
一人頭1500円くらいか。確か、タバコを買って帰った。 
兄貴が仕事に出るまでに車を返さないといけないから、 
ガレージにとめて、俺は自分の部屋に直行してすぐ寝た。 

目が覚めたのは昼頃だったと思う。 
下の階からドンドンって物音がして起きた。 
大の大人が地団駄を踏んでいるような音がずっと鳴ってた。 
ドンドン!ドンッ!ドンドンドン!って感じで。 

親も兄貴も仕事に行ってるはずの時間だった。 
ペットの猫が暴れてんのかと思って見に行ったけど、呼んでも出てこない。 
音をたどっても場所がわからなかった。ドンッ!ドンドン!って 
鳴ってはいるんだけど、俺と一定の距離を開けて移動してる感じがした。 
玄関の方で鳴ったと思って玄関に行ったら、今度は風呂の方から鳴る。 
風呂の方を見に行ったら、今度は台所の方で鳴る。そんな感じ。 

怖くなって家を出ようと思ったら電話が鳴った。 
マジでビックリしたけどナンバーディスプレイには兄貴の会社の名前が出てた。 
電話取ったら兄貴が「てめぇふざけんなよ!」っていきなり怒鳴ってきた。 

「お前アレどこから盗んできたんだよ!気持ちわりぃな!ふざけんな!」 
「は?何が」 
「何がじゃねーよ!てめぇ俺の車でどこ行ったんだよ!?」 
「いやだから何がだよ?」 
「車に地蔵乗せたのてめーだろ!」 

一瞬で血の気が引いた。 
地蔵がいる峠に行ったことは兄貴には言ってない。 

なんで地蔵? 
車に乗ってる??? 

「いやちょっと待って、意味わかんねー、どういうこと?」 
「とぼけんなよ!足元に地蔵載せただろ!?」 
「ほんとにやってねーって!」 

怒っている兄貴に事情を説明して、向こうの話も聞いた。 
兄貴が言うには、助手席の足元にボロい地蔵が乗っていたらしい。 
朝、出勤する時に気付いて降ろそうとしたけど、重くて持ち上がらず、 
時間もないから仕方なくそのまま出勤したらしい。 

もちろん俺はやってない。 
後輩たちがそんなことをした様子もなかった。 
第一、俺がガレージに車を戻した時には、確かに地蔵なんて乗ってなかった。 

兄貴は俺の言い分を信じてくれなかった。 
俺が悪ふざけでやったと思ってるようで、ずっと怒っていた。 
「ちゃんと始末する」って言ったら、やっと電話を切ってくれた。 

地団駄のような音は電話の最中もずっと続いてた。 
ドンッ!ドンッ!ドンッ!!!て、少しずつ激しくなってた。 

2人の後輩に電話した。とくに変わったことはないって言ってた。 
なんで俺だけ…という気持ちで電話を切った。 
家にいるのは耐えられないから、チャリで外に出て、公園で時間をつぶした。 

夜になって兄貴が帰ってきた。俺の顔を見るなりひっぱたいてきた。 
いつもだったら俺も応戦するけど今日はそんな気になれなかった。 
ドンドンって音は家族がいる時は鳴らなかった。 

深夜、後輩2人を家に呼び出した。 
2人は地蔵が乗ってる車を見て「すげ~w」「いつの間にwww」なんて 
大笑いしてた。俺の気持ちも知らずにのんきだった。 

地蔵は重かった。2人がかりでやっと持ち上がる重さ。 
「センパイこれ持てるとか怪力じゃねwww」とか言ってた。 
この期に及んで信じてないらしい。 

車から降ろした地蔵を、群れの端に戻した。 
パクった賽銭も返したかったけど、もう使った後だったし、後輩も同様だったから、 
俺が財布から5000円出して、壊れた賽銭箱に入れといた。 
手をあわせて「すみませんでした、すみませんでした」って心の中で何回も謝った。 

車で家に戻って、怖いから猫を抱いて寝た。 
次の日から地団駄のような音はしなくなった。 
金欲しさだろうが粋がってだろうが、賽銭泥棒はしないほうがいいぞ。 

【洒落怖】【怖い話】ライブチャット

私は田舎を出て八王子のぼろアパートで一人暮らしをし、女子大に通いつつ、 
サークル活動はせずにアパートの近所のファミレスでバイトをしてた。 
ファミレスは時給900円ちょっと。親からの仕送りは家賃5万+生活費2万で7万。 
遊ぶためのお金は自分のバイト代でまかなう感じだった。 

でも学校帰りにファミレスで働いて稼げるお金なんてたかが知れていて 
服やかばんや靴を買ったり、飲み会に顔を出したりしてたらすぐになくなってしまう。 
短時間でラクに稼げるバイトはないかな~なんて考えていたとき、 
八王子駅前にいるティッシュ配りのお兄さんにキャバクラの求人広告をもらった。 

私は見た目が派手じゃないし、内向的でキャバクラなんてできそうにない。 
それにアルバイトとは言え水商売には抵抗がある。 
だけどキャバクラの求人の下の部分には、 
「おしゃべり苦手でも大丈夫☆」というコピーとともにQRコードとURLが掲載されていた。 

帰ってPCからアクセスしたそこはライブチャットの求人だった。 
ライブチャットというのは女の子がWEBカメラで自分の姿を映して、 
その映像を、サイトを通じてお客さんに配信するというもの。 
映像の内容は女の子によってまちまち。 
顔を出しておしゃべりする子もいれば、顔を隠す子もいる。 
露出度の高い格好で出演する子もいれば、普段着の子もいる。 
エッチな会話をしたり、裸になったりする子もいれば、しない子もいる。 
サイト自体18歳未満登録禁止だったから、陰部さえ出さなければ脱いでもOKというルールがあった。 

お客さんはほぼ全員男性。お金を払ってポイントを購入し、ポイントに応じて女の子の映像を見られる。
その金額の何割かが女の子に支払われるというシステム。 
私はさっそく登録した。カメラはPC内蔵だったからその日からすぐに始められた。 
バレることはないとは思ったけど、念のためウィッグをかぶった。 

映像の配信をスタートしたらすぐにお客さんが来た。 
人によっては「オナニーして」「脱いで」とリクエストが来たけど、それには応じずおしゃべりのみ。 
エッチ目当ての人はすぐ出て行っちゃうけど、 
中にはおしゃべり目的で来ている人もいて、そういう人と会話を楽しんだ。 
不思議とカメラ越しなら喋れるもので、私は身分を偽りつつ、じわじわポイントをためていった。 

一ヶ月するとポイントは5万円分ほどたまっていた。 
講義が終わったらファミレスのバイトをして、帰宅してからはライブチャット。 
週に3日程度、家で数時間のおしゃべりをするだけで月5万。割のいいバイトだった。 

それというのも固定のお客さんがついてくれたから。 
4人くらい、私がログインしていると必ずチャットルームに入室してくれる人がいた。 
その人たちはエッチよりおしゃべり目当て。いわく「のんびり話せて癒される」とのことだった。 
田舎の出身だったからか「どんくさい」「ボーっとしてる」と言われることが多かったけど、 
固定客の人たちにとってはそれがいいらしかった。 

固定客はほとんどサラリーマンだったと思う。 
たった1~2時間の会話のために数千円分のポイントを払えるような人たちだ。 
文字チャットの時もあれば肉声でしゃべる時もあったし、 
オープンチャット(他の人からも見れる状態)の時もあれば 
プライベートチャット(他の人からは見れない状態)の時もあった。 

2ヶ月もすると常連さんとはだいぶ親しくなった。 
最初は身分を偽りながら喋ってたけど、本当のことも聞かれれば少しは答えるようになっていた。 
「〇歳の女子大生なんだよ」「バイトはファミレスでしてる」「西東京に住んでるよ」とか。 

で、チャットのバイトを始めてから半年くらいだったかな。生まれて初めて彼氏ができた。 
友達に紹介してもらった人で、何回か遊んで、知り合って1ヶ月くらいで告白された。 

恋人ができたらチャットはやめるって決めてたから、 
プロフィールに「月末で退会します」って書いた。 
それを見た固定客の人たちがお別れを言いにきてくれた。 
「今まで楽しかったよ」「もう話せないなんて寂しい」と嬉しいことを言ってもらった。 
チャット終了後にはメッセージ(簡易メール機能)で 
「これからも元気でね!勉強がんばれ!」なんて応援が届いて、 
ライブチャットを通した仲とは言えちょっとしんみりした。 

その次の日もログインした。 
ログインとほぼ同時に入室&プライベートチャットにしてきた人がいた。常連のSさんだった。 
Sさんはプライベートチャットでしか会話しない、「二人きり」にこだわりのある人だった。 
ログインした瞬間に入室なんて、待っててくれたのかな? 
なんて、のんきなことを考えた。 

応答ボタンをクリックしたら「〇ちゃん、やめちゃうの?」と挨拶もなく言われた。 
「うん。色々あってw」ちょっと濁して答えたら「色々ってなに?」って少し強く聞かれた。 
「学校とかバイトとか色々」 
「もっと詳しく教えてよ」 
「バイトの回数増やしたし、勉強もがんばりたいから」 
「夜だけなら続けられるでしょ?」 
「夜は勉強するから…ごめんね」 
「毎日毎日そんなに勉強するの?チャットの時間も取れないくらい?」 
「うん…資格の勉強もあるから…」 
「土日は?昼間とかログインできないの?」 
「土日は教習所に行きたくて…」 

Sさんはだいぶしつこかった。 
私は嘘を交えつつ答えたものの、面倒くさいなぁ…という気持ちが大きかった。 
Sさんは普段はもっと落ち着いてるから、どうしちゃったんだろう?という戸惑いもあった。 

「教習所?どこ?八王子だよね?〇〇学校?」 
「ん~まあそんなとこw」 
「ここで稼いだ金で免許とるのか」 
「そういうわけじゃないけど」 
「そうだろうが!!!」 

いきなり怒鳴られた。びっくりして心臓止まりそうになった。 

「俺から巻き上げた金で免許とるんだろうがよ!」 
「えっ!?えっ!?」 
「お前にいくら使ったと思ってんだよ!ええ!?お前が」 

ブツッ! 

会話が切れた。というか私が切った。キックボタンという強制退出機能を使った。 
通話が切れてしばらくしても心臓がドキドキいってた。 

五分くらいしたら、Sさんからメッセージが届いてた。 
「さっきは怒鳴ってごめん。つい取り乱してしまいました。 
大好きな〇ちゃんがチャットをやめてしまうと知って動揺してのことです。 
嫌いにならないでください。ひどいことを言ったのは謝ります。 
すみませんでした。どうかまた通話してください。」 
という内容のものだった。 

「驚いてキックしちゃった。こっちこそごめんなさい。 
今日はやめておきます。月末までは不定期でログインするので 
また時間が合ったらチャットしようね」 
そう返信して、その日はログアウトした。 

次の日はログインしなかった。2日たって、バイトの後にログインした。 
またログインと同時にSさんが入室してきた。もちろんプライベートチャット。 

「〇ちゃん、一昨日はごめんね」開口一番Sさんは謝ってきた。 
「大丈夫。こっちも素っ気なかったしねw」 
私はそう答えた。あんまり思ってなかったけど。 

「でも〇ちゃん、本当にやめちゃうんだ」 
「うん。やめるのは変わんない」 
「教習所がんばってね」 
「ありがと」 
「八王子だから〇〇ドライビングスクール?」 
「ん~w」 
「〇〇自動車学校?〇〇ドライビングカレッジ?」 
「どうだろうねーw」この人、調べたのかな…と若干引きつつ答えを濁していたら 
「ここで〇ちゃんがチャット始めてもう半年だよね。 
前に月5万くらい稼いでるって教えてもらったじゃん。5万×6ヶ月で30万だよね。 
〇ちゃんは女の子だからAT限定かな。 
AT限定で学生コースのある学校に30万円で通うってことは 
〇〇ドライビングスクールかな? どう?」とか言い出した。 

