怖い話のまとめサイト

怖い話を集めてます。 独断と偏見でチョイスして紹介してます。

2015年06月

【洒落怖】【怖い話】 開かずの間開ける

身バレするかもしれないから詳しくは言えないけど、某長寿番組に開かずの扉を開けるって企画で出たことがある。

割と年代ものの寮で、俺らの代で廃寮になることが決まっていた。
寮生の私物を入れるでかいロッカーが置いてある部屋があって、ロッカーの後ろに押入れがある事に、ある日一人が気づいたんだ。
ロッカーを動かしてみようか、ってなったんだけど、何しろでかいし重いし、折角だから有名な某番組に投稿しようぜ!ってなって。

それが採用され、5月にタレントがやってきた。
最後の寮生である俺と後2人が立ち会って、ロッカーを退け、押入れを開けると。

そこには大量の朝○日報。
そして木製バット。
○鮮日報は殆どが綺麗に折り畳まれてたけど、血のシミぽいドス黒いものが大量に付着して、ぐちゃぐちゃにされたものも結構大量にあった。
それらを取り出して更に捜索すると、押入れの壁は落書きだらけ。だいたい日本語だったけど、ハングルやよくわからない文字もあった。
お札も貼ってた。

結局テレビではボロっちい寮で暮らす生活を面白おかしく取り上げて、開かずの扉んとこは取りあえず無難そうな顕微鏡と謎の皿を映しただけで、終わった。
取り出したものは、全部カメラマンさんやタレントさんが戻して、ロッカーも元通りにしてくれた。
そういうのはADさんの仕事だと思ってたから、タレントさん自らやるのにちょっとびっくりした。

もともとめっちゃ古い寮で、トイレのそばに学生闘争時代のポスター(1979年×月×日、○○が死んだ!彼の遺志を継げ!みたいな物騒な内容)がいまだに 貼ってあって、さもありなんとは思ったけれど、やっぱり血のシミが付いた朝○日報と凶器っぽいバットには血の気が引いた…。

その番組が放映された後、その寮の出身者と思われる目のイッちゃった占い師を自称する女性(男女混合寮)が訪ねて来て、現役寮生が席を外した間に過去~現在までの寮生名簿を持ち去るという事件もあったorz

一応返却はされたんだけど、コピーされててもわからんよね…

俺らが在寮してる時にはもう思想的なしばりなんて何もないとこだったけど、同じ大学や近所の大学では未だに学生闘争引きずって何やら活動してる寮もあったようだ。
一応2000年代後半だったのに。

実家が貧乏で仕送り期待できない、でも一人暮らししたい、なんて軽い気持ちで寮に入ったけど、集団ってやつは何処にでも闇が潜みやすいんだろうなと思う。

【洒落怖】【怖い話】 近所の沼

これは僕の家の近くにある沼の話です。
その沼は近くに神社、お墓があるという絶妙な場所にあります。
昔から色々な噂が絶えず、「あそこは底なし沼」「あの沼にはカッパがいる」
「沼の近くに有る女性の蔵の前で10回回転すると嘔吐するor死ぬ」など不吉な噂が耐えませんでした。
それゆえ、おばあさんには「絶対に近づくな!」と何度も言い聞かされていました。

しかしそう言われると近づきたくなるのが子供です。
僕は友達と学校帰りに毎日その沼に寄っては魚を見て遊んでました。

この友達ってのが中々度胸があると言うか若干頭がおかしいというか・・・。
機会があれば紹介したい話ですが山の中の墓地集合場に迷い込んだ時にたまたま見つけた蔵の
鍵を開けて御札がびっしり貼ってあったドアを開けるぐらいの肝の持ち主です「その後僕らはエラい目に合いますw。

で「沼」の話に戻します

僕とその友人は結構・・・と言うかかなりの悪友で近づくなと言われても毎週土曜には午前中から沼で遊んでました。

で、ある日日が暮れるまで遊んで見ようと言う話になりました。
子供にしてみれば神社やお墓や沼なんて良いアスレチック場です。
あっと言う間に日がくれ始めます。

暗くなったので帰ろうとしたら沼から「ドボンッ」と大きな石でも投げたかのような音がしました。

僕は「魚・・・だよね」と言いましたが友人は「多分、、、違う」と言います。

僕は一気に血の気が引きすぐに帰りたくなりました。
そしたら友人が「今のがなにか知りたい?」と言います。
正直知りたくありませんが僕は「・・・うん」と言いました。

「じゃあもう少し暗くなるまで待とう」と友人は言いました

完全に日が暮れ夜になりました。

その間僕と友人はずっと沼を眺めてました。
魚が跳ねて「チャポン」
しかしそんな音の中に「ドボンッ」と大きな音が数回。
しかしずっと眺めてたら気付きたくない物に気付いてしまいました。
「ドボンッ」と音がなり、水しぶきが上がる時、水が上に引っ張られてるのです。
よく、お風呂で湯に浸かってる手を思いっきり引き上げると湯が手にくっついてきますよね。あれと同じ感じです。

そして「ドボンッ」の回数も多くなりふ不意に友人が「腕だよ。」
と言いました。

僕「腕?」
友人「腕。ここで自殺したのか捨てられたのか・・・。多分登って来れないんだろうね。腕を水から思いっきり出せたところで掴むものが無ければまた水に戻るだけ。それが叩きつけられてるんだよ」
僕「溺れてるならバシャバシャってなるんじゃない?」
友人「溺れてるなら・・・ね。どっちにせよ、アレは良いものじゃないよ。もがいてると言うよりは怨んでる。そろそろ君も見えるんじゃないの?」

暗いので何とも言えませんがその話を聞かされたせいも有るのでしょう。「ドボンッ」と音がなるとき確かに見えました。
沼の水から這い出てまた水に叩き付けられる青白い「腕」が。

今から思えばこの頃からですかね。
僕とこの友人二人で罰当たりなことをしては怖い目にあっていたのは。

今でも友人宅に遊びにいくと不意に友人は言います。

「後ろと横に立ってるよ」

【洒落怖】【怖い話】ランニングマン

つい先日、友人(以下Aとする)の家で何人かが集まって酒を飲んでいた。 
その日はその家の家族が旅行に出掛けていたため、家にはそいつだけ。
そんなこともあって俺らは遅い時間まで馬鹿騒ぎしてはしゃいでいた。 
そのうち、酒も回ってきた頃に友人の1人が踊ってみた動画を撮って投稿しようぜと提案。
(踊ってみた動画というのは名前の通り素人がダンスしてみたという内容の動画) 
今考えればすごい無駄な時間なのだがその頃の俺らは酒のせいもあってかテンションが高かったためノリノリで了承。 
すぐにソファを動かしたりしてリビングに数人が立てる程度のスペースを作りスマホのカメラをセット。
とりあえず今若者の間で流行っている「三代目J Soul brothers」のランニングマンをやることにした。 
ランニングマンとは彼らの「RYUSEI」という曲の中にあるダンスパートのこと。
このダンスを真似て楽しむ人が最近は非常に多い。↓これ 
http://www.youtube.com/watch?v=9ZVKBkBuYDk
そして該当部分でランニングマンをやるのだがよくダンスを知らなかったりする奴や酒に飲まれすぎている奴ばかりだったのでものすごいグダグダなものになった。 
これはこれで面白い動画が撮れたとスマホの持ち主の奴はすぐにその場で動画の再生時間を短く編集し某動画投稿共有アプリに投稿した。
(vineかmixchannelくらいしか無いけどそこはご想像にお任せ)

次の日、頭が冷めてきた頃に改めて動画を視聴。
俺らはそのグダグダぷりに笑ったりしていたが1人の奴があることにふと気づいた。 
「1人多くね?」 動画に映っている人間の数を数えてみたところ確かに1人多い。
しかし、元々そこそこの人数で踊っていたためにスマホのカメラは全員が入るような位置から撮っていた。 
よって顔を細かく見ることはできず。上下黒ずくめの服を着ているということしか分からなかった。 
ただ、幽霊なんて普通に不気味なのだがその時は大人数でいたために気持ち的にもいきがっていたのだと思う。
軽い気持ちで考えており、編集前の動画を見てみることに。 
やはり余分なそいつはみんなに混じって踊っていた。
そしてランニングマンを終えて更にグダリだす映像の中の俺ら。座り込んだりノビをしたり。
こんな感じ?とまだダンスを続けたりと。 
みんながそうしてる間そいつはリビングをすーっと離れ後ろの扉を開けてそこにある部屋に入っていった。
その直後、カメラを止めるスマホの持ち主が映し出されて映像は終了。 
そこでようやく俺らは青ざめる。…あの部屋?ヤバくね?後ろを一斉に振り向き終始無言。
A曰くそこは畳が敷いてあって最低限の家具が置いてあるだけの和室とのこと。 
幽霊とか騒いでたが万が一あれが普通の人間だった場合不審者だからまずい。
そんなトンチンカンな結論に至って俺らは全員でその部屋を見に行った。 
Aがみんなを振り返り開けるぞ?と合図。無言で頷く俺ら。扉を勢いよくバンッ!と開けた。

当然誰もいない…のだが床を見ると畳全体にブワーッと足のサイズくらいの黒い汚れが広がっていた。
だからもう全員パニック。 
なによりAが一番パニックに陥っていた。そりゃあそうだ。
自分の家に得体の知れない何かがいた痕跡があるなんてたまったもんじゃない。 
俺らもAが心配になったためその日で帰る予定だったのを急遽予定変更。
各自一旦解散してからまた着替え等を持ち寄りAの家族が帰ってくるまで再び泊まることにした。 
畳の黒い汚れは幸いにも何故かすぐ拭き取ることができたので総動員で掃除して家族には何も知られないように取り繕うことができた…はず。 
結局それ以降AやAの家族、Aの家がおかしくなったということも無いのでひと段落。
何かあったらすぐ相談するようにAに言ってから俺らはまたいつも通りの生活に戻った。 
結局あの黒ずくめの人間の正体は分からない。 
そしてその状況で誰しもが真剣でパニックに陥ってたため俺は言わなかったがなんで黒ずくめのヤツはランニングマンの踊りを知ってたのか。
変な幽霊?だなーと笑えないこともないのである。

【洒落怖】【怖い話】引っ張られる

12月のクリスマスシーズンで混んでいたけど運良くあるホテルの一室が予約でき、1日遊んだあとにチェックインしました。 
ネットの写真で見たときはかなり綺麗だったのですが、実際は結構古めかしい感じで、 
「うーん」と思いながらも荷物を降ろして露天風呂とか入って楽しんでたんです。 

そのあと部屋に戻り、夕食まで時間があったのでベッドにお土産を広げてみたり写真を見たりして盛り上がってたんですが、 
友達がベッドとベッドの僅かな隙間にスマホを落としちゃって。 
「何やってんのw」って言いながら二人してその隙間に手を突っ込んで、スマホを探し始めたんです。 
友達はベッドの頭の方、私は足元の方。 
でも探し始めていくらも経たないうちに友達が「うっわ!!!」って叫んで勢いよく手を引っこ抜いて、
私もビックリして友達の方を見たら、友達が私に向かって「ビックリした!急に引っ張らないでよー」って言って笑うんです。
どうやら私がスマホを探すふりしながら、ベッドの下で友達の手を引っ張ってふざけたと思ってるらしくて、 
でも私はカーペットを撫でるようにしてスマホを探していたのでそんなことしてないし、一気に鳥肌が立ちました。 
けど友達はテレビでシロユリ団地のCM流れるだけでトイレ行けなくなっちゃうような子なので、 
つい反射的に「ごめん、バレた?」って言っちゃって、そのあと笑いながら小突きあったりして終わりました。 
でも本当に私じゃないんです。 
だからその後寝るときとかトイレ行くときとか部屋で一人になる瞬間が本当に怖くて、 
だけど私は友達ほど怖がりではないので「気のせいだ」と言い聞かせてなんとかなりました。 

幸い、悪夢を見るとか金縛りに会うとかもなく朝になり、チェックアウトして、 
今日は赤レンガだねーとか言いながらホテルを出たら友達が泣きそうな顔をしていて。 
どうしたのって言ったら、急に謝り出したんです。

あの時は軽いパニックで思わず私の仕業だと思っちゃったけど、一晩寝てよく考えたらあの時引っ張ったのは私じゃないんじゃないかって言われて…。 
頭の方と足の方でお互いに手を突っ込んで探してたのに、私が引っ張れるわけないよねって言ってて。 
結局私は本当のことを話しました。 
でも慌てて、「狭い隙間に手を突っ込んでたんだから、ベッドとベッドに挟まれて引っ張られた気がしただけなんじゃない?」って笑い飛ばしたんですけど、 
友達は本当に真っ青で。 

指を恋人繋ぎみたいに絡められて、引っ張られたって。 
凄く冷たかったって言われて。 

結局なんだったのかは分かりませんし、もう忘れようよって言って残りの観光をしましたが、お互いに怖すぎてきごちない旅行でした。 
帰ってきてからも友達とは全然この話をしないです。なんだか暗黙の了解みたいになっています。 
友達は「気を遣わせてゴメン」と言ってマフラーをプレゼントしてくれて、それを使うたびになんとなく思い出す話です。

【洒落怖】【怖い話】やってくる

漏れにはちょっと変な趣味があった。 
その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出てそこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。 
いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。 
遠くに見えるおおきな給水タンクとか、 
酔っ払いを乗せて坂道を登っていくタクシーとか、 
ぽつんと佇むまぶしい自動販売機なんかを見ていると妙にワクワクしてくる。 

漏れの家の西側には長い坂道があって、それがまっすぐ漏れの家の方に向って下ってくる。 
だから屋上から西側に目をやれば、その坂道の全体を正面から視界に納めることができるようになってるわけね。 
その坂道の脇に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら「あ、大きな蛾が飛んでるな~」なんて思っていたら、 
坂道の一番上のほうから物凄い勢いで下ってくる奴がいた。 
「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら全裸でガリガリに痩せた子供みたいな奴が、 
満面の笑みを浮かべながらこっちに手を振りつつ、猛スピードで走ってくる。 
奴はあきらかにこっちの存在に気付いているし、漏れと目も合いっぱなし。 
ちょっとの間、あっけに取られて呆然と眺めていたけど、 
なんだか凄くヤバイことになりそうな気がして、急いで階段を下りて家の中に逃げ込んだ。 

ドアを閉めて、鍵をかけて「うわーどうしようどうしよう、なんだよあれ!!」って怯えていたら、 
ズダダダダダダッって屋上への階段を上る音が。明らかに漏れを探してる。 
「凄いやばいことになっちゃったよ、どうしよう、まじで、なんだよあれ」って心の中でつぶやきながら、 
リビングの真中でアイロン(武器)を両手で握って構えてた。 
しばらくしたら、今度は階段をズダダダダッって下りる音。 
もう、バカになりそうなくらいガタガタ震えていたら、 
ドアをダンダンダンダンダンダン!!って叩いて、チャイムをピンポンピンポン!ピポポン!ピポン!!と鳴らしてくる。 
「ウッ、ンーッ!ウッ、ンーッ!」って感じで、奴のうめき声も聴こえる。 
心臓が一瞬とまって、物凄い勢い脈打ち始めた。 
さらにガクガク震えながら息を潜めていると、 
数十秒くらいでノックもチャイムもうめき声止んで、元の静かな状態に……。 
日が昇るまでアイロンを構えて硬直していた。 
あいつはいったい何者だったんだ。 

【洒落怖】【怖い話】リョウメンスクメ

俺、建築関係の仕事やってんだけれども、先日、岩手県のとある古いお寺を解体することに 
なったんだわ。今は利用者もないお寺ね。んでお寺ぶっ壊してると、同僚が俺を呼ぶのね。 
「~、ちょっと来て」と。俺が行くと、同僚の足元に、黒ずんだ長い木箱が置いてたんだわ。 

俺「何これ?」 
同僚「いや、何かなと思って・・・本堂の奥の密閉された部屋に置いてあったんだけど、 
   ちょっと管理してる業者さんに電話してみるわ」 

木箱の大きさは2mくらいかなぁ。相当古い物みたいで、多分木が腐ってたんじゃないかな。 
表に白い紙が貼り付けられて、何か書いてあるんだわ。相当昔の字と言う事は分ったけど、 
凡字の様な物も見えたけど、もう紙もボロボロで何書いてるかほとんどわからない。 
かろうじて読み取れたのは、 