もう私はドン引きだった。 
たしかにずっと前に月額どれくらい稼げるのか聞かれて答えたし 
「教習所に通う」って嘘もついたけどそこまで調べてるとは思わなかった。 

「聞かれても答えないよ~w」 
「あっ、当たってるんだ? 図星でしょ?」 
「どうかなー? ごめんね、今日はもう落ちるよ」 
「当たったから逃げるんだ? そうでしょ?」 
Sさんはまだ喋ってたけど私は退室した。 
この間まで仲良くしてたSさんが、もうストーカーの類にしか思えなかった。 
退会は月末を予定してたけど、前倒しにしようと思った。 

ログアウト前にメッセージを確認したらSさんから届いてた。 
「〇〇ドライビングスクール 評判いいみたいだよ^^ 僕も行ってみようかな(笑)」 

怖くなって返事をせずログアウトした。Sさんは確かに以前から私の素性を聞き出したがる傾向があった。 
「学校はどのへん?」とか「出身はどこなの?」とか。 
プライベートチャットで二人きりだし、普段は優しくて話題も豊富だし、オープンチャットより 
だいぶ消費ポイントの多い(=お金のかかる)プライベートチャットを 
常にするくらい収入のある人だから、私も油断して 
「八王子だよ」とか「〇〇県だよ」とか答えてた。さすがに学校名や住所は言ってなかったけど。 

そんなわけないとは思いつつ、もしかして私の素性が知れてるんじゃないかと不安になった。 
彼に相談したかったけどライブチャットをしていたことはバレたくない。 
次の日からチャットにはログインしなくなった。 

その夜は怖かったけど何日かしたらそんなことも忘れた。彼とのデートに浮かれてたから。 
でも月末に通帳の記帳をしたらライブチャットからのお給料が振り込まれてて、 
それで退会のことを思い出した。 
気が乗らなかったけど退会処理をするためにログインして固まった。 

「新着メッセージ 100件」 

お知らせ欄にはそんな表示が出ていた。 
ライブチャットのメッセージは最大100件までしか保存されない。 
限度いっぱいに届いたメッセージは、全部Sさんからだった。 

「〇ちゃん! 次のログインはいつ?」 
「〇ちゃん^^ もうすぐ月末だね」 
「〇ちゃん? 今日はログインしないのかな?」 
「〇ちゃん! 今日は教習所かな?」 
「〇ちゃ~ん 予定がわかったら返信してね」 
「〇ちゃん どうしたの?」 
「〇ちゃん 見てますか?」 
「〇ちゃん 逃げたの?」 
「逃げたの?」 
「退会 月末じゃないの?」 
「ログインしないの?」 
「逃げたの?」 
「逃げるなよ」 
「逃げたの?」 
「逃げられると思ってる?」 
「逃がさないよ」 

そんなメッセージが100件続いてた。 

怖くて全部は読んでない。即効で退会処理をした。 
この人ヤバイと思った。 
逃げるって何? 逃がさないってどういうこと? 私が何かした? 
私はパニックになっていた。心臓がバクバクいってた。 

たまにニュースで見る情絡みの殺人事件を連想してた。 
キャバ嬢や風俗嬢に貢いだ男の人が、その女性を本気で好きになってしまう。 
女性の方は仕事でやってるだけだから、もちろん恋愛感情なんてない。 
その行き違いが流血沙汰を起こす。 

そりゃ私はSさんにお金を使わせた。だけど私は思わせぶりなことは 
一切言っていないし、Sさんを勘違いさせるようなこともなかったはず。 
だけどそう思ってるのは私の方だけ? Sさんは私のこと好きだったの? 
混乱して頭が働かなかった。 
意味なんてないってわかってたけどカーテンを閉めてドアのチェーンをかけた。 

月末を過ぎてからも何事もなく生活していた。私も安心して、変な人だったなーって思ってた。 
だけどある日、異変が起こった。 
学内の掲示板コーナーに、こんなお知らせが張り出された。 

「注意 つきまとい事件が発生しました 
〇月〇日 〇時ごろ 当行の学生が自動車学校帰りに 
40代~50代とみられる男性にしつこく声をかけられる事案が発生 
学生の皆さんはじゅうぶん警戒するとともに、防犯ブザーの持ち歩きを徹底しましょう 
緊急時には助けを呼び、民家に助けを求めるなどしましょう」 

うちは女子大だったから防犯意識が高かった。 
入学時には全員に防犯ブザーが配布されるし、 
つきまといや不審な声かけが起きると学校に報告してお知らせが貼り出される。 
多い時で週に5回くらいあったと思う。 

いつもはとくに意識しないけど、この張り紙には「自動車学校」とあった。 

チャットで怒鳴られた時、それから100件のメッセージを受信した時の恐怖が蘇った。 
私は学生課に駆け込んで張り紙について聞いた。 
報告者が誰か問い合わせると学生課の職員は名前を明かすのを渋ったけど、 
「心当たりがあるかもしれないんです」と伝えると、当該の生徒に連絡をとってくれた。 

その生徒は講義の合間に学生課に来てくれた。違う学部の子だった。 
髪型はセミロングで、私がチャット中にかぶっていたウィッグに似てた。 

「〇〇女子大の生徒?」 
「同じ学校の子で教習所に通ってる子いない?」 
「この教習所じゃないかもしれないんだけど」 
「お姉さんくらいの背格好と髪型」 
「〇歳だから〇年生だと思う」 
その女の子は教習所から駅までの道すがら付きまとわれて、そんなことを延々と聞かれたらしい。 
私は確信した。男はSだ。明らかに私を探してる。 

「たぶんクラッチバッグ(※大学名が印刷されてる)を見て声をかけてきたと思う。 
名前はわかんないけど、このへんの女子大に通ってて、ファミレスでバイトしてる子だって。 
顔を見ればわかるって言ってた」 

私はSさんに、「八王子周辺の女子大に通っていること」「実年齢」「ファミレスのバイト」を明かしていた。 
八王子周辺にある女子大は決して多くない。 
年齢とアルバイトから照合して、手当たり次第に聞いていけば、いつかは私にたどり着くだろう。 

その子には、その人が探してるのは私かもしれないと伝えた。 
ライブチャットのことは伏せて、SNSで知り合った人だって説明した。 
もし次に見かけたら逃げてほしいということも言い含めておいた。 

その日の講義は欠席してタクシーで帰宅した。 
荷物を置いて、家中の戸締まりを確かめて、彼氏のアパートに泊めてもらった。 
バイクで迎えに来てくれてすごく心強かった。 

彼の家で洗いざらい説明した。彼は黙って聞いてくれた。 
ライブチャットの存在は知ってたから勘違いもされずに済んだ。 
もう二度としないでほしいって言われたから、私はもちろん頷いた。 
彼の家から学校に通って、バイトにも行った。帰りが遅くなる時は彼が迎えに来てくれた。 
やっぱり男の人がいると頼もしくて安心できた。 

1週間くらいして、一旦アパートに帰る用事ができた。 
彼が付き添ってくれたし昼間だしあんまり怖くはなかった。 
何か異変が起こってたらどうしよう…と思いつつ、これといって変化はなかった。 
たまってた郵便物を回収して、また彼の家に戻った。 

また1週間彼の家で過ごした。学校もバイトも通常通り通ってたしトラブルは起こらなかった。 
Sさんも私を探すのは諦めたんだろうなーと思ってた。警戒心も薄くなってた。 

1週間後のお昼くらいの時間、また郵便物の回収に自分のアパートに戻った。 
今回は彼の付き添いはナシ。一人で電車に乗って、駅からは徒歩で行った。 

集合ポストには何通か手紙が届いてた。美容院からのDMとかがほとんど。 
その中に1通だけ宛先のない茶封筒があった。 
たまにアパートの管理人から宛先なしで封筒がポストに投函されてることがあったから、 
きっと大家さんからだと思って回収して、階段を上がって自分の部屋に行った。 

ドアを開けようとしてギクッとした。部屋の中からガサガサ音がした。 
虫が立てるような小さな音じゃない。ガサゴソガサゴソって何かを漁ってるような音。 

合鍵は両親と彼にしか渡してない。 
両親が来るなんて話は聞いてないし、彼はその時バイトに行ってた。 

私は物音を立てないように後ずさりして、階段を下りて、そこからは猛ダッシュだった。 
全力で走って駅前の交番に駆け込んで事情を説明した。 
おまわりさんが2人いて、片方のおじさんが無線(?)で応援を呼んでた。 
私は交番で待たされた。1時間くらいしてパトカーが来てアパートまで連れて行かれた。 
アパートの前におまわりさんが何人かいて、車を下りて話を聞かされた。 

空き巣だった。ベランダから窓を割って侵入したらしい。 
応援が到着した時には犯人は立ち去った後で、部屋の中は空だった。 
何を盗まれたか立ち会いで確認することになった。 

財布とか通帳は彼のアパートに置いてあった。金目のものはないはずだった。 
でも私の部屋からはパソコンがなくなってた。 
タンスも荒らされてた。 
チャットの時によく着てた花柄のワンピースだけが盗まれてた。 

間違いない。Sだ。 

「タイミングが悪かったら空き巣と鉢合わせになってたかもしれないですね」 
おまわりさんはそう言ってた。 
家を突き止められた。侵入された。個人情報が詰まったPCを盗まれた。服をとられた。 
私はショックでその場にうずくまってしまい、おまわりさんがパトカーで休ませてくれた。 

交番で事情を説明した。 
ネットでトラブルがあったことから始めて、うちの学校の生徒がつきまとわれたことも話した。 
頭が混乱していたけど、がんばって話した。 
おまわりさんは最初のうちは首を傾げていたけど、私の鬼気迫る様子を見てか、信用してくれた。 

親に連絡が行って、しばらく実家に帰ることにした。 
彼のアパートまで突き止められると迷惑がかかるから、荷物をまとめてすぐに帰省した。 
実家に帰ると家族は優しかった。 
みんなライブチャットどころかSNSの存在すら知らないような 
アナログな人たちだから、空き巣被害に遭ったことしか伝えなかった。 

荷物を整理していたらバッグの中から茶封筒が出てきた。 
Sが私の部屋に侵入した日にポストから回収したもの。騒動で存在を忘れてた。 
中を見るとプリンターから出力したA4の紙が入ってた。 

「〇ちゃんへ 
〇ちゃんが恋しくて つい来ちゃった^^ 
しばらく留守にしているようなので 勝手にお邪魔します 
また遊びに来るね 次は会えるといいな^^ 
Sより 

追伸 ちょっとPCを借りるけど 返すから安心してね」 

その後アパートは引き払って、バイトもやめた。 
学校は半年間休学した(後に復学したけど留年した)。 
警察はアパート周辺のパトロールを強化したらしいけど、Sはいまだに捕まってない。 

その一件以来、一人暮らしが怖くてできなくなった。留守番すら怖い。 
とにかく家で一人になるのが怖くなった。 
電話越しの男の人の声も怖いし、ネットでのチャットも怖い。 
彼との付き合いが続いてることと、無事に卒業&就職できたのが救い。 


長い割にあんまり怖くなくてごめん。 

でも、私にとっては恐怖体験でした。

【洒落怖】【怖い話】道標

俺は九州出身なんだが、大学は四国へ進学した。以下はゼミの先輩から聞いた話だ。 

四国と言えば八十八ヶ所霊場巡りが有名だが、昔は大変だったお遍路も今では道が整備され道標も各所にあり地域住民も協力して初心者でも観光気分で行けるようになった。 
ただ中には下手すると山で迷いかねない部分もあって、特に高知県の西側から愛媛県にかけては難所がまだいくつか残っている。 
先輩は愛媛県出身で、実家の近くにも畦道をぐねぐねと通った後小高い山を回り込んで向かわなきゃならない霊場がある。 
畦道から山の麓に出たところで道が二手に別れていて、霊場にはそこを左へ進まなくちゃならないんだが、時々右へ行っちゃう人が出るらしい。 
もちろん道標が立っているんだけど、それでも何故か間違う人がいると。 
ちなみに右の道は徐々に登り坂になっていていくつかの分岐を経て最終的には山の頂上に通じているのだが流石にそこまで行っちゃう人は少なくて大半は戻るのだそう。 