「大正??年??七月??ノ呪法ヲモッテ、両面スクナヲ???二封ズ」 

的な事が書いてあったんだ。木箱には釘が打ち付けられてて開ける訳にもいかず、 
業者さんも「明日、昔の住職に聞いてみる」と言ってたんで、その日は木箱を近くの 
プレハブに置いておく事にしたんだわ。 

んで翌日。解体作業現場に着く前に、業者から電話かかってきて、 

業者「あの木箱ですけどねぇ、元住職が、絶対に開けるな!!って凄い剣幕なんですよ・・・ 
   なんでも自分が引き取るって言ってるので、よろしくお願いします」 

俺は念のため、現場に着く前に現場監督に木箱の事電話しておこうと思い、 

俺「あの~、昨日の木箱の事ですけど」 
監督「あぁ、あれ!お宅で雇ってる中国人(留学生)のバイト作業員2人いるでしょ? 
    そいつが勝手に開けよったんですわ!!とにかく早く来てください」 

嫌な予感がし、現場へと急いだ。プレハブの周りに、5~6人の人だかり。 
例のバイト中国人2人が放心状態でプレハブの前に座っている。 

監督「こいつがね、昨日の夜中、仲間と一緒に面白半分で開けよったらしいんですよ。 
    で、問題は中身なんですけどね・・・ちょっと見てもらえます?」 

単刀直入に言うと、両手をボクサーの様に構えた人間のミイラらしき物が入っていた。 
ただ異様だったのは・・・頭が2つ。シャム双生児?みたいな奇形児いるじゃない。 
多分ああいう奇形の人か、作り物なんじゃないかと思ったんだが・・・ 

監督「これ見てね、ショック受けたんか何か知りませんけどね、この2人何にも喋らないんですよ」 

中国人2人は俺らがいくら問いかけても、放心状態でボーっとしていた(日本語はかなり話せるのに)。 

そのミイラは 「頭が両側に2つくっついてて、腕が左右2本ずつ、足は通常通り2本」という 
異様な形態だったのね。俺もネットや2ちゃんとかで色んな奇形の写真見たこと 
あったんで、そりゃビックリしたけど、「あぁ、奇形か作りもんだろうな」と思ったわけね。 

んで、例の中国人2人は一応病院に車で送る事になって、警察への連絡はどうしようか、 
って話をしてた時に、元住職(80歳超えてる)が息子さんが運転する車で来た。開口一番、 

住職「空けたんか!!空けたんかこの馬鹿たれが!!しまい、空けたらしまいじゃ・・・」 

俺らはあまりの剣幕にポカーンとしてたんだけど、住職が今度は息子に怒鳴り始めた。 
岩手訛りがキツかったんで標準語で書くけど、 

住職「お前、リョウメンスクナ様をあの時、京都の~寺(聞き取れなかった)に絶対送る 
   言うたじゃろが!!送らんかったんかこのボンクラが!!馬鹿たれが!!」 

ホント80過ぎの爺さんとは思えないくらいの怒声だった。 

住職「空けたんは誰?病院?その人らはもうダメ思うけど、一応アンタらは祓ってあげるから」 

俺らも正直怖かったんで、されるがままに何やらお経みたいの聴かされて、経典みたいなので 
かなり強く背中とか肩とか叩かれた。結構長くて30分くらいやってたかな。 
住職は木箱を車に積み込み、別れ際にこう言った。 

「可哀想だけど、あんたら長生きでけんよ」 

その後、中国人2人の内1人が医者も首をかしげる心筋梗塞で病室で死亡、 
もう1人は精神病院に移送、解体作業員も3名謎の高熱で寝込み、俺も釘を足で 
踏み抜いて5針縫った。まったく詳しい事は分らないが、俺が思うにあれは 
やはり人間の奇形で、差別にあって恨みを残して死んでいった人なんじゃないかと思う。 
だって物凄い形相してたからね・・・その寺の地域も昔部落の集落があった事も 
何か関係あるのかな。無いかもしれないけど。長生きはしたいです

俺だってオカ板覗くらいだから、こういう事には 
興味しんしんなので、真相が知りたく何度も住職に連絡取ったんだけど、完全無視でした。 
しかし、一緒に来てた息子さん(50過ぎで不動産経営)の連絡先分ったんで、 
この人は割と明るくて派手めの人なんで、もしかしたら何か聞けるかも?と思い 
今日の晩(夜遅くだけど)飲みに行くアポとれました。何か分ったら明日にでも書きますわ 

リョウメンスクナの話、「宗像教授伝奇考」という漫画に出てきた覚えがある。 
スクナ族という、恐らく大昔に日本へ来た外国人ではないかと思われる人が、太古の 
日本へ文化を伝えた。それが出雲圏の文化形成となり、因幡の白ウサギの伝説も 
オオクニヌシノミコトの国造りの話もこれをモチーフとした話だろう、と。 
そして大和朝廷による出雲の侵略が起こり、追われたスクナ族がたどり着いた 
のが今の飛騨地方だった。 
日本書紀によれば、飛騨にスクナという怪物がおり、人々を殺したから兵を送って 
退治した、という話が書かれている、と。 

つまり、スクナというのは大和朝廷以前の時代に日本へ文化を伝えた外来人の 
ことで、恐らくは古代インドの製鉄を仕事とする(そして日本へ製鉄を伝えたで 
あろう)人々のことではないかと書かれていた。 
そして、出雲のある場所で見つけた洞窟の奥にあったものが、 

  「リョウメンスクナ」(両面宿儺) 

の像だった、とあった。 


>>
スクナ族は、日本へ羅魔船(カガミノフネ)で来た、と書かれ、鏡のように 
黒光する船であったとのこと。羅魔は「ラマ」で、黒檀系の木の名である、 
と書かれていたけど、黒ずんだ長い木箱とあったので、これももしかすると 
ラマなのかも・・・? 
とすると、リョウメンスクナ様も、逃げ延びて岩手地方に来たスクナ族の 
末裔なのかもしれないな。 

・・・と、オカ板的にはあわない内容かも、と思いつつ書いてみたが。 
。 

>>
すんません。直前になって何か「やはり直接会って話すのは・・・」とか言われたんで、 
元住職の息子さんに「じゃあ電話でなら・・・」「話せるとこまでですけど」と言う 
条件の元、話が聞けました。時間にして30分くらい結構話してもらったんですけどね。 
なかなか話し好きなオジサンでした。要点を主にかいつまんで書きます。 

息子「ごめんねぇ。オヤジに念押されちゃって。本当は電話もヤバイんだけど」 
俺「いえ、こっちこそ無理言いまして。アレって結局何なんですか??」 
息子「アレは大正時代に、見世物小屋に出されてた奇形の人間です」 
俺「じゃあ、当時あの結合した状態で生きていたんですか?シャム双生児みたいな?」 
息子「そうです。生まれて数年は、岩手のとある部落で暮らしてたみたいだけど、生活に窮した 
   親が人買いに売っちゃったらしくて。それで見世物小屋に流れたみたいですね」 
俺「そうですか・・・でもなぜあんなミイラの様な状態に??」 
息子「正確に言えば、即身仏ですけどね」 
俺「即身仏って事は、自ら進んでああなったんですか!?」 
息子「・・・君、この事誰かに話すでしょ?」 
俺「正直に言えば・・・話したいです」 
息子「良いよ君。正直で(笑) まぁ私も全て話すつもりはないけどね・・・ 
   アレはね、無理やりああされたんだよ。当時、今で言うとんでもないカルト教団が 
   いてね。教団の名前は勘弁してよ。今もひっそり活動してると思うんで・・・」 
俺「聞けば、誰でもああ、あの教団って分りますか?」 
息子「知らない知らない(笑)極秘中の極秘、本当の邪教だからね」 
俺「そうですか・・・」
息子「この教祖がとんでもない野郎でね。外法(げほう)しか使わないんだよ」 
俺「外法ですか?」 
息子「そう、分りやすく言えば(やってはいけない事)だよね。ちょっと前に真言立川流が、 
   邪教だ、外法だ、って叩かれたけど、あんな生易しいもんじゃない」 
俺「・・・具体的にどんな?」 
息子「で、当時の資料も何も残ってないし偽名だし、元々表舞台に出てきたヤツでもないし、 
   今教団が存続してるとしても、今現在の教祖とはまったく繋がりないだろうし、 
   名前言うけどさ・・・物部天獄(もののべてんごく)。これが教祖の名前ね」 
俺「物部天獄。偽名ですよね?」 
息子「そうそう、偽名。んで、この天獄が例の見世物小屋に行った時、奇形数名を 
   大枚はたいて買ったわけよ。例のシャム双生児?って言うの?それも含めて」 
俺「・・・それで?」 
息子「君、コドクって知ってる?虫に毒って書いて、虫は虫3つ合わせた特殊な漢字だけど」 
俺「壺に毒虫何匹か入れて、最後に生き残った虫を使う呪法のアレですか?(昔マンガに載ってたw)」 
息子「そうそう!何で知ってるの君??凄いね」 
俺「ええ、まぁちょっと・・・それで?」 
息子「あぁ、それでね。天獄はそのコドクを人間でやったんだよ」 
俺「人間を密室に入れて??ウソでしょう」 
息子「(少し機嫌が悪くなる)私もオヤジから聞いた話で、100%全部信じてるわけじゃ 
   ないから・・・もう止める?」 
俺「すみません!・・・続けてください」 
息子「分った。んで、それを例の奇形たち数人でやったわけさ。教団本部か何処か 
   知らないけど、地下の密室に押し込んで。それで例のシャム双生児が生き残ったわけ」 
俺「閉じ込めた期間はどのくらいですか?」 
息子「詳しい事は分らないけど、仲間の肉を食べ、自分の糞尿を食べてさえ生き延びねば 
   ならない期間、と言ったら大体想像つくよね」 
俺「あんまり想像したくないですけどね・・・」 

息子「んで、どうも最初からそのシャム双生児が生き残る様に、天獄は細工したらしい 
   んだ。他の奇形に刃物か何かで致命傷を負わせ、行き絶え絶えの状態で放り込んだ 
   わけ。奇形と言ってもアシュラ像みたいな外見だからね。その神々しさ(禍々しさ?)に 
   天獄は惹かれたんじゃないかな」 
俺「なるほど・・・」 
息子「で、生き残ったのは良いけど、天獄にとっちゃ道具に過ぎないわけだから、 
   すぐさま別の部屋に1人で閉じ込められて、餓死だよね。そして防腐処理を 
   施され、即身仏に。この前オヤジの言ってたリョウメンスクナの完成、ってわけ」 
俺「リョウメンスクナって何ですか?」 

神話の時代に近いほどの大昔に、 リョウメンスクナと言う、2つの顔、4本の手をもつ怪物がいた、と言う 
伝説にちなんで、例のシャム双生児をそう呼ぶ事にしたと、言っていた。 

俺「そうですか・・・」 
息子「そのリョウメンスクナをね、天獄は教団の本尊にしたわけよ。呪仏(じゅぶつ) 
   としてね。他人を呪い殺せる、下手したらもっと大勢の人を呪い殺せるかも 
   知れない、とんでもない呪仏を作った、と少なくとも天獄は信じてたわけ」 
俺「その呪いの対象は?」 
息子「・・・国家だとオヤジは言ってた」 
俺「日本そのものですか?頭イカレてるじゃないですか、その天獄って」 
息子「イカレたんだろうねぇ。でもね、呪いの効力はそれだけじゃないんだ。 
   リョウメンスクナの腹の中に、ある物を入れてね・・・」 
俺「何です?」 
息子「古代人の骨だよ。大和朝廷とかに滅ぼされた(まつろわぬ民)、いわゆる 
   朝廷からみた反逆者だね。逆賊。その古代人の骨の粉末を腹に入れて・・・」 
俺「そんなものどこで手に入れて・・・!?」 
息子「君もTVや新聞とかで見たことあるだろう?古代の遺跡や墓が発掘された時、 
   発掘作業する人たちがいるじゃない。当時はその辺の警備とか甘かったらしい 
   からね・・・そういう所から主に盗ってきたらしいよ」

俺「にわかには信じがたい話ですよね・・・」 
息子「だろう?私もそう思ったよ。でもね、大正時代に主に起こった災害ね、 
   これだけあるんだよ」 

 1914(大正3)年:桜島の大噴火(負傷者 9600人) 
 1914(大正3)年:秋田の大地震(死者 94人) 
 1914(大正3)年:方城炭鉱の爆発(死者 687人) 
 1916(大正5)年:函館の大火事 
 1917(大正6)年:東日本の大水害(死者 1300人) 
 1917(大正6)年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人) 
 1922(大正11)年:親不知のナダレで列車事故(死者 130人) 

そして、1923年(大正12年)9月1日、関東大震災、死者・行方不明14万2千8百名 

俺「それが何か?」 
息子「全てリョウメンスクナが移動した地域だそうだ」 
俺「そんな!教団支部ってそんな各地にあったんですか?と言うか、偶然でしょう(流石に笑った)」 
息子「俺も馬鹿な話だと思うよ。で、大正時代の最悪最大の災害、関東大震災の日ね。 
    この日、地震が起こる直前に天獄が死んでる」 
俺「死んだ?」 
息子「自殺、と聞いたけどね。純粋な日本人ではなかった、と言う噂もあるらしいが・・・」 
俺「どうやって死んだんですか?」 
息子「日本刀で喉かっ斬ってね。リョウメンスクナの前で。それで血文字で遺書があって・・・」 
俺「なんて書いてあったんですか??」 

日      本      滅      ブ    ベ    シ

俺「・・・それが、関東大震災が起こる直前なんですよね?」 
息子「そうだね」 
俺「・・・偶然ですよね?」 
息子「・・・偶然だろうね」 
俺「その時、リョウメンスクナと天獄はどこに・・・??」 
息子「震源に近い相模湾沿岸の近辺だったそうだ」 
俺「・・・その後、どういう経由でリョウメンスクナは岩手のあのお寺に?」 
息子「そればっかりはオヤジは話してくれなかった」 
俺「あの時、住職さんに(なぜ京都のお寺に輸送しなかったんだ!)みたいな事を 
  言われてましたが、あれは??」 
息子「あっ、聞いてたの・・・もう30年前くらいだけどね、私もオヤジの後継いで坊主に 
   なる予定だったんだよ。その時に俺の怠慢というか手違いでね・・・その後、 
   あの寺もずっと放置されてたし・・・話せることはこれくらいだね」 
俺「そうですか・・・今リョウメンスクナはどこに??」 
息子「それは知らない。と言うか、ここ数日オヤジと連絡がつかないんだ・・・ 
   アレを持って帰って以来、妙な車に後つけられたりしたらしくてね」 
俺「そうですか・・・でも全部は話さないと言われたんですけど、なぜここまで 
  詳しく教えてくれたんですか?」 
息子「オヤジがあの時言ったろう?可哀想だけど君たち長生きできないよ、ってね」 
俺「・・・」 
息子「じゃあこの辺で。もう電話しないでね」 
俺「・・・ありがとうございました」 


以上が電話で話した、かいつまんだ内容です・・・はっきり言って全ては信じてません。 

【洒落怖】【怖い話】山に呼ばれる

色々な体験話を聞いたんだけど、その中で私も巻き込まれた話。 

夜に彼と合流して、行きたいとこもないので適当にドライブでもしようかってなった。 
彼が運転で私が助手席で、お互いオタクだから漫画の話とか仕事の愚痴とか、それなりに楽しく雑談しながら道を走らせてた。 
特に目的地も決めず、ナビも使わずに片側二車線の道を走ってて、 
あんまり運転しない私には分からない道だったけど彼に任せてた。 
そこまでは良かった。 

けど、漫画の話で盛り上がってる中で、不意に彼が信号を左に曲がったんだよね。 
本当に自然に、スッと曲がったの。 
でもそこは交差点とかでもなくて小さな脇道。 
目を凝らしてないと分からないくらいの、ギリギリすれ違いが出来るくらい細い脇道。 

でもあまりに自然に曲がったものだから 
私は彼の知ってる道なんだなーって思って特に気にしなかった。 
だけど凄くおかしいっていうか、違和感っていうか。 

最初はギリギリすれ違い出来そうだった道が、どんどん細くなってくの。 
住宅街だったんだけどみるみるうちに物悲しげな道になって、 
街灯も減って、家なんて一つもなくなっていって。 
道もあんまり舗装されてなくてガタガタのアスファルト。 
ずっと坂で、カーブだらけで、明らかに峠道っぽい。 
でも隣の彼は普通に運転しながら楽しそうに漫画の話してる。 
それも凄く不気味だった。
私はもう乾いた口で適当に笑顔浮かべて相槌打つだけで、『何?ここどこ?』ってドキドキしてた。 
そしたらそのうち、両脇にお地蔵さんが並んでるような道になって、 
そのお地蔵が結構な数で、もう限界で、思いきって聞いてみたんだよね。 
『この道、どこに行く道なの?』って。 

そしたら彼氏無言。 

5秒くらいピタッと黙って、それから『ここどこ?』って呟くの。 
それ私のセリフや。 
何言ってんの、って思ったら本当に怖くなってきて『○○号線走ってたの急に曲がったでしょ?知ってる道だと思ったんだけど違うの?』って言ったら、 
曲がってないって言う彼。 
絶対曲がってない、こんな道知らないって言って焦ってて。 
彼は本当に焦ったり緊張すると手が物凄く冷たくなるから、ちょっと触ってみたら超冷たい。 

街灯も無くて、家もなくて、舗装もほとんどない山道で、私もブワッと怖くなって、 
あとなんだか分かんないけど物凄くヤバい感じがした。 
霊感なんかゼロだけど、頭の中が『ヤバいヤバいヤバい』でいっぱいで、 
『Uターンしよ!早く!』って言いながら、GPS検索中で使い物にならないナビをいじる彼に変わって車回せそうな場所探した。 

そしたらうまい具合に工事現場?みたいな土地があった。 
なんて言えばいいんだろう。 
ただの土地に、山になった土とかショベルカーとか置いてあるような場所。 
ロープもかかって無かったし、彼も尋常じゃないくらい手をカタカタさせながら車をバックさせ始めた。
ロープは無かったけどショベルカーとかフォークリフトとかがあったから私が窓から顔だして、 
『オーライオーライ』って指示出してたんだけど、 
オーライって言ってるのに彼が思いっきりブレーキ踏んだんだよね。 
えっ?って思ってるうちにハンドル切ってアクセル全開に踏んで、道の端に立ってた木の幹にぶつかりそうなくらい無理やりUターンして元の道を下ってくの。 

荒っぽすぎる運転に心配になったけど、彼はハンドルに身を乗り出してすごい形相で運転してるから声かけられなくて、 
結局そのまま元の道に戻ってコンビニの駐車場に停めて落ち着いた。 

少しでも明るいとこに行きたいって言うからコンビニの中に入って、ジュース選びながら 
『Uターンの時どうしたの?』って聞いたんだけど、もう今思い出しても訳が分からない。 

Uターンの時、私のオーライの指示は勿論聞いてたけど、彼自身もバックミラーで後方を確認しながらハンドル切ってバックしてたらしい。 
そうすると、なんて言えばいいのかな。 
彼が見てるミラーには右から左に流れるような感じで後ろの景色が映されるよね? 
そこに、ふと真っ白の棒が現れたんだって。 
それがメチャクチャな動きでぐにゃぐにゃしてて、波打つように揺れたり振子みたいに左右に揺れたり、かと思ったら前後にぐにゃぐにゃしたり。
それがあの一瞬で見えたんだから、一連の動きは物凄い速さだったみたい。 
それが気持ち悪くて怖くて慌ててブレーキ踏んでアクセル全開にしたって。 

でも私はそんなの見てない。 
ガッツリ顔だして後方確認してたけど、あの場所には山盛りの土と機械しかなかった。 
風も全然無かった。 
白くてメチャクチャに動きまわる棒とか知らない。 

もうなんか泣きそうなくらい怖くて、結局そのまま帰った。 
帰り道は、彼が『ほんとゴメン。ほんと忘れたい。気持ち悪い』って言うからまたひたすら漫画の話して帰って、 
それから今日まで、彼とは一度もこの日の出来事のことを振り返って話したことが無い。
けど彼に内緒でクグッたら、似たような話があるんだよね。 
山に纏わる怖い話の纏めで、ぐにゃぐにゃに動きながら追いかけてくる白い棒の話。 
クネクネとはまた違うやつで、山とかにだけ現れるやつ。知ってる人いるかな? 
山に呼ばれたっていう彼のエピソードは沢山あるし、今回も知らない道曲がって結果的に山道向かってたし、もし助手席に私がいなかったら彼はどうしたんだろうって思う。 
とりあえずそれ以来ドライブはしてないし、夜の運転は極力私がするようにしてる。 

思ったより長くなっちゃってすみません。 
私も巻き込まれた霊体験みたいのはまだあるんだけど、どれも私自身は全く見たことなくて、完全にトバッチリくらってる感じで大変…。

【洒落怖】【怖い話】空き地

中学3年生の時の話です。 

私の実家は東京近郊にあるかなり小さな町でした。 
都市開発で住宅が増えても、未だ田んぼの方が多い様な地域で田んぼの真ん中にある農道と住宅街と田んぼの間にある大きな道の2つが基本的な通学路でした。 
農道の方が近道なので普段は農道を通っていたのですが、ある日、住宅街側に住む友人に誘われて、住宅街側の大きな道を通って帰ったのです。 
普段は余り通らない道なので、最初はいつもとは違う風景にわくわくしていました。 
ですが、徐々に増える明かりの灯っていない空き家の数々(当時うちの町は人が来てから家を 
建てるのではなく、最初に家ばかりを沢山建てて、ある程度家が増えてから人を呼び込むという方法で住宅街を増やしていました)に私は少しずつ口数が減っていきました。 
部活も終わった時間ですので、夜7時位だったでしょうか。 
がらんとして空き家ばかり並んだ道は、当然ですが一切の生活感や温もりが感じられず冷たげで不気味に感じたのを覚えています。 
そんな住宅街の真ん中に、不自然な空き地がありました。 
周りは住宅が建っているのに、そこだけはぽつんと空き地なのです。 
かなり前から空き地だったらしく、雑草も当時の私の膝下位まで生い茂っていました。 

(なんで、ここだけ家がないの?) 

当時の私は、そう疑問に思ったのを覚えています。 
他に住宅を建てるのに向かない土地は幾らでもあるし、見た感じはそんなに住宅を建てるのに向かない土地に見えなかったからです。
ただ、本能というのでしょうか。その土地を見た瞬間、何か激しい違和感の様なものに襲われたのは覚えています。 
周りと、何かが違う・・・・・。そんな得たいの知れない感覚でした。 
私が、思わず空き地の前で足を止めていると、隣の友人が 

「私、よくココで遊ぶんだよ?」 

そう言って、空き地の中へ入っていったのです。 

「ちょっと!何やってるの!」
 
驚いて、私は追いかけようとしましたが、足が前に出ませんでした。 
足、というか、本能がそこに入るのを拒否しているのです。ですが、そうしている間にも友人はどんどん空き地の奥へと入っていきます。 
そして、空き地の真ん中へ着くと、狂った様に甲高い声で笑い出し、バレリーナの様に独りで踊り始めたのです。 

(やばい!) 

早く友人をここから出さなくては! 
そう思った私は空き地の中に飛び込んでいきました。そして、真ん中に辿りついた時、私は外側では感じなかった違和感を感じました。 

(誰かが見てる・・・・・!) 

そう。私達以外いない筈のこの空き地で、視線を感じたのです。 
しかも、独りではなく沢山の。冷や汗が背中を流れ落ちるのを感じました。 
そして、未だ高笑いをしている友人を半ば引きずる様に外へ出ようとした瞬間、足元から、薄く紫がかった白い湯気の様なものが上がり始めたのです。 
よく温泉地などで地面から湯気が立ち上っていますが、丁度あんな感じです。
私は、最初は湯気かと思いました。 
ですが、その湯気は消えたり空へ昇ることはなく丁度私達より首一つ分位高い位置まで昇ると、徐々に人の形になったのです。
紫と桃色を混ぜた様な肌の色で、頭には毛髪はなく、がりがりに痩せて、薄い緑色に紫を混ぜた様な色の病院の入院服を着た老人の姿になりました。 
老人には眼窩はあるのですが目はなく、真っ暗な空洞が二つあるだけでした。 
そして、何事かを私達に訴えかけるかの様に口をパクパクと動かしているのですが、口から漏れるのは「おおお・・・」の様な不気味なうめき声だけで、
全く声にはなっていませんでした。 
完全にパニックになった私は、まだ笑っている友人を引っ張り走りました。 
ですが、進む先の地面からどんどんと湯気の様なものが湧き出し、それが全てその老人の姿になっていくのです。 
半狂乱になった私は悲鳴をあげながら走りましたが、ついに囲まれました。 
殺される!!連れていかれる!!! 
そう思った瞬間。

「君達、そこで何してるの?」 

巡回のおまわりさんでした。 

「え・・・・・?」 

おまわりさんにはこの化け物が見えていないのだろうか。 
そう思って見回したのですが・・・・そこには来た時と同じ様にだだっ広い雑草に覆われた空き地が広がるだけで、老人達の姿はありませんでした。 

「完成した住宅に忍び込んだり、悪戯が多いから困るんだよねぇ。」 

おまわりさんには、私と友人は完成した住宅に忍び込んで悪さをしようとした悪がきとして厳重注意を受けてしまいましたが、
恐ろしい化け物から救ってくれたおまわりさんは、私には神に見えました。 
そして、友人はというと、おまわりさんに声をかけられた瞬間、まるで操り人形の糸が切れた様に倒れこみ、昏倒してしまいました。 
その後、私達は夜遊びをしたということで両親にこっぴどく叱られ、当分夜の外出が禁止となりました。勿論、あの空き地にはいっていません。 
後日友人にあの時の事を尋ねてみると、あの時の記憶が全てすっぽりとなく、空き地に誘った覚えすらもないそうでした。 
私が見た老人は誰だったのか。何故、あんな場所にいたのか。気にはなりますが、関わってはいけない気がしています。 
それに、もう、二度とあんな思いは御免だ、とも。 

ちなみに、5年以上経っていますがそこは空き地のままです。

【洒落怖】【怖い話】ボリ

これは小学校6年生の頃の話
俺の田舎で起こった出来事です

その村には、大人から入るなと言われている神社がありました
理由を聞いても答えてはくれません
俺らは怖い物知らずでバカだったんで
まーなにもないと高をくくり、夜に肝試しをすることにしました

俺と村の子供4人
ガキ大将のA、Aに無理矢理連れてこられた怖がりのB、
Aの弟のC、寺の息子で霊感があるDです

鳥居を超えたあたりから、Dは止めようと言い出しましたが
ほかの3人は何ともなかったので、さくさく進みました
道の一番奥まで進むと、獣道みたいな切れ目がありました

「おい、なんかやばいな」

ここまで来ると、嫌な雰囲気を全員が感じたようです
しかしAは無理矢理にでも行こうとしました
僕らは皆で止めたのですが、先が気になるAに引きずられる形で進みました

獣道を超えると、そこは鎮守の森の中にぽっかりと開いた空間でした
8畳ほどの広さで、平たい岩が敷き詰められていました
石畳・・・いや、舗装といえるほどのものではなく、
アンコールワットみたいに自然と同化していました
所々苔が生えた石の隙間から無造作に雑草が伸びています

よくみると、石造りのほこらのようなものが奥の方に見えました
周囲と同化しており、暗がりでは目立たないのですが
何故か異様な存在感を放っておりました

「おい、やばい気がするぞ」とDが言いました
さすがにAも怖気づいていましたが
「ここまで来て調べずに戻れねーだろ」と言って、ほこらに近寄りました

ほこらは俺らの背丈と同じくらいで、大きなものではありません
遠目には天然石を寄せ集めて作ったように見えたのですが
近くでみると赤茶けたぼろい木戸が付いていました
観音開きの戸で中央に木の錠前が付いていました
錠前はにかわの様なもので固定されておりました

「あけてみようぜ」

Aはそう言いました
錠前は子供の力でも簡単に外せそうですが
皆はあまり乗り気ではありませんでした

そんな空気を無視して、Aは錠前に手を掛けました
にかわらしきものが、ばりばりと剥がれる音とともに
それはあっけなく外れました

戸を開けると、中にはさらに小さな祭壇があり
中央に石で出来た置物がありました
一見すると牛のような外見ですが、何の動物か分かりません
大きさはアルミ缶ほどです
胴と頭、角か耳か分からない突起が頭上にふたつ
全体的に角がなく丸っこい、子供が粘土で作ったような感じです

Aは「なんだこれ、大したことないや」といって
置物を手に取りました
Aは皆にも手渡そうとしましたが、気味が悪いので持ちたがる人はいませんでした

「うあ・・・」
Bが祭壇の中をのぞいて言いました
視線を祭壇の中に移すと・・・
石の置物が置いてあった下には、魔方陣のような物があったのです
円の中に筆で描かれた呪文のような文字がありました
直感的に、置物を封印してあるものだと思いました

「兄ちゃん!やばいから戻そうぜ、それ!」
弟のCはAに言いました
Aもさすがにヤバいと思ったのか
「お、おう、そろそろ戻すわ」と置物を戻しました

翌日、Aが夜中のうちに失踪したと村中大騒ぎになりました
前日に一緒にいた俺たちは、当然事情を聴かれまして
神社での出来事を全て話しました

「あれを開けたのか!ばかたれ!」

村の爺さんに怒鳴られました
真剣な顔で「あれ」について語り始めました
「あれ」つまり石の置物は、何らかの呪物だそうです
何時からあるか、正確なことは不明ですが、少なくとも江戸時代にはあったらしい
神主が代々管理しており、村の人間は誰も近付かない物だそうです

置物は「ボリ」と呼ばれるもので
子供が触ると、体が重く感じて自ら動けなくなるそうです
不思議なことに、見ると触りたくなることもあり、危険なので結界に封じていたと言います

「Aはボリに魅入られたのかもしれない」

村の爺さんはそう言いました

しばらくすると、Aが神社の境内で発見されたと連絡がありました
奇妙なことに、Aは自分から体を動かすことが出来ないと言います
爺さんの話と一致するので、皆は恐ろしくなりました

Aは病院に運ばれました
しばらく入院していましたが、動けない原因は全く分かりませんでした
一向に良くなる気配もありません

呪いなんて信じがたい話ですが・・・
Aの両親は、ボリを管理する神主に相談しました
皆もAが心配なので、神社まで付いていきました

「事情は分かりましたが、どうなるか分かりませんよ」
神主は神妙な面持ちで言いました

Aは神社の中に運ばれて、お祓いを受けました
神社の中は狭いし、お祓いは危険だというので
お祓いの様子は子供にみせてくれませんでした

しばらく待っていると、Aと神主とAの両親が神社から出てきました
Aは自力で歩いているので、何とかお祓いは成功したようです

その後しばらくは、Aは足が重く感じられたそうで
走ることが出来るまで数週間掛かったそうです
幸い、後遺症もなくAは回復しましたが

「触っていた時間が長ければ、再び動くことは出来なかったかもしれない」
「Aはおそらくボリに呼ばれたのだろう」
「再びボリを触らせるために・・・」

神主はそのように語っていました

ボリとは何なのか?
誰が何のために作ったのか?
いつからそこにあるのか?
いつまで力を持ち続けるのか?
いつまで封じる必要があるのか?