で先輩が小6の夏、付近をお遍路していた初老の男性が行方不明になり近隣住民が総出で捜索することになった。 
例によって道を間違えたのだろうと麓から頂上までの道を探したが見つからなくて、夜になって一度引き上げ次の日にやっと見つかった。 
発見現場は山道からずっと外れた林の中で明らかに不自然な場所。しかも真夏なのに衰弱が激しくてあと数時間遅れていたら命が危うかったらしい。 
後に病院で警察が聞き取りしたところ、次のように言った。 

「畦道から麓に出たら道標があって矢印が右となっていたから右に進んだ。しばらく行くと下生えが酷くなり道が判りにくくなって困ったが、 
先を行く人の後ろ姿がチラッと見えたのでその人について行った。その人はTシャツに短パンと軽装で帽子もかぶらず手ぶらで、分岐点も迷わず登っていくので地元の人かと思っていた。 
見かけてから10分くらい経った頃、その人は不意に道からそれて林の中へ入って行った。思わず急ぎ足になって消えた地点まで行き林を覗いたがもう姿は見えなかった。 
改めて一人になってしまうと急に心細くなって引き返そうと踵を返した。すると来た道は下り坂になっているはずなのに登り坂になっていた。慌てて振り返るとそっちも登り坂だった。 
混乱してその場から動けずにいると、人の話し声が聞こえてきた。どちらからかはよく判らなかったが人の姿は見えないのに声だけが近づいてきて、よく聞いたらお経のようだった。 
怖くなり林の中へ逃げ込んだ。そうしたら声が耳元に迫ってきて吐息や髪の毛が触れたので叫びながら奥へ奥へと逃げ込んだ。そして迷ってしまった」 

まず道標から勘違いしてしまっていたが、更に詳しく聞いていくと錆び付いて見にくかったとも証言した。 
しかし道標は前年に新しくしたばかだったし、その数日前にお遍路にきた人も判りにくくはなかっと証言している。 
それから当日地元民で山に入った者は誰もおらず、他に目撃した人もいなかった。 

結局悪質ないたずらってことで幕引きになったがそれ以降も迷う人が後を断たないため、地元では初心者と思しきお遍路さんは引き留めたり霊場まで一緒に行ってあげたりしているそうだ。

【洒落怖】【怖い話】 おまじない

妻が人身事故で電車が止まり帰宅が遅くなると言うので、小学生の娘を風呂に入れている時に娘から聞いたおまじないの話し。 
娘曰わく、好きな男の子と両思いになりたい時にするおまじないとのこと。 
やり方はちょっと面倒。 
先ず自分の名前と両思いになりたい男の子の名前を赤い水性マジックで紙に書き、それを水の入ったガラスのコップの中に入れて溶かす。 
溶かしたらそのままコップごと『ある場所』に持って行き、呪文を唱える。 
呪文は、自分の名前と両思いになりたい男の子の名前を交互に頭の中で三回づつ唱えるだけ。 
その後コップの中の水を小指の先につけて、濡れた指先で眉間、鼻の下、顎の先を軽く触る。 
これでおしまい。 
コップはそのまま『ある場所』に置いたままにしておき、置いてから五日の間に雨が降ってコップの中の水が溢れたら、神様の力で願いが叶うらしい。 

子供らしい無邪気な話しだと思い聞いていたが、『ある場所』について教えて貰った時に、オレは湯船に浸かりながら、背筋が凍る思いがした。 
オレは今までずっと地元から離れずに生活していたから、その場所のことはよく知っていた。でもまさかそこの話しがそんな風に変化しているとは思わなかった。 
その『ある場所』とは、地元の駅と隣の市の駅とのちょうど中間にある踏切のことだった。 
一見すると小さな何の変哲もない踏切なのだが、オレ達が小学生の時、その踏切は2ヶ月の間に4人の命を奪った人身事故を起こしたことで有名な踏切だった。 
その人身事故は1ヶ月に1度発生し、事故の度に必ず二人亡くなった。しかも亡くなる二人は必ず恋人同士だった。駅間の踏切でスピードが出ているせいか、二人の遺体は車両の下に潜り込み、区別するのが難しいほど粉々になって混ざり合っていたらしい。 
そんなことが続けば当然厭な噂が立つ。 
その噂は、恋人に振られた女性が雨の日にそこで自殺をして悪霊となり、仲睦まじい恋人達を雨の日に見かけると線路にひっぱりこんで殺す、と言うものだった。 
それだけ聞けば良くある都市伝説なのだが、実はその噂がまるっきり出鱈目ではないことをオレの同級生はよく知っていた。その恋人に振られて自殺したと言われている女性が、同級生の年の離れた姉だったからだ。 

団地の同じ塔に住んでいたオレや何人かの同級生は、その人の通夜にも参列した。 
オレはその通夜の場で、口さがない大人達の話しを聞いて事のあらましを知った。 
そいつの姉さんは踏みきりで自殺したこと。 
遺書に好きだった男性が彼女と相合い傘で歩いているのを見てしまい、悲しくてもう生きていくことが出来ないと書かれていたこと。 
噂になる段階で、恋人に振られた事に変わっていたり、亡くなった同級生の姉がものすごく綺麗な女性だったとか変化した部分もあった。 
でも、踏切の場所や亡くなった時間、そして雨の日に亡くなったことなど、基本的なことはそのままだった。 
そしてやがてその噂がある程度有名になってくると、今度はその噂に妙な『おまけ』が着いてくるようになった。 

それは、好きな人に恋敵がいたら、恋敵の名前を紙に書いて件の踏切に置かれた献花台の花瓶にその紙を入れると、悪霊が恋敵に祟りを起こしてくれるという物騒なモノだった。 
不謹慎な噂に装飾された罰当たりな『おまじない』だったが、実際に友達の姉の死後四人の男女が亡くなっており、その『おまじない』は一部の女子達の間で強く信じられていた。 
そして噂が広まりきった時、どういった訳か、亡くなった女性の母、つまりオレの同級生の母親にまでその『おまじない』が伝わってしまった。 
その後同級生の母親は娘恋しさで、深夜に何度も献花台のそばで寝巻姿のまま徘徊する姿が目撃されるようになり、遂には完全に心を病んで、同じ踏切で自殺をしてしまった。 
通夜の席で、オレは再び口さがなく噂話に興じる大人達から、献花台の花瓶の中に、亡くなった同級生の母親の名前が書かれた紙が見つかったと盗み聞いた。 

やがてあまりに続いた悲惨な事件に、さすがに不謹慎すぎると噂話も下火になった。 
姉と母親を亡くした同級生はその後直ぐに引っ越してしまい、その後どうなったかオレはまったく知る事が出来なかった。 
通夜の席で泣きもせず呆然としている同級生を見ていたから、この街から離れた方が良いと誰もが思っていたから、引っ越しの理由はクラスのお別れ会でも誰も口にすることはなかった。 
そうしてやがてオレもそんな事件のことなどすっかり忘れていた訳だが、娘の一言で思い出したくもない記憶がありありと蘇ってきてしまった。 
娘の髪を乾かしながら、詳しい部分を濁しながら過去の事件を説明し、娘には悲しい事件があったところだから、面白半分でそういう事をしてはいけないと諭しておいた。 

ただ、オレにとってもそれは大昔の事件であり、ちょっとした好奇心で、神様はどんな力を使って両思いにしてくれるのかね?、と娘に問いかけたところ、娘はよくわかんないけど、と前置きをして教えてくれた。 
「なんかね、絶対離れないようにしてくれるんだって」 
オレは思った。 
そりゃそうだろ、挽肉が混じり合ったら、誰にも分けらんねぇよ。 
娘には改めて、絶対にその場所に近づかないように強く言い聞かせておいた。

【洒落怖】【怖い話】寂れた神社

二十年ほど前、当時俺は大学生で、夏休みに車で田舎の実家に帰省していたときだった。
その時はいつも帰省時に通ってる道とは別の道を通っていった。
見渡す限りの山や田んぼに囲まれた、いかにも田舎って感じの道をしばらく運転していたとき、
少し先の山の入り口みたいなところに赤い鳥居が建っているのを見かけた。

とても寂れた雰囲気がよかったので、車を停めて、ぶらりと立ち寄ってみることにした。
赤い鳥居をくぐると、勾配のきつい石段があり、山の上の方まで続いていた。
人気は全くなく、周りは木々に囲まれ、薄暗く、石段にはびっしりと苔が生えて、足元に気を付けながら登っていった。
階段を上りきると、すぐ目の前に小さな社があった。
もう何十年も人の手が入ってなかったのだろうか、その社は酷く朽ち果てていた。
せっかくなので、手を合わせ参拝した後、石段を下りて、実家に帰省した。
その時は特に何もなかった。

しかし、その日から変な夢を見るようになった。
夢の中で俺は例の神社に行き、鳥居をくぐって、石段を上がって、社の前で参拝して、石段を下る、という
全くあの時と同じ行動をしていた。そして三日三晩その同じ夢をみた。
流石に気味が悪くなったが、4日目以降はその夢を見ることはなくなり、気にはなっていたが、
その後は特に何事もなく過ごしていた。

それから十年以上経ち、結婚もし、子供はいなかったが、それなりに幸せな日々を過ごしていた。
あの神社も不可解な夢のこともすっかり忘れていた。

ある年のお盆に、嫁と実家に帰ることとなった。
途中で近道をしようと見知らぬ山道を俺は進んでいったせいで、道に迷ってしまった。
途方に暮れていると、お婆さんが道端で歩いていたので、道を聞くとニコニコしながら丁寧に教えてくれた。
お婆さんに挨拶をして、教えてもらった道をしばらく運転していくと、見覚えのある道に出た。
安心よりも、凄い嫌な気持ちになった。なぜならその道は例の神社がある道だったからだ。
しかし、戻るわけにも行かないので、そのまま進むことにした。

赤い鳥居が見えてきた。俺は気にせず通り過ぎようとしたが、赤い鳥居の前に誰かがいる。
見てはいけないと思いながら見ると、さっきのお婆さんだった。
お婆さんはニコニコこちらをずっと見ていた。
俺は怖くなって、車でスピードを上げ、すぐにその場所から去った。
しばらくすると、いつも通ってる道に出て、少し安心したところで、ふと助手席の嫁を見ると、
嫁の顔が蒼白になっていた。

アレを見たのか?と口には出さず心の中で思いながら、どうしたのか聞いてみると、何かおかしい。
嫁が言うには、確かに鳥居の前に人がいるのを見たが、俺が見た「お婆さん」ではなく、
嫁が高校時代に自殺した同級性の女だったというのだ。
自殺の原因はいじめらしく、嫁は直接はいじめに加担してなかったが、見て見ぬふりをしてたとのことだった。
しかし、ずっとその事を気にはしていたらしい。

俺は嫁に気のせいだよと諭しながら、気丈に振る舞いながらも、
あのお婆さんが俺達をあの神社に誘ったのか?など、いろいろ考えながら、運転していた。
俺はあの神社の事、俺が見たのはお婆さんだったことなど嫁には黙っていた。
とにかくすごく怖かった。

その日から、嫁が夢をみるようになった。内容を聞くと、例の神社に行き、石段をあがると、社があって・・・
実際に神社へ行ったわけでもないのに、俺がかつて見た夢と同じだった。ただし大きく2つ違うところがあった。
一つは参拝して帰ろうと振り向くと、目の前に例の自殺した女が現れて、そこで目が覚めるのと、
もう一つは、もう数十日たっても同じ夢を見続けることだ。
嫁は元気もどんどんなくなり、病院につれていくと鬱と診断された。
ほとんど寝られてないせいか、目も虚ろになってる場合がほとんどだった。

俺があの神社に立ち寄り参拝してから十数年、ようやく理解した。
俺はずっと祟られていたのだと。
今思えば、帰省時、あの道は普段絶対に通るはずのない道だった。
なのに何故か、通ってしまった。何かに呼び寄せられたのか?
とにかく嫁に本当に申し訳ないことをしたと思っている。