今となっては誰も知りません
ただ、強力な呪物だということは、間違いないようです

これが私の体験した不思議で恐ろしい話です

【洒落怖】【怖い話】カマドウマ

昨日、6時ころに退社してふだん乗ってる私鉄で帰ったんです。
いつもの駅で降りたら、階段の下にドアがあって「東南口」って書いてたので、あれって思いました。
「西口」と「東口」しかないはずだったんですよ。
それがただの一枚ドアで、通ってる人もいなかったんですが、
もし東南に出るんだとしたら、自転車置き場に近いかもしれないと思っていってみたんです。
ドアを開けると予想通り、自転車置き場の前の道になってました。
こんなに近かったのか、ラッキーと思って出ていくと、まだ早い時間なのにだれも通ってませんでした。
いつも自転車を置いてる場所に行って、自分の自転車の鍵を開けたら、
並んだ自転車の陰から大きいものがぴょんという感じで飛び出してきました。
それは自転車にはさまれた通路に下りたんですが、裸の人だったんです
仰向けになって、下半身をこっちに向けてました。
「クモ」ってわかりますか?昔、女子柔道部だったときにトレーニングでやったことがあるんですが、
仰向けに寝た状態で両手両足で立つんです、その格好が虫の蜘蛛に似てるからクモ。
そその姿勢の男の人が、黒い性器をこっちに向けてたんです。顔は見えませんでした。
でも、それより驚いたのが、その人の肛門からギラギラした刃が出てることでした。
思わず後ろに退がったら、その人が「俺は醜いカマドウマだ!」って叫んだんです。
自転車小屋の中だったので、声は大きく響きました。
その人はぴょんと跳んで、私の近くまできたので「きゃっ」と悲鳴を上げて逃げました。
後ろから「俺から逃げるなよお」という声が聞こえ、シュンと何かが飛んでくる感じがしました。
ガーンという金属音とともに、近くの支柱に物が当たって落ち、それは包丁だったんです。
走りながら後ろを見ると、その人の尻からにょにょにょと新しい包丁が生えてくるところでした。
全力で走って、出てきた東南口のドアをくぐって閉めると、
たくさん人のいる駅の階段下だったんです。
階段の向こうへ出ると、息が切れたのとほっとしたのでしゃがみこんでしまいました。
1分ほどそうしてから立ち上がって後ろを見ると、
「東南口」と書いてあった案内板もドアもなくなってました。
怖かったので、その日は西口から出てタクシーを拾って家に戻りました。
この話をしたら、「そんなバカなことあるわけない」と笑われました。
弟が、「自転車俺がとってきてやる」と言ったので、翌朝はバスで駅まで行き帰りしました。
8時過ぎに弟が私の自転車に乗って帰ってきたんですが、
「姉ちゃんこれ、前も後ろも泥除けと車輪の間に腐ったカマドウマがたくさん詰まってたぞ」
って言いました。

【洒落怖】【怖い話】海底に立つモノ

時期にして太平洋戦争直後ぐらい、淡路で漁師をしていた俺の曾爺ちゃんの話。 

夏のある日、曾爺ちゃんは漁師だが趣味で釣りもするので、その日の漁が終わった昼過ぎに甥っ子と二人で 
小船を出して礒釣りに出かけた。そこの礒は地元の者しか入らないような穴場でチヌ等が簡単に釣れるはずだが、 
その日に限っては曾爺ちゃんも甥っ子も全然釣れなかった。 

その内に甥っ子は飽きてしまい、暑いので裸になり海に入って船の周りを泳ぎだして遊びだした。 
「やれやれ」と思い曾爺ちゃんも一服入れて、ふと何気なく海を見ると数十m向こうの海底に何かが立っている。 

ちょっと予備知識として書いておくが、今では全く考えられない話だが工場ができまくるまでの瀬戸内海は 
かなり水が澄んでいたらしく、親父が子供の頃でも明石から淡路までの連絡船に乗ると海の底の方まで見えていたそうだ。
不審に思った曾爺ちゃんがよく目を凝らしてみると、海底に立っているのはどうやら人間のようで 
ただ立っているだけでなくゆっくりと船の方へと歩いてきている。それも一人ではなく幾人も行列を作ってぞろぞろと。 
思わず声が出そうになったが、曾爺ちゃんの爺さんから「海で妙なものを見たら声を立てて騒いだり目を合わせてはあかん。 
そういう時は見えていても見えてないふりをせえ。」と言われていたのを思い出し堪えた。 

とにかく逃げようと思った曾爺ちゃんは、甥っ子を船に上げようと「おーい、そろそろ帰るぞ」となるべく平静を装って 
船の周りを泳いで遊んでた甥っ子の方を向いて声をかけた。 

するといつの間にか甥っ子のすぐ真下に一人が立っている。かなり近くなのではっきりと格好が見えた。 
そいつは防空頭巾を被ったモンペ姿の若い女で甥っ子ではなく曾爺ちゃんの方を見上げている。 
「うわー!」と声を上げたくなったが、甥っ子に対して「もたもたするな!!」と怒鳴ることで気持ちをごまかした。 
その女は甥っ子が泳いでる真下をついて歩いてきて船に近づいて来る。 
甥っ子が船に上がろうとすると女が浮き上がってくるのが見えた。堪らず曾爺ちゃんは思わず目を背けた。
曾爺ちゃんは甥っ子が船に上がるやいなやエンジンかけて全力で逃げ出した。 
不思議そうに甥っ子が何があったのか聞いてきたが、「なんでもない。気分が悪なっただけや」とごまかした。 
無事に港に帰り甥っ子を一人で先に家に帰した。曾爺ちゃんは怖くて足が震えて船からすぐに降りれなかった。 
どうにか気持ちが落ち着いて船から降りると、全身が海に落ちたみたいにグショグショになっていたそうな

【洒落怖】【怖い話】クルージング

親父が酒の席で怖い話となると毎回話す体験談をひとつ 

今から25年ほど前、親父が30代前半の頃の話。 
親父はヨットが趣味なんだが、当時はまだ自分のヨットを持っておらず、 
友人のヨットに乗せてもらうのが休日の楽しみだった。 

ゴールデンウィークで1週間以上仕事が休みになり、「海に出たいな~」と思っていたら、 
タイミングよく会社のヨット仲間のHさんがクルージングに誘ってきた。 

Hさんは、かなりの上役で、部署も違うし年齢も50代と親父とはかなり離れているが、 
趣味が同じで気も合うので、しょっちゅう一緒に飲みに行く仲だった。 
自前のウン百万もする大きなヨットを持っており、当時は俺の家と家族ぐるみで付き合いがあったので、 
クルージングに誘われて一家で同行することもたびたびあった。
Hさんの誘いは家族と一緒にちょっと遠出のクルージングに来ないかとのものだったが、 
あいにく俺とオカンは、オカンの友人一家とキャンプに行く予定が有り、 
家族全員での参加は日程的に難しかった。Hさんの家族も用事で参加できないらしく、 
親父とHさんが「さすがに男2人だけで行くのもつまらんしなぁ」などと話し合っていると、 
親父の後輩でヨット仲間の一人のJさんが、「よかったら、友人と参加してもいいですか」と会話に入ってきた。 

Jさんは高校時代からヨットをやっており、社会人になってすぐにローン組んで 
自分のヨットを購入した筋金入りのヨット好きだが、活動がレース中心の人で、 
ぶらぶらとクルージングしてるのが好きな親父達とはあまり一緒に活動することがない。 
ただ、ちょうど友人2人に海釣りをやりたいから船出してくれと頼まれて困っていた所とのことだった。 

Jさんの所有しているヨットはレース用の少人数が乗ることを想定した小型のもので、 
あまり快適とは言い難いし、素人2人連れて自分一人が操縦するとなると正直疲れるので、 
便乗させてもらえるなら是非とも便乗させて欲しいと頼み込んできた。
Hさんは、「どうせ他に行く人間も居ないんだから気にせず連れて来い」と快諾し、早速3人でスケジュールを練り、 
最終的な目的地は小豆島で、道中Hさんが知っている釣りポイントに寄り道するという感じで航路を決め、 
酒とつまみ大量に買い込んで出航となった。 

クルージング中の天気は週間予報でも快晴続きで、雨の心配は全く無い絶好の航海日和で、 
釣りも絶好調でヨット航行中はトローリングでハマチとかが面白いように釣れ、 
Hさんの知っていたポイントでも大漁でJさんの友人二人も大喜びだった。 

そんなこんなで若干予定よりも早く最終目的地の小豆島に着き、2日ほど観光したり釣りしたりして過ごしたが、 
皆疲れがたまってきたので、予定よりも1日早く帰途につくこととなった。 

まっすぐ帰る予定であったが、順調に進んで来ているし予定よりもかなり早い帰りになってしまったので、 
以前にHさん一家と俺の一家で行った小さな島に寄ってみようという話になった。 
俺の記憶だと海の家が2軒ほどあるだけの島だが、停泊できる桟橋もしっかりしており、入り江の水も澄んでいる綺麗なところだった。
島について湾内に入っても全く船が泊まっておらず、どうやら海の家もやっていないようだった。 
「あー、まだシーズンやなかったか…」とHさんはかなり残念そうだったが、せっかくなので皆で釣りして 
釣った魚で宴会しようという流れになった。 

皆で誰も居ない島でそれぞれ適当なポイント探して釣り始めると、これが今まで一番の爆釣れ状態。 
うちの親父は堪え性がない性格で全くと言っていいほど釣りに向いてない人間でセンスも0だが、 
そんな親父でもそこそこ釣れるほどで、3時間ほど釣ればクーラーボックスいっぱいになるほどだったそうな。 

15時か16時ぐらいに、ちょっと早目の夕飯を食ってから出航しようという流れとなり、 
皆が釣った魚を大量に使って豪勢な夕食を作り宴会となった。 

皆で酒を飲みながらヨットや釣りの話、仕事や家庭、子供の話で大いに盛り上がったが、 
酒好きだがそこまで強くない親父は途中からウトウトしてしまったらしく、 
ハッと気がつくと高かった日が落ちて僅かに水際が光ってるぐらいになっていた。
「しまった!」と飛び起きて見回すと、Hさん、Jさんがデッキに拵えたテーブルに 
グラスを持ったまま突っ伏して寝てる状態で、Jさんの友人2人は船内に入って寝ているようだった。 

全員が酔って寝てしまっている状態に親父は苦笑して、「とりあえずHさん、Jさんを起こして帰り支度するか」と思い 
立ち上がって寝てる二人を揺り起こそうとした時、ヨットの船尾からバシャ、バシャ、バシャと派手な水しぶきが上がった。 

驚いた親父が船上から覗いてみると、暗いのでよくわからんが恐らく魚が群れて跳ね回ってるようだった。 
小型のライトをつけて照らしてみると確認するとイカの群れだということがわかった。 
かなり近い位置でバシャバシャやってるから、備え付けてあるタモで掬えるんじゃないかと思い 
船尾に降りてダメ元で群れにタモを突っ込んでみるとすごい重い手ごたえで、引き上げてみると5匹ぐらいイカが入っている。 

親父が思わず「おおっ!」と驚きの声をあげると、Hさん、Jさんも目が覚めたようで 
船尾から上がってデッキでドタドタやってる親父のところに寄ってきた。 
親父が海水を汲んだバケツにイカを入れなが事情を説明すると、Hさんは「じゃあ、ワシもやってみるわ」と言い 
タモ持って船尾に降りて行った。
親父とJさんが「アオリイカかな?」などとイカについて喋ってると、ドボン!と大きな水音がした。 
まさか!と思い船尾を見るとHさんの姿がなく、バシャバシャやってたイカの群れも消えている。 
これは身を乗り出しすぎて落ちたな、と思いながらも親父はHさんは泳ぎも上手く、波もまったく無いので 
すぐに浮き上がって泳いで帰ってくるだろうと思い楽観していたが、Hさんが浮かび上がってきたのは 
なぜかヨットから5m近くも離れた場所で、しかも懸命にもがいていた。 

溺れたHさんを助けようと親父が反射的に海に飛び込もうとすると、Jさんがすごい力で親父の腕を押さえつけて 
怖い顔で「救命用の浮き輪を投げて引っ張りましょう!」と言う。 

親父はどう考えても飛び込んだ方が早いと思ったが、普段の冷静なJさんの様子が何かおかしく 
鬼気迫るものがあったので、デッキにある備え付けの救助浮き輪を外し、Hさんめがけて投げつけた。 
上手く近くに着水した浮き輪をHさんが掴んだのを確認して、親父とJさんは浮き輪に結び付けてるロープを引っ張ったが 
Hさんがこちらに向かって泳いでいるのに、何かに流されてるようで中々思うように引き上げられない。 
しかも、Hさんの周りの波の動きが妙な感じで、なにかが泳ぎまわってるようだった。
Jさんは引っ張りながら大声でヨットの中で寝てる友人二人を呼び、起きたばかりで状況のいまいちわかってないながらも 
親父とJさんの作業を手伝い大の男4人掛りで何とか引き上げに成功した。 

親父が「大丈夫ですか!?」とHさんに呼びかけると、肩で息をしていたHさんが「出すぞ!!!」と周囲に響き渡るような 
大声を上げた。それが合図になったかのかJさんは物凄い勢いで係留ロープを外し、ほぼ同時にHさんがエンジンをかけて 
普段のHさんからは想像もできない荒い操縦でヨットは桟橋から離れた。 

親父にはHさんを引き上げたあたりからずっと「ンゥゥゥゥ~ゥゥン~ゥゥン…」と 
牛蛙の鳴声のような男の鼻歌のような声が聞こえおり、入り江から出た後もずっと聞こえており、 
操縦しているHさんの様子も明らかにおかしく、ただ事ではない事態に巻き込まれたのは間違いない。 
Hさんに何があったのか問いただそうとすると、Jさんが「あかん…追ってきてますわ…」と震えながら言う。
JさんはHさんが落ちた時に、その周囲には人間の子供ぐらい大きさのの異様に白い”なにか”が複数見えたそうだ。 
親父が飛び込もうとした時にそいつらは一斉にJさん、親父の方を向いたが、ライトの光を反射とかそういうレベルじゃなく 
目が真っ赤に光っていたと。今は見えないが気配だけは島から離れた今もずっと付いてきている気がすると。 
親父が妙な声が聞こえるかと尋ねると無言で首を縦に振った。 

Jさんの友人2人も声は聞こえているらしく、Jさんの話を聞いて明らかに狼狽している。 
親父も肝が冷えて変な汗が止まらなかった。 

Jさんが話し終わると、Hさんが「俺には見えんかったけどな…タモの先を何かが引っ張りよったせいで落ちた。 
気がついたら海の中で、浮き上がろうとすると見えんけど何かが足首や腕にしがみついてきた…」 
と苦い顔をして言った。 

親父やJさんの友人2人も、Hさん、Jさんが冗談を言ってる様には見えず、 
もう島からはかなり離れており、航路はとりあえず出発したハーバーに向かっているが妙な声がまだ聞こえる。 
数分とも数時間とも時間感覚がないまま全員沈黙していたが、ふと考えが親父の頭をよぎった。 
その時なぜそんなことを思いついたのかわからないが、捕まえてバケツに入れていたイカを海に逃がそうと思ったらしい。
親父が心の中で「勝手に捕ってすまんかった。許してくれ。」と念じながらイカを海に逃がしてやると 
しばらくしてずっと続いていた妙な声が急に聞こえなくなった。 
全員が同じタイミングで聞こえなくなったらしく皆で顔を見合わせて変な笑いが出た。 

その後、深夜過ぎに出発した地元のヨットハーバーに到着し、近くの24時間やってる健康ランドに全員なだれ込んで 
風呂に入ってようやく生きた心地になった。その時にHさんが「これ見てみ…」と皆に肩や腕を見せてくれたが 
3本爪で引っかいたようなミミズ腫れがいたるところにできており、あらためて皆ゾッとしたそうな。

【洒落怖】【怖い話】抜け落ちたシーン

数年前に俺が経験した話なんだけど、語らせてもらうよ。
某動画共有サイトにてオカルト系の動画を視聴してた時の事なんだけど、その日俺は猛烈に暇だったんで、ずっと心霊動画漁りをやってたんだ。
夏だったから友人と怖い話で盛り上がったりしたいな、とか考えてのネタ探しも兼ねてた。
でも有名どころの動画はだいたい見尽くしちゃって、段々これはと思える心霊動画が見つからなくなってきた。
そんな時、ふと関連動画のところに目をやると、一覧の中で一際目を引いたサムネがあったんだ。
よく覚えてないけど、なんか白黒っぽくて廃墟みたいに見えたんだな確か。
そんなに派手なサムネじゃなかった気がするけど、俺、廃墟の空気感とか結構好きだったから「お? これって心霊スポット探索動画か?」とちょっと期待して動画のタイトルを確認してみたわけ。
で、その文字列を見て俺は一瞬ポカンとなった。
なぜかそこには「%/::?/,":%%?」みたいな意味不明の記号が羅列されてたんだ。
まぁ今から考えればその時点で何かおかしかったんだけど、その時は文字化けかな、程度にしか考えてなくて、俺はそのままクリックしてしまったんだ。
はやく廃墟動画を見せろと。
ところがいざ動画が始まってみると、全然予想と違った。
確かに白黒動画だったんだけど、廃墟だと思ってたのは、ボロッボロの畳の部屋だった。空き家になったばあちゃん家がちょうどあんな感じだったかな。
泥みたいなものが散らばってたり、壁の木が腐ってたり。白黒だから細部まではわからなかったけど、多分そんな感じ。
で、再生が始まると、まず変な音楽が流れてきた。
ポーン…ポーン…みたいな無機質なピアノの音で、それがずっと同じ分散和音を不定期に鳴らしてくる感じ。
でもそれより先に映像の意味不明さに気を取られた。
さっき書いたとおり白黒映像で、そこは畳の部屋なんだけど、画面中央に障子があった。サムネで気付かなかったのは、その障子があまりにも破れまくってて若干原型を失いつつあったからだった。
上半分は紙が完全になくなってて、木の枠だけの状態。下半分も拳大のサイズの穴ぼこだらけでひどくみすぼらしい。
そしてその障子の向こうに誰かが立ってた。頭に紙袋みたいなものを被って顔を隠してて、両手を紙のなくなった障子の枠からこちらに向かって突き出して、しかもその腕を狂ったようにめちゃめちゃに振り回してた。
音楽と一緒に、そいつがワサワサ腕を動かす音がガサガサガサガサ…ってずっと聞こえてくるわけ。
俺は、なんだこいつ…みたいな感じでぼけーっとそれを眺めてた。
そしたら動画の真ん中辺りまでいった時にパッと場面が切り替わった。
今度は神社の境内みたいな所だった。
石畳の上に紙袋被ったそいつがうつ伏せになってる。
そこで急に音楽が転調して、ウワーンっていうバイオリンのうねる音みたいなのが鳴ると同時に、その紙袋男(女かも)がムックリと起き上がった。
と思ったらまたさっきの和室にパッと場面が戻って、また腕をワサワサし始める…

その後は何もなく意味もわからないままその動画は終わっちゃったわけ。
でだ、問題はこの後だったんだよ。

なんだったんだコレ? 怖がらせようとしてんのか? そんなの通用するかよ、などと考えながらコメント欄を見たんだけど、一切コメントはついてなかった。
ほらやっぱりな、わざわざ障子ぶち抜いて…ご苦労さん、再生数稼いでやるよ、とやや嫌みっぽい感じで俺はなんとなくもう一回その動画を再生してみた。
すぐにまたワサワサが始まって、それを、このうp主バカだな~、恥ずかしいやつだな~、なんて事を思いながら頬杖ついて眺めてた俺は相当な暇人だったと思う。
案の定段々飽きてきて、自分の顔が無表情になってくるのがわかった。
それでようやく動画が終盤に差し掛かろうとしてると気付いて、ああやっと終わるのか、つうかなんで律儀に最後まで見たんだろ、阿呆らしいわ…と関連動画にカーソル移動させようとした、その瞬間に気付いちゃったんだよね。

…あれ? …神社のシーンなくね?

そう、中盤辺りに出てきた、神社で男が起き上がるシーンが、二周目に出てきた記憶がない。見落としたなんてありえない。短いシーンではあったが、少なくとも5秒程度はあったはず。俺は動画からほとんど目を離してない。
じゃあ、一体どこいったんだ…そのシーン…?
俺は急にゾッとして、電源ボタンぶっ叩いてパソコンを強制終了させた。
大袈裟でなく、あんなにビビったのは初めてだった。
それからしばらくは怖くてそのサイトが使えなかったよ。だって視聴履歴が残ってるわけだからね。
結局あの動画がなんだったのかは今になってもわからずじまいだ。

【洒落怖】【怖い話】雷雨

3年くらい前の夏、ツーリングで岐阜の山の中走ってた時の話。 
それまで晴れてたんだけど急にポツポツ降りだして来て、たまたま休憩所というか駐車場みたいな場所があったから休憩がてらに寄った。 
そこは駐車場とトイレと、休憩所みたいな木製の屋根とテーブルとベンチがある場所があった。 
トイレで用を足していたら雨が凄くなってきて雷も鳴り出して、いつ雨が止むかわからないし、レインコートを着て様子を見ようと思った。 
着替えるのにテーブルの上に荷物を置いてごそごそレインコート取り出して、ふと見るとベンチに老夫婦が座ってた。 
今までいなかったのにいつ来たんだ?と思いながらも雷雨がいつ止むのかのほうが俺には重要だった。 
着替えて5分くらい空を見てたんだけど、老夫婦はその間無言。 
居心地が悪いし俺のほうから挨拶がてら「急に降り出しましたねー」と声をかけた。 
老夫婦は俺の言葉に顔を見合わせてから、爺さんのほうが「ずっと降ってるよ」と答えた。 
今降り始めたばかりなのに何言ってんだろ、と思ったけど顔合わせないように空を見ながら「バイクだし早く止んでくれないと帰れないんですよー」と返した。 
すると爺さんは2秒くらい間をあけて「そうだね、可哀想に帰れないね」とか言った。 
そこでアレ?と思って老夫婦のほうを見たら居ない。辺りを見回しても居ない。 
あ、これヤバイ奴かも・・・と思って立ち去ろうとしたら遠くで怒鳴り声が聞こえた気がした。 
そこでプツっと意識がなくなったんだけど、ハッと目が覚めたら30代くらいのお兄さんが俺の肩を揺らして「大丈夫か?大丈夫か?」ってやってた。 
聞いたらそのお兄さんがトイレから出てきたら俺が柵を乗り超えて崖の下にダイブしそうになってた所を慌ててとめてくれたらしい。 
時間からして気を失ってたのは2分くらい。あれだけ降ってた雨もやんでた。というか、お兄さんが言うには雨なんか降ってないらしい。 
でも俺はレインコートを着てて、道路とかは確かに雨の痕跡はないんだけど、レインコートだけはびっしょり濡れてたんだよね・・・。

>>
同じような話があったんだけど偶然なら怖いな 
確か、同じようなシチュで老人に災難ですね、って話かけたら~って話だったと思う。

昨年の夏、バイクでツーリングに行った。 
三人で飛騨高山の山道をのんびり流して、休憩所の小屋みたいなのがあったのでそこで休んだ。 
誰も居なかったのでAがベンチに横になり少し寝かせろと。 
俺とBは景色を見に遊歩道に進み、滝がある所に出たのでそこに30分位いた。 
黒い雲が出てきたので降るかも知れない、すぐ出発しようと小屋に戻る。 
Aが爆睡してたので揺さ振って起こそうとするも起きない。 
とうとう雷雨になってしまいそこで雨宿りする事に。 
Bと談笑してると傘をさした夫婦が入ってきた。 
Bが「こんにちは、災難ですね」と話かけると旦那が「ええ、ほんとに」と。 
俺とBが話をしている間その夫婦はずっと黙ったまま、寝てるAのほうを見てた。気味が悪いのでそれ以上見ないようにしてた。 
大きい雷がどこかに落ちて俺とBがビクッとした。 
突然Aがむくっと起き上がってこう言った。 
A「今の顔見たか?」 
何言ってるかわからず見回すと夫婦が居ない。 
Bが慌てて外に出ると俺たちの三台のバイクしかない。凄い山奥なのに・・・。 
A「もう大丈夫、感じない。寝てたら、ヤバそうなの2匹入って来る気配がして起きた。ずっと見られてたから寝たふりしてた。」 
B「おれ話かけちゃったよ」 
A「災難ですね、だろ。奴はええ、ほんとに、と答えたよな。あれお前の事を言ってたんだよ・・・」 
Bはかなりビビッてたが 
A「大丈夫、俺いつもこんな体験するから寝た振りしながら俺たちに憑かないよう念送ってたw」 

8年前の投稿でまとめから見つけたけど、飛騨高山=岐阜で同じ場所っぽい?

【洒落怖】【怖い話】リアル

何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら、マジで洒落にならんことを最初に言っておく。 
もう一つ俺の経験から言わせてもらうと、一度や二度のお祓いをすれば何とかなるって事はまず無い。 
長い時間かけてゆっくり蝕まれるからね。 
祓えないって事の方が多いみたいだな。 

俺の場合は大体2年半位。 
一応、断っておくと五体満足だし人並みに生活できてる。 
ただ、残念ながら終わったかどうかって点は定かじゃない。 

まずは始まりから書くことにする。 
当時俺は23才。 社会人一年目って事で新しい生活を過ごすのに精一杯な頃だな。
会社が小さかったから当然同期も少ない、必然的に仲が良くなる。 
その同期に東北地方出身の○○って奴がいて、
こいつがまた色んな事を知ってたりやけに知り合いが多かっりした訳。 

で、よくこれをしたら××になるとか△△が来るとかって話あるじゃない? 
あれ系の話はほとんどガセだと思うんだけど、
幾つかは本当にそうなってもおかしくないのがあるらしいのよ。 
そいつが言うには何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないかって。 
俺の時は、まぁ悪ふざけが原因だろうな。 

当時は車を買ってすぐだったし、一人暮らし始めて間もないし、
何よりバイトとは比べ物にならない給料が入るんで週末は遊び呆けてた。 
8月の頭に、ナンパして仲良くなった子達と○○、
そして俺の計4人で所謂心霊スポットなる場所に肝試しに行ったわけさ。 
その場は確かに怖かったし、寒気もしたし何かいるような気がしたりとかあったけども、
特に何も起こらず、まぁスリルを満喫して帰った訳だ 
3日後だった。 
当時の会社は上司が帰るまで新人は帰れないって暗黙のルールがあって、毎日遅くなってた。 
疲れて家に帰って来て、ほんと今思い出しても理解出来ないのだが、
部屋の入口にある姿見の前で、「してはいけないこと」をやったんだ。 
試そうとか考えた訳ではなく、ふと思い付いただけだったと思う。 

少し細かな説明をする。当時の俺の部屋は駅から徒歩15分、八畳1R、玄関から入ると細い廊下がありその先に八畳分の部屋がある。 姿見は部屋の入口、つまり廊下と部屋の境目に置いていた。 
俺が○○から聞いていたのは、鏡の前で△をしたまま右を見ると◆が来るとか言う話だった。 
体勢的にちょっとお辞儀をしているような格好になる。 
「来るわけねぇよな」なんて呟きながら、お辞儀のまま右向いた時だった。 

部屋の真ん中辺りに何かいた。 見た目は明らかに異常。 
多分160センチ位だったと思う。髪はバッサバサで腰まであって、簾みたいに顔にかかってた。
っつーか顔にはお札みたいなのが何枚も貼ってあって見えなかった。
なんて呼ぶのか分からないけど、亡くなった人に着せる白い和服を来て、小さい振り幅で左右に揺れてた。 
俺はと言うと…、固まった。声も出なかったし一切体は動かなかったけど、
頭の中では物凄い回転数で起きていることを理解しようとしてたと思う。 

想像して欲しい。 

狭い1Rに、音もない部屋の真ん中辺りに何かいるって状態を。 
頭の中では原因は解りきっているのに起きてる事象を理解出来ないって混乱が渦を巻いてる。 

とにかく異常だぞ? 灯りをつけてたけど、逆にそれが怖いんだ。 
いきなり出てきたそいつが見えるから。 そいつの周りだけ青みがかって見えた。 
時間が止まったと錯覚するくらい静かだったな。 
とりあえず俺が出した結論は「部屋から出る」だった。 
足元にある鞄を、何故かゆっくりと、慎重に手に取った。 
そいつからは目が離せなかった。 目を離したらヤバいと思った。 
後退りしながら廊下の半分(普通に歩いたら三歩くらいなのに、かなり時間がかかった)を過ぎた辺りでそいつが体を左右に振る動きが少しずつ大きくなり始めた。 

と同時に何か呻き声みたいなのを出し始めた。 
そこから先は、実はあんまり覚えてない。気が付くと駅前のコンビニに入ってた。 
兎にも角にも、人のいるコンビニに着いて安心した。
ただ頭の中は相変わらず混乱してて「何だよアレ」って怒りにも似た気持ちと、
「鍵閉め忘れた」って変なとこだけ冷静な自分がいた。 
結局その日は部屋に戻る勇気は無くて一晩中ファミレスで朝を待った。 

空が白み始めた頃、恐る恐る部屋のドアを開けた。良かった。消えてた。 
部屋に入る前に、もっかい外に出て缶コーヒーを飲みながら一服した。 
実は何もいなかったんじゃないかって思い始めてた。本当にあんなん有り得ないしね。 

明るくなったってのと、もういないってので少し余裕出来たんだろうね。 
さっきよりはやや大胆に部屋に入った。 
「よし、いない」何て思いながら、カーテンが閉まってるせいで薄暗い部屋の電気を着けた。 
昨晩の出来事を裏付ける光景が目に入ってきた。 
昨日、アイツがいた辺りの床に物凄く臭いを放つ泥(多分ヘドロだと思う)が、
それも足跡ってレベルを超えた量で残ってた。 起きた事を事実と再認識するまで、時間はかからなかった。 
ハッと気付いてますますパニックになったんだけど、…俺、電気消してねーよ…ははっ。 
スイッチ押した左手見たらこっちにも泥がついてんの。 
しばらくはどんよりした気持ちから抜けられなかったが、出ちまったもんは仕方ねーなと思えてきた。 

まぁここら辺が俺がAB型である典型的なとこなんだけど、
そんな状態にありながら泥を掃除してシャワー浴びて出社した。 
臭いが消えなくてかなりむかついたし、こっちはこっちで大問題だが会社を休むことも一大事だったからね。 

会社に着くと、いつもと変わらない日常が待っていた。 俺は何とか○○と話す時間を探った。 
事の発端に関係する○○から、何とか情報を得ようとしたのだ。 
昼休み、やっと捕まえる事に成功した。 以下俺と○○の会話の抜粋。 

俺「前にさぁ、話してた△すると◆が来るとかって話あったじゃん。昨日アレやったら来たんだけど。」 
○○「は?何それ?」 
俺「だからぁ、マジ何か出たんだって!」 
○○「あー、はいはい。カウパー出たのね」 
俺「おま、ふざけんなよ。やっべーのが出たってんだよ」 
○○「何言ってんのかわかんねーよ!」 
俺「俺だってわかんねーよ!!」 
駄目だ、埒があかない。 
○○を信用させないと何も進まなかったため、俺は淡々と昨日の出来事を説明した。 
最初はネタだと思っていた○○もやっと半信半疑の状態になった。 
仕事終わり、俺の部屋に来て確かめる事になった。 

夜10時、幸いにも早めに会社を出られた○○と俺は部屋に着いた。 
扉を開けた瞬間に今朝嗅いだ悪臭が鼻を突いた。 
締め切った部屋から熱気とともに、まさしく臭いが襲ってきた。 
帰りの道でもしつこいくらいの説明を俺から受けていた○○は「・・・マジ?」と一言呟いた。信じたようだ。 
問題は○○が何かしら解決案を出してくれるかどうかだったが、望むべきではなかった。 

とりあえず、お祓いに行った方がいいことと知り合いに聞いてみるって言葉を残し奴は逃げるように帰って行った。 
予想通りとしか言いようがなかったが、奴の顔の広さだけに期待した。 

臭いとこに居たくない気持ちからその日はカプセルホテルに泊まった。 
今夜も出たら終わりかもしれないと思ったのが本音。 
翌日、とりあえず近所の寺に行く。さすがに、会社どころじゃなかった。 

お坊さんに訳を説明すると「専門じゃないから分からないですね~。しばらくゆっくりしてはいかがでしょう。きっと気のせいですよ」なんて呑気な答えが返ってきた。 
世の中こんなもんだ。 
その日は都内では有名な寺や神社を何軒か回ったがどこも大して変わらなかった。 

疲れはてた俺は、埼玉の実家を頼った。 
正確には、母方の祖母がお世話になっているS先生なる尼僧に相談したかった。
っつーかその人意外でまともに取り合ってくれそうな人が思い浮かばなかった。 
ここでS先生なる人を紹介する。 

母は長崎県出身で当然祖母も長崎にいる。 
祖母は、戦争経験からか熱心な仏教徒だ。 
S先生はその祖母が週一度通っている自宅兼寺の住職さんだ。 
俺も何度か会ったことがある。 
俺は詳しくはないが、宗派の名前は教科書に乗ってるくらいだから
似非者の霊能者などとは比較にならないほどしっかりと仏様に仕えてきた方なのだ。 