さらに数年が経った今でもかつての幸せな日々は戻ってこない。
嫁が自殺しないか常に気を配る毎日だ。

【洒落怖】【怖い話】イメージ

親父から昔何度か聞かされた話なんだが、おれが2~3歳のころ、一緒に住んでた曾祖母が亡くなった。
たぶんそのころは人が死ぬってこともよくわかってなかったと思う。 

その3日後くらいに、親父と風呂に入ってたら、おれが突然「最近おばあちゃんが階段を上がって寝室に入ってくる」と言い始めたらしい。 
親父は曾祖母ではなく、同じく一緒に住んでた祖母のことだろうと思ってたら、
おれが「おおきいばぁちゃん(祖母と区別して曾祖母のことをそう呼んでいた)が上がってくる」と言うので、
「おいおい、こいつ死んだ曾祖母のことを言ってるのかよ」とゾッとしたそうだ。 
しかも、「どんな風に入ってくるの?」って聞いたら、「下がしろーくて足がない。それでこっちを見て笑ってる。」と答えたらしい。 

それを昔、親父から聞いたとき、当時幼いおれが見えてたものが、「足がない」という一般的な「幽霊像」と一致してるってことに、自分でも気味が悪いと思った。 
なんせ、まだ保育園にも行ってないくらいだからな、お化けのイメージはなんて持ってないはずだし、そもそも死というものもよくわかってなかったはず。 

んで、最近実家に帰ったときに、久しぶりにこの話をした。 
おれが「下が白くて足がないって言ってたんでしょ?それって一般的な幽霊像と一致してるよね、
小さい頃は見えてたのかもなぁ、自分が怖いわ。」と身振りを交えて話していると、すぐに親父からの訂正が入った。 
そして、それを聞いたおれは、この話について自分が大きな勘違いしていたことに気づくと同時に、
改めて当時自分が見ていたものに対して異様な恐怖感を覚えた。 


「…いや、「下」じゃなくて「舌」な。真っ白の舌を出してたって。」 

どんなキャラクターでもいい、いままでに「白い舌」を連想するものを見たことがありますか?幼いおれが見ていたものはやはり、この世のものから外れたものだったのか…

【洒落怖】【怖い話】禁足地

初めて旦那の家に行ったのが11年前、私が18歳の時。 
当時旦那は父親と大喧嘩の末半絶縁状態で、実家から離れた祖母の家にずっと住んでて、私も彼の家に行く時は祖母の家に遊びにいってたのね。 
付き合って1年くらいしたころ、ようやく旦那と父親が和解したとかで、旦那も実家に戻り、そのタイミングでようやく家に招いてくれた。 
旦那の家、ちょっと奥まった地区にあって、決して田舎ってわけじゃないのにその地区だけなんか孤立してる感じだったのね。 
太めの通りを一本横道に逸れて入っていく感じの地区なんだけど、その道を逸れた瞬間に全身に凄い鳥肌が出た。 

私、多少霊感あるのか「何かが居る」とか「ここは変」とか、ざっくりとした雰囲気はすぐ察してたから、 
この土地は何かがおかしい!!って直感で感じたのね。 
で、よく見たら、その地区の入口に「禁足地につき立ち入り禁止」って書いた看板とすごく荒れた柵で囲った土地があったから、 
「この辺ちょっと怖いね…??」と旦那にそれとなく聞いてみると、 
「あー防空壕とか多いしねぇ、ちょっと上がったとこには無縁仏がいっぱいあるよ~」なんて軽いノリで返事されて 
まあ私の心配しすぎが…って気にしないようにしてた。 

旦那の家に着いても違和感と鳥肌はずっと収まらなくて、常に誰かに見られてるような視線を感じてた。
旦那の家は一見普通の家なんだけど、普通じゃないって印象。 
何がおかしいとか具体的にいうのは難しいんだけど、真昼間なのに旦那の家含めて横並びの数件が全部どんよりして見える。 
初めて遭う旦那の母親はすごく美人で優しくて、気を使わせない素敵な女性だったんだけど、そんな事がどうでもよくなるくらい家が気持ち悪いって印 象が勝ってた。 
いざ家の中に入ると、凄く綺麗に掃除されてるんだけど外見で感じたどんよりさが更に強い感じで、 
とにかく空気が悪く感じて、居心地の悪さのせいか気分が悪くなってしまい、長居せずに帰宅。 
このあとなぜか無意識に足が遠のくようになり極力旦那の家には近寄らないようになってた。 

初めて旦那の家に行ってから5年後、旦那と結婚が決まり、婚約期間花嫁修業も兼ねて旦那の家に住むことに。 
あまり気乗りしなかったけど、仕方なくって感じ。 
そこからが本当に最悪だった。 

・いざ一緒に住んでみると、自分が初見で感じた違和感や気味の悪さがどんどんエスカレート。 
・姑と家で二人きりの時にリビングで雑談してると、2階からバタバタ歩き回ったり引き出しを開けたりドア閉めたりとかの物音が凄い。 
  姑も気づいてて、「●●ちゃん(私)が来てからだよね~(笑)●●ちゃんが霊感あるからかな~?」程度。 
・舅のドッペルゲンガーの様なものを度々目撃する(磨りガラス越しのシルエットで、誰もいないはずの部屋に舅らしき人影目撃多々有り) 
・旦那と地区を歩いてる時、突然大量の足音に追いかけられる。禁足地の前まで追いかけられぴたっと音が止んだ 
・旦那や旦那友人たちと麻雀してると、突然玄関の開閉音と2階へ人が上がってくる足音→誰もいない というのが何度も 

そして、この辺は関係あるのか定かじゃないけど、 
・基本的に、誰も家に居着かない。舅・姑も旦那もみんな夜以外家にいない。仕事が休みでも家でゆっくりするということがない。 
 用事がなくても無意識にフラッと出かけて夜遅くまで帰ってこない感じ。 
 旦那の妹は高校卒業したっきり4年間一切実家には戻ってきてなく、帰省する時も家族で外食する程度で実家には一歩も足を踏み入れなかった。 
・舅が体調を崩し、仕事を退職。障害者手帳を貰うレベルに。舅と姑が一切会話をしなくなる 
・旦那が欝っぽくなり、突然スイッチが入ったように暴れたり暴力を振るうようになる、その為旦那ともどんどん不仲に。 
・私が喘息発症。旦那宅にいると常に咳が止まらなくなる吸入薬もあまりきかない。&原因不明の鼻血が毎日のように出る&物凄い静電気体質に 
・姑と、「オバケいるのかな?w塩でも盛ってみる??」と玄関とキッチンに塩を盛ったところ、キッチンの塩は一晩でカチカチに。玄関の塩は誰かに踏み潰されていた。 

など、目に見えて怪現象と一家の雰囲気が悪くなっていった。 
そんな中、ある日突然姑が私に「あんな子がいるからいけないんだ!!アイツが来てからだ!!」と罵り、翌日離婚届を置いて失踪。 
私も同居してからの様々なことが耐えられなくなり、婚約解消して同居取り消し。 
実質旦那実家に家に男二人だけと言う状況になった。 

旦那宅を離れてからあれだけ悩まされてた鼻血がピタリと止まり、喘息も本当に喘息だったの?ってくらい出なくなった。 
静電気体質は全く改善されなくて、季節湿度環境関係なしにバチバチ目で電気が見えるレベルで発症してたけどw 

2ヶ月後、姑から連絡があり、「あの時はごめんね、●●ちゃんのせいじゃないのに」って謝罪と「少し会えないかな?」と食事に誘われた。 
姑には家が色々と悪くなる前までは本当に良くしてもらってたから二つ返事でOKを出して会いにいく事に。 
食事しながらお互いの近況を報告しあい、姑は私が姑が出て行った後すぐ婚約と同居を解消したと知って残念そうにしてた。 
姑との食事が終わった帰り、二人でふと「男二人でうまくやれてるのかな?」と言う話になり、旦那宅を見に行くことに。 
二人共鍵は持ってないから外から見るだけだけど、洗濯物干してたりとかそんな日常が垣間見れればいいやみたいな感じで家まで行ってみた。 

旦那宅について二人共呆然。 
庭は荒れ放題。それどころか玄関のガラスが割れたまま吹きさらしになってる。 
相変わらず家には誰も居ないんだけど、明らかに「誰かが居る」ような感じ。人の気配がする。 

心配になって、二人で隣の家を訪ねて最近の舅と旦那の様子を聞くことに。 
隣のおばさんは私たちを見て「あら~!久しぶり!二人共最近見かけなかいけど何してたの~!」って感じで、 
姑が離婚して出て行った事も、私が婚約解消したことも知らないようだった。 
私と姑二人の近況を伝えると、「え…?」って急に顔色が変わったおばさん。 
旦那と舅がちゃんと生活できてるか心配で二人で見に来たと言うと、「そう、そう…」って妙に納得した感じで色々と教えてくれた。 

まず、相変わらず旦那も舅も日付が変わる頃まで帰宅していない。 
何度かガラスを割る音や女の人の悲鳴が聞こえたりしてたが、その場限りで続いたりしない、 
何より翌日には二人とも普通に出勤していくし、その時に女性が見送っているからただの喧嘩だろうと思っていた。 
私と姑が出て行った事を知らなかったのは、上記の通り女性の姿を何度か見たり、 
日中も家に人が居る気配&実際に人影を見てるからてっきり二人共家にいるのかと思ってたとの事。 
旦那も舅も目が座ってて、最近いつも機嫌悪そうだったから上手くはいってないのかも…とは思ってたらしい。 
特に旦那の方は、突然庭の木を蹴り倒したり、帰ってくるなり玄関のガラスを殴って割ったりしてるようで、 
「鬱がこじれたのかな…」って不安になると同時に、「そんな状況でも新しい女作ってるんじゃねーか」って思った。 

とはいえ、二人がおかしい事に変わりはないから、様子見も兼ねて夜私が旦那宅を訪問することに。 
先に電話したら断られるだろうから、「忘れものした」とか適当な理由つけるつもりで突然訪問したのね。 
夜、旦那の車がガレージに止まってることを確認したうえでチャイムを鳴らすんだけど、誰も出てこない。 
旦那の部屋2階だから、チャイム聞こえてないのかな~って思って鍵空いてたらそのまま上がらせてもらおうと 
ドアノブに手をかけると、バチーーーン!!ってありえないレベルの静電気。 
夜だったから火花?がほんとにすごくて、手もしばらく痺れてた。 

うわぁやだなぁ…って一瞬躊躇したんだけど、鍵が空いててドアノブが回ったからこのまま家に入ろうって思った瞬間、 
ゾワワワワって全身の毛が逆立つ感覚ともの凄い視線を感じた。 
ハッって視線感じた先を見たら、玄関の割れたガラスの向こうから明らかにこっちを見てる人が居る。 
真っ暗だからほんとうっすら人影なんだけど、確実に目が合ってるのはわかった。 
「旦那……?いや、これ違うやばい!!!!」って思った瞬間走って車に戻って近所のコンビニまで行き、 
旦那と共通の友人Aに電話して状況を説明して来てもらった。 
友人Aは麻雀仲間で、旦那宅にいるときに何度か怪奇現象に一緒に遭遇してるから、 
玄関で誰かと目が合ったという話をすると超ビビってたけど、なんとか説得して家まで同行してくれることに。 

再度旦那宅へ向かうと、ガレージに舅の車が増えてたので、私がAを待ってる間に帰宅した模様。 
Aとチャイムを鳴らすと舅が出てきてくれたので、Aが「忘れ物取りにきました~」と説明して家にあげてもらえた。 
2階の旦那の部屋へ直行すると、部屋の電気がついてるのか隙間から光が漏れてた。 
Aがドアを開けた瞬間、部屋からタバコの煙みたいな白いモヤみたいな物がフワッと漂ってきた。 
タバコ臭はなかったから多分タバコの煙じゃないんだけど。 

旦那はと言うと、ベッドの上で一点を見つめてボーッと座ってた。 
見た目が明らかに普通じゃなくて、もう目で見てわかるレベルでなんか黒いオーラみたいなのまとってるの。 
部屋中殴った跡がいっぱいあって、壁に穴があいてたり血が付いたりしてた。 

絶対やばいってAと確信して、無理やり連れ出してAの家に。 
その日はAの家に旦那を泊めてもらうことにして、 
Aが「しばらくは俺んちに泊めるから、何かあったら連絡するから」って言うんで旦那のことお願いして帰った。 
帰宅して姑に旦那の事を伝えると電話の向こうで「私が離婚して家を出たばかりに…」って号泣してた。
私も、婚約解消したとはいえ大好きな彼だったし、自分のせいだと泣いた。 
でも、私も姑も家を出た身だし、今は二人共旦那たちに関われる立場じゃないからってことで、 
全てAに任せてAの連絡を待つことに。 