人柄は温厚、落ち着いた優しい話し方をする。 
俺が中学に上がる頃親父が土地を買い家を建てることになった。 
地鎮祭とでも言うんだっけ? 兎に角その土地をお祓いした。 
その一週間後に長崎の祖母から「土地が良くないからS先生がお祓いに行く」という内容の電話があった。

当然、母親的にも「もう終わってるのに何で?」ってことでそれを言ったらしい。 
そしたら祖母から「でもS先生がまだ残ってるって言うたったい」って。 
つまり、俺が知る限り唯一頼れる人物である可能性が高いのがS先生だった。 
日も暮れてきて、埼玉の実家があるバス停に着いた頃には夜9時を回る少し前だった。 
都内と違い、工場ばかりの町なので夜9時でも人気は少ない。
バス停から実家までの約20分を足早に歩いた。人気の無い暗い道に街灯が規則的に並んでいる。 
内心、一昨日の事がフラッシュバックしてきてかなり怯えてたが、幸いにも奴は現れなかった。

が、夜になり涼しくなったからか俺は自分の身体の異変に気が付いた。 
どうも首の付け根辺りが熱い。 
伝わりにくいかと思うが、例えるなら首に紐を巻き付けられて左右にずらされているような感じだ。 
首に手をやって寒気がした。熱い。首だけ熱い。 

しかもヒリヒリしはじめた。どうも発疹のようなモノがあるようだった。 
歩いてられなくなり、実家まで全力で走った。
息を切らせながら実家の玄関を開けると母が電話を切るところだった。 
そして俺の顔を見るなりこう言ったんだ。 

「あぁ、あんた。長崎のお婆ちゃんから電話来て心配だって。S先生があんたが良くない事になってるからこっちおいでって言われたて。あんたなんかしたの?」 
「あらやだ。あんた首の回りどうしたの!!?」 

答える前に玄関の鏡を見た。奴が来るかもとか考えなかったな…、何故か。 
首の回り、付け根の部分は縄でも巻かれているかのように見事に赤い線が出来ていた。 
近づいてみると、細かな発疹がびっしり浮き上がっていた。 

さすがに小刻みに身体が震えてきた。 
何も考えずに、母にも一言も返事をせずに階段を駈け上がり、母の部屋の小さな仏像の前で南無阿弥陀仏を繰り返した。 
そうする他、何も出来なかった。心配して親父が「どうした!!」と怒鳴りながら走って来た。
母は異常を察知して祖母に電話している。母の声が聞こえた。 泣き声だ。 
逃げ場はないと、恐ろしい事になってしまっているとこの時やっと理解した…。 
実家に帰り、自分が置かれている状況を理解して3日が過ぎた。 
精神的に参ったからか、それが何かしらアイツが起こしたものなのかは分からなかったが、2日間高熱に悩まされた。 
首から異常なほど汗をかき、2日目の昼には血が滲み始めた。3日目の朝には首からの血は止まっていた。 
元々滲む程度だったしね。熱も微熱くらいまで下がり、少しは落ち着いた。 

ただ、首の回りに異常な痒さが感じられた。 
チクチクと痛くて痒い。枕や布団、タオルなどが触れると鋭い、小さな痛みが走る。 
血が出ていたから瘡蓋が出来て痒いのかと思い、意識して触らないようにした。 
布団にもぐり、夕方まで気にしないように心掛けたが、便所に行った時にどうしても気になって鏡を見た。
鏡なんて見たくもないのに、どうしても自分に起きてる事をこの目で確認しないと気が済まなかった。 

鏡は見たこともない状況を写していた。 

首の赤みは完全に引いていた。 その代わり、発疹が大きくなっていた。 
今でも思い出す度に鳥肌が立つほど気持ち悪いが敢えて細かな描写をさせて欲しい。 
気を悪くしないでくれ。 
元々首の回りの線は太さが1cmくらいだった。 
そこが真っ赤になり、元々かなり色白な俺の肌との対比で正しく赤い紐が巻かれているように見えていた。 
これが3日前の事。 目の前の鏡に映るその部分には膿が溜まっていた。 

…いや、正確じゃないな。 
正確には、赤い線を作っていた発疹には膿が溜まっていて、
まるで特大のニキビがひしめき合っているようだった。 
そのほとんどが膿を滲ませていて、あまりにおぞましくて気持ちが悪くなりその場で吐いた。 
真水で首を洗い、軟膏を母から借り、塗り、泣きながら布団に戻った。 
何も考えられなかった。唯一つ「何で俺なんだ」って憤りだけだった。 

泣きつかれた頃、携帯がなった。○○からだった。 
こういう時、ほんの僅かでも、希望って物凄いエネルギーになるぞ? 正直、こんなに嬉しい着信はなかった。 
俺「もしもし」 
○○「おぉ~!大丈夫~!?」 
俺「ぃや…大丈夫な訳ねーだろ…」 
○○「ぁー、やっぱヤバい?」 
俺「やべーなんてもんじゃねーよ。はぁ…。っつーか何かないんかよ?」 
○○「ぅん」 
○○「地元の友達に聞いてみたんだけどさ~、ちょっと分かる奴居なくて…、申し訳ない。」 
俺「ぁー、で?」 

正直、○○なりに色々してくれたとは思うがこの時の俺に相手を思いやる余裕なんてなかったから、かなり自己中な話し方に聞こえただろう。 

○○「いや、その代わり、友達の知り合いにそーいうの強い人がいてさー。紹介してもいいんだけど金かかるって…」 
俺「!? 金とんの?」 
○○「うん、みたい…。どーする?」 
俺「どんくらい?」 
○○「知り合いの話だととりあえず五十万くらいらしい…」 
俺「五十万~!?」 

当時の俺からすると働いているとはいえ五十万なんて払えるわけ無い額だった。
金が惜しかったが、恐怖と苦しみから解放されるなら…。 選択肢は無かった。 

俺「…分かった。いつ紹介してくれる?」 
○○「その人今群馬にいるらしいんだわ。知り合いに聞いてみるからちょっと待ってて。」 
話が前後するが、俺が仏像の前で南無阿弥陀仏を繰り返していた時、母は祖母に電話をかけていた。 
祖母からすぐにS先生に相談が行き(相談と言うよりも助けて下さいってお願いだったらしいが)、
最終的にはS先生がいらしてくれる事になっていた。 

ただし、S先生もご多忙だし何より高齢だ。こっちに来れるのは三週間先に決まった。 
つまり、三週間は不安と恐怖と、何か起きてもおかしか無い状況に居なければならなかった。 
そんな状況だから、少しでも出来るだけの事をしてないと気持ちが落ち着かなかった。 

○○が電話を折り返してきたのは夜11時を過ぎた頃だった。 

○○「待たせて悪いね。知り合いに相談したら連絡入れてくれて、明日行けるって。」 
俺「明日?」 
○○「ほら、明日日曜じゃん?」 

そうか、いつの間にか奴を見てから五日も経つのか。不思議と会社の事を忘れてたな。 

俺「分かった。ありがと。ウチまで来てくれるの?」 
○○「家まで行くって。車で行くらしいから住所メールしといて」 
俺「お前はどーすんの?来て欲しいんだけど」 
○○「行く行く」 
俺「金、後でも大丈夫かな?」 
○○「多分大丈夫じゃね?」 
俺「分かった。近くまで来たら電話して」 

何とも段取りの悪い話だが、若僧だった俺には仕方の無い事だった。 
その晩、夢を見た。 寝てる俺の脇に、白い和服をきた若い女性が正座していた。 
俺が気付くと、三指をつき深々と頭を下げた後部屋から出ていった。 
部屋から出る前にもう一度深々と頭を下げていた。 
この夢がアイツと関係しているのかは分からなかったが。 

翌日、昼過ぎに○○から連絡が来た。 電話で誘導し出迎えた。 
来たのは○○とその友達、そして三十代後半くらいだろう男が来た。 
普通の人だと思えなかったな。 チンピラみたいな感じだったし、何の仕事をしてるのか想像もつかなかった。 
俺がちゃんと説明していなかったから両親が訝しんだ。 まず間違いなく偽名だと思うが男は林と名乗った。 

林「T君の話は彼から聞いてましてね。まー厄介な事になってるんです。」 
(今さらですまん。Tとは俺、会話中の彼は○○だと思って読んでくれ。) 

父「それで林さんはどういった関係でいらしていただいたんですか?」 
林「いやね、これもう素人さんじゃどーしようもなぃんですよ。 
お父さん、いいですか?信じられないかも知れませんがこのままだとT君、危ないですよ?」 

林「で、彼が友達のT君が危ないから助けて欲しいって言うんでね、ここまで来たって訳なんですよ」 
母「Tは危ないんでしょうか?」 
林「いやね、私も結構こういうのは経験してますけどこんなに酷いのは初めてですね。この部屋いっぱいに悪い気が充満してます」 
父「…」 
父「失礼ですが、林さんのご職業をお聞きしても良いですか?」 
林「あー、気になりますか?ま、そりゃ急に来てこんな話したら怪しいですもんねぇ」 
林「でもね、ちゃんと除霊して、辺りを清めないと、T君、ほんとに連れて行かれますよ?」 
母「あの、林さんにお願いできるでしょうか?」 
林「それはもう、任せていただければ。こーいうのは私みたいな専門の者じゃないと駄目ですからね。 
  ただね、お母さん。こっちとしとも危険があるんでね、少しばかりは包んでいただかないと。ね、分かるでしょ?」 
父「いくらあればいいんです?」 
林「そうですね~、まぁ二百はいただかないと…。」 
父「えらい高いな!?」 
林「これでも彼が友達助けて欲しいって言うからわざわざ時間かけて来てるんですよ? 
  嫌だって言うならこっちは別に関係無いですからね~。でも、たった二百万でT君助かるなら安いもんだと思いますけどね」 
林「それに、T君もお寺に行って相手にされなかったんでしょう? 
  分かる人なんて一握りなんですわ。また、一から探すんですか?」 

俺は黙って聞いてた。 
さすがに二百万って聞いた時は○○を見たが、○○もばつの悪そうな顔をしていた。 
結局、父も母も分からないことにそれ以上の意見を言える筈もなく、渋々任せることになった。
林は早速今夜に除霊をすると言い出した。 
準備をすると言い、一度出掛けた。(出がけに両親に準備にかかる金をもらって行った) 
夕方に戻ってくると、蝋燭を立て、御札のような紙を部屋中に貼り、
膝元に水晶玉を置き数珠を持ち、日本酒だと思うがそれを杯に注いだ。 
何となくそれっぽくなって来た。 

林「T君。これからお祓いするから。これでもう大丈夫だから」 
林「お父さん、お母さん。すみませんが一旦家から出ていってもらえますかね?もしかしたら霊がそっちに行く事も無い訳じゃないですから」 

両親は不本意ながら、外の車で待機する事になった。 
日も暮れて、辺りが暗くなった頃、お祓いは始まった。 
林はお経のようなものを唱えながら一定のタイミングで杯に指をつけ、俺にその滴を飛ばした。
俺は半信半疑のまま、布団に横たわり目を閉じていた。林からそうするように言われたからだ。

お祓いが始まってから大分たった。 

お経を唱える声が途切れ途切れになりはじめた。 
目を閉じていたから、嫌な雰囲気と少しずつおかしくなってゆくお経だけが俺に分かることだった。 

最初こそ気付かなかったが首がやけに痛い。 痒さを通り越して、明らかに痛みを感じていた。 
目を開けまいと、痛みに耐えようと歯を食いしばっているとお経が止まった。 

しかしおかしい。 

良く分からないが区切りが悪い終り方だったし、終わったにしては何も声をかけてこない。 
何より、首の痛みは一向に引かず、寧ろ増しているのだ。 
寒気も感じるし、何かが布団の上に跨がっているような気がする。 
目を開けたらいけない。それだけは絶対にしてはいけない。分かってはいたが…。開けてしまった。 
目を開けると、恐ろしい光景が飛び込んできた。 

林は、布団で寝ている俺の右手側に座りお祓いをしていた。 
目を開けると、林と向き合うように俺を挟んでアイツが正座していた。 
膝の上に手を置き、上半身だけを伸ばして林の顔を覗き込んでいる。 
林の顔とアイツの顔の間には拳一つ分くらいの隙間しかなかった。 
不思議そうに、顔を斜めにして、梟のように小刻みに顔を動かしながら、
聞き取れないがぼそぼそと呟きながら林の顔を覗き込んでいた。 
今思うと林に何かを囁いていたのかもしれない。 

林は…少し俯き気味に、目線を下に落としたまま瞬きもせず、口はだらしなく開いたまま涎を垂らしていた。
少し顔が笑っていたように見えた。 時々小さく頷いていた。 
俺は、瞬きも忘れ凝視していた。 不意にアイツの首が動きを止めた。 次の瞬間、顔を俺に向けた。 
俺は…慌てて目をギュッと閉じ、布団を被りひたすら南無阿弥陀仏と唱えていた。 
俺の顔の間近で、アイツが梟のように顔を動かしている光景が瞼に浮かんできた。 恐ろしかった。 

ガタガタと音が聞こえ、階段を駈け降りる音が聞こえた。 林が逃げ出したようだ。 
俺は怖くて怖くて布団に潜り続けていた。 
両親が来て、電気を着けて布団を剥いだとき、丸まって身体が固まった俺がいたそうだ。 
林は、両親に見向きもせず車に乗り込み、まっていた○○、○○の友達と供に何処かへ消えていった。 
後から○○に聞いた話では、「車を出せ」以外は言わなかったらしい。 
解決するどころか、ますます悪いことになってしまった俺には、
三週間先のS先生を待っている余裕など残っていなかった。 
アイツを再び目にしてからさらに4日が経った。 
当たり前かも知れないが首は随分良くなり、まだ痕が残るとは言え明らかに体力は回復していた。 熱も下がり身体はもう問題が無かった。 
ただ、それは身体的な話でしかなくて、朝だろうが夜だろうが関係無く怯えていた。 

何時どこでアイツが姿を現すかと思うと怖くて仕方無かった。 
眠れない夜が続き、食事もほとんど受け付けられず、常に辺りの気配を気にしていた。 
たった10日足らずで、俺の顔は随分変わったと思う。精神的に追い詰められていた俺には時間が無かった。 

当然、まともな社会生活なんて送れる訳も無く、親から連絡を入れてもらい会社を辞めた。(これも後から聞いた話でしかないのだが…、連絡を入れた時は随分嫌味を言われたらしい) 
とにかく、何もかもが怖くて洗濯物や家の窓から見える柿の木が揺れただけでも、
もしかしたらアイツじゃないかと一人怯えていた。 
S先生が来るまでには、まだ二週間あまりが残っていた俺には長すぎた。 

見かねた両親は、強引に怯える俺を車に押し込み何処かへ向かった。 
父が何度も「心配するな」「大丈夫だ」と声をかけた。 
車の後部座席で、母は俺の肩を抱き頭を撫でていた。母に頭を撫でられるなんて何年ぶりだったろう。 
(当時の俺にはだが)時間の感覚も無く、車で移動しながら夜を迎えた。 
二十歳も過ぎて恥ずかしい話だが、母に寄り添われ安心したのか、久方ぶりに深い眠りに落ちた。 
目が覚めるとすでに陽は登っていて、久しぶりに眠れてすっきりした。
実際には丸1日半眠っていたらしい。 
多分、あんなに長く眠るなんてもうないだろうな。外を見ると車は見慣れない景色の中を進んでいた。 

少しずつ、見覚えのある景色が目に入り始めた。道路の中央に電車が走っている。
車は…長崎に着いていた。これには俺も流石に驚いた。 
怯え続ける俺を気遣い、飛行機や新幹線は避け車での移動にしてくれたらしい。 
途中で休憩は何度も入れたらしいが、それでもろくに眠らず車を走らせ続けた父と、
俺が怖がらないようにずっと寄り添ってくれた母への恩は、一生かけても返しきれそうもない。

祖父母の住む所は長崎の柳川という。
柳川に着くと坂道の下に車を停め両親が祖父母を呼びに行った。 
(祖父母の家は坂道から脇に入った石段を登った先にある) 
その間、俺は車の中に一人きりの状態になった。 