連続規制かかった… 

旦那を連れ出してから1週間くらいした頃、Aから連絡が。 
連れ出した翌日、旦那は普通に起きて仕事に行った。 
朝起きた時に状況を理解してなさそうだったから、仕事終わったらまたAの家に 
来るようにと言ったらなんとなくホッとした感じで家を出たらしい。 
それから1週間ほどAさんの家と職場を往復する生活で、だんだんと落ち着いて 
きて表情も柔らかくなってきたと。 
で、「旦那くんが●●ちゃんと話したいって言ってるよ」って言うので、Aさんも 
含めて3人で会うことに。 

1週間ぶりの旦那は顔色もよく、黒いオーラみたいなのも感じなかった。 
旦那から、家にいる間破壊衝動が凄く、気がついたらガラス割ったり壁殴ったり 
してたこと。 
私と暮らしてる時、何故か毎日無性にイライラして「こいつ(私)を殴らな 
きゃ」という気持ちになってて、 
セーブしようとしてもどうしようもなく手を上げてしまってたから、それが嫌で 
私を遠ざけてたことなどを告げられ、 
私に対して暴力を振るってた事を謝られた。 
その後やり直したいと言われたので、「はぁ?だってあんた新しい彼女出来たん 
でしょ?お隣さんが言ってたよ!」 
と言うと、「いや、本当にそんな事実はない。ただ、自分も家の中で女の気配感 
じてたから…」と言われ鳥肌。 
女の悲鳴聞いたって言ってたから…って言いかけたけど口にするのも怖くなって 
旦那には言わないでいた。 
その後長々と話合いしたけど、とりあえず私も元々嫌いで婚約解消したわけじゃ 
ないから復縁することに。 


その後旦那は実家を離れて別の部屋を借りたんだけど、不思議な事に家を離れて 
から別人のように穏やかになり、喧嘩も暴力も一切なくなった。 
旦那が家を出てから3年後に、再び婚約。 
今度は何もかもがスムーズに進み、そのままちゃんと結婚できました。 

旦那の家が悪かったのか、土地が悪かったのかわからないけど、私も姑も旦那も 
家を離れてから何もかもがいい方向に向かってるのは確か。 
だからまだ家に残ってる舅にはできるだけ早く家を出て欲しいんだけど、未だ家 
を手放す気はないようです。 
今でも気になるのは、私が玄関で見た人や磨りガラス越しに見てたのは全部男 
だったのに、 
旦那や隣のおばさんが見てたのは女の人だということ。 
見る人によって姿を変える霊とかあるんでしょうかね?? 
あと、私の鼻血や静電気はなんとなく霊障というよりは悪いものが近くに来た時 
の自己防衛的なものなのかな?とも思ってます。 

【洒落怖】【怖い話】山に生えてるモノ

俺は大学卒業してから神奈川県の厚木で一人暮らししている。
厚木といっても駅から離れた田舎の方だから山がすぐ近くにあるんだ。

それまで暮らしていた千葉には山なんて身近に無かったから山の景色が好きでさ。
仕事の帰りに夕焼けに照らされて赤く染まった山を眺めながら歩くのがちょっとした楽しみだった。

その日も仕事が終わっていつも通り山を眺めながら歩いていたんだ。

でも何かがおかしい。
理由はすぐにわかった。

よーく見てみると、山のてっぺんに何かがニョキって生えてるのよ。
黒い棒みたいなもの。
昨日までは絶対にそんなものなかった。

最初は新しく立てた電波塔かなんかだ思ったんだけど、
他の電波塔よりも4、5倍は高いし、何より細すぎる。
遠目に見ても杉の木くらいの細さしかない。

そんなに細くて長いものが何の支えもなく突っ立っているのは異様な光景だった。

「え?!あんなものあったっけ?」と思ってじっと見てたら、
だんだんその黒い棒?が左右にゆらゆら揺れ出した。

あっけにとられて見ているとそのうちに段々と揺れが激しくなって、
最終的にはグニャングニャンに踊り出した。
ほら、水の中のボウフラとかがよく動いてるような…あんな感じ。

その時点で相当怖かったんだけど、
今度はどこからともなく変な音が聞こえてきた。

「びぇぇぇ~~んん… びぇぇぇ~~ん…」

みたいな。
琵琶の音と赤ん坊の泣き声をミックスしたような音。
(今思うとあれ音じゃなくて声だったのかな?)

そん時になって本能的に「ヤバイ!!」って思った。
なんだかよくわからないけどアレを見続けていたらヤバイと思った。

すぐに耳を塞いでアレを見ないように道路の地面だけを見て早足で帰った。
伝わるかわからないけど、この時はものすごく怖かった。

何度も通った道だから下だけを見て帰るのは苦じゃなかったし、
道路の端の方を歩けば耳を塞いでいても車に轢かれる心配はなかったけど、
アレをもう一度見てしまったら、あの音をもう一度聞いてしまったら、
俺はもぅ何かが壊れてしまうって。そう思った。

家に辿り着いたときには全身汗がびっしょりで、
家に中にまであの音が聞こえてこないかと怖くて、
十分くらいずっと部屋の中で耳を塞いでた。

その日からは仕事の帰りには必ず違う道を通るようにしていたんだけど、
今日は意を決してその道を通って帰ることにしたんだ。

何もなかったけどね。


でも気になるのは最近やたらと老人の行方不明の放送が多いんだよね。
前もよくあったけど、最近のは異常に多い。

もしかしてアレと何か関係があるのかな?

そんな話でした。

【洒落怖】【怖い話】 深夜の学校

僕には未だに忘れらない不思議な体験があります。
今から7年前の秋の出来事です。
仕事の家に持ち帰った僕は、その夜、自室で書類の山と格闘しておりました。
ようやく半分ほどを片付けたところで、時計を見れば夜中の1時を過ぎておりました。
僕は気分転換のため、ぶらりと夜の散策に出かけることを思いつき、
寝静まった家族を起こさぬようガレージから自転車を引きずり出しました。

深夜の国道170号線をひたすら南へ下り、
途中、近鉄古市駅に差しかかったところで東に折れ、
聖徳太子ゆかりのお寺があることで有名な奈良県太子町の方向へと自転車を進めました。
大きな橋を渡ると、辺りは漆黒の闇に包まれました。
ブドウ畑が広がる田舎道をひた走り、心地よい風を全身で受けていると、
仕事の疲れが一度に消えていくようでした。

やがて、古い木造家屋が密集する小さな集落へと入りこみました。
この辺りでそろそろ帰ろうかなと心細くなったため、
もと来た道を引き返そうとしました。
ところが、どこで道を間違えたのか、細く曲がりくねる道を行き来するばかりです。
ようやく集落内から抜け出ると、突如、目の前に大きな建物が現れました。
それは小学校でした。

静まり返った通学路に沿って、道路工事を知らせる赤いランプが不気味に点滅しておりました。
その朧げな光が人気の無い校舎を淡く浮かび上がらせておりました。
僕は、そのまま学校の前を素通りしようとしました。

ところが、入口の前であることに気付いたため、自転車をとめました。
真夜中にもかかわらず、何故か、学校の門が開いているのです。
重そうな鉄の扉は誘い込むかのように全開になっていました。
気がつくと正面をくぐり抜け、そのまま学校の中に入っていました。

入口のすぐ左には三階建ての鉄筋校舎がそびえ立ち、
校舎へと続く道に冷たい影をおとしていました。
その影の中に青色のジャングルジムが、ぽつんとたたずんでいました。
そのジャングルジムの横で自転車をとめると、目の前に広がる真っ暗な校庭を見渡しました。

校舎の向こうには山々の稜線が見え、その上には満天の星空がありました。
それらをぼんやりと眺めるうちに、無断で学校に侵入している自分にようやく気付き、
急ぎ、学校を出ようと自転車の向きを変えました。

そのときでした。

突然、鋭い視線を感じ、その方向へと顔を向けました。
すると、真横にあるジャングルジムに、鈴なりになってしがみつく5~6人の子供たちの姿がありました。
彼らは、まるでマネキン人形のように身動き一つすることなく、ジッとこちらを睨みつけていました。
瞬時に、「ごめんなさい」と心の中で叫びました。
見てはいけないものを見てしまったという言いようのない恐怖感が込み上げてきたからです。
そしてすぐに視線を外すと、脇目もふらず正門を出ました。
少し離れたところで自転車をとめ、あれは一体なんやと胸の中で問いました。

幾分冷静さを取り戻し、今一度、学校の前まで引き返しました。
が、子供の姿はありません。
ふと、腕時計を見ると午前2時過ぎ。
我に返った僕は急いで家に帰りました。
 
 

翌日、この話を友人に話しました。
一笑に付されると思いきや、
「いくらなんでも夜中の2時に子供は遊べへんで。
 だいたい学校の門を開けたままにするなんて考えられへん。幽霊に違いない」
と断言されてしまいました。
怖がりの僕としては、単に近所の子供たちが夜中に遊んでいただけなどと否定をしてほしかったのですが、
逆にダメ押しをされる結果となりました。

友人の言葉でもっともだなと思ったのは、学校が門を開けたままにするはずがないという点です。
治安にさほど心配もないとはいえ、真夜中に学校を開放するという話は耳にしたことはありません。
それだけにあの夜誰が、何の目的で正門を開けていたのか、未だに理解できないのです。

もう一つ釈然しない点があります。
それは、こちらを向いていた子供たちの表情が、どうしても思い出せないということです。
服装についてはかなり鮮明に残っているものの、
彼らがどのような表情を僕に投げかけていたのかという点が、ものの見事に記憶から抜け落ちているのです。
睨みつけられた、という事実は覚えているのに、その相手の顔が思い出せないというのも
我ながらおかしな話だと思います。

数日後、友人を誘って再びその学校を訪れました。
日曜日の昼下がり、学校は正門をかたく閉ざし、ひっそりと静まり返っておりました。
その際、新たな発見をしました。
正門の側に、石造りの立派な慰霊碑が建てられていたのです。
その裏手には例のジャングルジムがありました。
慰霊碑が建てられた理由と、あの夜の出来事のつながりは定かではありませんが、
何故か、その慰霊碑にむかって手を合わさずにはいられませんでした。

【洒落怖】【怖い話】 人面芋

兄嫁(めんどいので仮名でK子さん)のお父さんは昔から農家をしてる人なんだけど、
農家って小さい頃からお手伝いさせられるから大変だったってよく愚痴をこぼしてた。
そんな愚痴の流れと酒の勢いで出た話。

当時K子さんは小学生低学年くらいで、家の作業を手伝ってた。
K子さんのお父さんはジャガイモとかソバとか果てはワサビとか色んなのを作ってた。
なのであんまり収穫とかに機械を使わない(規格的に使えない)ので手作業だったらしい。
それでも無農薬で丹精込めて作った野菜は本当においしくて評判だった。

ある日、K子さんのお父さんの兄が農家をやめるってんで土地の一部を請け負った。
そこそこの広さだし、元はソバを育てた土地だからとりあえずジャガイモを植えて様子を見た。
そのジャガイモの最初の収穫のとき、K子さんが手作業で掘ってたら面白いものが出てきた。
よく大根とかである、人みたいなジャガイモが採れたんだって。
それもリアルな顔立ちをしてて、ジャガイモにしてはサイズもデカい。
こりゃ珍しいってんでお父さんに見せたら「よかったかなー」って褒めてくれたそうだ。
その芋は出荷せず、その日にバター醤油で焼いて食べたが、お父さんの土地のジャガイモよりおいしくない。
デカくなりすぎてるし、まだ整った土地ともいえないし、そんなもんだよってお父さんは教えてくれた。

それから何度か植え付け、収穫を繰り返してたんだけど、必ずデカめで人っぽいジャガイモがとれたらしい。
よくよく思い返すといつも同じ場所でその人面ジャガイモは見つかるんだって。
他のジャガイモは、どんどん美味しくなるのにそのジャガイもだけはおいしくないまま。
で、採れる度に毎回食卓に並ぶ。それがK子さんが高校受験くらいまで続いたらしい。

けどK子さんのお父さんの兄が失踪してから人面芋が収穫できなくなった。
それどころか請け負ってた土地の作物が急に不作続きになって、結局荒地になってしまった。
K子さんのお父さん曰く「土に何かしてたのかもなー」って気にも留めてなかった。
K子さんもそこまで気にはしてなかったが尾を引く事件だったなーとはいってた。
けど私からするとそんな、何かも知れない土地とモノで育った野菜を食べてるのかと不安になったよ。

【洒落怖】【怖い話】 迷惑電話

知らない番号から電話が来て 
おばさんの声で「鈴木さん(仮名)?」って聞かれた。 
でも自分は田中(仮名)。 
いいえ違いますって答えたら「じゃあ誰?」って言われて 
びっくりしたし少しイラッときたから 
誰って言いませんよ、しかもいきなり失礼じゃないですか 
って言ったら電話切れた。 

なんだろうと思ってたら 
数日後にまた知らない番号(多分↑の時と同じ番号)から電話 
出てみたらまた同じおばさんが「鈴木さん?」って聞いてくるから 
「違いますよ」って言って切ってその番号拒否した。 

そして一週間くらい経ってから今度は別の知らない番号から電話。 
最近変なの多いなと思いながらとりあえず無言で出たらあいつ。 
「鈴木さん?鈴木さんでしょ?」って謎に嬉しそうに言ってきた。 
もう気持ち悪いし無言で切る。 
そしたら今度はすぐにかかってきた。 
驚いたけどいい加減腹が立ったので 
注意しようと思って出た。 
「あっ鈴木さん?鈴木さんだね?」 
また謎に嬉しそうな声。 
「ちゃんと見てかけて下さい。違いますって。何回もしつこいですよ。」 
って怒りながら言ったら 
そのおばさんが男みたいな低い声で 
「うん、だって田中だもんね」 
って言ってきて電話切れた。 
すごく怖くてその後しばらく電話来るたびにビクッてした。

【洒落怖】【怖い話】 新築物件

これは私が大学時代の話だからもう10年以上も前のことになる。
当時、私は実家から遠く離れた大学に通っていた。新幹線だと丸一日かかるので、実家に帰る時は飛行機だった。
当然一人暮らしで、大学時代は寮だったのだが、寮にまつわる怪談やうわさ話に反して何事も無く実に平穏だった。ただとても古い建物だったのでGが多く、寝ている時に天井からムカデが降ってきたなんてこともあり、別の意味で恐怖だった。

大学卒業後、近くにある同系列の別の大学に編入したので寮を出ることになり、近場に部屋を借りることになった。
古い部屋で虫に悩まされるのはもうこりごりなので、不動産屋さんにお願いしてできるだけ新しい部屋を借りることにした。もちろん値段は相応に高くなったが、駅前徒歩3分の場所に新築の物件を借りることができた。1階2階とも4件ずつ並んだ2階建てのコーポだ。

ところで私の母の家系は皆怖がりの零感なのだが、父の家系は霊媒師や生きている人間と死んでいる人間の区別がつかなくて運転できない人や、とにかく異様に霊感が強い人が多かった。
父も強いが父のいとこのYおばさんは別格で、軽い予知や過去視?のような能力もあるひとだった。(ちなみに私はちょっと感じる程度で幽霊などみたこともない)
その人に引っ越したあと電話でYおばさんに「(私)ちゃん、よくない状態にある」って言われたのだけれど、新築物件で建物に謂れはないし、その物件が建つ前は長いこと駐輪場だったことも知っているので、場所が悪いということはないと思っていた。
けどその新築物件は綺麗な見た目に反し、非常に寒々しかった。部屋に入るとぞわっと鳥肌がたつこともあった。
それからそこに住んでいた期間はたった2年なのだけど、その期間に入院2回、救急車1回、骨折2回に靭帯損傷1回と、その他にも病院には数え切れないほどお世話になった。
なんとなく不運が続くな、程度にしか思ってなかったのだけど、その頃から急激に体が冷えるようになった。元々極度の冷え性ではあるが、そういうレベルの話ではなく私が入るとこたつが冷えていくと言われたほどだった。

そしてその部屋だが、夜中の3時頃になると、どさっ、と何か重い物(土嚢とか)を落とすような音が聞こえてくる。
壁が薄いのでおとなりさんがベッドから落ちてるんだろう程度に考えていたのだが、毎日同じ時間なので不思議に思っていた。
ある日友人が遊びにきて私と一緒にロフトで寝ていたら、その日も案の定どさっという音が聞こえてきた。友人は飛び起きて
「今の音何!!?」
と慌てていたが、
「気にしなくていいよ~いつものことだから。多分お隣さんが寝ぼけてベッドから落ちてるんだよ」
と笑っていたら、
「いや、今の音、絶対部屋の中心でした」
と言い張る。
部屋の中心には2人掛けのソファーとテーブルが置いてあるだけで、他には特に何も音の発生源はない。
でも友人の主張が気になったので、次の日はそのソファーとテーブルをどかし、中心に布団を敷いて寝てみることにした。友人には止められたが私自身は特に怖いとは思わなかった。
ちなみに友人にも一緒に寝ないかと誘ったが断られた。
次の日布団に入って夜中の3時を待ったが、その日は何も落ちてくる音がしなかった。
自分の上に落ちてくるのは何かと多少楽しみにしていたのでがっかりして寝に入ると、しばらくして周囲に人の気配がして目を覚ました。
目を開けても何も見えないが、自分の周囲を歩く音が聞こえてくる。
そして、その周囲の気配が一斉にこちらを覗きこむのがわかった。何でわかったのかは知らないが、とにかく(あ、みんなが覗きこんでる)と思った。
その視線には害意も敵意も興味も何の感情もなく、ただそこにあるものを見つめているだけのように感じられた。
結局それ以上の何もなく朝を迎えた。
そこに寝たのはその1回きりだ。怖いとは不思議と全く思わなかったが、体が冷えて寒くて仕方なかった。

結局その後体を壊して実家に戻ることになり、その部屋を引き払うことになった。

引っ越しまで2週間となった時に、お隣さんが訪ねてきた。
ちなみに201・202(お隣さん)・203(私)・204の並び。
「俺、来週引っ越すんですよ」
と言われ驚いた。
「え、私はその次の週に引っ越すんですよ」
と言ったら、お隣さんは更に驚いて
「え、201の人は明日引っ越しですよ」
と返してきた。
前述の通りここは新築物件で、つまり201~203号の3件とも2年も経過しないうちに引っ越すことになったわけだ。
びっくりして204号の人っを訪ねてみると、なんと来月引っ越しだという。
1階のひとにまで聞きまわることはしなかったが、全8件のコーポのうち、上半分の4件はたった2年で空き家になる。
なんとなくぞっとして、それ以上の追求をせずそこを引き払った。

実家に戻ったら、酷い冷えが徐々に収まってきた。
実家は東北なので西日本の暖かい地域のあの部屋より暖かいとはおかしいが、ともかく不調はなくなった。

それからしばらくして、父のいとこのYおばさんが訪ねてきた。彼女は私を見るなりびっくりして
「あんたあっちで一体どこ住んでたの!?」
と言った。
別に曰くがある土地じゃないけど、こういうことがあったよ~と言ったら、Yおばさんは
「それ、井戸だね」
と言った。
物件を建てる前の駐輪場が作られるよりもっともっと前、いつの時代かわからないがそこは井戸だったと。
おそらく、井戸を埋め立てた時にちゃんとした処置(? よくわからないが通気口のようにパイプか何かを通すことと、地鎮祭みたいなものをするとかなんとか)をしなかった井戸だろうという。
彼女いわく、井戸とは記憶を持つものらしい。その井戸の埋め立てられた時の記憶を追想していたね、と言われた。
「井戸の底に住んでいたようなものだ。だから体は冷えたし、埋め立てるために周囲を囲んだ人の足音や視線も感じるし、投げ入れられた土の音もきいたのだろう」
そう言われて、すべて納得した。
怖いというより、あれが井戸の記憶だとしたらなんとなく悲しいと思ったのを覚えている。

今その部屋がどうなっているのかはわからない。

【洒落怖】【怖い話】キャッチボール

高校時代のくそ怖かった体験談。 
夜中、よく校庭で友達と二人でキャッチボールをしてた。(ヤンキーが金網に開けた穴から入ってた) 
暗がりでキャッチボールすると遠近感がうまく掴めず球が目の前で急に迫るように見えて、当然危ないんだがそのスリルが楽しくて。 
でその日もいつものようにやってたら、校庭の別の場所でボールがバウンドする音がした。 
エッと思って音の方を見ると少し遠くに子供がいた。 
夜中1時前くらいだし、高校の校庭だし、俺ら以外の足音なんて聞こえなかったからむちゃくちゃ驚いた。 
友達もビビってこちらにかけてきた。 
子供がいたのは街頭の明かりが当たらなすぎて、夜キャッチボールのときは避けていた場所。 
でその子供が、球を拾い、向こうのほうに投げた。かすかだが白いもの(球)が飛ぶのも見えた。 
投げた向こうは校庭の木々の影で真っ暗な場所。 
球が暗闇に消えて数秒、校庭にリバウンドする音がした。相手もいないのに投げている・・・? 
と思った瞬間、暗闇からこちらに球が向かってきて俺たちのそばに落ちた。 
どうしていいかわからず子供のほうを見ると、子供は突っ立ってるだけで、投げ返してくれって動作もしない。 
ビビる友達が「帰ろうぜ」というので子供に背を向け無視して行こうとした瞬間、暗闇の方から 
タタタタタ!とこちらに走ってくる音が!!あまりに怖くて全速力で出入り穴までダッシュした。 
その後は何事もなく学校を脱出してお互い家に帰ったが、以来もう二度と夜キャッチボールはしなかった。 
後日、友達がダッシュの際に落としたグローブが例の木々の場所の樹上にひっかかっているのを見つけたが、 
さすがに気持ち悪くて知らんぷりしたと言っていた。それを聞いた時も本当に怖かった。 

【洒落怖】【怖い話】逃避旅の夜

本当にあった話。
オレってばアウトドア好きなんだけど、その中のひとつに逃避旅ってのがある。
年に一度、夏になったら自転車にテントを積んでひたすら走る旅のことだ。
現実逃避なのでもちろん目的地はない。
行き当たりばったりなので、これまでいろんな所で野宿をしてきた。
そんな旅の中で体験した、怖い思い出。

俺がまだ二十歳そこそこの頃。
お盆休みを利用して逃避旅に出た。
テントに寝袋、必要なものを全部ロードバイクにくくりつけ、オレはひたすら走った。
どんどん街からは離れ、夕方になる頃にはもうすっかり山の中だった。
そろそろ野宿ポイントを決めようかなと思い、オレは近くにある湖へと向かった。
そこは県内でもそれなりに有名な観光地なため、湖のそばには食堂や売店もある。
ちょうどいいや。と俺はそこで飯をすませて、テントを張ろうと人気のない山の方へと向かった。
観光地とは言っても夜になると無人になる。
ましてや少し離れると本当に静かだ。
俺は早々にテントを張り、寝袋へともぐりこんだ

その夜、ふと目が覚めた。
たしかまだ夜中の1時ぐらいだったと思う。
寝付けそうになかった俺は、仰向けのままボーッとしていた。
キャンプ経験者ならわかると思うが、夜の山ってのは独特の雰囲気がある。
日常生活では決して味わえない感覚なんだけど、その夜はどこかおかしかった。
真夏だというのに、虫の声ひとつない。
(なんか気味悪いな~)と思っていたその時。

誰かがテントを押した。
ヌッと外からテントを押す手が、月明かりに照らされて見えた。
(おおっ!?)と声が出そうになるが、必死に押さえる。
頭のおかしい奴か?と俺は身構えた。
起きてるとバレたら、何をされるか分からない。
手の主は、独り言のような、うめき声のようなものを上げながらテントの周囲を徘徊している。
そして手でまたテントを押す。
(勘弁してくれ...)と思ったその時、またひとつ気付いた。
テントを張った場所は山。
地面には草が生え、木の枝もたくさん落ちている。
だけど、足音が一切聞こえない。
聞こえるのは声だけ。
そんなのありえない。
それに気がついた時、どっと全身から冷や汗が出た。
えたいの知れないそいつは、こちらを伺うようにしてテントから離れない。
息づかいですぐ近くにいるのがわかる。
俺は必死に声を押し殺して、朝になるのを待った。