両親が二人で出ていったのは足腰の悪い祖母やS先生の家に持っていく荷物を運ぶのを手伝うためだったのだが、自分で「大丈夫、行って来て」なんて言ったのは本当に舐めてた証拠だと思う。 
久しぶりに眠れた事や、今いる場所が東京・埼玉と随分離れた長崎だった事が気を弛めたのかもしれない。 

車の後部座席に足をまるめて座り(体育座りね)、外をぼーっと眺めていると急に首に痛みが走った。 
今までの痛みと比較にならないほど、言い過ぎかも知れないが激痛が走った。 
首に手をやると滑りがあった。…血が出てた。
指先に付いた血が、否応なしに俺を現実に引き戻した。
この時、怖いとか、アイツが近くにいるかもって考える前に
「またかよ…」ってなげやりな気持ちが先に来たな。もう何か嫌になって泣けてきた。 

分かってもらえれば嬉しいけど、
嫌な事が少しの間をおいて続けて起きるのってもうどうしようも無いくらい落ち込むんだよね。
気持ちの整理が着き始めると嫌な事が起きるっては辛いよね。 
この時は少し気が弛んでいたから尚更で、「どーしろっつーんだよ!!」とか
「いい加減にしてくれよ」とか独り言をぶつぶつ言いながら泣いてた。 

車に両親が祖父母を連れて戻って来たんだけど、すぐにパニックになった。 
何しろ問題の俺が首から血を流しながら後部座席で項垂れて泣いてるからね。 
何も無い訳がないよな。 
「どうした?」とか「何とか言え!」とか「もぅやだー」とか「Tちゃん、しっかりせんか!!」とか「どげんしたと!?」とか「あなたどうしよう」とか。 

この時は…思わず「てめぇらぅるっせーんだよ!!」って怒鳴ってしまった。 
こんな時に説明なんか出来るわけねーだろって、
てめぇらじゃ何も出来ねぇ癖に…黙ってろよ!とか思ってたな。 
勝手に悪い事になって仕事は辞めるわ、騙されそうになるわ…
こんな俺みたいな駄目な奴のために走り回ってくれてる人達なのに…。今考えると本当に恥ずかしい。 

で、人生で一度きりなんだけどさ、親父がいきなり俺の左頬に平手打ちをしてきた。 
物凄い痛かったね。親父、滅茶苦茶厳しくて何度も口喧嘩はしたけど
多分生まれてから一回も打たれた事無かったからな。 
(父のポリシーで子供は絶対殴らないってのは昔から耳タコだったしね) 

で、一言だけ「お祖父さんとお祖母さんに謝れ」って静かだけど厳しい口調で言ったんだ。 
それで、何故か落ち着いた。ってかびっくりし過ぎてそれまでの絶望感がどっかに行ってしまったよ。 
冷静さを取り戻して、皆に謝ったら急に腹が据わってきた気がした。 
走り始めた車の中で励ましてくれる祖父母の言葉に感極まってまた泣いた。 
自分で思ってるよか全然心が弱かったんだな、俺は。 

S先生の家(寺でもあるが)に着くとふっと軽くなった気がした。 
何か起きたっていうよりは俺が勝手に安心したって方が正しいだろうな。 
門をくぐり、石畳が敷かれた細い道を抜けると初老の男性が迎え入れてくれた。
そう言えばS先生の家にはいつもお客さんがいたような気がする。 
きっと、祖母のように通っている人が多いんだろう。 
奥に通され裏手の玄関から入り進んでいくと、十畳くらいの仏間がある。 
S先生は俺の記憶の通り、仏像の前に敷かれた座布団の上に正座していて…ゆっくりと振り向いたんだ。 

(下手な長崎弁を記憶に頼って書くが見逃してな) 

祖母「Tちゃん、もうよかけんね。S先生が見てくれなさるけん」 
S先生「久しぶりねぇ。随分立派になって。早いわねぇ」 
祖母「S先生、Tちゃんば大丈夫でしょかね?」 
祖父「大丈夫って。そげん言うたかてまだ来たばかりやけんS先生かてよう分からんてさ」 
祖母「あんたさんは黙っときなさんてさ。もうあたし心配で心配で仕方なかってさ」 

何でだろう…ただS先生の前に来ただけなのにそれまで慌ていた祖父母が落ち着いていた。 
それは両親にも、俺にも伝わってきて、深く息を吐いたら身体から悪いものが出ていった気がした。 
両親はもう体力的にも精神的にも限界に近かったらしく、「疲れちゃったやろ?後はS先生が良くしてくれるけん、隣ば行って休んでたらよか」と人懐こい祖父の言葉に甘えて隣の部屋へ。 
S先生「じゃあTちゃん、こっちにいらっしゃい」S先生に呼ばれ、向かい合わせで正座した。 
S先生「それじゃIさん達も隣の部屋で寛いでらして下さい。Tちゃんと話をしますからね」 
S先生「後は任せて、こっちの部屋には良いと言うまで戻って来ては駄目ですよ?」 
祖父「S先生、Tちゃんばよろしくお願いします!」 
祖母「Tちゃん、心配なかけんね。S先生がうまいことしてくれるけん。あんたさんはよく言うこと聞いといたらよかけんね。ね?」 

しきりにS先生にお願いして、俺に声をかけてくれる祖父母の姿にまた涙が出てきた。 泣きっぱなしだな俺。 
S先生はもっと近づくように言い、膝と膝を付け合わせるように座った。 
俺の手を取り、暫くは何も言わず優しい顔で俺を見ていた。 
俺は何故か悪さをして怒られるじゃないかと親の顔色を伺っていた子供の頃のような気持ちになっていた。 
目の前の、敢えて書くが自分よりも小さくて
明らかに力の弱いお婆ちゃんの威圧的でもなんでもない雰囲気に呑まれていた。 
あんな人本当にいるんだな。 

S先生「…どうしようかしらね」 
俺「…」 
S先生「Tちゃん、怖い?」 
俺「…はい」 
S先生「そうよねぇ。このままって訳には行かないわよねぇ」 
俺「えっと…」 
S先生「あぁ、いいの。こっちの話だから」 

何がいいんだ!?ちっともよかねーだろなんて気持ちが溢れて来て、耐えきれずついにブチ撒けた。
本当に人として未熟だなぁ、俺は。 
俺「あの、俺どーなるんすか? もう早いとこ何とかして欲しいんです。 大体何なんですか? 
何でアイツ俺に付きまとうんですか? もう勘弁してくれって感じですよ。 
S先生、何とかならないんですか?」 

S先生「Tちゃ…」 
俺「大体、俺別に悪いこと何もしてないっすよ!?確かに□□(心霊スポットね)には行ったけど俺だけじゃないし、何で俺だけこんな目に会わなきゃいけないんすか? 鏡の前で△しちゃだめだってのも関係あるんですか? ホント訳わかんねぇ!!あーっ!苛つくぅぁー!!」 

「ドォ~ドォルルシッテ」 
「ドォ~ドォルル」「チルシッテ」 

…何が何だか解らなかった。(ホントに訳解んないので取り敢えずそのまま書く) 

「ドォ~。 シッテドォ~シッテ」 

左耳に鸚鵡か鸚哥みたいな甲高くて抑揚の無い声が聞こえてきた。 
それが「ドーシテ」と繰り返していると理解するまで少し時間がかかった。 
俺はS先生の目を見ていたし、S先生は俺の目を見ていた。 
ただ優しくかったS先生の顔は無表情になっているように見えた…。 

左側の視界には何かいるってのは分かってた。 チラチラと見えちゃうからね。 
よせば良いのに、左を向いてしまった。首から生暖かい血が流れてるのを感じながら。 
アイツが立ってた。 体をくの字に曲げて、俺の顔を覗き込んでいた。 
くどいけど…訳が解らなかった。起きてることを認められなかった。 
此処は寺なのに、目の前にはS先生がいるのに…何でなんで何で…。 
一週間前に、見たまんまだった。 アイツの顔が目の前にあった。 
梟のように小刻みに顔を動かしながら俺を不思議そうに覗き込んでいた。 

「ドォシッテ? ドォシッテ? ドォシッテ? ドォシッテ?」 

鸚鵡のような声でずっと質問され続けた。 
きっと…林も同じようにこの声を聞いていたんだろう。 
俺と同じ言葉を囁かれていたのかは解らないが…。 
俺は…息する事を忘れてしまって目と口を大きく開いたままだった。 
いや、息が上手く出来なかったって方が 正しいな。た
まに【コヒュッ】って感じで息を吸い込む事に失敗してた気がするし。 
そうこうしているうちに、アイツが手を動かして顔に貼り付けてあるお札みたいなのをゆっくりめくり始めたんだ。 

見ちゃ駄目だ!! 絶対駄目だって分かってるし逃げたかったんだけど動けないんだよ!! 
もう顎の辺りが見えてしまいそうなくらいまで来ていた。 
心の中では「ヤメロ!それ以上めくんな!!」って叫んでるのに口からは「ァ…ァカハッ…」みたいな情けない息しか出ないんだ。 
もうやばい!! ヤバい!ヤバい!ってところで 

「パンッ!!」 

って。 例えとか誇張でもなく“跳び上がった。 心臓が破裂するかと思った。 
「パン!!」 

その音で俺は跳び上がった。
正座してたから体が倒れそうになりながら後に振り向いてすぐ走り出した。 
何か考えてた訳じゃなく体が勝手に動いたんだよね。
でも慣れない正座のせいで足が痺れてまともに走れないのよ。 
痺れて足が縺れた事とあんまりにも前を見てないせいで頭から壁に突っ込んだがちっとも痛くなかった。 
額から血がだらだら出てたのに…、それだけテンパって周りが見えてなかったって事だな。 

血が目に入って何も見えない。手をブン回して出口を探した。けど的外れの方ばっかり探してたみたい。 

「まだいけません!」 

いきなりS先生が大きい声を出した。
障子の向こうにいる両親や祖父母に言ったのか俺に言ったのか分からなかった。
分からなかったがその声は俺の動きを止めるには十分だった。 
ビクってなってその場で硬直。またもや頭の中では物凄い回転で事態を把握しようとしていた。
っつーか把握なんて出来る筈もなく、S先生の言うことに従っただけなんだけどね。 
俺の動きが止まり、仏間に入ろうとする両親と祖父母の動きが止まった事を確認するかのように少しの間を置いてからS先生が話始めた。 

S先生「Tちゃんごめんなさいね。怖かったわね。もう大丈夫だからこっちに戻ってらっしゃい」 

「Iさん、大丈夫ですからもう少し待ってて下さいね」 

障子(襖だったかも)の向こうからしきりに何か言ってのは聞こえてたけど覚えてない。
血を拭いながらS先生の前に戻ると手拭いを貸してくれた。
お香なのかしんないけどいい匂いがしたな。
ここに来てやっとあの音はS先生が手を叩いた音だって気付いた。 
(質問出来る余裕は無かったけど) 
S先生「Tちゃん、見えたわね?聞こえた?」 
俺「見えました…どーして?って繰り返してました。」 
この時にはもうS先生の顔はいつもの優しい顔になってたんだ。
俺も今度はゆっくりと、出来るだけ落ち着いて答える事だけに集中した。まぁ…考えるのを諦めたんだけどね。 

S先生「そうね。どうして?って聞いてたわね。何だと思った?」 
さっぱり分からなかった。考えようなんて思わなかったしね。 

俺「?? …いや…、ぅぅん?…分かりません」 
S先生「Tちゃんはさっきの怖い?」 
俺「怖い…です」 
S先生「何が怖いの?」 
俺「いや…、だって普通じゃないし。幽霊だし…」 

ここらへんで俺の脳は思考能力の限界を越えてたな。S先生が何が言いたいのかさっぱりだった。 
S先生「でも何もされてないわよねぇ?」 
俺「いや…首から血が出たし、それに何かお札みたいなの捲ろうとしてたし。明らかに普通じゃないし…」 
S先生「そうよねぇ。でも、それ以外は無いわよねぇ」 
俺「…」 
S先生「難しいわねぇ」 
俺「あの、よく分からなくて…すいません」 
S先生「いいのよ」 

S先生は、俺にも分かるように話してくれた。諭すっていった方がいいかもしれない。 
まず、アイツは幽霊とかお化けって呼ばれるもので間違いない。
じゃあ所謂悪霊ってヤツかって言うとそう言いきっていいかS先生には難しいらしかった。 
明らかにタチが悪い部類に入るらしいけど、S先生には悪意は感じられなかったって言っていた。

俺に起きた事は何なのかに対してはこう答えた。 
「悪気は無くても強すぎるとこうなっちゃうのよ。あの人ずっと寂しかったのね。話したい、触れたい、見て欲しい、気付いて気付いてーって、ずっと思ってたのね」 
「Tちゃんはね、分からないかもしれないけど暖かいのよ。色んな人によく思われてて、それがきっと“いいな~。優しそうだな~って思ったのね。だから自分に気付いてくれた事が嬉しくて仕方なかったんじゃないかしら」 
「でもね、Tちゃんはあの人と比べると全然弱いのね。だから、近くに居るだけでも怖くなっちゃって体が反応しちゃうのね」 
S先生は、まるで子供に話すようにゆっくりと、難しい言葉を使わないように話してくれた。 
俺はどうすればいいのか分からなくなったよ。 
アイツは絶対に悪霊とかタチの悪いヤツだと決めつけてたから。 
S先生にお祓いしてもらえばそれで終ると思ってたから…。
それなのにS先生がアイツを庇うように話してたから…。 

S先生「さて、それじゃあ今度は何とかしないといけないわね。Tちゃん、時間かかりますけど何とかしてあげますからね」 
この一言には本当に救われたよ。 あぁ、もういいんだ。終るんだって思った。やっと安心したんだ。 
S先生に教えられたことを書きます。俺にとって一生忘れたくない言葉です。 

「見た目が怖くても、自分が知らないものでも自分と同じように苦しんでると思いなさい。救いの手を差し伸べてくれるのを待っていると思いなさい」 

S先生はお経をあげ始めた。お祓いのためじゃ無くアイツが成仏出来るように。その晩、額は裂けてたしよくよく見れば首の痕が大きく破けて痛かったけど本当にぐっすり眠れた。(お経終わってもキョドってた俺のために笑いながらその日は泊めてくれた) 
翌日、朝早く起きたつもりがS先生はすでに朝のお祈りを終らしてた。 
S先生「おはよう、Tちゃん。さ、顔洗って朝御飯食べてらっしゃい。食べ終わったら本山に向かいますからね」 

関係者でも何でもないんであまり書くのはどうかと思うが少しだけ。 
S先生が属している宗派は前にも書いた通り教科書に載るくらい歴史があって、
信者の方も修行されてる方も日本全国にいらっしゃるのね。
教えは一緒なんだけど地理的な問題から東と西それぞれに本山があるんだって。

俺が連れていってもらったのが西の本山。本山に暫くお世話になって、
自分が元々持っている徳(未だにどんなものか説明できないけど)を高める事と、
アイツが少しでも早く成仏出来るように本山で供養してあげられるためってS先生は言ってた。 
その話を聞いて一番喜んだのが祖母、まだ信じられなそうだったのが親父。
最後は俺が「もう大丈夫。行ってくる」って言ったから反対しなかったけど。 

本山に着くと迎えの若い方が待っていて、S先生に丁寧に挨拶してた。
本堂の横奥にある小屋(小屋って呼ぶのが憚れるほど広くて立派だったが)で本山の方々にご挨拶。 
ここでもS先生にはかなりの低姿勢だったな。 
S先生、実は凄い人らしく、望めばかなりの地位(「寂しいけど序列ができちゃうのね」ってS先生は言ってた)にいても不思議じゃないんだって後から聞いた。 
俺は本山に暫く厄介になり、まぁ客人扱いではあったけど皆さんと同じような生活をした。
多分、S先生の言葉添えがあったからだろうな。 
その中で、自分が本当に幸運なんだなって実感したよ。 
もう四十年間ずっと蛇の怨霊に苦しめられている女性や、家族親族まで祟りで没落してしまって
身寄りが無くなってしまったけど、家系を辿れば立派な士族の末裔の人とか… 
俺なんかよりよっぽど辛い思いしてる人がこんなにいるなんて知らなかったから…。 
厳しい生活の中にいたからなのか、場所がそうだからなのか、 
あるいはS先生の話があったからなのか恐怖は大分薄れた。 
(とは言うものの、ふと瞬間にアイツがそばに来てる気がしてかなり怯えたけど) 

本山に預けてもらって一ヶ月経った頃S先生がいらっしゃった。 
S先生「あらあら、随分良くなったみたいね」 
俺「えぇ、S先生のおかげですね」 
S先生「あれから見えたりした?」 
俺「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないですか?ここ、本山だし」 
S先生「そんな事ないわよ?」 

顔がひきつった。 

S先生「あら、ごめんなさい。また怖くなっちゃうわよね」 
「でもねTちゃん、ここには沢山の苦しんでる人がいるの。 
   その人達を少しでも多く助けてあげるのが私達の仕事なのよ」 
多分だけどS先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。 

S先生「Tちゃん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんだから」 

俺はS先生の言葉に従った。あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたからね。 
それに一日はあっという間なんだけど…何て言うか時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。 
(何か矛盾してるけどね)そんなこんなが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。 
その間S先生は(二ヶ月前に来たきり)こっちには顔を出さなかった。 
やっぱりS先生の言葉がないと不安だからね。 
でも、哀しいかな流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離去れると物足りない気持ちが強くなってた。 
実に二ヶ月ぶりにS先生がやって来てやっと本山での生活は終りを迎えようとしていた。 
身支度を整え、兎に角お世話になった皆さんに一人ずつ御礼を言いS先生と帰ろうとしたんだ。 
でも気付くと横にいたはずのS先生がいない。「あれ?」と思って振り向いたら少し後にいたんだ。 
「歩くの速すぎたかな?」って思って戻ったら優しい顔で 
「Tちゃん、帰るのやめてここに居たら?」って言われた。 

実はS先生に認められた気がして少し嬉しかった。 

「いや、僕にはここの人達みたいには出来ないです。本当に皆さん凄いと思います。真似出来そうもないですよ」 

照れながら答えたら 

S先生「そうじゃなくて帰っちゃ駄目みたいなのよ」 
俺「え?」 
S先生「だってまだ残ってるから」 

また顔がひきつった。 
結局、本山を降りる事が出来たのはそれから二ヶ月後だった。
実に五ヶ月も居座ってしまった。
多分、こんなに長く家族でも無い誰かに生活の面倒を見てもらう事はこの先ないだろう。 
S先生から「多分もう大丈夫だと思うけど、しばらくの間は月に一度おいでなさい。」と言われた。 
アイツが消えたのか、それとも隠れてれのか本当のところは分からないからだそうだ。 
長かった本山の生活も終ってやっと日常に戻って来た。 
借りてたアパートは母が退去手続きを済ましてくれていて、 
実家には俺の荷物が運び込まれてた。 

アパートの部屋を開けた時、何かを燻したような臭いと部屋の真ん中辺りの床に小さな虫が集まってたらしい。 
怖すぎたらしくその日はなにもしないで帰って来たんだってさ。 
翌日、仕方無いんで意を決してまた部屋を開けたら臭いは残ってたけど虫は消えてたらしい。 
母には申し訳ないが俺が見なくて良かった 
実家に戻り、実に約半年ぶりくらいに携帯を見ると(そーいやそれまでは気にならなかったな。)物凄い件数の着信とメールがあった。 中でも一番多かったのが○○。 
メールから、奴は奴なりに自分のせいでこんな事になったって自責の念があったらしく、
謝罪とかこうすればいいとかこんな人が見つかったとかまめに連絡が入ってた。 
母から、○○が家まで来た事も聞いた。 戻って二日目の夜、○○に電話を入れた。
電話口が騒がしい。○○は呂律が回らず何を言っているか分からなかった。 

…コンパしてやがった。 

とりあえず電話をきり「殺すぞ」とメールを送っておいた。 所詮世の中他人は他人だ。 
翌日、○○から誤りたいから時間くれないか?とメールが来た。電話じゃなかったのは気まずかったからだろう。 
夜になると、家まで○○が来た。わざわざ遠いところまで来るくらいだ。相当後悔と反省をしていたのだろう。(夜に出歩くのを俺が嫌ったからってのが一番の理由である事は言うまでもない) 
玄関を開け○○を見るなり二発ぶん殴ってやった。 
一発は奴の自責の念を和らげるため、一発はコンパなんぞに行ってて俺を苛つかせた事への贖罪のめに。 

言葉で許されるよりも殴られた方がすっきりする事もあるしね。まぁ、二発目は俺の個人的な怒りだが。 
○○に経緯を細かく話し、その晩は二人して興奮したり怖がったり…今思うと当たり前の日常だなぁ。 
○○からは、あの晩のそれからを聞いた。 
あの晩、逃げたした時には林は明らかにおかしくなっていた。 
林の車の中で友達と待っていた○○には、まず間違いなくヤバい事になっているって事がすぐに分かったそうだ。 
でも、後部座席に飛び乗ってきた林の焦り方は尋常じゃ無かったらしく、車を出さざるを得なかったらしい。 
「反抗したりもたついたりしたら何されっか分かんなかったんだよ」 

○○の言葉が状況を物語っていた。 
○○は、車が俺の家から離れ高速の入り口近くの信号に捕まった時に、逃げ出したらしい。 

○○「だってあいつ、途中から笑い出したり、震えたり、“俺は違う“とか“そんな事しません“とか言い出して怖いんだもんよ」 

アイツが何か囁いてる姿が甦ってきて頭の中の映像を消すのに苦労した。 
俺の家に戻って来なかったのは単純に怖すぎたからだって。
「根性無しですみませんでした」って謝ってたから許した。 
俺が○○でも勘弁だしね。 

その後、林がどうなったかは誰も知らない。
さすがに今回の件では○○も頭に来たらしく、林を紹介した友達を問い詰めたらしい。 
結局、林は詐欺師まがいにも成りきれないようなどうしようも無いヤツだったらしく、
唆されて軽い気持ち(小遣い稼ぎだってさ…)で紹介したんだと。 

○○曰く「ちゃんとボコボコにしといたから勘弁してくれ!」との事。 
でもこんな状況を招いたのが自分の情報だってのには参ったから、今度は持てる人脈を総動員したが… 
こんなことに首を突っ込んだり聞いた事がある奴が回りにいるはずもなく、
多分とか~だろうとかってレベルの情報しか無かったんだ。 

だから「何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないか」としか言えなかった。 
その後、俺はS先生の言い付けを守って毎月一度、S先生を訪ねた。 
最初の一年は毎月、次の一年は三か月に一度。 
○○も、俺への謝罪からか何も無くても家まで来ることが増えたし、 
S先生のところに行く前と帰ってきた時には必ず連絡が来た。 

アイツを見てから二年が経った頃、S先生から「もう心配いらなそうね。
Tちゃん、これからはたまに顔出せばいいわよ。でも、変な事しちゃだめよ」って言ってもらえた。 

本当に終ったのか…俺には分からない。S先生はその三ヶ月後、他界されてしまった。 
敬愛すべきS先生、もっと多くの事を教えて欲しかった。ただ、今は終ったと思いたい。 

S先生のお葬式から二ヶ月が経った。 
寂しさと、大切な人を亡くした喪失感も薄れ始め俺は日常に戻っていた。 
慌ただしい毎日の隙間にふとあの頃を思い出す時がある。あまりにも日常からかけ離れ過ぎていて、 
本当に起きた事だったのか分からなくこともある。 
こんな話を誰かにするわけもなく、またする必要もなく、ただ毎日を懸命に生きてくだけだ。 

祖母から一通の手紙が来たのはそんなごくごく当たり前の日常の中だった。 
封を切ると、祖母からの手紙と、もう一つ手紙が出てきた。 
祖母の手紙には俺への言葉と共にこう書いてあった。 
“S先生から渡されていた手紙です。四十九日も終わりましたのでS先生との約束通りTちゃんにお渡しします“ 

S先生の手紙、今となってはそこに書かれている言葉の真偽が確かめられないし、
そのままで書く事は俺には憚られるので崩して書く。 
Tちゃんへ 
ご無沙汰しています。Sです。あれから大分経ったわねぇ。 
もう大丈夫?怖い思いをしてなければいいのだけど…。 
いけませんね、年をとると回りくどくなっちゃって。 
今日はね、Tちゃんに謝りたくてお手紙を書いたの。 
でも悪い事をした訳じゃ無いのよ。あの時はしょうがなかったの。 でも…、ごめんなさいね。 

あの日、Tちゃんがウチに来た時、先生本当は凄く怖かったの。 
だってTちゃんが連れていたのはとてもじゃ無いけど先生の手に負えなかったから。 
だけどTちゃん怯えてたでしょう?だから先生が怖がっちゃいけないって、そう思ったの。 

本当の事を言うとね、いくら手を差し伸べても見向きもされないって事もあるの。あの時は、運が良かったのね。 
Tちゃん、本山での生活はどうだった? 少しでも気が紛れたかしら? 
Tちゃんと会う度に先生まだ駄目よって言ったでしょう? 覚えてる? 

このまま帰ったら酷い事になるって思ったの。 
だから、Tちゃんみたいな若い子には退屈だとは分かってたんだけど帰らせられなかったのね。 
先生、毎日お祈りしたんだけど中々何処かへ行ってくれなくて。 

でも、もう大丈夫なはずよ。近くにいなくなったみたいだから。 
でもねTちゃん、もし…もしもまた辛い思いをしたらすぐに本山に行きなさい。 
あそこなら多分Tちゃんの方が強くなれるから中々手を出せないはずよ。 

S先生の手紙の続き 

最後にね、ちゃんと教えておかないといけない事があるの。 
あまりにも辛かったら、仏様に身を委ねなさい。 
もう辛い事しか無くなってしまった時には、心を決めなさい。 
決してTちゃんを死なせたい訳じゃないのよ。 
でもね、もしもまだ終っていないとしたらTちゃんにとっては辛い時間が終らないって事なの。 

Tちゃんも本山で何人もお会いしたでしょう? 

本当に悪いモノはね、ゆっくりと時間をかけて苦しめるの。決して終らせないの。 
苦しんでる姿を見てニンマリとほくそ笑みたいのね。 
悔しいけど、先生達の力が及ばなくて目の前で苦しんでいても何もしてあげられない事もあるの。 
あの人達も助けてあげたいけど…、どうにも出来ない事が多くて…。 
先生何とかTちゃんだけは助けたくて手を尽くしたんだけど、正直自信が持てないの。 
気配は感じないし、いなくなったとも思うけど、まだ安心しちゃ駄目。安心して気を弛めるのを待っているかも知れないから。 

いい?Tちゃん。 
決して安心しきっては駄目よ。いつも気を付けて、怪しい場所には近付かず、 
余計な事はしないでおきなさい。先生を信じて。ね? 

嘘ばかりついてごめんなさい。 
信じてって言う方が虫が良すぎるのは分かっています。 
それでも、最後まで仏様にお願いしていた事は信じてね。 
Tちゃんが健やかに毎日を過ごせるよう、いつも祈ってます。 

読みながら、手紙を持つ手が震えているのが分かる。 
気持ちの悪い汗もかいている。鼓動が早まる一方だ。一体、どうすればいい? 
まだ…、終っていないのか? 

急にアイツが何処かから見ているような気がしてきた。もう、逃れられないんじゃないか? 
もしかしたら、隠れてただけでその気になればいつでも俺の目の前に現れる事が出来るんじゃないか? 
一度疑い始めたら、もうどうしようもない。全てが疑わしく思えてくる。 

S先生は、ひょっとしたらアイツに苦しめられたんじゃないか? 
だから、こんな手紙を遺してくれたんじゃないか? 
結局…、何も変わっていないんじゃないか? 

林は、ひょっとしたらアイツに付きまとわれてしまったんじゃないか? 
一体アイツに何を囁かれたんだ。俺とは違う、もっと直接的な事を言われて…、おかしくなったんじゃないか? 

S先生は、俺を心配させないように嘘をついてくれたけど、「嘘をつかなければならないほど」の事だったのか…。 
結局、それが分かってるからS先生は最後まで心配してたんじゃないのか? 
疑えば疑うほど混乱してくる。どうしたらいいのかまるで分からない。 

ここまでしか…俺が知っている事はない。 
二年半に渡り今でも終ったかどうか定かではない話の全てだ。 

結局、理由も分からないし、都合よく解決できたり何かを知ってる人がすぐそばにいるなんて事は無かった。 
何処から得たか定かではない知識が招いたものなのか、あるいはそれが何かしらの因果関係にあったのか…。 
俺には全く理解できないし、偶々としか言えない。 

でも、偶々にしてはあまりにも辛すぎる。 
果たしてここまで苦しむような罪を犯したのだろうか?犯していないだろう? 
だとしたら…何でなんだ?不公平過ぎるだろう。それが正直な気持ちだ。 

俺に言える事があるとしたらこれだけだ。 
「何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら、マジで洒落にならんことを改めて言っておく。 
最後まで、誰かが終ったって言ったとしても気を抜いちゃ駄目だ」 

そして…、最後の最後で申し訳ないが俺には謝らなければいけない事があるんだ。 
この話の中には小さな嘘が幾つもある。これは多少なりとも分かり易くするためだったり、
俺には分からない事もあっての事なので目をつぶって欲しい。 
おかげで意味がよく分からない箇所も多かったと思う。合わせてお詫びとさせて欲しい

ただ…、謝りたいのはそこじゃあない。 
もっと、この話の成り立ちに関わる根本的な部分で俺は嘘をついている。 
気付かなかったと思うし、気付かれないように気を付けた。 
そうしなければ伝わらないと思ったから。 
矛盾を感じる事もあるだろう。がっかりされてしまうかもしれない…。 
でもこの話を誰かに知って欲しかった。 
俺は○○だよ。 

‥今更悔やんでも悔やみきれない。

【洒落怖】【怖い話】くねくね

別サイトに掲載されてて、このスレの投票所でも結構人気のある「分からないほうがいい」って話あるじゃないですか。 
その話、自分が子供の頃体験した事と、恐ろしく似てたんです。 
それで、体験した事自体は全然怖くないのですが、その 
「分からないほうがいい」と重ね合わせると、凄い怖かったので、 
その体験話を元に「分からないほうがいい」と混ぜて 
詳しく書いてみたんですが、載せてもいいでしょうか? 

これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。 
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い、空気が断然うまい。僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。 
そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。 
すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。その方向には案山子(かかし)が 
ある。『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、兄は『いや、その向こうだ』と 
言って、ますます目を凝らして見ている。僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。何だ…あれは。 
遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。 
しかも周りには田んぼがあるだけ。近くに人がいるわけでもない。僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。 
『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった 
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』 
兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。 
風がピタリと止んだのだ。
しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。
兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって 
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。
兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、はりきって双眼鏡を覗いた。 
すると、急に兄の顔に変化が生じた。みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく 
流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、 
兄に聞いてみた。『何だったの?』 
兄はゆっくり答えた。 
『わカらナいホうガいイ……』 
すでに兄の声では無かった。兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。 
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を 
取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。
しかし気になる。 
遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。
しかし、兄は…。よし、見るしかない。どんな物が兄に 
恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。 
その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。
僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、すごい勢いで祖父が、
『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』 
と迫ってきた。僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』 
と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。
僕は、わけの分からないまま、家に戻された。 
帰ると、みんな泣いている。僕の事で?いや、違う。よく見ると、兄だけ狂ったように 
笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。
僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。 
そして家に帰る日、祖母がこう言った。『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。 
あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か 
経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』 
僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。以前の兄の姿は、もう、無い。
また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。
何でこんな事に…ついこの前まで仲良く遊んでたのに、何で…。僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。 
祖父たちが手を振ってる中で、変わり果てた兄が、一瞬、僕に手を振ったように見えた。 
僕は、遠ざかってゆく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡で覗いたら、兄は、確かに泣いていた。 
表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せなかったような、最初で最後の悲しい笑顔だった。 
そして、すぐ曲がり角を曲がったときにもう兄の姿は見えなくなったが、僕は涙を流しながら 
ずっと双眼鏡を覗き続けた。『いつか…元に戻るよね…』そう思って、兄の元の姿を 
懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。そして、兄との思い出を 
回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。 
…その時だった。 
見てはいけないと分かっている物を、間近で見てしまったのだ。 

『くねくね』 
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