あたりが明るくなる頃、気がついたら奴の気配が無くなっていた。
俺はかつてないスピードでテントを回収して帰った。
後になってから複数人いたような気がするけど、もうどうでもいい。

とにかく、山というのは不思議なことがたくさん起こる。
皆さんも山に入るときは気をつけて。

【洒落怖】【怖い話】獣の恨み

付き合いのない知り合いの呼びかけで飲み会があり 
暇なので参加したんです。行ってみると5人。顔なじみは主催者くらいで 
来なきゃ良かったと早々に思いました。 

すると話がおかしくて飲み会がメインじゃない 
腹ごしらえして移動するみたいな事を言い出したんです 

肝試しでした。。。。。 

肝試しは事情もあって大嫌いでしたが言い出せる雰囲気じゃない  
顔なじみがいないのも納得、2chのオフ会のようでした。 

4人という数字が怖かったみたいです。それで片っ端から知り合いに 
連絡して引っかかったのが自分だったのです。自分以外は行先も知ってるわけですし、スキで集まったわけですから 
異様にテンションが高い。カメラ見せ合っては意味の分からない爆笑 
どこそこの場所で幽霊見たとかいっては爆笑ネットで見た怖い動画の話題で爆笑 

笑いどころが分からない 
帰りたい 帰りたい 帰りたい 頭の中はそれだけでした 

「じゃ 行こうか」そう告げると主催者が立ち上がりました。 

すると爆笑してた連中も神妙な顔にここで気づきました。 
無理して笑ってたんだ。 

場所は廃病院でした。病院といっても動物病院でした。なんでもペットショップと動物園と提携してて、
餌としての処理など珍しくもない事をやってたのをツイッターなどで拡散されたとか町BBSで広まったとかで 
一気に廃れ廃業に追いやられたとかです。それで酷いのが経営者が逃げたかで従業員も急きょ居なり残された。 
しばらくして異臭騒ぎになり行政が入ったところ地下の牢屋のような 
狭い個所に餓死した動物が沢山いたそうです。 
どうやら生餌候補だったらしく引き取り手がないため発覚が遅れたとか。。 

街とはいってもそこは狭い田舎。噂はなかなか消えず 
買い手もないまま建物自体は放置状態になっているとか。 

しばらくすると夜になると死んだ動物の鳴き声が聞こえるとか 
中には死んだ動物が徘徊するとか噂が流れるようになり体験者が急増してる 
ため非常にホットな肝試しポイントなんだとか。 

そんな話を車中で聞いていると車は人里離れ噂の廃病院に到着しました。 

もう、何が怖いって単純に暗いから怖い。 
真っ暗です。車の明かりだけが真っ暗な森の中、廃病院を照らしています。 
看板も照らし出されてましたが石か何かを投げられたのか割れていました。 

正面にガラスが割れた窓がいくつかありましたが車の照明 
が当たっても真っ暗でした。それが暗い眼窩のようで私はブルブル震えてました。 
あと真っ暗だから足元が危ない。 

車に残るという発想はありませんでした。一人になるのはもう 
無理でした。それに怖がっているのは自分だけではないです。 
経験したことが無いような暗闇の恐怖に全員が変な汗をかいているのが匂いで 
分かります。ベテラン?の一人が言いました。「窓割られているのでガラスなどの怪我に注意。 
古くないから床は抜けないだろうけど器物が転がっているかもだからこけないでね」 
懐中電灯は1個しか無かったので主催者の友人が先頭で持ち固まって移動する事にしました。 
生え始めている雑草を抜けて廃墟の中へ。事件を知っているせいかもしれません。 
血生臭い匂いが鼻を突きました。ですがこれは動物病院特有の動物の匂いだったかもしれません。 
恐怖もあって嘔吐しそうになりましたが我慢してソロソロと進みました。 

受け付けがありました。中を照らすと荒らされた内部が見えました。 
主催者が「ここ入るのは無理かなー」とつぶやいた時、足元を何かが走り抜けました。 
「うわぁああ!」全員が絶叫しました。 

野生動物、、タヌキか何かが入り込んでいたのかもしれない。 
誰かが暗闇の中で呟きました。ですが誰もがある事を思っていたと思います。 

何を思っていたのか引き返す事をせず奥へ進みました。 
一応目的地は地下の倉庫だったからです。 

廊下を進むと何か気のせいなんかじゃなく動物の息遣いのようなものが 
私たちの荒い呼吸の中に混じって聞こえるようでした。 
気のせいだ、、気のせいだ、、、と思いながら私は男にも関わらず 
恥ずかしながら懐中電灯をもった友人の服をつかんでいました。 
はぐれるのが本当に恐ろしかったのです。 
やがて地下へ向かう階段に辿り着きました。その階段は闇の中へ 
落ちていくように見えました。その時、突然足元を駆け抜ける何かが 
ありました。これは本当に危なかったです。階段を転げ落ちそうに 
なり悲鳴が上がりました。危ないので全員がしゃがみこみました。 
「なんだよ!今の!!!」「犬じゃねーか?」「ゾンビ犬?」 
「なわけねーだろ!!」しばらく怒号が続きました。 
ついに私は最初から気づいていた事を呟きました。 
「犬にしてはでかすぎる。。」 

あらい息遣いだけが聞こえてきます。 
眩しいライトが逆に暗闇を濃くしていました。 
「どうする?」すると友人が呟きました。「ここで引き返したら 
二度とスレなんか建てれない」私はまったく意味が分かりませんでした。 
それなのに他のメンバーは妙に納得してました。 
階段を降りる事になりました。 
考え方を変えればさっさと降りればさっさと帰れるという事です。 
そうと決まればこんな不気味な場所でじっとしている意味はありません。 
私たちは降り始めました。 

するととんでもない腐臭が漂ってきました。気のせいなんかじゃありません。 
入口で感じた匂いはまさにここの匂いが漏れ伝わってたものなのでした。 
当然、動物たちの遺骸は回収されてましたが、おざなりな清掃しかされてなかったのでしょう。
もしくは回収のみだったのかもしれません。 
闇の中、腐臭に堪えている状況を考えてください。私は嗚咽を繰り返し 
涙が出てました。暗闇で誰かは本当に吐いてました。 
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。突如真横で動物のような息遣いが聞こえました。
それが足元を走り抜けた時、私が足に激痛を感じました。 

次の瞬間、友人のライトが激しく揺れました。部屋をめちゃくちゃに照らします。 
「いてえ!!噛まれた!!」もう肝試しどころではありません。 
周囲で走り回る音が聞こえます。それが一つではなく、集団なのです。 
友人「やばいやばいやばい!!野犬かもしれん!!」 
私「帰ろう!!ここはまじでやばい!!」 
友人「出口出口出口」私「ライト照らせ照らせ!!!」 

その時ライトが地面を走り回る何かをはっきりと照らしだしました。 

それからは記憶が飛び飛びです。私と友人はあり得ないスピードで 
部屋をぬけ階段を駆け上りました。途中にあった机なんかは弾き飛ばしたと 
思います。半開きのドアは蹴破ったのかもしれません。 
呼吸さえしてなかったかもしれません。走り抜ける中、四足の奴らは 
真横をつけ何度も足首あたりを噛みつこうと歯をむき出しました。 
ですが私達が全力疾走していた為うまく噛むことが出来なかったようです。 

私と友人は入口のドアを蹴飛ばし車に飛び乗りました。 
友人はすぐにアクセルをふかしタイヤを空転させる程でしたが 
勢いよく山道を走りました。事故らなかったのが奇跡です。 

暗闇の中、私達が見たライトに照らし出された物。 

それは見慣れた服装でした。今の今まで一緒にいた私と友人以外の 
メンバーでした。 
彼らが四足になってよだれをダラダラ垂らしながら私たちを取り囲んで 
いたのです。 

警察所で事情を話しました。再度向かおうとしたのですが気づかなったのですが 
私のズボンが血まみれだったので治療のため居残る事になりました。 
友人と警察官二名が現場に戻りました。後で聞いたところ2人が院内で気を失って 
倒れていたそうです。気を失う前にお互い噛みつきあったようでかなりの怪我だったそうです。
もう一人は階段の下におり、警察官2人に襲い掛かって 
取り押さえられたそうでかなりの修羅場だったそうです。 

後日談です。警察や友人に受けた説明をまとめます。原因は極度のストレスと思い込みによる一時的な錯乱という事でした。 
暗闇で分かりませんでしたが入口に入ってすぐに一人が発狂して走り去ったようでした。
でかい動物ではなくメンバーの一人でしたが暗くて分かりませんでした。 

倒れていた2人は怪我で入院しましたが無事退院したそうです。 
ですが警察官に襲い掛かった一人はかなり長い間病院に入ってたそうです。
しかも可哀想な事に警官に襲い掛かったため業務執行妨害か何か犯罪まで付いたとかでした。。 

不思議と新聞沙汰にはならなかったのでほっとしました。 
幽霊は一切出ませんでしたが個人的には本当に本当に洒落にならない怖い 
経験でした。 
ちなみに私の右足のふくらはぎにはその時の傷が残っています。 
誰の物か分かりませんがモロに人の歯型でえぐれているので整形を考えています。 
もし、あの時転んだりしてたらどうなっていたのか。 
それよりあれがただの錯乱だったのかどうか。今でも気持ちの整理はついていません。
ただ餓死した動物達が生きていたら人間を許さないだろうとは思います。 
今も生活しているとたまに腐臭のようなものを感じる事があります。 
私もいつか発狂してしまうのでは、、なんて想像をして鬱になります。 

どこかで吐き出したかったので少しスッキリしました。 
長文しつれいしました。読んでくださった方ありがとうございました。 

、、ただ一つ、、私の足に噛みついたのは 
間違い無く友人だった気がします。

【洒落怖】【怖い話】赤ずくめの女

ちょっと長いけど俺が一昨年の冬に体験した話書いてく。 
初めて“そいつ”にあったのは2年前の11月だった。 
俺は幼い頃に母ちゃん亡くしてて、今は父親と2人で神奈川のとある小さい町の一軒家に住んでるんだ。 
その日もいつも通り高校終わって最寄駅で降りて、いつも通りの道で家に向かってたんだ。 
神奈川っつっても田舎だから細くて人通りのない道が多くて、夜になると我ながら結構不気味w 
帰り道半ばの雑木林の脇道に差し掛かった時だった。 
電柱の脇にそいつはいた。 

真っ赤なトレンチコートと真っ赤な靴とこれまた真っ赤なハットっていう、とにかく全身赤づくめの女の子。 
身長は小学校低学年くらい。ハットを深くかぶってたから顔はよく見えなかった。 
そんな異様な恰好の女の子が夜の10時くらいに誰もいない雑木林の脇道に立ってるんだぜww 
「こえーww」とか思いながらその子の脇を通りつつチラ見したんだ。
そいつは女の子じゃなかった。 
ハットで鼻から下までしか見えなかったけど、真っ赤な口紅を塗ってたし、なにより肌にしわがあって、たぶん40歳くらい。 
何の病気かわかんないけど、顔は大人なのに身体だけ子供、みたいな人たまに見かけるじゃん?あんな感じ。 
しかも俺が目の前を通ってるのにもかかわらず、全く微動だにしないでただ暗闇のなかに立ってるの。 
もう本能でこいつはヤバイって感じた。ダッシュで逃げるのもアレだから、速足でそこから立ち去った。 

次の日の帰り道、「これが洒落怖の話だったら絶対あいつまたいるよww」とか思いながら例の雑木林脇の道に差し掛かった。 
その日は授業も少し早めに終わってまだ夕方だったし、最寄駅まで友達と一緒に帰ってたからあまり恐怖心はなかった。 
そいつはいなかった。 
霊的なストーリーを期待してた自分としてはなんだかがっかりした反面、ちょっと安心した部分もあった。 
脇道を通って、角を曲がった瞬間、俺は凍りついた。 

あいつがいた。 
前日と同じように真っ赤な服装で電柱脇に立っていた。 
ヤバイヤバイヤバイと思いつつも、そこを通らないと家にたどり着けないから、仕方なくそいつの前を通った。 
また何の反応もない。 
心臓がドキドキしているのが自分でも分かった。一気に手汗が出てきた。 
誰かと待ち合わせるような場所でもないし、その女は手ぶらだったし、次第に「こいつは何なんだろう?本当に人間なのか?」と思い始めた。 
次の角を曲がる時、後ろを振り返った。 
そいつはまだそこにいた。こちらを向いて。
次の日もその次の日も、そいつはいた。 
気になったのは、毎回そいつが現れる場所が変わってたということ。 
そして気付いた。だんだん俺の家に近づいてる。 
その次の日、遂にそいつは俺の家が面している道に現れた。 
人間じゃないヤバイやつかもしれないと思っていたのに、その時は不思議と気味悪さと「何で付いてくる?」という怒りで我慢できなくなって、そいつに話しかけてしまった。 
「あの、どなたですか?毎日付きまとうの止めてもらっていいですか!!」 
女は、微動だにしなかった。 
相変わらず真っ赤なハットのせいで顔がよく見えない。 
あの、ともう一度声を掛けようとした瞬間、突然女が笑った。 
笑った、というかニヤリ、と真っ赤な口紅を塗った口を大きく開けた。 
そいつの歯はまっ黄色で、何本かは抜けていた。 
ヤバイ、と思った。 
俺は急いでそいつから離れて家の鍵を開けて玄関に飛び込んだ。 
憑かれた、と思った。
その晩、仕事から帰ってきた父親にその女のことを話した。 
父親はそんな女見たことないと言い、 
「そんな小せぇ女怖くもなんともねえだろ!仮に幽霊だったとしても母ちゃんが守ってくれるから大丈夫大丈夫!」 
とか言って全く相手にしてくれなかった。 
母ちゃんは亡くなる数日前、 
「天国に行っても○○ちゃんのこと守ってあげるからね」 
と言って俺に小さいお守りを渡してくれた。 
父親の言葉で引きだしにしまっていたお守りの存在を思い出し、翌日からバッグに入れて持ち歩くことにした。 
お守りのおかげか、どこか安心した気持ちになった。 

それからその女は現れなくなった。 
俺は母ちゃんが守ってくれたんだ!と思ってすごく嬉しかった。 
変な話だけど、母親の愛情を思い出させてくれたことに対して、あの女に感謝する気持ちさえ生まれた。
それから3週間くらい過ぎたある日。 
俺は高校でいつもと変わらず授業を受けていた。 
数学のsincosなんちゃらとかいうやつ(名前分からん)が意味不明すぎて、窓側の席で心地よい太陽の光にうつろうつろしていた。 
ふと外の景色に目を向けた瞬間だった。 

あいつがいる。 
正門脇で、あの真っ赤な恰好で。こっちを見てる。 
一気に鳥肌が立った。「何で?何で?お守りは効かなかったの?」 
とにかく女の存在を誰かと共有したくて、前に座ってた友達の肩をガンガン叩いて、「あそこに変な女がいる!」って窓の外を指差した。 
「は?どこ?」って友達が言うから、「あそこ!正門のとこ!」って言いながらもう一度そこを見た。 
女はいなかった。 
「どうして?どうして?」俺はパニックで泣きそうだった。友達は何かブツブツ文句言ってたけど、全然耳に入ってこなかった。
その日の放課後、俺は隣のクラスの春香ちゃんという女の子のもとへ向かった。 
春香ちゃんは、なんというか、よく言えば一風変わった、悪く言えば変人で、よく「あたし霊感強いんだ~」とか言って周りの女子をドン引きさせていた。 
俺ももともと幽霊の存在なんて信じてなかったし、春香ちゃんとは幼馴染ってだけで特に仲良いとかじゃなかったけど、
その時はもう藁にもすがる思いで、「春香ちゃんなら何か分かるかもしれない」って思ったんだ。 
俺が凄い剣幕で現れたからか春香ちゃんも最初はびっくりしてたけど、俺の話を聞くにつれ次第に真剣な表情になっていった。 
「それで、○○君はそいつに話しかけちゃったの?」 
「うん…」 
「今もそいつが見える?」 
「いや、今は…でもさっき授業中に見たんだ。正門のとこからこっちを見てた。」 
「そっか…」 
それから10秒くらい沈黙が流れた。俺はとにかくそいつが何者なのか、何で俺に付きまとうのか知りたかった。 
「あいつは何者なの?春香ちゃん何か感じる?」 
「うーん…○○君に残ってるそいつの念、凄く強い。強い恨み。なんだろう、たぶんだけど、昔男の人に捨てられて自殺した女の霊だと思う。
恨みが強すぎて、お母さんのお守りも全てを防ぎきれてないみたい。」
「何で俺に!?」 
「似てるんだと思う。○○君が“持ってる”ものが。」 
何を“持ってる”のかよく分からなかったけど、大体の事情は察した。 
春香ちゃんは、自分には手が負えないから神社でお祓いをしてもらうといい、と言って帰って行った。
その日の夜、悶々としながらベッドに入った。 
「あいつは俺に何を求めているんだろう」「俺は死ぬのだろうか」…。気付いたら眠りについていた。 
その日の夜のこと。ふと目が覚めた俺は、スマホをいじって時間を確認した。 
深夜の2時半。 
まだまだ寝れるじゃん…と思い、もう一度眠りにつこうと身体の向きを左に変えた瞬間だった。 

あの女がいた。ドアの向こうに。 
俺の部屋のドアはところどころすりガラスで半透明になってるんだけど、あいつの顔と長い黒髪と真っ赤な服がはっきり見えた。 
ガラスの向こうからこっちを見てる。 
全身の筋肉が硬直して一気に胸の鼓動が早くなった。 
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。 
俺は枕元に置いてあった母ちゃんのお守りを握りしめて布団に身をくるめ、お守りを握りしめながら「母ちゃん助けて母ちゃん助けて…」と何度も祈った。 

どれくらい時間が経っただろう。 
数分だったかもしれないし、1時間くらいだったようにも感じた。 
物音一つしない部屋の中、あいつがどこへ行ったのか、もしかしたらすぐそこに移動しているかもしれない、と気になって仕方がなかった俺はそっと布団の隙間からドアの方を見た。
あいつは居なくなっていた。 
意を決して布団をガバっと外して辺り一面見回したが、あいつは居なかった。 
「母ちゃんが守ってくれた」。そう思った。 
手汗でぐしょぐしょになったお守りを握りしめ、母ちゃんありがとう、と呟いた。 

次の日、俺は朝一で町はずれにある神社に向かった。 
神社の奥から出てきたお坊さんに事情を説明して、除霊を頼むとお坊さんは快く引き受けてくれた。 
除霊はメインの神社の奥にある小さな小屋みたいなとこで行われた。 
お坊さんとその弟子的な男の人に挟まれて、お経を唱えて塩を振りかけられて終わり、みたいな。 
30分くらい経って、「もう安心してください。霊は祓われました。」ってお坊さんに言われた。 
なんだか予想外にあっさり除霊が終わったもんだから、不審に思って、「あの女は何だったんですか?」って聞いたら、 
「あれはこの地で昔行われていた人柱の犠牲者たちの集合霊です」だって。 
お坊さん曰く、俺が住んでいた地方では昔、平和を祈念する村の風習として10年に一度村の女を人柱として神に捧げていたんだそう。 
あの女は人柱にされて殺された女たちの怨念が作りだした霊で、俺に憑いたのは本当に偶然だったという。 
何て迷惑な霊だ、と思った。 
同時に、そんな強い怨念を持った霊が、果たしてあんな簡単な除霊で成仏したのだろうか、と少し不安になった。
その帰り道、家に着くとそこにはパトカーが止まっていた。近所の人たちも心配そうに様子を見ている。 
すぐに自分の家で何かあったことを察した。俺は急いで警察のもとへ駆け寄った。 

「この家の者です!うちで何があったんですか!!」 
「あー君この家の子?何で今まで気づかなかったのー。危ないとこだったよ?この家に女が1か月潜伏してたんだよ。」 



俺は絶句した。 
何が起きたかすぐに理解した。 


あいつは霊なんかじゃなかった。 
れっきとした人間だった。 
あまりのショックに立ちくらみながらパトカーを見たら、後部座席にあいつがいた。 
いつもと同じ真っ赤な出で立ち。 
俺と目が合った瞬間、ニヤッとあのおぞましい笑顔で俺に笑いかけた。 
そしてパトカーはそいつを乗せて去って行った。
あとから分かった話なんだけど、あいつは俺のストーカーで(何でただの高校生の俺にww)、
俺と父親が家を空けている間に合鍵を作って侵入し、2階の物置部屋の押入れにある入口から天井裏に潜り込んでそこに潜伏してたらしい。 
そんで俺たちが寝静まった深夜にこっそり降りてきて、ドア越しに俺のことを毎日眺めてたって…。 
俺が神社に行ってる間に買い物をしに家を出たところをお隣さんが目撃して警察に通報したという。 

ってか、事件が終わった安心もあるけど、それより「母ちゃんは別に俺のこと守ってなんかない」ってことの方がショックだったねww
あと、春香ちゃんもあの神社もマジで嘘っぱちばっか言いやがってww 

でも何よりゾッとしたのが、警察の人が教えてくれた、取り調べでのあいつの言葉。 
「○○君と一カ月過ごせて幸せだった」って…。 

特に俺に危害を加えたわけではないという理由で(精神的被害やばいんですけど)、あいつに下った判決は執行猶予付き懲役1年2ヵ月。 
あれから何か月経つっけ。 
長文すんませんでした。

【洒落怖】【怖い話】 エラー

会社での休日当番の怪


会社は3階立てでセ○ム仕様。
休日は当番制で電話番をする為に出勤して対応する。

自分が当番の日。
出勤してセ○ムを解除して会社に入る。
いつも通り電話番をして、22時頃に帰ろうと思い、身支度を済まして出口へ行った。
帰る時はセ○ムを設定して帰るのがマニュアルで、いつも通りに設定ボタンを押す。
しかし設定出来ず、エラー内容が3階のトイレの窓が空いている表示がされた。
恐る恐る見に行くと、確かに窓が空いていた。
今日は出勤は自分一人。3階には行っていない。固まる自分。
怖かったけど深く考えずに窓を閉めた。

足早に下へ降りて、再度セ○ム設定ボタンを押す。
またしてもエラー。
表示はまた3階トイレの窓が空いている表示。

その場で固まる自分。怖くてもう3階へは行きたくない。だけど設定しないと帰れない。悩んだ結果、再び確認をする為に階段を登って行った。

階段を登っている最中にガンッと音がした。その場で立ち止まる。逃げ出したい衝動に狩られるが、設定しないと帰れない。仕方なく確認するとまた窓が空いていた。
もう若干のパニック状態。
素早く窓を閉めてダッシュで階段を降りて行った。
祈る様な気持ちで設定ボタンを押す。
またしてもエラー表示。3階の窓が空いている表示。一気に冷や汗が吹き出る。
そのまま帰りたかったが、設定せずに帰ったら何を言われるか解らない。
そんなにに良い会社ではないので辞めたい気持ちになる。

本当に仕方なく再度、確認しに行った。
さっきはトイレの扉は空いていたのに何故か閉まってる。
何故?そっと扉を空ける。
その瞬間、白い手が見えて勢い良く扉を閉めた。
ワァーッと叫びながら逃げました。
セ○ム設定せずに。

次の日に出社した時に訳を説明しました。
誰も信じずに笑うばかり。
その上セ○ムを設定せずに帰ったので怒られました。

その後、気になったのでみんなも居たし、3階のトイレを見に行きました。
窓は閉まっていて普通でした。
ふと鏡を見ると何か赤いマークがありました。
良く見てみるとキスマークでした。
だけどただのキスマークでは無くキスマークの淵から血が流れた様な跡がありました。
ゾッとして逃げる様にトイレを後にしました。

一体、トイレに何が居たのでしょう?しばらく当番はやりたくないです。
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